ここはルイズの部屋。既に外は夜だというのに、部屋の中はまるで昼のように明るい。
ルイズはあのまま倒れた猫に、コントラクト・サーヴァントを済ませて、部屋まで連れ込んだのだ。
ちなみにあの後、呼び出して早々に使い魔を失ったメイジ達は、後日補習という形で再召喚することとなった。
御陰で暫く、コルベールの授業は丸々つぶれることとなったらしい。
ルイズはあのまま倒れた猫に、コントラクト・サーヴァントを済ませて、部屋まで連れ込んだのだ。
ちなみにあの後、呼び出して早々に使い魔を失ったメイジ達は、後日補習という形で再召喚することとなった。
御陰で暫く、コルベールの授業は丸々つぶれることとなったらしい。
それはともかく、ルイズは部屋の隅に寝かした、自分の使い魔の姿を見る。
暫く眺めた後、ルイズはハァ、っとため息をついた。
別に、この使い魔を呼び出したということが不満なのではない。
メイジにとって、猫の使い魔というのは極めてポピュラーだ。今日の召喚で猫を呼びだしたメイジも少なくない。
只の猫なら不満もあったが、これほどの戦闘力を持った猫なら十分当たりだろう。とルイズは思う。
暫く眺めた後、ルイズはハァ、っとため息をついた。
別に、この使い魔を呼び出したということが不満なのではない。
メイジにとって、猫の使い魔というのは極めてポピュラーだ。今日の召喚で猫を呼びだしたメイジも少なくない。
只の猫なら不満もあったが、これほどの戦闘力を持った猫なら十分当たりだろう。とルイズは思う。
問題は、この猫と契約した時に出た左腕、あ、いや、左前足のルーンから放ち続けられている光だ。
部屋に連れてきてからずっと、まるでルイズの部屋だけ真っ昼間になったかのような光を放ち続けている。
ルイズとしては鬱陶しいことこの上ない。
部屋に連れてきてからずっと、まるでルイズの部屋だけ真っ昼間になったかのような光を放ち続けている。
ルイズとしては鬱陶しいことこの上ない。
もう何回目かは解らないが、ルイズは部屋の隅に寝かした猫を揺さぶる。
「起きなさい。あんた使い魔でしょ。早くこの光を止めて」
「ン……」
「ン……」
五、六度揺さぶった所で、猫の左目がパチクリと開かれる。
ようやく起きた自分の使い魔に、ルイズは早速、主人として一の一番に命令を下そうとする。
しかしそれよりも早く、猫の方が口を開いた。
ようやく起きた自分の使い魔に、ルイズは早速、主人として一の一番に命令を下そうとする。
しかしそれよりも早く、猫の方が口を開いた。
「やっと「メシをくれ」わね……って、ご飯?」
ルイズは夜食用にと用意しておいた食事を、使い魔の猫に与える。
大きな、味付けもしていないようなパンだが、使い魔の猫はそれを見るなり、むしゃぶりつくようにして齧り付いた。
大きな、味付けもしていないようなパンだが、使い魔の猫はそれを見るなり、むしゃぶりつくようにして齧り付いた。
「ガフ ガフ ガフッ! ガルッ ガルル ガルルル!」
「アンタねぇ、少しは落ち着いて食べなさいよ」
「アンタねぇ、少しは落ち着いて食べなさいよ」
前足でパンを手で持つようにして押さえ込み、口元の牙でパンを引きちぎる、その猛獣さながらの食事風景に、ルイズは呆れたような声を出す。
ちなみに左前足の光の方は、途中でこの使い魔の猫が食べるのに邪魔とマントを脱いだ時に収まった。
どうやらあのマントと反応して光を放つらしい。
ちなみに左前足の光の方は、途中でこの使い魔の猫が食べるのに邪魔とマントを脱いだ時に収まった。
どうやらあのマントと反応して光を放つらしい。
パンはものの一分程度で、全てこの猫のお腹に収まった。
ようやくルイズは話を切り出そうと、腰掛けていたイスから身を乗り出す。
しかしまたもや猫の方が一寸早く、口を開く。
ようやくルイズは話を切り出そうと、腰掛けていたイスから身を乗り出す。
しかしまたもや猫の方が一寸早く、口を開く。
「食べ終わったわね「おかわりはねぇか?」……ハァ?」
「おかわりはねぇのか?」
「無いわよ。それで終わり」
「おかわりはねぇのか?」
「無いわよ。それで終わり」
猫は少し残念そうな顔をしながら、辺りを見回して、ここにルイズしかいないことを確認する。
そしてよっと立ち上がり、ルイズの方へと近づいてきた。
そしてよっと立ち上がり、ルイズの方へと近づいてきた。
「な、何よ」
「すまん。自己紹介がまだだったな。拙者『マタタビ』と申す」
「え!?」
「すまん。自己紹介がまだだったな。拙者『マタタビ』と申す」
「え!?」
何をする気だろうかと、身構えていたルイズは、予想もしていなかった自己紹介に一旦停止する。
ちなみに名前はトラにしようと思っていたので、二重の意味でフリーズする。
ちなみに名前はトラにしようと思っていたので、二重の意味でフリーズする。
しかしそんなルイズの様子に関係なく、猫……マタタビは口上を続ける。
「本当ならば拙者は今頃、この訳の解らぬ異国で餓死していたものを… おぬしにはなんと感謝していいものか… この恩は一生かかっても返させてもらうぞ」
「つつつ、使い魔なんだから、それは当たり前よ!」
「つつつ、使い魔なんだから、それは当たり前よ!」
ルイズはマタタビの雰囲気に押されて、ドモった挙げ句に声を上擦らせる。
しかしマタタビはそんなことよりも、聞いたことのない単語に反応した。
しかしマタタビはそんなことよりも、聞いたことのない単語に反応した。
「つかいま? なんだそれは」
「そんな事も知らないの? 使い魔っていうのは、メイジを支援す……る……」
「そんな事も知らないの? 使い魔っていうのは、メイジを支援す……る……」
自分のペースに引き戻すチャンスと思ったルイズは、そこでようやくあることに気づいた。
何故、自分は当たり前のように猫と会話しているのだ?
いくらコントラクト・サーヴァントをしたからといって、元々しゃべれないものが喋れるようになるわけではない。
そりゃあ、念話のようなものは出来るが、それは主人と使い魔の間だけで可能なことだ。しかも声を介するものではない。
しかしこの猫は、明らかに口で喋るどころか、完全にこちらのいったことを理解し、会話まで成り立たせている。
かつてハルケギニアにいた韻竜というのは、それが出来たといわれるが、もう絶滅したともいわれるし、そもそもコイツは猫である。
きっと韻猫という種族もいるんだろうと、ルイズはそんなことを考えた。
何故、自分は当たり前のように猫と会話しているのだ?
いくらコントラクト・サーヴァントをしたからといって、元々しゃべれないものが喋れるようになるわけではない。
そりゃあ、念話のようなものは出来るが、それは主人と使い魔の間だけで可能なことだ。しかも声を介するものではない。
しかしこの猫は、明らかに口で喋るどころか、完全にこちらのいったことを理解し、会話まで成り立たせている。
かつてハルケギニアにいた韻竜というのは、それが出来たといわれるが、もう絶滅したともいわれるし、そもそもコイツは猫である。
きっと韻猫という種族もいるんだろうと、ルイズはそんなことを考えた。
もっともマタタビは、信じられないことに普通の猫なのだが。そんなことをいって信じる方が、どうかしているであろう。
「ともかく拙者はその、拙者の『めいじ』とやらである、おぬしを支援すればいいんだな。うむ…… この『はるきげにあ』とやらは、拙者の分からぬ文化が多すぎる」
ルイズが思考のドツボにはまっている間に、マタタビは何かを勝手に理解し、勝手に結論づけている。
ルイズが思考のドツボにはまっている間に、マタタビは何かを勝手に理解し、勝手に結論づけている。
「しかし少し食べた所為で、かえって腹が減ったな。……そういえばおぬし、名前は?」
「……ルイズよ」
ルイズはかろうじて思考のドツボの中から、マタタビの質問に答える。
「……ルイズよ」
ルイズはかろうじて思考のドツボの中から、マタタビの質問に答える。
「そうか。ではるいず。メシは一体何処に行けばもらえるのだ」
「厨房になら、いろいろあると思うわ……」
「厨房になら、いろいろあると思うわ……」
たかがパン一つで満足するマタタビではない。
用意している分がないのであれば、自分で調達すればいいといった様子で、マタタビはルイズに食料の在処を尋ねた。
意識の半数を、マタタビの正体がなんなのかということを考えることに使っていたルイズは、普通にその質問に答える。
マタタビはその答えを聞くなり、先程脱いだマントを羽織り直して、部屋を出る。
再び、マタタビの左前足が光り出した。
用意している分がないのであれば、自分で調達すればいいといった様子で、マタタビはルイズに食料の在処を尋ねた。
意識の半数を、マタタビの正体がなんなのかということを考えることに使っていたルイズは、普通にその質問に答える。
マタタビはその答えを聞くなり、先程脱いだマントを羽織り直して、部屋を出る。
再び、マタタビの左前足が光り出した。
「うお、なんだコレは!」
「……ってあんた、何処に行くつもりよ!」
「……ってあんた、何処に行くつもりよ!」
マタタビの驚いた声と、強い光に当てられ、ようやくルイズは思考を止め、表に出ていったマタタビを追いかけていった。
「もう、いきなりどっかにいこうとしないで」
「いや、拙者は厨房でメシを漁りに」
「きゅるきゅる」
「どうしたのフレイム。突然、表に出たがって」
「いや、拙者は厨房でメシを漁りに」
「きゅるきゅる」
「どうしたのフレイム。突然、表に出たがって」
ルイズの部屋のドアが開いて、ルイズが出てくるのと、その目の前に並んだ三つのドアの内、一つが開いて褐色肌の女性と、その使い魔である火蜥蜴が出てくるのは、ほぼ同時であった。
ルイズはその扉が開く音を聞き、また褐色の女性も自分の目の前の扉が開く音を聞いて、両者は同時に顔を上げる。
ルイズはその扉が開く音を聞き、また褐色の女性も自分の目の前の扉が開く音を聞いて、両者は同時に顔を上げる。
「キュルケ!」
「あ~ら、ルイズ。今日も騒がしいわね」
「あ~ら、ルイズ。今日も騒がしいわね」
顔をあわせるなり、二人は余り友好的とは言えない、というか褐色のキュルケという女性が、ルイズをおちょくっているという感じで、互いの名前を呼び合う。
「ルイズ。それがあなたの使い魔? ……凄く普通ね。やっぱり、どうせ呼び出すなら、私のフレイムみたいに凄いの呼びたいはよね~」
「うるさいわね、キュルケ! あたしの使い魔だって凄いんだから!」
「うるさいわね、キュルケ! あたしの使い魔だって凄いんだから!」
その話題のルイズの使い魔事、マタタビは、キュルケの使い魔である火蜥蜴のフレイムを、じーっと見ていた。
なんとも食いでがありそうじゃないか。確か蜥蜴の肉は鳥みたいで、それなりにうまかったな。っとマタタビは思った。
その目は非常にぎらついていて、おそらく今のマタタビの前であれば、ライオンであっても尻込みをするだろう。
その目は非常にぎらついていて、おそらく今のマタタビの前であれば、ライオンであっても尻込みをするだろう。
コイツ、俺を食べる気だ! フレイムは思った。
目の前のマタタビは、見た目は普通の猫だ。しかし自分の本能が、コイツには勝てない、逃げろ。と告げている。
使い魔同士、そしてその主人同士のにらみ合いが暫く続く。
目の前のマタタビは、見た目は普通の猫だ。しかし自分の本能が、コイツには勝てない、逃げろ。と告げている。
使い魔同士、そしてその主人同士のにらみ合いが暫く続く。
最初にその緊張を破ったのは、フレイムだった。
マタタビの視線に負け、ついに逃げ出すという選択肢を取ったのだ。
きゅるきゅると切なげな声を挙げながら、フレイムは一目散に逃げ出した。
マタタビの視線に負け、ついに逃げ出すという選択肢を取ったのだ。
きゅるきゅると切なげな声を挙げながら、フレイムは一目散に逃げ出した。
「まてぇ~!」
続けてマタタビが左手を光らせ、マントからチェーンソーを引っ張り出して追いかける。
目つきはもはや、獲物を狩る時のそれだ。
目つきはもはや、獲物を狩る時のそれだ。
「どうしたの、フレイム!?」
「ちょっと、何してるのよ!」
「ちょっと、何してるのよ!」
最後に自分の使い魔達の尋常じゃない様子を感じ取った主人達が、二匹の後を追いかける。
ここにフレイムの命をかけた鬼ごっこが開幕するのであった。
ここにフレイムの命をかけた鬼ごっこが開幕するのであった。