ゼロのルイズが呼び出したのは、一人の少女だった。
緑の美しい髪と、赤い瞳が印象的な彼女は、嘲笑を投げかける観衆を一睨みで黙らせると、
それがさも当然というように、目の前のルイズの唇を奪った。
少女の名を、アセルスという。
またの名を、魅惑の君。
緑の美しい髪と、赤い瞳が印象的な彼女は、嘲笑を投げかける観衆を一睨みで黙らせると、
それがさも当然というように、目の前のルイズの唇を奪った。
少女の名を、アセルスという。
またの名を、魅惑の君。
その日、ルイズは初めての恋に落ちた。
夕暮れの太陽が、部屋の中にある何もかもを赤く染めていた。
事情を説明するために案内されたルイズの私室の中で、二人は寝台の縁に並んで座っている。
事情を説明するために案内されたルイズの私室の中で、二人は寝台の縁に並んで座っている。
「なるほど。私は君の使い魔ということか」
その声に不快の気配は無い。
左手に刻まれたルーンを、むしろ楽しげに眺めながらアセルスは呟く。
左手に刻まれたルーンを、むしろ楽しげに眺めながらアセルスは呟く。
「あの……お嫌でしたか?」
恐る恐る、といった様子で、ルイズが尋ねる。
喧嘩友達のキュルケが聞いたら、耳を疑うような弱弱しい声音。
そこに透けて見えるのは、この人にだけは絶対に嫌われたくないという想い。
喧嘩友達のキュルケが聞いたら、耳を疑うような弱弱しい声音。
そこに透けて見えるのは、この人にだけは絶対に嫌われたくないという想い。
「ああ、いや、退屈しのぎにはちょうど良い。
ジーナには悪い気がするけど、土産話で我慢してもらう事にするさ」
ジーナには悪い気がするけど、土産話で我慢してもらう事にするさ」
くつくつと、それがさも楽しい事のように笑う。
笑うと、外見相応の幼さが貌に現れる。
そのさまに見惚れるルイズ。
もしかすると、と思う。
もしかすると、この異世界から来たというあまりにも美しい貴人は、自分と同じくらいの年齢なのかもしれない。
しかし、次の瞬間、ルイズを射抜いた眼差しが、その印象を裏切る。
最高級の紅玉を融かして流し込んだような紅の瞳が、春の日の残光とともに、ルイズの魂をも引き込んでいく。
息が苦しい。部屋の中から、それだけで光が奪われていくようだ。
とくとくと、小さな心臓が刻む鼓動が、ルイズの全身を震わせる。
ルイズは、ある種の確信をもって、アセルスの花唇が紡ぐ言葉を待っている。
笑うと、外見相応の幼さが貌に現れる。
そのさまに見惚れるルイズ。
もしかすると、と思う。
もしかすると、この異世界から来たというあまりにも美しい貴人は、自分と同じくらいの年齢なのかもしれない。
しかし、次の瞬間、ルイズを射抜いた眼差しが、その印象を裏切る。
最高級の紅玉を融かして流し込んだような紅の瞳が、春の日の残光とともに、ルイズの魂をも引き込んでいく。
息が苦しい。部屋の中から、それだけで光が奪われていくようだ。
とくとくと、小さな心臓が刻む鼓動が、ルイズの全身を震わせる。
ルイズは、ある種の確信をもって、アセルスの花唇が紡ぐ言葉を待っている。
「で、仕えるからには勿論対価が貰えると思っていいんだね?」
腕を掴まれる。
「え?」
そのまま寝台に倒れこむ。
「私は安くないよ?」
精々、楽しませてよ、と言って、アセルスの唇がルイズの口を塞いだ。
驚愕に見開かれたルイズの瞳がゆっくりと閉じる。
驚愕に見開かれたルイズの瞳がゆっくりと閉じる。
窓の外の夕陽は、今にも沈もうとしていた。
やがて、僅かな歳月の後に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女が地上から姿を消し、
針の城に君臨するかの妖魔の君は、また一人寵妃を得ることとなった。
これは要するに、ただそれだけの話。
初恋が、永遠となった、一人の少女の物語。
針の城に君臨するかの妖魔の君は、また一人寵妃を得ることとなった。
これは要するに、ただそれだけの話。
初恋が、永遠となった、一人の少女の物語。