洞窟の奥。行き止まりで足を止め、ルイズ達はコルベールの持つ地図をのぞき込んだ。
「ここのはずなのですが」
それによると、この突き当たりに何かがあるはずなのだが、左右と正面の壁で魔法の光に照らされた自分たちの歪んだ影が踊っているものの特に変わったものは見あたらない。
「では、これならどうでしょう」
コルベールが自分の杖の先にある魔法の明かりを消す。
それでも周りが真っ暗になることはない。
キュルケとタバサもまた自分たちの杖の先に明かりを灯しているからだ。
魔法の明かりの代わりにコルベールはディティクトマジックを唱える。
杖を振り、やや右の前で止めた。
「このあたりに何かあるようですな」
と言われてもルイズには変わったものは見えない。
ただの岩壁が行く手をふさいでいるだけだ。
「ふむ、これは困りましたな」
壁を杖で叩いていたコルベールは振り向くと肩をすくめた。
「ここに扉があるようなのですが魔法で隠されているようですな。しかも封印までされている」
「なら、先生。僕にやらせてください」
「そういえば、君の系統は土でしたな。やってみてください」
岩壁に対して何かをするのなら土の系統のメイジが一番だ。
コルベールが怪しいと言った壁の前に立ち、ギーシュは薔薇の杖を振りながら高らかに呪文を唱える。
別に大した呪文ではないのだが、ことさら身振り手振りも大きく抑揚も大きい。
そして、これまた大げさにポーズまでつけて薔薇を壁に向けた。
「あれ?」
だが何も起こらない。
「何よ、失敗したの?」
「そんなはず無いじゃないか!君じゃあるまいし」
むきになったギーシュは杖をめちゃくちゃに振り回して魔法を唱えるが、それでもどうにもならない。
「この、この、この!」
岩壁はまったく形を変えず音一つたてない。
「見てのとおり学院の宝物庫とは言わないまでもかなり強力な魔法がかけられています」
「先生でも無理なんですか?」
お宝の入手に関わるせいか、キュルケの声は少しばかり熱がこもっている。
「難しいですね。スクウェアのメイジに頼めば時間をかけて開けてくれるかもしれませんが、それでは費用がかかってしまって私には……」
スクウェアのメイジを雇うのは安い話ではない。
コルベールに持ち合わせがないのは、授業にたびたび持ってくる怪しげな機械につぎ込んでいるんだろうなと想像がつく。
「それは……困りましたね」
キュルケならその費用を捻出できるだろうが難しい顔をしている。
ただし、こっちはお宝の売却で利益が出るかどうかの方を考えているに違いない。だって成り上がりのゲルマニア貴族だから!
ルイズも今はあいにく手持ちのお金はそんなに多くない。
なら他に方法はないかと考えてみたがどうにも思いつかない。
「ねえ、タバサは何か考えない?」
と聞こうとしたがタバサは近くにいない。
左手の壁を魔法の光で照らしてじっと見ている。
「なにかあるの?」
タバサの肩越しに見ていると壁に何か模様が彫り込まれていた。
なんの模様かと思ってよく見ると模様ではなく、文字のように思える。
といってもルイズの知っているどんな文字とも似ていない。
やたら角張って、複雑で、絵のようにも見える文字だ。
「えーと、どれどれ」
さっきまで静かだったベルが割り込んでくる。
そういえばお宝探しに真っ先に出発したのはベルだった。
「佐々木武雄ここに鍵を記す」
「は?なにそれ」
「ここにそう書いてあるのよ」
「読めるの?」
「読めるわよ」
「何で?」
「知ってるからよ」
それは当然だが他に説明のしかたがないものだろうか。
「他には何か書いていないのですか?」
ルイズ達の声が聞こえたのか、みんなが文字の前に集まってくる。
それに気をよくしたのかベルは文字を指さしながらさらに読み進めた。
「ここのはずなのですが」
それによると、この突き当たりに何かがあるはずなのだが、左右と正面の壁で魔法の光に照らされた自分たちの歪んだ影が踊っているものの特に変わったものは見あたらない。
「では、これならどうでしょう」
コルベールが自分の杖の先にある魔法の明かりを消す。
それでも周りが真っ暗になることはない。
キュルケとタバサもまた自分たちの杖の先に明かりを灯しているからだ。
魔法の明かりの代わりにコルベールはディティクトマジックを唱える。
杖を振り、やや右の前で止めた。
「このあたりに何かあるようですな」
と言われてもルイズには変わったものは見えない。
ただの岩壁が行く手をふさいでいるだけだ。
「ふむ、これは困りましたな」
壁を杖で叩いていたコルベールは振り向くと肩をすくめた。
「ここに扉があるようなのですが魔法で隠されているようですな。しかも封印までされている」
「なら、先生。僕にやらせてください」
「そういえば、君の系統は土でしたな。やってみてください」
岩壁に対して何かをするのなら土の系統のメイジが一番だ。
コルベールが怪しいと言った壁の前に立ち、ギーシュは薔薇の杖を振りながら高らかに呪文を唱える。
別に大した呪文ではないのだが、ことさら身振り手振りも大きく抑揚も大きい。
そして、これまた大げさにポーズまでつけて薔薇を壁に向けた。
「あれ?」
だが何も起こらない。
「何よ、失敗したの?」
「そんなはず無いじゃないか!君じゃあるまいし」
むきになったギーシュは杖をめちゃくちゃに振り回して魔法を唱えるが、それでもどうにもならない。
「この、この、この!」
岩壁はまったく形を変えず音一つたてない。
「見てのとおり学院の宝物庫とは言わないまでもかなり強力な魔法がかけられています」
「先生でも無理なんですか?」
お宝の入手に関わるせいか、キュルケの声は少しばかり熱がこもっている。
「難しいですね。スクウェアのメイジに頼めば時間をかけて開けてくれるかもしれませんが、それでは費用がかかってしまって私には……」
スクウェアのメイジを雇うのは安い話ではない。
コルベールに持ち合わせがないのは、授業にたびたび持ってくる怪しげな機械につぎ込んでいるんだろうなと想像がつく。
「それは……困りましたね」
キュルケならその費用を捻出できるだろうが難しい顔をしている。
ただし、こっちはお宝の売却で利益が出るかどうかの方を考えているに違いない。だって成り上がりのゲルマニア貴族だから!
ルイズも今はあいにく手持ちのお金はそんなに多くない。
なら他に方法はないかと考えてみたがどうにも思いつかない。
「ねえ、タバサは何か考えない?」
と聞こうとしたがタバサは近くにいない。
左手の壁を魔法の光で照らしてじっと見ている。
「なにかあるの?」
タバサの肩越しに見ていると壁に何か模様が彫り込まれていた。
なんの模様かと思ってよく見ると模様ではなく、文字のように思える。
といってもルイズの知っているどんな文字とも似ていない。
やたら角張って、複雑で、絵のようにも見える文字だ。
「えーと、どれどれ」
さっきまで静かだったベルが割り込んでくる。
そういえばお宝探しに真っ先に出発したのはベルだった。
「佐々木武雄ここに鍵を記す」
「は?なにそれ」
「ここにそう書いてあるのよ」
「読めるの?」
「読めるわよ」
「何で?」
「知ってるからよ」
それは当然だが他に説明のしかたがないものだろうか。
「他には何か書いていないのですか?」
ルイズ達の声が聞こえたのか、みんなが文字の前に集まってくる。
それに気をよくしたのかベルは文字を指さしながらさらに読み進めた。
天にかかる赤い月の下、闇の眷属が現れる
世界を侵し、破壊する魔物を失われた魔法の力で倒す者達
それは──
世界を侵し、破壊する魔物を失われた魔法の力で倒す者達
それは──
最後の文字を指で弾き、ベルはそこで口を閉じる。
「続きは?」
「無いわよ。ここで終わりね」
だとすればやけに中途半端だが、コルベールは1人手を打ち合わせて納得していた。
「なるほど、つまりそこに続く言葉が封印を解く鍵になっているのですね」
それならルイズにも納得できる。
だが、鍵となる言葉がなんなのかわからない。
夜になれば上ってくる二つの月の内、片方は赤色だから、赤い月というのはそれのことなのだろう。
だったら魔物とは何か。
普通、魔物や悪魔と言えばルイズ達はエルフを想像するがエルフが出てくるのはなにも夜に限ることではない。
エルフとの戦争はむしろ昼間に行われていた。
「そういうこと。ここの答えはね……」
悩むルイズの前を横切って、扉があるとおぼしき壁の前にタバサが立った。
「なにか心当たりでもあるのですか?」
「え?」
タバサはこくりとうなずき、杖を上げて壁を照らす。
「世界で一番魔物退治の逸話がある人が答えだと思う」
「ほう?」
首をかしげるコルベールを無視して、タバサはぼそりと答えを口にした。
「イーヴァルディの勇者」
イーヴァルディの勇者は平民の間で人気のある物語の主人公である。
「いや、だからね」
その中には魔物退治の逸話もあり、人気の主人公だけあってその数は群を抜いて多い。
「……」
しかし鍵となる言葉ではないのか壁にはまったく変化はない。
タバサは杖をおろし、いつもと変わらぬ無表情で場所を開けた。
とは思ったが実は違うらしい。
「タバサ、そんなにしょんぼりしないでよ。元気だしなさい」
キュルケにはタバサの微妙な表情の変化がわかるのか、励ましの声をかけている。
「だから今度は私がやるから見てなさい」
「ミス・ツェルプストーも何か心当たりがあるのですか?」
「ここは考えるとこじゃなくって……」
敵討ち、というわけでもないのだろうが今度はキュルケが壁の前に立つ。
「魔物を退治する逸話が多いのはイーヴァルディの勇者だけではありませんわ。そして、この〈失われた魔法〉というのは〈虚無〉のことですわ。つまり……」
ほうほうと聞き入るコルベールを尻目に、キュルケは高らかに答えを口にした。
「始祖ブリミル」
始祖ブリミルもまた魔物退治の逸話に事欠かない人物である。
イーヴァルディの勇者ほど多くないのは教会に認められない物語を口にすれば異端と認定されてしまうからであろうか。
「……」
しかし鍵となる言葉ではないのか壁にはまったく変化はない。
「ま、だろうな。あいつ、魔物退治の専門家ってわけじゃねえし」
「じゃあ、あんた答えわかるの?」
「しらねえ」
デルフリンガーはぼやくだけのようだ。
なら次は私が、と挑戦しようと思ったがルイズにはまったく答えが思いつかない。
赤い月、魔物退治、失われた魔法。これらの言葉が頭の中でぐるぐる回るがそれはいっこうに形を成そうとはしなかった。
「ルイズ!!」
「いたたたっ!」
ベルの声がいつになく強い。
おまけに耳を思いっきり引っ張られる。
「なによ!いきなり」
「だから、私が知ってるんだって。その答え」
「……なら早く言いなさいよ」
「言おうとしてたわよ!さっきから」
そういえば、さっきから何か言っていたような気がする。
具体的には行頭を一つ下げたところで。
考えるのにいっぱいいっぱいで気付いてなかったけど。
「なるほど。そういうことでしたか」
と、コルベールはしきりに納得したというようにうなずく。
「この扉の封印の鍵を示す文を何故異国の文字で残したかを考えれば良かったのですよ。
つまり、同国人にこの中に隠した物を渡したかったのですな。そうなれば鍵となる言葉も当然異国の物になるわけです。
ならばこの場でその答えを知りうるのは、この文字が読めるミス・ゼファー以外にはいません。
いやはや、恥ずかしながら気付きませんでした」
「そうそう、それでいいのよ。なのにみんな変なところに食いついて必死になって考えちゃって。どうしようかと思ったわよ」
言われてみればその通りだが、あれだけ思わせぶりに書いていれば考えてしまうのが人の性という物である。
ベルはキュルケに変わり、壁の前に立つ。
壁を見据えて答えを口にした。
「ウィザード」
それは正しく鍵となる言葉だった。
ただの岩壁だと思っていたものに薄い光が浮かび上がる。それが徐々に消えていくと、長い通路の姿がルイズ達の前に姿を見せた。
通路の奥から一瞬だけ風が顔に吹き付けてくる。
そのにおいは洞窟の空気とはわずかに違い、この通路が長い間封印されていた証拠を伝えているように思えた。
「さあ、行きましょう」
ベルがいつもの何か企むような笑みを浮かべ、芝居気たっぷりに奥にルイズ達を誘っていた。
「続きは?」
「無いわよ。ここで終わりね」
だとすればやけに中途半端だが、コルベールは1人手を打ち合わせて納得していた。
「なるほど、つまりそこに続く言葉が封印を解く鍵になっているのですね」
それならルイズにも納得できる。
だが、鍵となる言葉がなんなのかわからない。
夜になれば上ってくる二つの月の内、片方は赤色だから、赤い月というのはそれのことなのだろう。
だったら魔物とは何か。
普通、魔物や悪魔と言えばルイズ達はエルフを想像するがエルフが出てくるのはなにも夜に限ることではない。
エルフとの戦争はむしろ昼間に行われていた。
「そういうこと。ここの答えはね……」
悩むルイズの前を横切って、扉があるとおぼしき壁の前にタバサが立った。
「なにか心当たりでもあるのですか?」
「え?」
タバサはこくりとうなずき、杖を上げて壁を照らす。
「世界で一番魔物退治の逸話がある人が答えだと思う」
「ほう?」
首をかしげるコルベールを無視して、タバサはぼそりと答えを口にした。
「イーヴァルディの勇者」
イーヴァルディの勇者は平民の間で人気のある物語の主人公である。
「いや、だからね」
その中には魔物退治の逸話もあり、人気の主人公だけあってその数は群を抜いて多い。
「……」
しかし鍵となる言葉ではないのか壁にはまったく変化はない。
タバサは杖をおろし、いつもと変わらぬ無表情で場所を開けた。
とは思ったが実は違うらしい。
「タバサ、そんなにしょんぼりしないでよ。元気だしなさい」
キュルケにはタバサの微妙な表情の変化がわかるのか、励ましの声をかけている。
「だから今度は私がやるから見てなさい」
「ミス・ツェルプストーも何か心当たりがあるのですか?」
「ここは考えるとこじゃなくって……」
敵討ち、というわけでもないのだろうが今度はキュルケが壁の前に立つ。
「魔物を退治する逸話が多いのはイーヴァルディの勇者だけではありませんわ。そして、この〈失われた魔法〉というのは〈虚無〉のことですわ。つまり……」
ほうほうと聞き入るコルベールを尻目に、キュルケは高らかに答えを口にした。
「始祖ブリミル」
始祖ブリミルもまた魔物退治の逸話に事欠かない人物である。
イーヴァルディの勇者ほど多くないのは教会に認められない物語を口にすれば異端と認定されてしまうからであろうか。
「……」
しかし鍵となる言葉ではないのか壁にはまったく変化はない。
「ま、だろうな。あいつ、魔物退治の専門家ってわけじゃねえし」
「じゃあ、あんた答えわかるの?」
「しらねえ」
デルフリンガーはぼやくだけのようだ。
なら次は私が、と挑戦しようと思ったがルイズにはまったく答えが思いつかない。
赤い月、魔物退治、失われた魔法。これらの言葉が頭の中でぐるぐる回るがそれはいっこうに形を成そうとはしなかった。
「ルイズ!!」
「いたたたっ!」
ベルの声がいつになく強い。
おまけに耳を思いっきり引っ張られる。
「なによ!いきなり」
「だから、私が知ってるんだって。その答え」
「……なら早く言いなさいよ」
「言おうとしてたわよ!さっきから」
そういえば、さっきから何か言っていたような気がする。
具体的には行頭を一つ下げたところで。
考えるのにいっぱいいっぱいで気付いてなかったけど。
「なるほど。そういうことでしたか」
と、コルベールはしきりに納得したというようにうなずく。
「この扉の封印の鍵を示す文を何故異国の文字で残したかを考えれば良かったのですよ。
つまり、同国人にこの中に隠した物を渡したかったのですな。そうなれば鍵となる言葉も当然異国の物になるわけです。
ならばこの場でその答えを知りうるのは、この文字が読めるミス・ゼファー以外にはいません。
いやはや、恥ずかしながら気付きませんでした」
「そうそう、それでいいのよ。なのにみんな変なところに食いついて必死になって考えちゃって。どうしようかと思ったわよ」
言われてみればその通りだが、あれだけ思わせぶりに書いていれば考えてしまうのが人の性という物である。
ベルはキュルケに変わり、壁の前に立つ。
壁を見据えて答えを口にした。
「ウィザード」
それは正しく鍵となる言葉だった。
ただの岩壁だと思っていたものに薄い光が浮かび上がる。それが徐々に消えていくと、長い通路の姿がルイズ達の前に姿を見せた。
通路の奥から一瞬だけ風が顔に吹き付けてくる。
そのにおいは洞窟の空気とはわずかに違い、この通路が長い間封印されていた証拠を伝えているように思えた。
「さあ、行きましょう」
ベルがいつもの何か企むような笑みを浮かべ、芝居気たっぷりに奥にルイズ達を誘っていた。
「ねえ、ベル」
封印の解けた通路に入っていくみんなを見ながら、ルイズはちょっと気になることを聞いてみた。
「あのウィザードって作り話よね」
今までベルがいたという国についてはあまり気にしてこなかったし、ベルも話そうとはしなかった。
それが今になって、ここにベルの国の文字を見て少し興味が出てきたのだ。
「あ、あれ?本当よ」
「ええ!?じゃ、じゃあ、もしかしてエルフがいるような国なの?」
「何でエルフになるのよ」
「魔物って言ったらエルフでしょ」
「全然違うわよ」
東方にはハルケギニアとは違った文明があるという。
もしかしたら、そっちの方では魔物とか悪魔がエルフのことを指さないのかもしれない。
「だったら、エルフ以外の魔物がいるの?」
ベルは少し考えて答えた。
「うじゃうじゃいるわね」
「えええっ!」
ルイズはエルフ以外の魔物、というのを考えてみる。
といっても現実の魔物なんて思いつかないので、御伽話に出てくるような魔物がうじゃうじゃいるところを考えてみた。
かなり怖い。
「もしかして、町中にもぞろぞろ出るの?」
ベルはまた少し考えて答える。
「町中には……そんなにでないわね。どうどうとそんなにたくさん出るのは難しいし」
なるほど。
おそらく街の外にいる魔物がたびたび襲撃してくるのだろう。
そう考えると世界を破壊する魔物というところがわかってくる。
「で、ベルってもしかしてウィザード?」
刻まれていた文の魔法を使って魔物を倒すというとこを聞いて思いついた。
ベルも魔法を使うしもしかしたら、と考えたわけだ。
「私はウィザードじゃないわよ」
「そうなんだ」
「関係者だけど」
「どんな?」
ベルは三度考えて答える。
「魔物をこー、操って世界を破壊するウィザードの敵っていう関係者」
「はいはい。そういうことは言わないの」
ここで話は打ち切りになる。
ベルがこんな嘘をつき始めたら、からかわれるばかりなのは目に見えている。
だいたいベルだって人間なのだ。町を破壊したら困る張本人の1人ではないか。
それなのに魔物と一緒になって町を破壊するわけがない。
「……そっか」
ルイズは嘘の混じった話から、ベルが故郷ではどんな人間だったのか考えてみた。。
所作や魔法から考えてベルが貴族というのはあり得る。
だとしたら自分が魔王だ、世界を破壊するだとうそぶくのは何故か。
きっとベルの家は街を魔物から守る重要な役に就いているのだろう。
そして親と折り合いが悪くて反発してるのではないだろうか。
──それであんな嘘を言ってるのね。やっぱり、見た目通り子供ね。
それなら故郷から遠く離れたトリステインに召喚されて、連絡までできるのに帰ろうとする様子がないのもうなずける。
帰りたくないのだろう。
ルイズはこの推理が当たっているか、ベルに問いただそうとしてやめた。
だって、人をからかいだしたベルが本当のことを言うはず無いのだから。
封印の解けた通路に入っていくみんなを見ながら、ルイズはちょっと気になることを聞いてみた。
「あのウィザードって作り話よね」
今までベルがいたという国についてはあまり気にしてこなかったし、ベルも話そうとはしなかった。
それが今になって、ここにベルの国の文字を見て少し興味が出てきたのだ。
「あ、あれ?本当よ」
「ええ!?じゃ、じゃあ、もしかしてエルフがいるような国なの?」
「何でエルフになるのよ」
「魔物って言ったらエルフでしょ」
「全然違うわよ」
東方にはハルケギニアとは違った文明があるという。
もしかしたら、そっちの方では魔物とか悪魔がエルフのことを指さないのかもしれない。
「だったら、エルフ以外の魔物がいるの?」
ベルは少し考えて答えた。
「うじゃうじゃいるわね」
「えええっ!」
ルイズはエルフ以外の魔物、というのを考えてみる。
といっても現実の魔物なんて思いつかないので、御伽話に出てくるような魔物がうじゃうじゃいるところを考えてみた。
かなり怖い。
「もしかして、町中にもぞろぞろ出るの?」
ベルはまた少し考えて答える。
「町中には……そんなにでないわね。どうどうとそんなにたくさん出るのは難しいし」
なるほど。
おそらく街の外にいる魔物がたびたび襲撃してくるのだろう。
そう考えると世界を破壊する魔物というところがわかってくる。
「で、ベルってもしかしてウィザード?」
刻まれていた文の魔法を使って魔物を倒すというとこを聞いて思いついた。
ベルも魔法を使うしもしかしたら、と考えたわけだ。
「私はウィザードじゃないわよ」
「そうなんだ」
「関係者だけど」
「どんな?」
ベルは三度考えて答える。
「魔物をこー、操って世界を破壊するウィザードの敵っていう関係者」
「はいはい。そういうことは言わないの」
ここで話は打ち切りになる。
ベルがこんな嘘をつき始めたら、からかわれるばかりなのは目に見えている。
だいたいベルだって人間なのだ。町を破壊したら困る張本人の1人ではないか。
それなのに魔物と一緒になって町を破壊するわけがない。
「……そっか」
ルイズは嘘の混じった話から、ベルが故郷ではどんな人間だったのか考えてみた。。
所作や魔法から考えてベルが貴族というのはあり得る。
だとしたら自分が魔王だ、世界を破壊するだとうそぶくのは何故か。
きっとベルの家は街を魔物から守る重要な役に就いているのだろう。
そして親と折り合いが悪くて反発してるのではないだろうか。
──それであんな嘘を言ってるのね。やっぱり、見た目通り子供ね。
それなら故郷から遠く離れたトリステインに召喚されて、連絡までできるのに帰ろうとする様子がないのもうなずける。
帰りたくないのだろう。
ルイズはこの推理が当たっているか、ベルに問いただそうとしてやめた。
だって、人をからかいだしたベルが本当のことを言うはず無いのだから。
「ところでルイズ。今度は私が聞いていい?」
ルイズが一通り思考を終えると、今度はベルが聞いてきた。
「なによ」
「入り口の封印なんだけど」
「それがどうしたのよ」
「ディスペル使えば早かったんじゃない?」
「あ……」
言われてみればその通り。ルイズには解呪の魔法がある。
今更試しようがないが、魔法の封印を解除できた可能性は十分にある。
鍵となる言葉を考えるのに必死ですっかり忘れていた。
「ま、初心者にはよくあることよ。自分の使える魔法を忘れるなんてのは」
「あるの?」
「あるのよ。で、事が終わった後に気付くのよ。あれを使っておけば簡単に解決できた、て」
「そ、そうなんだ……」
どうやらそういうものらしい。
「次は忘れないでね」
まったくその通り。
珍しくベルから実用性のある言葉を聞いたような気がする。
ルイズは自分の魔法をもう一度、心にしっかり刻みつけた。
もう使い忘れないように。
ルイズが一通り思考を終えると、今度はベルが聞いてきた。
「なによ」
「入り口の封印なんだけど」
「それがどうしたのよ」
「ディスペル使えば早かったんじゃない?」
「あ……」
言われてみればその通り。ルイズには解呪の魔法がある。
今更試しようがないが、魔法の封印を解除できた可能性は十分にある。
鍵となる言葉を考えるのに必死ですっかり忘れていた。
「ま、初心者にはよくあることよ。自分の使える魔法を忘れるなんてのは」
「あるの?」
「あるのよ。で、事が終わった後に気付くのよ。あれを使っておけば簡単に解決できた、て」
「そ、そうなんだ……」
どうやらそういうものらしい。
「次は忘れないでね」
まったくその通り。
珍しくベルから実用性のある言葉を聞いたような気がする。
ルイズは自分の魔法をもう一度、心にしっかり刻みつけた。
もう使い忘れないように。