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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第二十二話


 アンリエッタとゲルマニア皇帝の婚姻が発表された翌日、ルイズはオールド・オスマンから呼び出しを受け、学園長室に向かった。

 「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れは癒せたかな? 此度の件、姫殿下から伺ってた時には、どうなることかと思うたが、無事に帰ってきてくれてなによりじゃ。まあ、ワルド卿のことは残念なことじゃったが……なんにせよ、おぬし達のおかげで無事に同盟は締結され、トリスティンの危機は去ったのじゃ。来月には無事ゲルマニアで姫様の婚儀も行われることじゃろうて」

 ルイズが現れるとオスマンは立ち上がって迎え入れ、その労をねぎらった。

 「私は姫様の友人……いえ、貴族として当然のことをしただけです」

 そう答えて頭を下げるルイズをオスマンはしばらく黙って見ていたが、思い出したように懐から一冊の本を取り出し、ルイズに手渡した。

 「……これは?」
 「トスリテイン王家に代々受け継がれてきた始祖の祈祷書じゃよ」
 「そうですか……って、そんな重要な国宝がどうしてここに? しかも何故、私にお渡しになるんですか?」

 ルイズは驚きで手渡された『始祖の祈祷書』を思わず取り落としそうなりながらも、怪訝な表情でオスマンの顔を見つめた。

 「実はトリステイン王室では古来より、王族の結婚式の際に貴族より選ばれし巫女が『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠み上げる習わしがあっての。その巫女に姫様は、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃよ」
 「姫様が?」
 「その通りじゃ。巫女は式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠み上げる詔を考えねばならぬ。無論、草案は宮中の連中が推敲してくれるじゃろうが」
 「私が式の詔を……」

 急な事態に絶句するルイズに向かって、オスマンは更に話を進める。

 「ここだけの話だが、そなたの選出には諸侯の一部から反対の声があっての。しかし、姫はそれらの意見を一蹴してそなたを巫女に指名したのじゃ。これほど名誉なことはあるまいて」

 アンリエッタは周囲の意向を曲げてまで、幼い頃、共に過ごした自分を巫女に選んでくれたのだ。その好意を無碍にすることなどできようはずもない。

 「わかりました、謹んで拝命いたします」

 ルイズはきっと顔を上げてオスマンに答えると、受け取った『始祖の祈祷書』を大事そうに胸に抱える。そのルイズの様子にオスマンは目を細めて微笑んだ。

 「そうか、引き受けてくれるか。姫もさぞかし喜ぶじゃろう」


 その日の夕刻、静留は風呂に入っていた。風呂といっても学院の寄宿舎にある貴族用の大浴場ではなく、裏手にある使用人が使う掘っ立て小屋のような蒸し風呂である。

 「……こういうんも悪くないんやけど、やっぱ湯船が恋しいどすなあ」

 サウナの中、タオル一枚だけの格好でシエスタと並んで座った静留が額の汗をぬぐいながら呟く。

 「うふふ、静留お姉さまったら……でも、その気持ちは分かります。出来るならお湯に浸かりたいですよね」

 「あれ、シエスタさんは湯船のあるお風呂に入ったことあるん? ルイズ様から平民は蒸し風呂が普通や聞いたけど?」
 「私の故郷――タルブ村っていうワインが特産の村なんですが、温泉を利用した公衆浴場があるんですよ。だから、蒸し風呂はあまり慣れませんね」

 そうチロリと舌を出して答えるシエスタの様子に、静留はくすりと微笑むと、その手をつかんだ。たちまちシエスタの頬が真っ赤に染まる。

 「ほな、そろそろでましょうか。さすがにもう限界やわ」
 「は、はい、お姉さま」

 二人は蒸し風呂の外にある水浴び場へと移動すると、据えつけられた石のベンチに腰かけ、水桶に入った濡れタオルを取り出して火照った肌にびっしょりと浮かんだ汗を拭き始めた。

 「ふう、そよ風が心地ええわ」

 そう言って微笑む静留の姿をシエスタはうっとりと見つめる。

(夕日に輝く艶やかな栗色の髪、ハリのある綺麗なバスト、すらりと細いウエスト、きゅっと引き締まったヒップ……やっぱりシズルお姉様は素敵です)

 「あの、シエスタさん……そんなに見つめられると照れるんやけど」
 「えっと、熱さで少しのぼせたちゃったかもしれませんね。あ、そうだ、お背中お拭きしますね」

 急に静留から声をかけられたシエスタは慌てて言い繕うと、その背中を拭き始めた。数分後、一通り拭き終わったのを
見計らったような静留の「はな、お返し」という言葉に促され、シエスタは静留に背を向ける。

 「シエスタさんの肌はきめが細かくてええなあ」
 「そんな、静留お姉様こそ私より白くて綺麗じゃありませんか」
 「あらあら、それはお世辞でも嬉しいおすな――ん?」

 シエスタの背中を拭いていた静留は、その首筋に何かを見つけて手を止めた。それは1サント大の紅い焔のような形の痣――紛れもないHiMEの印だった。

 「シエスタさん、この首筋のとこにある痣やけど……なんかの怪我とかの跡どすか?」

 静留は内心の動揺を隠し、平静を装ってシエスタに問いかける。

 「ああ、この痣ですか? これは生まれつきです。家族では私と祖母だけにしかないんですけどね」
 「そうどすか……それにしてもシエスタさんはお婆はんが大好きなんやねえ」
 「はい。村の人たちからは『女傑』なんて呼ばれてましたけど、優しくて聡明だった祖母は私の誇りなんです」

どこか誇らしげなシエスタの答えを聞きながら、静留は思考を巡らせる。

 (一体、どういうことやろ? たまたまHiMEあるいはHiMEの因子を持つ人間がこの世界に迷い込んだいうことなんやろか。確かにシエスタさんの目や髪、肌の色は日本人と変わらんけど……)

 「あ、あの……」
 「はい、なんどすか?」

 静留は一旦思考をやめて遠慮がちに声をかけてきたシエスタの方へと顔を向けた。

 「実は来週か再来週にまとまった休暇をいただけることになったんですけど……えっと、その、よろしければシズルお姉様を村にご招待したいなあと……」

 「ええよ」
 「はい、みんな歓迎してくれると思います……って、いいんですか!?」

 てっきり断られると思っていたシエスタは静留の答えに驚きの声を上げた。

 「別にそんな驚かんでも。せっかくのシエスタさんのお招きや、断るなんてできますかいな。なにより温泉入るチャンスを逃すなんて勿体無い」
 「そうですか。でも、お姉様が傍を離れて遠出するのはミス・ヴァリエールがお許しにならないのでは?」
 「それならルイズ様も一緒に行くいうことにすればええ。何、きっと説得してみせますさかいに安心してや」
 「は、はあ……」

 (せっかくの二人っきりで距離を縮める作戦が……まあ、コブつきとはいえ、お姉様と一緒に里帰りが出来るだけでもよしとしましょう)

 シエスタは目論見が外れたものの、そう思い直すことにした。しかし、後にこの選択を悔やむことになるとは知らないシエスタであった。


 「ルイズ様、ただいま戻りました……何してはるんどすか?」

 入浴後、湯冷ましにのんびりと学院内を散歩した静留がルイズの部屋に戻ると、ルイズは椅子に腰掛け、机に置かれた古ぼけた大きな本をみつめて何かを考えごとをしていた。

 「ああ、これ? 姫様の結婚式用の詔よ。私、それを読み上げる巫女に選ばれたの」
 「へえ、そらまた大事なお役目もろうてしまいましたなあ」

 静留はそう言いながら背中から抱きつくようにしてルイズの手元を覗き込む。するとルイズは顔を真っ赤にしたかと思うと、静留の抱擁を解くように勢いよく立ち上がった。

 「……そ、そういえばもう夕食の時間ね。わ、私、食堂いってくるわ」

 ルイズはそう早口でしゃべると、まるで逃げ出すようにして部屋から飛び出していった。残された静留はしばらくそのままあっけにとられていたが、やがて目を閉じてため息をついてくすりと微笑む。

 「……おやおや、ちょっとルイズ様には刺激が強すぎたやろか。まあ、ああいう初心なとこが可愛いんやけど」
 「そうか? 帰ってきてからずっとあの調子だぜ、もう少し娘っ子は素直になった方がいいと思うがねえ」

 壁にたけかけられたデルフからやや呆れた口調で発せられた言葉に、静留はどこか苦笑するような表情を浮かべて答える。

 「素直にどすか……それはそれで困るんやけど」
 「なんでい、姐さんにしては歯切れ悪いじゃねえか。俺は難しいことはよくわからねえが、人間なんて他人からの好意を貰えてる間が華ってもんさ」
 「そうかもしれませんな……ほな、うちも厨房で食事いただいてきますわ」

 そういい残すと静留は部屋から出て行った。そして一人残されたデルフは静留の足音が遠ざかるのを確認するとぼそりと呟いた。

 「……やれやれ、姐さんがあの調子じゃ娘っ子も苦労するぜ」


 そして一夜明けて翌日の昼休み。学院の東側のアウストリ広場のベンチに腰かけ、ルイズは一生懸命に何かを編んでいた。

 いつもなら昼食後には静留にキュルケ、タバサを加えた四人でお茶を飲みながらのんびりとくつろいで過ごすのだが、夕べの一件を引きずって静留と一緒にいるのが気まずくなっていたルイズは、それを断ってここで編み物をすることにしたのだった。
 編み棒をせっせと動かしながら時折、手を休めてかたわらにある『始祖の祈祷書』を開き、結婚式の詔を考える。
 だが、しばらく白紙のページを眺めた後、ルイズは手にした祈祷書をぱたんと閉じて物憂げにため息をつく。

 「はぁ……何やってるんだろ、私……」

 そう呟いて手にした編み掛けた30サントほどの長さのマフラーを見つめる。それは下手の横好き程度の腕前のせいか、捻くれた毛糸のオブジェにしか見えず、ルイズは再びため息をついた。

 「おやおや、お茶もしないでどこへいったかと思えば……ルイズ、こんなとこで何してるのかしら?」

 キュルケはそう言ってどこか面白がるような表情を浮かべるとルイズの隣に座った。

 「朝食の時に話したでしょ、姫様の結婚式の巫女に選ばれたって。だから結婚式の詔を編み物しながら考えてるのよ。邪魔しないでくれるかしら」
 「邪魔って……あなた、八つ当たりもほどほどにしなさいよね。どうせシズルとなんかあったんでしょうけど」

 ルイズはキュルケの言葉にキッと顔を上げて言い返そうとするものの、図星だったので押し黙ってしまう。

 「……その顔は図星ね。何があったか知らないけど、悩みがあるなら相談に乗ってあげるわよ」

 キュルケはわざとらしい笑顔を浮かべてルイズに肩に手を回す。

 「……肩に手なんか置いて何企んでるの」
 「企むだなんて滅相もない。私たちの祖国は同盟国になったんですもの、これからは仲良くしましょうよ」
  「どういう理屈よ、それ」

 ルイズはジト目でキュルケを睨むが、そこではたと思いつく。キュルケは自他共に認める学院きっての恋愛の達人だ。ルイズからはいいかげんに見える彼女だが、相談事、特に恋愛に関しては皆の信用が厚い。

 (癪だけどここは恋愛の達人のアドバイスとやらを聞いてみようじゃないの)

 そう決断するとルイズはキュルケに夕べの一件を話して聞かせた。

 「……ねえ、今の話し聞かなかったことにして帰っていいかしら」
 「なによ、いまさら悩み聞くって言った自分の言葉を反故にする気?」
 「あのね、抱きつかれて逃げ出すとか相談以前の問題よ……初心すぎるにもほどがあるでしょ」
 「別に今まで抱きつかれたぐらいで逃げたことなんかないわよ。でも、夕べはシズルに抱きつかれた瞬間、胸の奥と頭がかぁっと熱くなって気がついたら逃げ出しちゃってたの……私、どこか病気なのかしら」

 不安そうに尋ねてくるルイズの様子に、キュルケは目をぱちくりさせた後、呆れたような表情を浮かべて口を開く。

 「安心なさいな、ルイズ。それは病気じゃなくて、あなたがシズルを本気で好きになったって証拠よ」
 「へっ……」
 「それ以外に何が原因があるっていうのよ。今までは自覚がなかったから平気でいられたんでしょうけど。まあ、正直に恥ずかしいから急に抱きついたりしないようにお願いして、徐々に慣れるしかないわねえ」
 「慣れるよう善処してみるわ」
 「なら、頑張りなさいな。ぐずぐずしてたらタバサやあのシエスタとかいうメイドに先越されちゃうわよ」

 キュルケはそう言い残すと学院のほうへと帰っていった。その後姿を見送った後、ルイズはぼそりと呟いた。

 「……そういえば、どうやってシズルに話を切り出せばいいのかしら」


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