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第28話 烈風 前編




 ルイズ達が帰ったその日の夜、ラ・ヴァリエール公爵は、久々に愛する妻を己の寝室に迎え入れていた。
 元々公爵も昨日まで国境付近の視察に出ていたので、この事自体はごく当たり前のことである。だが今夜の彼女は、いつもと違っていることに公爵は気がついた。
 長年連れ添った愛妻である。情の交歓も、お互いに慣れた者同士の、しっとりとしたものになっている。
 だが、今宵の妻の様子は、いつものそれとは一変していた。二つ名の如く荒れ狂う嵐のような、名前とは裏腹の猛り狂う業火のような、そう……それは二人が初めて出会ったときのような、激情を胸に秘めていた乙女の頃のようであった。
 「どうしたんだい? 今の君は、まるで結婚する前の君のようだ」
 そんな彼女の様に引かれたのか、公爵の言葉も、今の歳にはあまりに合わない、若々しいものになっている。
 「かも知れませんわ。今の私は、あの何も知らなかった若かりし頃のように燃えさかっていますもの」
 実際、公爵の目には、今の妻が長年連れ添った女性ではなく、結婚直後のような若々しさに満ちた姿に見えていた。
 錯覚だとは思う。だがただの錯覚ではないように公爵には思えた。
 「それは夫としては少々癪に障るね。君を若返らせた相手に」
 そう軽い言葉を囁きつつ、妻の様子をさりげなく、しかし注意深く観察する。
 そして気がついた。年を経、落ち着いたことによって培われた洗練された身のこなし、それが漲りすぎた気魄のせいで崩れている。その押さえきれない迸りが、彼女を若く見せているのだ。
 それは、つまり。
 そう思った公爵の耳に、妻の返答が入ってきた。
 「いやよ、若い女に気を向けるなんて」
 やはり、と思い、再び水を向ける。
 「君が猛っているのは、あの女性のせいかい? ナノハとか言った、家庭教師という触れ込みの」
 「ええ」
 彼女は肯定する。
 「はっきり言って、初めてよ。目にした瞬間、あそこまでのものを感じた相手は。多分彼女は、あなたと知り合った頃からの全てを通して……おそらくは最強。あれに比べたら、火竜山脈の火竜なぞ、ものの数ではありませんわね」
 「ほう、君が『最強』と言い切るか」
 「あの子は何かまだ隠し事をしているみたいですけど、そんなことを抜きにして、彼女から感じる『気』は何かが違いますわ。見た目は可憐な花……なのにどう見ても私には、あそこに鋼鉄が立っているようにしか感じられませんでしたもの」
 さすがに公爵は妻の様子が少しおかしいことに気がついた。
 「ただの強敵というわけではなさそうだね」
 「そうなの。うまく言葉には出来ないのですけど……」
 その様子に、公爵は結婚当時よりもさらに若い妻のことを思い出した。強くはあってももろかった頃の彼女のことを。
 「彼女は『異質』ですわ。私たちとは何かが根本的にちがう。それがこうも私を不安にしているみたいなのです」
 「我が愛しの『烈風』は、その程度で止まってしまうのかい?」
 そんな妻に、公爵は優しく語りかける。自分の心が、若かりし頃に引き戻されているのを自身でも感じる。
 「止まったりはしませんわ。ただ……」
 「ただ?」
 「あなたに初めて、私が『敗北』する姿を見せてしまいそうな気がして」
 「それはちょっと驚きだね。敗れたことはあっても、決して『敗北』はしなかった君が」
 世間では無敵と評された妻であったが、本当に無敵だったわけではない。だが、決して屈することだけはなかった。
 それは彼自身が一番よく知っている。
 「何、もし負けたとしても、こう思えないかな? 『まだ上があった』って」
 その言葉を聞いて、妻はぽかんとした様子を一瞬見せ、次いで彼がもっとも好きな、破顔一笑、という言葉がもっとも似合う笑顔を向けてきた。
 それに続く言葉はいらなかった。いや、言葉を交わせない状態になっていた。







 懐かしい故郷での夜が明けた。
 だが、いつものように使い魔である女性の声で起こされても、ルイズは目が醒めた気がしなかった。
 自分の母親の恐ろしさは嫌というほど知り尽くしている。その母親と、この使い魔が戦う。
 それこそ悪夢だった。
 彼女の、なのはの強さもルイズは十分に知っている。多少の幸運と援護はあったといえ、エルフと正面戦闘をして勝つほどなのだ。
 なのはなら決して母にひけは取らない。それは理性では理解出来るのだが、感情が納得してくれない。
 それほどまでに戦う母は恐ろしい存在であった。
 だが、目の前の彼女は、こう言うだけであった。
 「大丈夫ですよ」
 と。
 ただそれだけを、彼女は言った。



 いつものように着替えをなのはに用意してもらい、城のメイド達が用意してくれた水で顔を洗い終わる頃、判っていた知らせが入った。
 朝食の前に、母が鍛錬につきあってほしいという伝言だ。
 もちろんこれは単なる名目に過ぎない。それは周りの人間も熟知していることだ。
 すぐに向かいます、と返事をした後、ルイズはなのはの方を見る。

 「本当に大丈夫? 母様は、本当に強いわよ?」

 と、なのはが何故か少し赤らんだ顔をしていった。

 「あの、実はですね……」
 「何か?」

 その様子になんというか、申し訳なさそうなものを感じたルイズは、なのはに問い掛ける。
 そしてその答えを聞いたルイズは思わずこける羽目になった。
 なぜならなのはは、

 「ここだけの話……多分ミッドの空戦魔導師なら、ある程度の実力があれば絶対こちらで負けることはないと思います」

 という、とんでもない答えを返してきたからであった。



 「なにそれ? ミッド式ってそんなに優秀だっていいたいの?」
 さすがにルイズも少しむっとなって言葉が尖る。対してなのははますます申し訳なさそうに答える。
 「いえ、どちらかというと相性的な問題なんです。一言で言えば、プロテクションを初めとする防御全てを一撃で抜ける攻撃力がなければ、ミッドの魔導師はこちらでは負けることはまずありません」
 「そりゃそれだけの攻撃力があれば当然だけど、ないとなんで必敗なわけ?」

 答えは簡潔明瞭であった。

 「ハルケギニアの魔法では、攻撃と防御を同時に展開できないからです。同時に発動できる魔法が一つ。この事が、ハルケギニアの魔法を攻撃に偏らせています。ですので」
 そこでなのはは言葉を切り、ルイズを見つめて言った。
 「ハルケギニアの防御魔法は、殆ど発達していません。特に対魔法防御が極端に遅れています。タバサに聞いたのですが、数少ない防御魔法の『エア・カーテン』なども、その効力は物理的に風を起こして攻撃を防ぐものです」
 「そうよね。あれは矢とかをそらすために使うことが多いもの」
 ルイズも二人の練習光景を思い出して言った。
 「こちらの魔法は基本的に物理現象ですので、エア・カーテンで防ぐことも出来ます。ですがミッド式の攻撃魔法は、純粋魔力攻撃です。これは物理現象では実体以外では防げませんから、『アース・ウォール』のようなもの以外では妨害できません。
 ましてや相手の攻撃に対してカウンターで放てば、威力にかかわらず一撃必殺になります」
 「あ」

 ルイズもその光景を想像してみて、思わず納得してしまった。
 ルイズに決闘経験はないが、決闘そのものは学院で何度か見ている。表向き禁止されているとはいえ、いろいろな理由で生徒同士が『杖を合わせる』光景は皆無ではない。
 ハルケギニアでは魔法の同時展開や自動維持が出来ない。必然的に、攻撃に対しては回避か相殺になる。それゆえ、なのはのようなミッド式の魔導師が使う、『プロテクション』や『バリアジャケット』のような防御手段が皆無に等しい。
 数少ない防御魔法は、集団戦での連携の元に使うものがほぼ全てだ。というか決闘の場で防御魔法を使っていたら攻撃できない。
 戦闘スタイルとして、防御を魔法で担い、剣などの武器で攻撃するというスタイルが考えられないわけではないが、ゲルマニアならまだしも、トリステインの貴族が剣で相手を攻撃するなど考えるはずもない。
 剣と魔法を両方使うものでも、攻撃の際には剣に魔法を纏わせるのが常道である。
 それだけに『防御しながら攻撃』が可能なミッド式の魔導師のほうが絶対的に有利であるということを、ルイズは論理的に理解してしまった。
 純粋魔力攻撃は、ハルケギニアの魔法では相殺できない。発動の直前直後を狙い撃たれたら、まずこちらが負ける。
 よほど回避能力に長けているか、狙いを付けさせない動きが出来るものでないと、勝ち目はまず無いであろう。
 まして相手が空戦魔導師……空を飛びながら魔法を撃てる相手だったりした日には最悪である。場合によってはこちらの射程外から一方的に叩かれることになる。

 「さすがに母様でも分が悪いかも知れないわね。考えてみると」
 少し気が楽になったのか、ルイズの声から固さが取れる。
 「はい。実のところ、お母様の実力にかかわらず、私が対一で戦えば、間違いなく即決で私の勝ちなのは多分揺るぎません。まだ見せていない隠し技とかもありますし」
 不敵なことを言うなのは。
 「ただ、それはいわゆる『卑怯』な勝ち方なので、お母様は納得しないと思います」
 そういってなのはは、傍らに置いてあったものを取り上げた。
 思わずルイズの目が丸くなる。
 「え、なのは……」
 そんなルイズの様子に、憤慨した声がかぶさる。
 「おいおい、娘っ子、姐さんは本業がメイジでも、『使い手』なんだぜ。ガンダールヴならちゃんと使えるって」
 そう、何故かなのはは、その手にデルフリンガーを持っていた。
 「デル君、お母様を納得させるには、多分あなたを振るう必要があるわ。頑張ってね」
 「おう! まかせとけ!」
 意気揚々と答えるデルフリンガー。
 この後二人に聞こえないところで「よかった……俺にも出番があった……」と、メタ発言にも聞こえることをつぶやいていたのは、彼だけの秘密である。







 中庭と言うには殺風景な広場に、二人の人物が対峙していた。
 一人はマンティコア隊の制服に身を包み、顔の半分を鉄製のマスクで覆った人物。腰に下がった剣は、杖を兼ねている逸品である。
 その出で立ちは、まさに騎士の中の騎士。
 「本気だな、あいつ」
 ルイズのすぐ隣で、父がそう呟くのを聞き、また不安がわき上がってくるルイズ。
 二人は使用人達と一緒に、離れたところから対峙する二人を見つめている。
 「本気、といいますと?」
 ルイズの問い掛けに、父はますます不安をあおるような答えを返す。
 「マンティコア隊に所属してからは、帯剣していても殆ど飾りで、振るうのはおまえもよく見知っている杖だった。だが今のあいつは」
 公爵の視線が、腰に帯びた剣に向かう。
 「あれは以前使用していた、杖を兼ねた剣だ。つまりカリーヌはこの戦い、魔法だけではなく、剣の技も使用して彼女に立ち向かうと宣言しているに等しい。正真正銘の全力だな」
 烈風カリンの逸話には風の魔法を武器としたものが多いが、同時にその非凡な剣技の冴えも伝わっている。
 「それにしても」
 ここで公爵の声が少しゆるむ。
 「おまえの家庭教師は、ずいぶんと傾いているのだな」
 「お気持ちは判りますが、父上」
 ゆるんだ父の声に、やや荒い声で答える娘。
 確かにバリアジャケットを纏ったなのはの姿は、一見すれば道化者の騎士だ。白と青を基調とした、ちょっと奇異で派手な服。ツインテールの髪型に、派手な装飾がついた金色と桃色の長大な杖。
 何も知らなければ、戦う者にしてはずいぶんとなめた服装だと取られるだろう。
 「私のつ……家庭教師を甘く見ない方がいいですわ。ああ見えても彼女は歴戦の勇士です」
 「そういえばあの剣は置いたままだな。彼女はメイジだったのか?」
 「いいえ……言葉では語れませんので、後はご自分の目で確認を」
 一見落ち着いた口調で、内心テンパりまくりでルイズは父へ言葉を返した。
 「そうだな、そうするか」
 父は視線を対峙する二人に戻す。今二人は何も無い広場の中央に、10メイルほどの距離を開けて相対している。そのちょうど中間に、一番足の速い侍女がハンカチを持って立っている。
 彼女が合図の声と共にハンカチを放り投げ、それが地に着いた瞬間から戦いが開始されると言うことになっている。
 そして。



 「はじめ!」

 大きな声と共に、合図役の侍女はハンカチを大きく空中に投げ、同時に文字通り脱兎の如くその場からルイズ達の方へ駆け出した。
 そのためにわざわざスカート丈を詰めている位だ。
 幸いハンカチは、彼女が安全な距離を保った後にふわりと落ちた。
 その瞬間、両者の間の気魄が爆発的にふくれあがる。
 先手を取ったのはなのはであった。カリンがいかに熟達していても呪文の詠唱はゼロ時間では出来ない。対してなのはの方はものにもよるが完全な無詠唱で魔法を発動させることが出来る。
 もっともディバインバスターを初めとする攻撃系の魔法に関しては、殆どがためというか時間を必要とするものばかりである。つまり開始と同時になのはが発動させた魔法は攻撃魔法ではない。

 “Axel Fin”

 なのはは、杖を槍のように構え、こちらに向けたた姿勢のまま、『後ろに爆走』した。



 カリンは一瞬、頭が真っ白になるのを押さえられなかった。
 (なんだ、あれは)
 姿勢を崩さないまま、相手の姿が小さくなっていく。
 フライの呪文で超低空飛行をしているのだと気づいたのは、その直後だ。同時に脳裏で鳴り響く警報。長年の戦いで掴んだ、嫌な予感。
 何故相手はいきなり距離を取った?しかも姿勢を崩さないまま。
 来る。こちらよりも遙かに長射程の魔法攻撃が。
 一瞬のうちにその判断に到達する。
 ならば!
 こちらも同じくフライの呪文を使い、一気に距離を詰める。
 剣を用意しおいてよかったと、心から思う。
 もしいつもの杖であったら、為す術もなく相手の得意な距離から一方的に攻撃されていたはずだ。
 相手は遙か遠くに行ってしまっている。
 カッタートルネードならこちらからも届くが、相手はその詠唱時間を待ってはくれまい。
 こちらが長距離用の呪文に切り替えたと見るや、あの速度で今度は距離を詰めてくるだろう。それはまさに詰みを意味する。
 だがこちらが相手に匹敵する速度で間合いを無に出来ればそこから逃れられる。だがその場合、魔法を移動のために使わねばならず、攻め手が激減する。トリステインの騎士としては腹立たしいが、魔法を従、剣を主とした攻撃を使わねばならない。
 だが、そこまでしなければ対峙できない相手であると、カリンの戦闘経験は判断していた。
 開かれた間合いが再び詰まる。その速度は実に速かった。
 おそらく現時点のハルケギニアで、今のカリンに匹敵する速度で飛行できるのは、スクエアを越えた何かを会得しているタバサだけだったであろう。
 もっとも術式でそれを成し遂げているタバサとは違い、カリンの出す速度は純粋にその強大な風の力……いわゆる馬鹿魔力のたぐいによってもたらされるものであった。
 「速いっ!」
 観戦しているルイズの口から思わずそんな言葉がこぼれる。それほどにカリンの速度は速かった。
 「ああ。カ
 公爵がそれに答えようとした、まさにその時だった。
 10メイルほど……時間にして1秒足らず。
 なのはの立っていた位置までカリンがたどり着いたときであった。
 「なにっ!」
 くぐもった声が鉄のマスクの内側から響く。彼女の接近は、唐突に阻まれた。
 相手の立っていた位置の直前辺りで、突然最大級の『嫌な予感』が彼女を襲う。が、なまじ加速していたため静止が間に合わなかった。
 突然発光する地面。瞬時に停止を余儀なくされる全身。
 気がつけば、両手首と両足首、そして胴を幾重にも、桃色の光輪が自分を縛り付けていた。
 驚いたことに、その光輪はただ自分を縛るだけでなく、その場から動かすことすら出来ない。まるで光輪そのものが空間に固定されているかのように。
 「なんだ、あれは!」
 思わず娘のほうに怒鳴る父。
 「私もはじめてみました!」
 言い返す娘。
 そしてそんな二人の前を貫く魔光。
 二人がそちらを見たとき、そこにあったのは空中に縛り付けられたまま気絶する妻であり母である人物と、滑るように近づいてきて杖を彼女に突きつけた家庭教師の姿であった。



 軽く頬をはたかれる感触に、彼女は目をさます。
 「大丈夫ですよね? 今バインド解きますね」
 そう彼女が言うと、カリーヌを縛っていた戒めが消え、全身が解放される。
 崩れ落ちそうになる体を、彼女が支えてくれた。
 この辺でようやっとカリーヌの意識がはっきりとしてきた。
 こみ上げて来るのはいくばかの怒りと、ずいぶん久しく感じる若い頃に感じた無力感。
 カリーヌは思わず自嘲していた。
 烈風カリンともあろうものが、未知の術とは言え、小手先の技に完膚無きまでに敗れる。
 遠方の彼女から光が放たれた瞬間、間違いなく死を感じた。
 実際は瞬間的な痛みと共に気絶しただけで外傷などはないようだが、もしその気があったのなら、今頃自分は生きてはいまい。それをカリーヌは理解していた。
 「……やって、くれたな」
 予感はしていた。一歩間違えば目の前の女に自分は敗れると。
 だが予想とは違った。一歩どころではなかった。
 完膚無きまでに自分は敗れたのだ。
 「ちょっと卑怯でしたけどね」
 彼女は悪びれずに言う。
 「まあ、予備知識なしで戦ったらこうなるのは判りきっていましたけど……納得いかないですよね」
 「確かにな。だが負けは負けだ。言い訳など無用」
 今ひとつつかみ所がないが、強いのは間違いなさそうだ。手段にためらいがないのも、むしろ高評価だ。娘を守る身にある者が手段を選んでいるようでは安心できない。
 出来ればもう少し別の面を見てみたいとは思ったが、強要するわけにも行くまい、とカリーヌが思ったときであった。
 「じゃあ、今度は卑怯じゃないやり方でやってみます」
 目の前の女は、とんでもないことを平然と言ってのけた。



 「ななななんでこんなことしなけりゃならないのよ」
 ルイズは現状にただ冷や汗を流しつつわめくことしかできなかった。
 でもこれが一番の早道ですよ? と、不遜なことを言ってくるのは自分の使い魔。
 ルイズは先ほどの広場に立っていた。いつもの服装のまま、無防備に。
 自分の前には最強の使い魔、こちらを狙うは最強の敵……無敵の母、そして、その母と背中合わせに戦ったという、父。
 そんな二人に対して、なのはは宣言したのだ。
 「手段は問いません。一定の時間、具体的にはご主人様が今のところ使える虚無の呪文を詠唱しきるまでの間、彼女にかするだけでも攻撃を当てたらそちらの勝ちです」
 あの後、なのははある告白をした。自分はルイズの使い魔として異界から召喚された存在であり、彼女を守るのが本分だと。
 驚いていたが、ルイズが『使い魔だと言ったら扱いがぞんざいになる』と言ったことで両親も納得した。実際の所、思い当たる節がありすぎて娘のことを叱るわけにも行かなかった。
 その上で改めて提案されたのが、この戦い。
 何でもありでなのはがルイズを守り、ルイズに攻撃がかすりでもしたらなのはの負け。これは単なる条件ではなく、ルイズが虚無の担い手として魔法を発動させるまで彼女を守るという、実戦に即した条件だ。
 逆に言えばこれが出来なければ彼女の使い魔たる資格はないともいえる。
 「ですので今回は魔導師としてだけでなく、使い魔としての力も使います……というか、この条件だと接近戦も考えないといけませんから、それだと魔導師としての私だけじゃ不足なんです」
 そういってなのはは杖であるレイジングハートをしまい、代わりにその手にデルフリンガーを握った。
 残念だが、ある程度白兵戦を考慮していた親友のデバイスと違い、レイジングハートでこの世界の武器やブレイドの魔法を受けたらまず耐えきれない。そう思っての対策であった。
 なのはの感覚からすれば、それはかつてヴォルケンリッターと戦ったときのそれに等しい。
 レイジングハートで彼らのアームドデバイスと直接打ち合ったら絶対に持たない。
 そのことは重々承知のなのはだった。
 「開始はご主人様が詠唱を開始すると同時です。ご主人様は『エクスプロージョン』の呪文を、ちょっと変えて唱えていてください」
 ちなみに精神力は回復しきっていないので、今のルイズに本物のエクスプロージョンを唱えきることは出来ない。なので発音や言葉を外したダミーを唱えることになる。
 その時間はなのはの感覚からすればフルキャストで約3分前後。
 そして2度目の戦いが開始された。



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