あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの平面-5

 食堂に入るなり、私たちは一斉に奇異の目を向けられた。
 他愛ない世間話や自慢話などに花を咲かせていた者たちが皆、
 一瞬だけぴたりと言葉、そして動きを失った。

 しかし、ルイズとその使い魔が食堂内を一歩一歩と歩く内に、
 彼等の態度はじっくりと変わっていく。
 横目でこちらを覗きつつ、隣の者とくすくす笑い話を始めるのだ。
 それも、『わざと』ルイズに見えるように、聞こえるように。

 もちろん。全員が、と言うわけではない。
 中には呆けた馬鹿面で、口に食べかけたチキンを咥えたままルイズたちを
 見送る間の抜けた小太りの少年などもいた。

「…………」 

 ルイズは当てられる視線の全てを無視するように目を閉じ、
 先の見えない双眸で自分の席へと性格に歩を進めている。
 ピコピコ変な歩き方で追いかける使い魔の騒音すら、耳に入ってない様子だ。 

「…………ふぅ」

 席に着き、眼前に広がる料理を見る。
 料理は数十分前とほぼ同じ形で皿の上に並んでいた。
 半分ほど注がれているワインも、並べられた多種多様なフルーツも全て出された状態でそこにあり、
 唯一メインデッシュの大きな鶏肉に、一口ほど皮をかじった後が点のように張り付いているだけ。
 当たり前だ。この使い魔を探すために、ルイズは食前の祈りも半ばにここを飛び出したのだから。


 ぎしっと椅子を軋ませ、背もたれに圧し掛かる。
 たまらず、息が漏れた。ため息に近かった。

「(……疲れた。なんだか、この歩きなれた短い距離が、何千メイルにも思えたわ……)

 やはり、というか、予想していたことだったが、
 依然として注がれる他者の視線とは、こうも痛いものなのかとルイズは改めて思った。
 若干頬が赤く染まっているのは紛れもなく恥ずかしさゆえなのだろう。
 ちらっとテーブル上に一瞥をくれてやる。
 料理はもう、とっくに冷めていた。

                ~ゼロの平面5~


「(さあ……アンタはそれを食べるの……?)」 

 冷めた料理は食欲を誘わなかった。幸い、おなかは減っていない。
 それに、今ルイズの興味と関心を大いに誘うのは目の前の冷めた料理やその他大勢の視線でもなく、、
 床に広げられた薄いスープと硬いパンの乗せられた皿を食い入るように見つめては
 不思議そうに顔を傾ける真っ黒くて薄っぺらな使い魔だった。

 ――――このぺらぺらの使い魔は、果たして何を食べるのだろう? 

 今朝方に浮かんだ疑問が、今一度ルイズの頭をよぎっていた。


 コトッ……


 真っ黒の使い魔は興味無さ気に、それにしては音を立てないように、静かに皿を床に置いた。
 続いて硬いパンに手を伸ばすと、全くパンを見もせずに大きく開いた口に躊躇無く投げ入れる。
 一口だった。もむっと柔軟な音がしたかと思うと、使い魔は体をぶるっと震わせた(恐らく咀嚼だろう)が、それだけだった。

 使い魔がルイズと、テーブルの上の料理を順番に見上げた。
 だが、興味が無いのか? 直に視線を外すと風に飛ばされて机から落ちた紙のように、
 ぺちゃりとその場に倒れこんだ。 

『パンは食べた、でもスープは飲まなかった。』

 こっちの料理を見ても興味が無い(無さ気?)と言うことは、現状で出される料理に不満は無いらしい。
 ルイズは相変わらず自分の料理には手が進まなかったものの、
 頭だけはこの使い魔のことを知ろうと彼女なりにフル回転させていた。


「え!?」

 ルイズが皿を覗き込んだとき、一つの変化に気づいた。
 使い魔が手を付けてなかったはずのスープが、いつの間にか飲み干されていたのだ。 
 空となったボロ皿を、使い魔は口に付けてすらいないのに。
 一体いつ飲み干したのだろうか? 私に気づかれずに…………

 疑問を孕んだ視線を投げ掛けるも、
 使い魔は床にだらりと寝そべったまま、視線に気づくことさえない。
 しばらくしても、当然答えが返ってくるわけは無かった。

 朝食を終え――ルイズは殆ど食べていない――、ルイズは使い魔の足を掴んで引きずりながら教室に入った。
 すぐさま視界に飛び込んできたのは他の生徒たちと、そのそれぞれが有するファンタジー溢れる使い魔たち。
 ルイズのような変てこな使い魔はおらず、ちゃんと種族が確定しているものばかりだった。
 当然のごとくここでも注目を集め、早速何人かのお調子者軍団にからかわれた。
 悔しさに身を震わせながらも、いつか見返してやることを心に強く決め込む為に、
 ルイズはあえて、甘んじて言葉を受けいれていた。

 中には使い魔――ゲーム&ウオッチそのものに対する嘲笑やからかいもあったが、
 当の本人は何食わぬ顔……もとい、何食わぬ動きでお気楽にビ――ッと鳴いて見せた。


 ゲーム&ウオッチはきょろきょろと珍しいものを見るように、
 やや興奮気味で、せわしなく顔を左右に動かしている。
 誰かと目が合うたびにその誰かはクスクスと押し殺し気味に笑うのだが、
 ゲーム&ウオッチはそんなこと全く気にせず(ただ解ってないだけだろう)、
 ぶんぶんと大きく手を振って、そのたびにビ――ッと鳴いた。 
 そんなのんきな使い魔の様子を、ルイズは何も言わずに、頭を抱えて苦しそうに見ていた。

 教員が教室に入ると、ざわざわしていた空気がピタリと止んだ。
 やや癖のある歩き方で教壇の前に立つと、わざとらしい咳払いを一つする。

 シュヴルーズの、恐らく悪気の無い嫌味の後、授業が始まった。
 何時もなら真面目に受けるはずが、ルイズの視線は横目だったが相変わらず使い魔のほうに注がれていた。
 自分でも理由は解らない、しいて言うなら、こいつは目を離した隙に何をするのかわからないから、
 厳しく言うなら監視のために。


 この使い魔は自分に懐いている様なのだが、好奇心が強いのか、
 初めておもちゃ売り場につれてこられた子供みたいにやたらと自分勝手に動き回る。   
 事実、教室にくるまで何回逃げられたことか。掴んでいても、
 持ち前の細さと平べったさで気づかないうちに脱出しているのだ、こいつは。

 ……まぁ、動くたびにピコピコ鳴るので『気づかれない内に』ということは無かったのだが。

 ルイズはさらに食い入るように使い魔を見た。
 今のところ、おとなしく座っている……いや、正確に言うと、ぼーっとした顔でただじっと、
 しかし、シュヴルーズの説明、一挙手一挙動を顔で追っている。
 意外なことに、この使い魔は授業の内容にかなり興味を抱いているようだった。 
 真っ黒くて薄い、威圧感の欠片も無いはずの体から、見逃すまいとでも言出だしそうな無言の圧力をルイズは感じとる。

 自分にとってはこんな今更で、コレまでのおさらい同然の授業など、
 乗馬と同じくらいに得意分野だし、嘗てのおさらい等教科書に穴が開くほど勉強したのだ。
 聞かなくてもたいした問題にはならないので、特に気負いすることは無かった。


 が、しかし、それはあくまで個人の意見。
 教師にとって、授業をまともに聞かず、余所見ばかりしている生徒など
 罰を与えなければならない小憎たらしい存在でしかない。

「ミス・ヴァリエール! 私の授業はそんなに退屈ですか?
 それとも……いくら珍しいからと言って、そんなに自分の使い魔が気になりますの?」 

 ルイズはバッと顔を振り向かせ、頬を染めながら教壇上のシュヴルーズを睨む。
 同時に、周りからざわざわとした空気が漂い始めた。
 シュヴルーズは叱責のつもりで言ったのだろうが、
 周りの生徒の忍び笑いを誘うには十分すぎるほど嫌味でねちっこかった。
 お調子者どものつぼを刺激するのは、まぁ、あたりまえだろう。 

「は、はい……すみません」

 教師に逆らうわけにもいかず、目をきゅっと閉じ合わせたルイズは素直に謝った。
 しかし、そこで許してやるほど、教師と言うのはそう甘くない。

「余所見をする……ということは、授業の内容など聞くにも値しないと言うことですね? 
 よろしい! なら、この『錬金』をミス・ヴァリエール! あなたにやってもらいましょう」


 目が見開かれ、呆然とした顔になる。
 途端に周りの生徒たちが、先程以上に騒ぎ出し、
 とうとう声を上げて一方的に異論を唱え始めた。

「無茶です! 絶対いヤ、……ムチャ」
「先生!? 気は確かですか!!?」
「む、無理だ。ヤムチャがフリーザに戦いを挑むくらい……無謀だ」   
「『勇気』と『無謀』は違うぞ!! 先生!」
「『失敗』を恐れることは『進歩』への侮辱です! それ以上無粋な口を開くなら口に赤土を、
 それも私が直々に突っ込みますよ? ……さ、ミス・ヴァリエール!」

 しかし、シュヴルーズは意見を無視してルイズを手招きする。
 ルイズはルイズで覚悟を決めたらしく、椅子から立ち上がるとゆっくり教壇に向かい、
 その動きに対をなすように、生徒たちの大半は教室の出入り口に殺到した。
 まるで、地震災害でも起きたみたいにパニック状態で逃げ惑っている生徒たちを見て、
 流石のシュヴルーズも、ついでに言うならそれまで能天気に拍手していたゲーム&ウオッチも、
 何かがやばいことに感づき始めて顔を青ざめさせたのだが…………


 ――――――――もう、遅かった。


 石ころは見事に大爆発を巻き起こし、教室内にあった殆どのものを吹き飛ばした。
 何とか廊下に逃れることが出来た生徒たちは爆発に頭をかがめ耳を塞ぎながらも、
 自らの命がここにまだあったことに隣のものとだれかれかまわずに抱き合って喜んだ。

 残念ながら逃げ遅れた生徒たちは、ほぼ全員が頭等を打ちつけ気絶。
 ぶっちゃけ、それだけですんだのが奇跡だし、
 さらに近くにいた、というか殆どゼロ距離にいたシュヴルーズが、
 肌が少し焦げたのと、体のあちこちを打ちつけたことと、それによる気絶。
 爆心地にいたにも拘らず、それだけですんだのはこの日最高の奇跡だろう。
 別名を、不幸中の幸いという。

「あ、あはっ……失敗しちゃった……」

 真っ黒こげ一歩寸前の状態のルイズがてへっと謙虚気味に口を開く、
 たちまち口からもわっと黒い煙が出てきたが、一切気にはしなかった。

 ――というより、なんで無事なのだろうか?

 ボム兵にも匹敵するかもしれない爆発によって、
 縦のまま頭から壁に突き刺さったMrゲーム&ウオッチはきっとそう思ったに違いない。

 彼の体が力なくペロンとうなだれた後、
 壁の中からビィィィィィィッィヅ!! と濁った濁音が聞こえてきた。

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