あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズと無重力巫女さん-25



レコン・キスタの奇襲にニューカッスル城は混乱の渦中に叩き落とされた。
容赦ない砲撃に城壁はおろかその周囲にいた者達が巻き込まれた。
破壊された城壁の下敷きになる者や吹き飛ばされ壁に叩き付けられた者までいる。

もはやニューカッスル城には安全な場所と無傷な場所は存在しない。
レコン・キスタからの砲撃はまるで積み木の城を一気に崩すかのようにニューカッスル城を破壊していく。
その内大砲から発射された砲弾の一つが掘っ立て小屋の火薬貯蔵庫に直撃し、貯め込んでいた黒色火薬が大爆発を起こした。
明日の決戦にと急ごしらえで作られた貯蔵庫は、皮肉にもその火薬を持っていた王族派の者達に牙をむいた。
たちまちニューカッスル城の各所から煙と炎が上がり、遠慮無くニューカッスル城を赤色に染め上げていく。
時を見計らって城内に入ってきたレコン・キスタ軍の武装したメイジ部隊と無数の傭兵達が城に篭もっていた王族派の貴族達を容赦なく殺す。
やがてその行為がエスカレートし、抵抗してこない女子供達すらその毒牙に掛かりあの世へと召されていく。
正にその光景を四文字熟語に当てはめるなら「阿鼻叫喚」や「死屍累々」というものが相応しいであろう。

そして今、燃えさかる城内を一人の青年が走っていた。
この城に立て篭もっているジェームズ一世の息子、ウェールズ皇太子である。


火の手から逃れつつもウェールズはルイズ達がいた中庭の方へと向かっていた。
本当なら詰め所の方に行き敵が潜り込んでいたことを伝えたかったのだがもはやそうもいかない。
この状況だと詰め所の中には誰もいそうにないし、何よりもう何もかも終わりだ。時間は残り少ないのだ。
しかし、アルビオンの外からやってきたあの二人の少女だけは何としても逃がさなければいけない。
ウェールズはそう思いつつ中庭まであともう少しの時、ふと前方から誰かが走ってくるのが見えた。
一瞬だけ敵かと思ったが、すぐに相手が自分が捜していた内の一人であるルイズだという事がすぐにわかった。
武装した敵ではなく見知ったブラウス姿の少女の姿を見てウェールズは内心ホッとした。
「ミス・ヴァリエール!丁度良かった、今君を捜して―――ウッ!」
その瞬間、ルイズのタックルが見事ウェールズの腹に直撃し二人仲良く地面に倒れてしまった。
一体何事かと思いウェールズがルイズの顔を見ると、瞬時に何かあったのだと悟った。
涙を流しすぎて充血してしまった鳶色の瞳を持つルイズは仰向けに倒れているウェールズの胸の中で泣きじゃくっていた。
更には小さくて可愛い口で「私が弱かったから…弱かったから。」しきりにそんな事を呟いている。

手には貴族の命とも言われる杖を持っておらず、それらしいモノを腰に差してもいない。
ルイズの言葉を何も言わずに聞いている時、ふとウェールズはもう一人の少女がいない事に気が付いた。
「ミス・ヴァリエール。すまないがミス・レイムは一体何処に―――」
「おぉ、今日の僕は始祖ブリミルに見守られているようだ」
忘れようもない男の声が後ろから聞こえ、ウェールズは咄嗟に後ろを振り返った。
そこには、ルイズの魔法で用水路に吹き飛んだと思われていたワルド子爵がいた。
「ワルド子爵!?確か貴様は用水路に吹き飛んだはずでは…」
「確かに私は吹き飛んだ。だが始祖ブリミルは僕を守ってくれてるんだ」
ワルドは楽しそうに言うと腰に差していた杖を手に持った。
「でも悲しいかな。生きているのは良いのだが、果たしてこの状況で任務を達成できるかどうか…」
「任務だと…?レコン・キスタからのか…!」
ウェールズがぽつりと呟いた言葉にワルドは「ああ」と頷き話し始めた。
「僕がレコン・キスタの幹部達から言われた任務は次の内四つ…一つ目はルイズを我がモノにすることなのだが…これはもう無理だな」
そこまで言ったとき、すぐ近くでもの凄い爆発音と共に地面が揺れる。
ウェールズは泣き続けているルイズを抱いたまま辺りを見回すが、ワルドは気にせず喋り続けた。
「二つ目、アンリエッタが姫殿下がウェールズ皇太子に送った手紙を奪うこと。…まぁこれはもうすぐ達成できる」
そこまで言ったワルドは気を取り直すように二、三度咳をすると話しを再開した。
「…それから三つ目だ。ルイズの傍にいたレイムとかいう少女を捕まえることなのだが…生憎私が殺してしまった」
「何だと…?するとミス・ヴァリエールの近くにあの子がいなかったのは…」
ワルドの言葉にウェールズは目の前にいる男を強く睨み付けた。
霊夢の名前を聞いたルイズはというと途端に体が震え始め、それを見たワルドが追い打ちを掛けるかのように口を開く。


「ルイズ、自分を責める事はないさ。今の君はあの娘を助けられるだけの力が無かった。ただそれだけさ?
 だから君はあの娘が僕にやられた後も、本能に従いここまで逃げてこられたのさ。」

その言葉にルイズはキッとワルドを睨み付けた。
ワルドは、その瞳から溢れる感情を感じ取り笑顔になる。
ワルドは両腕を大きく広げ、ルイズに話し掛けた。
「その瞳だルイズ、それが人を強くさせる。もっと僕を憎むと―――ム!」
言い終える前に、いつの間にか呪文を唱えていたウェールズが「エア・ハンマー」を発動させた。
空気で出来た鎚が当たる前にワルドは瞬時に呪文を唱えて杖を振り、風の障壁を展開する。
結果ウェールズのエア・ハンマーをワルドの魔法が相殺し、強い衝撃波が生まれた。

「キャアッ!」

その衝撃波は不運にもルイズの小さな体を吹き飛ばした。
ウェールズはハッとした顔になり吹き飛ばされたルイズの方へと視線を向けた。
「ミス・ヴァリエール―――」
「そして最後の四つ目は……貴様の首だウェールズ!」
瞬間、隙アリと言わんばかりにワルドが「エア・ニードル」を唱えウェールズの元へと走り寄った。
咄嗟に気が付いたウェールズはその場でしゃがみ、ワルドの攻撃を回避する。
逆に隙を見せてしまったワルドのアゴにキックをお見舞いし、それは見事直撃した。
アゴに強力な一撃を貰ったワルドは勢いよく吹き飛び、背後にあった部屋へと吹っ飛んだ
部屋の中は炎で真っ赤に染まっており、たちまちの内にワルドの体が火に包まれた。
壮絶な悲鳴を上げてワルドはジタバタと火の中で藻掻き、すぐにピクリとも動かなくなってしまった。
それを見届けたウェールズはフゥ…。と溜め息をつくと自分の後ろで気を失っているルイズの方へと体を向けた。

「ミス・ヴァリエール。大丈―――――ぶ?」
その言葉を言い終える前に突如左胸に鋭い痛みを感じたウェールズは言葉を詰まらせてしまう。
かろうじて後ろへ振り向くと、そこには先程焼死したばかりのワルドが無傷で立っていた。
どうして?と言ったが口からは言葉の代わりに赤い血が出てきた。
ウェールズを刺したワルドは思いっきり杖を引き抜き、人差し指でウェールズの背中を軽く小突いた。
たったそれだけで、まるで糸が切れた人形のようにウェールズが地面に倒れた。
自分が成すべき事の内一つを終えたワルドは満面の笑みを浮かべたとき、丁度ルイズが起きあがった。
そして目の前でウェールズが胸から血を流して倒れているのを見て悲鳴を上げた。
「ウェールズ皇子!!」
「おやおやルイズ、あのまま気絶していれば彼の死に直面しなかったものの…」
ワルドの言葉にルイズは更なる罪悪感を感じ、それを誤魔化すかのようにワルドに向かって叫んだ。
「うるさいうるさい!アンタさえいなければみんな死ななかったのよ!」
しかしワルドは何を言うのかという表情になり、ルイズに話し掛ける。

ただしそれはルイズと向き合っている方の『ワルド』からの声ではない。
「僕の所為だと…それはひどい。ルイズ、二人が死んだのは君の所為なんだ」
ハッとした顔になり後ろを振り向いたルイズは驚いて目を見開いた。
なんと自分の後ろにもう一人のワルドがいたのだ、今自分と向き合っていたあの男が。
つまり今この場には二人のワルドがいるという事になる。
「君の中にある力がそうさせる。どんな人間でも未知の力の前では勝手に死んでゆくのさ」
そして今度は左がわにある窓から四人目のワルドがルイズの前に現れた。
連続して起こる出来事にルイズの頭も混乱し始める。
「そういう場合は、力を持つ人間を飼い慣らすか―――殺すかの二択だ」
そして五人目は自分の前にいる一人目のワルドの後ろから歩いてやってきた。
五人目を確認したルイズは、混乱しつつある頭の中からある風系統の呪文を思い出した。

―――『風』は遍在する。風の吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する。

三年生の教科書に載っていた説明文を思い出し、ルイズは思わず後ずさってしまう。
風系統が最強と呼ばれる原因を作った内の一つである魔法を前にしていることに。

それは、『風のユビキタス(遍在)』。
簡単に言えば、一度に幾つもの自分を作り出すことができる魔法である。


うつぶせになって倒れていた霊夢が目を開けたとき、まず自分がどこだか分からない空間にいる事を知った。
そして一通り見回した後、霊夢はポツリと一人呟いた。
「白は嫌いじゃないけど、この空間の造り主はちょっとやりすぎてるわね」
辺り一面真っ白で、そして不気味なくらいに静かなところだ。
ふと頭上を見上げるてみると、ポッカリと穴が空いていることに気がついた。
その穴からは無数の星と双つの月が浮かぶ夜空が見えた。
「でもま、案外その造り主は近くにいるかもねっ…と!」
とりあえずそう呟いて立ち上がろうとしたが体が動かず、仕方なく霊夢は倒れたまま辺りを見回した。
だだっ広い白色の空間には自分以外の者は見あたらない。

もう一度立ち上がろうと霊夢は体に力を入れるが動く気配はない。
悲しいことに、両手両足だけがジタバタとむなしく動くだけであった。
どうしようもない事が分かると霊夢は力を一気に抜き、思い出したかのようにこう言った。
「そういえば私、ワルドとか言う奴に胸を刺されて用水路に落ちたのよね…」
そこまで呟くと少し傷がどうなってるのか見たくて堪らなくなったが、すぐにその気は失せた。
首だけは動くが体や手足が動かないので確認することが出来ないからだ。
「…にしても、ここって何処なのかしら。冥界…ってわけじゃなさそうだし」
そんな事を呟いた瞬間、ふと前方から下駄の音が聞こえてきた。
カッカッカッ…。耳の奥にまでハッキリと聞こえてくる下駄の音に霊夢はじっと前を見据える。
すると突然目の前から赤い着物を羽織った小さな黒髪の女の子が現れた。
その子は下駄で走っていたためかつまずいて転んでしまい、霊夢の直ぐ傍で倒れた。

少女は倒れたまましばらくはピクリとも動かなかったが、やがてその小さな体がプルプルと震え始めてきた。
そして口からはすすり泣くような声も聞こえてくる。霊夢は思わず声を掛けようとした。
しかし、霊夢の口から言葉が出る前に上の方から何者かが少女に声を掛けた。

――――ほらほら、何を泣いているのかしら?もうすぐで空にたどり着けるわよ

胡散臭いが何処か優しい響きを持っている。そんな声を聞いた霊夢は一瞬だけ目を丸くした。
偶に神社にやってきては談笑したり酒を呑んだり、別に必要も無さそうな事を教えてくれる存在。
博麗の巫女と共に幻想郷を守っている゛彼女゛の声を聞いた少女は、泣くのをやめた。
そしてゆっくりと立ち上がり、ゴシゴシと目を擦った後に顔を上げ、遙か上にある穴から見える夜空を仰ぎ見た。

――――さぁ、立ったのなら飛び立ちましょう。貴方は飛べるのよ!

再び頭上から響いてきたその声に、少女は意を決してその場で勢いよくジャンプした。
そして地面から離れた少女の体はそのまま浮き上がり、段々と空へ登っていく。
今までよちよちと歩いていたひな鳥が空へ飛び立つかのように少女は飛んでいってしまい、穴をくぐってこの空間から出て行った。
誰の助けもなく、励ましの言葉だけで飛んでいった少女は自由を手にすることが出来たのだ。
その光景をじっと見つめていた霊夢の耳に、あの声が聞こえてきた。

―――そこの貴方も、立ったらどう?それとも一度やられて、もうやる気が起きないのかしら

「うっさいわね…」
まるで自分をバカにするかのような言い方に、霊夢は眉をしかめて呟いた。
そしてその言葉に負けて堪るかと、再び体に力を入れていれると。スクッと霊夢は立ち上がれた。
多大な疲労と、脇腹と右胸に深い傷があるのにも拘わらず、霊夢は立つことが出来た。
霊夢は空を飛んでいった少女と同じように顔を上げ、頭上の穴から見える夜空を見上げた。

―――例え地面に何度たたき落とされても立ち上がり、そして空へ飛び立つ。貴方は昔からそうでしょうに。霊夢?

とうとう自分の名を呼んだ゛彼女゛の言葉を合図に、霊夢は飛び上がった。
先程の少女のものとは比較にならないほどの速度で一気に上昇し、真っ白な空間から抜け出した。
霊夢がいなくなり、人っ子一人いなくなったその空間に゛彼女゛の声が響いた。

――――頑張りなさい霊夢。今の貴方は二つの宿命を背負っているのだから





五人のワルドに囲まれて動けないルイズの背中をワルドが唱えた『エア・ハンマー』が襲いかかってきた。
為す術もないルイズは先程のように吹き飛び、壁に叩き付けられた。
凄い勢いで壁に叩き付けられたのにも拘わらずルイズは意識を保っていた。気を失っていればどれ程良かったことか。
何せ杖もない、何の妙案も浮かばない、助けもない。こんな状況でどう希望を持てというのか。
ならばせめて起きあがらずに目を瞑って死んでいるふりでもしてみようかと思ったが、そうもいかなかった。
今度は別のワルドが唱えた『エア・カッター』がルイズの傍にあったイスを切り裂き、ルイズは反射的に立ち上がりその場から離れた。

燃えさかっている城内とは真逆に冷たい壁の感触を背中で感じたルイズは辺りを見回した。
五人のワルドが自分の方へ杖を向けている。何も守れない自分を相手に。
ちゃんと元の世界に返してやると約束した霊夢を見殺しにし、更にはウェールズ皇太子も殺してしまった自分を。
ほんの数十分前に起こった二つの出来事を思い返し、ルイズは無意識的に呟いた。
「どうしたのよワルド。どうして五人がかりで無力な私を殺そうとするのよ…そんなに私が怖いのかしら?」
言った瞬間、一体何を考えているんだ。とルイズの顔が青くなった。
そんなルイズに対して、五人いる内の真ん中にいるワルドが肩を竦めてこう言った。
「僕は警戒しているのさ。もしかしたら土壇場で君が僕と遍在達の攻撃をスイスイと避けるような事があったらお手上げだ」
ほぼ冗談のように聞こえるワルドの言葉を、このような状況なのにも拘わらずルイズは鼻で笑った。
「頭沸いてるんじゃないのアンタ?そんな事が出来るのはレイムぐらいしか――――…うぷ」
そこまで言ったとき、ルイズの頭の中で数十分前の出来事が蘇ってしまい。吐き気が彼女を襲った。
喉まで来そうな胃液を出すまいとルイズは口を押さえ、その場に座り込んでしまう。
頭と胸の中に、何か黒い雨雲のようなモヤモヤとした何かがルイズの体をじわりじわりと浸食していく。
その様子を、まるで喜劇を見るかのような楽しそうな表情で見つめていた五人のワルドが呪文を唱え始めた。『ライトニング・クラウド』だ。

辺りの空気が冷え始め、ルイズの敏感な肌を刺激する。
ワルド達が一撃必殺の呪文を唱えていることに気がついたルイズの目は絶望に染まっていた。
もう希望など無い。この先の自分にあるのは『死』だけだ。途端に目から一筋の涙が零れ、体が震え始める。

「……けて。」
無意識的に、ルイズの口から言葉が出てきた。
それは彼女の口から滅多に出ることはない、他者を必要とする悲願の声である。

よく偉い将軍や元帥は「戦場での死こそは貴族にとって至高の殉職」というが、あんなのは嘘だ。
彼らは今の自分のように現実の『死』に直面していないから綺麗事を言える。

「…て。たす……て。」
しかし、その言葉はちゃんとした形を成していない。
途切れている言葉など、意味を持たないのだ。

きっとどんな色々な意味で『酷い』人間でなければ目前の死に恐怖するだろう。
それこそが人間であり、人間と人外との違いである。人外は人を狩るから人間の気持ちなど知ったことではない。
「お願い…。………けて。」
しかし、『死』に怯えない人間というのも、存在することは存在する。
性格は様々ではあるが。彼らは皆一様に普通の人間とは違う宿命や、人生を歩んできた。
だからこそ多少のことでは怯えず。だからこそ普通の人間達からは敬遠され、忘れ去られる。
彼らはそれを回避するために人に迷惑を掛けたり人外達から守ってあげたり、時には取り返しのつかいない事をする。

「誰か… 助 け て ! 」 
何度か呟いた後、ようやくその言葉がちゃんとした形を持てたとき。
それに応えるかのように彼女を守る『盾』が再び主の元へと馳せ参じた。

呪文を唱え終えたワルド達が一斉に杖を振り下ろそうとした瞬間。『少女』がガラスのない窓から侵入してきた。
突然のことに反応が出来ず、窓側にいた遍在は『少女』が持っていた剣で杖の先端と首を切り落とされた。
首を切り落とされた窓側のワルドはフッと消え去り、ついで消えた遍在の傍にいた遍在の喉を細長い刀身が貫いた。
無念の叫び声を上げることが出来ずに三人目も消え去り、『少女』は剣を手放し左手に持っていた御幣の先を真ん中のワルドに向けた。
真ん中にいた本物のワルドは有り得ない。と言いたげな顔で咄嗟に呪文を中断し、その場に伏せた。
残り二人の遍在達も、本物のワルドと同じく有り得ない。と言いたそうな顔のまま御幣の先端から出た無数の菱形の物体にその体を包まれた。
瞬間、その菱形の物体がピカッと光ったかと思うと大爆発を起こして二人のワルドを消し飛ばし、本物のワルドは吹き飛ばされる。

吹き飛ばされたワルドは受け身を取ると素早く立ち上がり、目の前にいる『少女』に杖を向けて叫んだ。
「馬鹿なっ!何故生きてるっ!?何故――――」
「うっさいわね。起きたばっかりの私の耳に気に障る声を入れないで欲しいわ」
お世辞にも綺麗とは言えない言葉遣いでワルドにそう言った『少女』はお札を取り出し、投げ放った。
目にもとまらぬ速さで投げられたお札はワルドの服に貼り付いた。
そしてワルドが気づく前に『少女』は素早く呪文のような言葉を唱えた。
「―――生きている…のだっ!」
瞬間、貼り付いたお札が先程の弾幕のようにピカッと光り――――そして爆発した。
ほぼ零距離の爆発を喰らったワルドは口から血を吐きながら吹き飛び、『少女』が入ってきた窓から地面へと落ちていった。
その後、城内から響く悲鳴や杖と剣が交わる音に混じって下から嫌な音が呆然としているルイズと『少女』の耳に入る。
わずか一分間の間に起こった突然の出来事に、ルイズは驚いていた。
今目の前にいるのは、自分とほぼ同い年の黒髪少女であり、ちょっと変わった服を着ている。
左手に持っている御幣も、先程ワルドを倒したあのお札も、全てがハルケギニアとは違う別の世界で生まれた物である。
異世界など有り得ないが、それでも今目の前にいる少女はルイズ自身が呼び寄せたのだ。
そしてルイズは、かつてもこの様な光景を見たなー。と思いつつ、自分の目の前に立っている少女の名を呟いた。

「…レイム。」
その名前を呟いたとき、ルイズの胸と頭の中にあった変な気持ちが消え去った。
まるで太陽と青空を隠していた黒い雨雲が消え失せるかのように。

一度はワルドに右胸を貫かれ、生死の境をさ迷った霊夢の左手には刻まれた使い魔のルーンが光り輝いていた。
始祖ブリミルが従えていた四の使い魔の内の左手であり、始祖の盾と呼ばれた『ガンダールヴ』のルーンが。



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