あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの黒魔道士-62


船の中央部。カジノって言うらしいその場所は、
色々なゲームの台が置いてあって普段はにぎやかなんだろうなって感じがした。
って言っても、今は人数が少ないから全然静かなんだけどね……
「え!?ギーシュ!?」
その部屋に入ってくるなり、ルイズおねえちゃんは驚いた顔を見せた。
……そうだよね。
さっきまでウェールズ皇子と話してて、ギーシュがいることを知らなかったんだもん。
「……や、やぁ、ルイズ……はふぅ……ホットワインが美味しい……」
そういうギーシュは、暖めたワインを木のマグでチビチビ飲んで凍えていた。
……船の翼に飛び移るなんて、無茶するなぁ……ボクには、出来そうもないや。

「――さてと、それでは始めようか」
ルイズおねえちゃんの姿を確認して、クジャが部屋の中央に躍り出た。
まるで、前口上を言うために舞台に出てきた劇の団長さんみたいだなって、思ってしまった。
「……何を?」
「『真実』のお披露目さ!舞台の幕を開けようじゃないか!」
ボクの質問に、相変わらずの調子でクジャが言う。
……さっきボクの前で見せた弱い姿はもう見せないつもりなのかなぁ。
……あまりにも変わり身が早すぎて、どれが本当の姿か分からなくなりそうだ。

「――ビビ、こいつ、信用できるの?」
「……話を聞くだけなら、大丈夫。騙されないように気を付ければ……」
ルイズおねえちゃんも疑う。
だから、ボクもそれに合わせて身構える。
絶対に騙されない。そう思いながら、クジャを睨む。
やっぱり、こいつは信用しきれないから……

「やれやれ。信用されてないな僕も――
 しょうがない。本当は最後の最後でお披露目するつもりだったけど」
ボク達の方に向き直って、クジャが改める。

「名を!今宵までの舞台、その黒幕の名を!最初に伝えよう」
「黒幕?」
眉をしかめたくなる。クジャの動作の一つ一つが芝居がかっていて、
何となく真剣に聞いてていいのか、騙されているだけなのか分からなくなる。

「そう!アルビオンの内乱に始まり、ガリアの姫君の誘拐劇、さらに今宵の2人のウェールズ皇子の事件と続いた物語……いや」
そんなボクの考えていることなんてお構いなしに、クジャは続ける。
芝居がかったような大きな手振りで、体丸ごとを使ってセリフを続ける。
「これは6000年の永きに渡る大長編!舞台で踊るは世界そのもの!」

「――胡散臭いわ」
ルイズおねえちゃんが、ふんっと鼻を鳴らした。
やっぱり、ルイズおねえちゃんもそう思うんだよね?胡散臭いって……
「これは失礼を、虚無のお姫様。しかし、これは誇大妄想でもなんでも無いんです」
ルイズおねえちゃんに丁寧にお辞儀するクジャ。
背が高いせいか、やたらとその動作がピシッと決まっている。
「……虚無のお姫様?ルイズ、君、虚無って……」
あ……そういえば、ギーシュは知らないんだっけ。ルイズおねえちゃんが、『虚無の使い手』ってこと……
「え!?あ、えー、あーそそそれはそのあのー……」
ルイズおねえちゃんが慌てる。
お姫様に秘密って言われているから、どうしようか困ってるんだと思う……

「……お前じゃないとしたら、他に誰がいるの?」
話をそらすためと、単純に疑問に思って、クジャに聞く。
タバサおねえちゃんをあんな目に合わせたり、アルビオンで戦争があったことの黒幕がいるっていうなら、
その名前を教えて欲しかった。
……許せないから。
嘘、偽りなく、その名前を教えて欲しかったんだ。
「かつてハルケギニアにおいて、最も偉大な力を持とうとし、その身を滅ぼした人物――」
クジャは、ゆっくりともったいぶるように、ワザとボク達に背を向けて歩き始めた。
「その名は、偉大なる始祖――」
「ちょ、ちょっと待ってよ!?クジャって言ったっけ!?
 あんた、他所から来たからかもしれないけど何トンデモなこと言っちゃってるのよ!?」
ルイズおねえちゃんが、クジャのセリフの途中で声を荒げる。
その声に、クジャが『計画通り』っていう笑顔で、こっちに振り向いたんだ。
……なんか、その笑顔には寒気がする。

「何か失言でもしたかな?」
「あ、あんたねぇ……始祖ブリミルが黒幕?だかなんだか知らないけれど、悪役にしようっていうの!?」
ルイズおねえちゃんが睨む。クジャの顔を、視線で殺してしまいそうなくらいに。
……始祖ブリミル……なんか、ずっと前に聞いたことある気がするなぁ。
ルイズおねえちゃんかタバサおねえちゃんが教えてくれたんだっけ?
この世界に魔法をもたらした、すっごいメイジだって……

「ふふふ……なるほど。この地の始祖信仰は思った以上に根強いね。まさに黒幕の描いた脚本通りに……」
ルイズおねえちゃんの言葉に満足したように、指を振りながら楽しげにクジャが言う。
「えーとー、クジャさん?話が見えてこないですけど?」
ギーシュが聞く。確かに、話がまったく見えてこないや。
……やっぱり、騙そうとしてるのかなぁ。

「それでは、ご紹介しよう……当地で最も偉大なるメイジ、『始祖』ブリミル」
クジャが、一言一言、強弱をはっきりさせながらセリフを言っていく。
完全に、クジャの一人芝居に見えてきた。
「――その英知と偉業を後世に伝えることで、その力を利用した者……」
じっくりと、言葉の意味が頭に浸みこむのを待つように、クジャが言葉をそこで切った。

「初代ロマリア王にしてブリミルの教えの最初の伝道者、フォルサテ。それこそが黒幕の名さ」
最後はあっけなく。静かに、そしてはっきりとその名前を言ってセリフを締めくくった。
……フォルサテ、それが悪い人の名前か。


ゼロの黒魔道士
~第六十二幕~ 明かされた真実


「フォルサテ……?」
でも、ボクはハルケギニアに来て間もないから、全然その名前には心当たりが無かったんだ。
静まりかえった部屋の中で、どんなヤツなんだろうと、考えるだけだった。
「――ま、待ちなさいよ!あんたどこまで異端発言ぶちかます気!?」
静けさを破ったのは、ルイズおねえちゃん。
顔を真っ白にしながら、さっきと同じぐらい怒っていた。

「何故、そう思うのかな?」
クジャはそれを平然と受け止める。
心なしか、少し笑っているみたいだ。
「あ、あのねぇ……良い?私だって目茶苦茶に信仰心が厚いってわけでも無いけど、
 始祖の成した偉業、それからその教えを後世に伝えたフォルサテには少しぐらい敬意を……」
……フォルサテって、そんな人なんだ……
え?あれ?すっごく偉い人の話を伝えた人が、悪い人?
……どういうことなのか、ボクにはさっぱりだった。

「なるほど、なるほど……では……ギーシュ君、だったかな?」
クジャはルイズおねえちゃんの言葉に一々うなずきながら、急にギーシュに話を振った。
「は、はいっ!?僕ですか!?」
ギーシュも、突然のことに、暖かいワインの入ったマグを落としそうなぐらい驚いた。
「始祖ブリミル、彼の成した偉業とは?」
「えっと……主に四系列に分けられる魔法の確立と、対エルフ戦に対する武勲、あとは数々の奇跡が……」
ギーシュが全く考えもせずに、スラスラと答えるっていうことは、
ブリミルって人の話はそれだけ有名ってことなんだろうなって思うんだ。
ますます、なんでフォルサテって人が悪いってことに繋がるのか理解できなかった。

「四系列、元来は『虚無』を含めての五系列であったことはおこうか。本筋じゃぁない……
 ――ふふ、『虚無』は伝説だからね!偉業に含めるか怪しいからしょうがないさ!――
 この地に伝わるブリミル教、そのままの素直な解答に感謝するよ」
「あ、はぁ……どうも……」
『虚無』って、やっぱり伝説なんだなぁって、改めて思うんだ。
……あんなにすごい爆発を起こしたり、増えたエルフを一瞬で消したりするんだもん、やっぱり伝説、だよね。

「さて、引き続き、ギーシュ君」
「ふぇ!?」
連続で指されて、ギーシュは2度びっくりしていた。
「ブリミルの生涯……生まれてから死ぬまでの物語は?」
「は、はい!?」
「ブリミルは今、この世にはいない。何しろ6000年というカビも枯れ果てるような大昔の人さ!
 それなのに、その名が伝わるほどの大偉人。ならば、その生き様、死に様は君達の知るところでは無いのかな?」
「む?むむむ?ん~……んん?」
ギーシュは腕を組んで考え込んだっきりだ。
それだけ大昔の人なら、どうやって死んだか、とか忘れられてしまうんじゃないかなぁ……寂しい話だけど。
「そんなもん、伝わってないわよ!」
ルイズおねえちゃんがギーシュの代わりに答える。
「ほう?」
「始祖はその御顔すら今には伝わって無いけど、その御偉業はあまねく……」
顔も伝わって無いんだ……似顔絵とか、無いのかなぁ?
「なるほど、まさしく『神』同然の扱いか。舞台には顔は出さず声だけで十分だったわけだ……
 それじゃ気付かなかったのも無理は無いのかな。――どう思う、ビビ君?」
「……何が言いたいの?」
どう思う、と言われても、困ってしまう。
神様みたいな扱われ方をしているほど、ブリミルが偉いってことしか分からないんだけど……

「――英雄譚であれ、神話であれ、かつて地上に存在した者で今は亡き者ならば……
 それがどんな世界のどんな役であれ、必ず『生と死の物語』がつきまとうはずなのさ。
 人々はそれに涙し、喝采を送る物だからね!ましてや宗教として崇められる人物だ。
 その死はまさしく一大事件だろう?厚手のハンカチが必要な悲劇じゃないか」
なんとなく、分からなくも無い。
お芝居でも、誰かが死んでしまったら悲しいし、心に残る。
……命っていうのは、それだけで物語なんだなぁって思うんだ。
確かに、それだけ偉い人の死だったら、誰かが覚えていたりしても良さそうだなぁって思う。

「――僕がこの世界に来て、最初の使命は『ブリミルの化けの皮を剥ぐこと』……
 僕に似た男に頼まれてね。互いに異端と呼ばれても構わなかったのが幸いしてね!
 最初の疑問は、『何故ブリミルの死の有り様が伝わっていないか』だったのさ」
クジャに似た男……クジャを召喚したっていう人かな?
似てるってことは、クジャみたいなのがもう1人いるってこと?
……なんか、急に背筋が寒くなってしまう。

「――かつて、英雄と伝えられたならば、例え迫害されても普通に天寿を全うしても、
 その『死』は劇のクライマックス!僕が伝道者ならばこんな素晴らしいイベントは逃さないよ!」
クジャなら、確かに利用しそうだと思ってしまった。
……ガイアで、ダガーおねえちゃんのお母さんをそそのかしたのも、
ダガーおねえちゃんのお父さんの死につけこんでそうしたって、聞いた。
……悪い人の考え方なんだろうな、って思ってしまうんだ。誰かが死んだことを利用するなんて。

「そこから興味を持ってねぇ……調べていったのさ。ロマリアの地下にも潜ったし、『聖地』と呼ばれる墓所も行った。
 で……皆さま、どうぞご覧あれ!これこそがハルケギニアの祖である男の真の物語!」
クジャが大きく腕を振り上げて、恭しくその手をカード台に置いた。
そこには真っ黄色でボロボロの紙の山。
虫には食べられてないみたいだけど、かなり汚れているし、埃にまみれている。

「……本?」
「ただの紙の束じゃない?……随分古そうだけど」
「一般に伝わる伝承によると、始祖ブリミルは3人の子と1人の弟子に、『虚無』の力を与えたことになっている……
 虚無を伝えられた弟子としてフォルサテがいるが……しかし、それ以外にも弟子がいたそうでね」
クジャの言葉を半分ぐらい聞き流して、その紙の山を見る。
表紙みたいなところに、何か文字のようなものが書いてあるけど、ボクには読めそうになかった。
まだ、ハルケギニアの文字を勉強中だけど、その文字ともまた違う気がする。
「……何が書いてあるの……?」
「――読めない」
ギーシュも読めないみたいだ。
……普通のハルケギニアの文字じゃない、のかなぁ?
「ギーシュ、勉強してる?これ、『ゲルモニークの手記』ってしっかり書いてあるじゃない!」
「え、ルイズ、この文字が読めるのか!?」
その言葉に、ギーシュが驚く。
「何驚いてるのよ、普通の文字じゃ……あら?」
ルイズおねえちゃんは、今の今まで普通の文字が書いてあると思っていたみたいだ。
……そう思うぐらいに、すんなり読めてしまうってどういうこと?
「――ふふ。この可憐な姫君が、何故、この古の文字を読めるかは後でじっくり話そう……
 これはね、フォルサテ以外の弟子が書いた驚くべき手記さ。簡素に事実のみを書いてて詩的では無いけどね。
 さて、ここに何が書いてあるか、朗読劇と行こうか。では、読んでもらえるかな?」
クジャがボロボロの本を開く。
開いた中は、案外綺麗だった。
つやつや、とまではいかないけど、傷や埃は全然無い。
ルイズおねえちゃんは、首をかしげながらクジャの開いたページを朗読し始めた。

「……『我が師、ニダベリールのブリミル……4人の従者を引きつれて、ヴァリヤーグとの戦に臨めり。
    敵は数万、野蛮なる甲冑に身を纏いて、5を取り囲む……』」
「ヴァリヤーグ?」
なんか、モンスターみたいな名前だ。
ちょっと、強そうだなって思う。
「蛮族の名だろうね。まぁ野蛮なる集団だったことは間違いないよ。
 ……うん、なかなか美声だねぇ。もう少し感情をこめて、続きをお願いするよ」
クジャに『美声』って誉められたからかどうかは分からないけれども、
ルイズおねえちゃんは姿勢をもう一回ピシッと綺麗に整えて、はっきりと読み始めたんだ。

「……『敵の攻撃は苛烈なれど、神の両手はこれを耐え忍ぶ。盾は我が師を守り、笛は火竜をもって攻めた。
    やがて、神の盾の尽力により、万を超える長耳族の軍勢が加勢に』
 ……って!?え!?長耳って、まさか……」
「今なお恐れらるるエルフ、彼らだろうね。美しいハープの音がよく似合う孤高なる種族……」
「エルフが……味方!?」
ギーシュもルイズおねえちゃんも驚いている。
もちろん、ボクもだ。
エルフと、ハルケギニアの人って、昔から敵同士じゃ無かったの?

「ふふふ、おもしろくなってきただろう?だけどまだ見せ場じゃない……さぁ、続きを」
「……『やがて、神の頭脳の策により、残る1人の従者の操りし強大なる兵器が降臨す。
    “虚無”と呼びし我が師の力と恐るべき兵器によりヴァリヤーグを一掃された』……」
そこまでルイズおねえちゃんが読んだところで、クジャがそっと手を伸ばして制止した。
キリが良いところ、ってことみたいだ。
うーん……なんか、物語が分かったような分からなかったような……
「さて、エルフ退治という偉業は、実際はエルフと協調しての『ヴァリヤーグ討伐』であったことは良いかな?
 まやかしという霧がかかったまま、このお芝居の続きを見て欲しく無くてねぇ……」
「え、えっと、クジャさん?これが信じるに足る証拠は?」
ギーシュの疑問はもちろんだ。
これ、全部が全部、クジャの作った物語って疑っても問題無い。
……そうする意味はあんまり無さそうだけど……

「ロマリアの地下に封印されていた。厳重に、幾重にも防衛がしかれてね……
 都合が悪かったんだろうねぇ。ブリミル教を伝えた身としては!舞台裏は防ぎたいものさ!」
……都合が良いとか悪いとかは分からないけど、確かに、表紙がボロボロなのに中がこれだけ綺麗なのは、
ちゃんとした所でずっとずっと保存されていたからなんだろうなって思うんだ。
「まぁこの辺で偉業については良いだろう。じゃぁ次はいよいよブリミルの死に際についてだな。
 一人の男の終幕をご覧に入れましょう……虚無の姫君、次はこちらを読んでくれるかな?」
クジャはそう言って、『ゲルモニークの手記』の最後の方のページまで一気にめくった。

「……『一番弟子のフォルサテは、我が師が知る永遠の命を欲していた。
    私はそれを知りながら、彼を止むるに至らず』……永遠の命ぃ?」
読んでいる最中に、ルイズおねえちゃんが疑問の声を上げたんだ。
永遠の命?命に、永遠ってあるのかなぁ?
……誰かが覚えていてくれる限りって意味の『永遠』以外に……
「あるいは、『虚無』の魔法にそういうものがあったのかもしれないね。さぁ続きを」
さらっとクジャがとんでもないことを言った気がする。
『虚無』の魔法に、永遠の命を与えるものがある?
……ますます、とんでもないなぁ、虚無って……

「……『師からその術を盗むと、フォルサテは我が師を最早必要としなくなった。
    彼はかつてヴァリヤーグとの戦で用いた巨大なる兵器を操り、必要のない者達を滅ぼそうとした。
    この反乱により、神の頭脳と笛は死に、長耳族は我らマギ族を憎むようになった。
    しかしながら、お人よしの我らが師は、未だにフォルサテの謀反には気付いていなかった。
    そのことに、私とフォルサテはつけこんだ。
    神の盾を私が僻地へ連れている間に、フォルサテは我が師と残る従者をその手で』……」
「ずぇえええええ!?な、なんか話がトンデモない方向に……」
今度叫んだのはギーシュだ。
とんでもない。
本当の本気でとんでもない。
フォルサテって人が、ブリミルさんを殺した?
ブリミルさんがすごいってことを伝えたその人が?
……頭が痛くなりそうだった。

「……『私、ゲルモニークは懺悔しこれを記す。
    フォルサテの見せた力に目がくらみ、悪事に加担してしまったことを。
    よって、今ここで、フォルサテの肉体を滅ぼす方法を、彼の者を倒す術を彼女に教える』……彼女?」
「神の盾、ガンダールヴのことだね。登場人物は限られている」
……やっと、聞き覚えのある名前が出てきたと思う。
『ガンダールヴ』……ボクに刻まれたルーンの名前。
そっか。さっきから出てくる『神の盾』って、ガンダールヴのことだったんだ……
じゃぁ、他の、全部で4人の従者って、全部『虚無の使い魔』なのかなぁ?
「ぶっ!?ガンダールヴは女性だったのか!?」
ギーシュが驚いている。
うーん、確かに、武器を振り回すってイメージから言うと、なんとなく男の人を想像してしまいやすいかもしれない。
「……そうなの、デルフ?」
そういえば、って気付いて、デルフに聞いてみることにしたんだ。
デルフ、6000年ぐらい前から生きてるって聞くし、もしかしたら知ってるかもしれないって……
「ん?お、おう……ちょーいと曖昧な記憶が……そうだっけ……?」
デルフの声は、珍しいぐらいに小さかった。
何か、戸惑っているみたい。
……そういえば、デルフ、この話が始まってから珍しく無口だ……すぐに口を挟みそうなのに……

「……『夫を失った妻と、その子たちにもすまないことをしたと悔やむ。
    力に目がくらんだ己を悔やむ。そしてフォルサテを、我が師を殺すことに成功した男を悔やむ。
    成すべきことを成し、私はここに自分の罪を償うために自害する。
    英雄を殺した男よ、呪われたまえ!!以上をもって、アンドバリ村のゲルモニークの遺書とする』……」
最後のページまで読み切ったのか、ルイズおねえちゃんが顔を上げた。
その顔には、ギーシュと同じ困惑の表情が浮かんでいる。
……きっと、ボクも似たような顔をしているんだろうな、今……

「ふふふ、なかなかに衝撃的なことを書き連ねてくれただろう?衝撃のまま舞台は閉じ、観客は唖然とするばかり、さ!」
「『妻と、その子』って……えぇ!?」
「始祖ブリミルの愛しき妻子たちだろうねぇ。哀れ、彼らに最後の言葉をかけることなく、その身を散らすは悲劇なりっと……」
ブリミルとガンダールヴが夫婦だったっていうのも気になるけど、それ以上に気になることがあったんだ……
アンドバリ村の、ゲルモニーク……
「……アンドバリ……の指輪……」
偶然じゃないって、そう思ったんだ。

「そう、アンドバリの指輪――元々はフォルサテの命を絶つために作られたものなのさ」
死んだ人を甦らす指輪で、フォルサテを殺す?
どういうことなんだろう?
「……で、でも、そのあと、フォルサテはロマリアの祖となって……」
ギーシュが疑問を口に出す。
確かに、ガンダールヴが倒したんなら、フォルサテはその後にブリミルさんのことを皆に伝えられない……
「ガンダールヴの力をもっても、彼を完全に殺すことはできなかったようだねぇ」
……あれ?でも、もし倒されて無かったんだとしたら……
「……フォルサテって、6000年前の人でしょ?永遠の命ってことは……まだ生きているの?」
長生きしすぎだって思うんだ。
6000年もずっと生き続けるって……どんな気分なんだろう?
「さてさて!我らが黒幕の脚本はねぇ、本当に呆れるぐらい長丁場だったのさ!今からそれを……」


突然、世界が揺れた。
そう錯覚するぐらい、酷い揺れだったんだ。
「わぁ!?」
「きゃっ!?」
「な、なんだなんだ!?」
しっかり頑丈に床にくっついているはずのカード台やルーレット台がひっくり返った。
部屋の中が回転するカードみたいにシャッフルされる。
目が回りそうになりながら、ルイズおねえちゃんが無事なことに安心する。

「『クジャさん!大変です!前方より計器が振りきれるほどの衝撃波が……』」
部屋につながっていた金属の管から、ウェールズ皇子の声がした。
伝声管って言うんだよね?操縦室に繋がっているのかなぁ……

「――時間、か」
服についた埃をふりはらいながら、大事そうに『ゲルモニークの手記』を持って、クジャが苦々しげに言った。
「ど、どういうこと!?」
時間?何の?
「いよいよ黒幕が正体を見せ、終幕の刻がやってきたのさ!!さぁ、行くよ!」
そう言いながら、クジャが歩きだした。

ふと、窓の外を見る。
夜明け近いけどまだ真っ暗だ。
でも……
なんとなく、空気ごと歪んでいるような、そう思ってしまうほど、不気味な空だったんだ。


新着情報

取得中です。