あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

確率世界のヴァリエール-06


 彼(女)はカオスの伝導体
 彼(女)は世界の特異点

 確率世界の彼(女)の中で
 虚無〈ゼロ〉と無限は等価となって
 眠れる分岐が目を覚ます



 確率世界のヴァリエール
  - Cats awaking the Box! - 第六話



テーブルを挟んで椅子に腰掛けた少女が二人。
両手をくねらせ猫耳を立てて、ルイズが喜色満面に黄色い声を上げる。
「こんな下賎な場所へお越し頂けるなんて、姫殿下!
 このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、
 光栄の極みに御座いますわ!!」
「そんな、ルイズ・フランソワーズ。
 そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい。
 それはそうと、、、」
アンリエッタが部屋のすみをちらりと見る。

「もったいないお言葉ですわ! 姫殿下!」
「昔馴染みの懐かしいルイズ、ルイズ・フランソワーズ。
 あなたまでそんなよそよそしい態度をとらないで。
 で、ええと、、、」
「感激ですわ! 私を覚えてくださっていたなんて!」
「あ、あの、あちらのお二人は、、」

ルイズが部屋のすみの二人を指差し睨みつける。
「せーざっっ!!」
部屋のすみにはキュルケとシュレディンガーが、
頭の上にコブをこさえてぺたりと並んで座っている。

「なーによ。 ちょっとからかっただけじゃない」
先ほどのサカリの付いたメスライオンの様な表情はどこへやら、
キュルケがしれっとした顔で言い放つ。
「安心なさいなルイズ。
 あんたみたいなオコチャマは好みじゃ無いし、
 殿方もちゃんと好きだから」
「殿方「も」ぉお?!!」
ルイズが聞き返すのへ答えず、ぷい、とそっぽを向く。

「なんでボクまで、、」
涙目で頭のコブをさするシュレディンガーを怒鳴りつける。
「何で、じゃ無いでしょ何でじゃ!
 助けなさいよあーいう時は!」
アンリエッタに向き直ると、にっこりと顔を作る。

「アレは隣部屋に生息する淫乱赤毛牛と
 馬鹿で生意気な私の飼い猫です。
 お気になさいませんよう、姫さま」
さわやかな笑顔で紹介する。

「で?
 そちらの姫さま、なーんかお悩みみたいだけど?」
「お黙んなさいよウシ女!
 姫さまに悩みなんかあるわけ無いでしょう!!」
「い、いえ、実はその、ルイズ」
「、、え?」
アンリエッタが、胸の内の悩みをぽつりぽつりと語りだした。


「そーいうことならお任せ下さい、姫さま!
 不肖、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 姫殿下の憂いの種たるその手紙、
 無事取り戻してご覧に入れますわ!!」
「な、何を言っているの、ルイズ!
 私は宮廷の中では漏らすことすら叶わぬこの悩みを、
 ただあなたに聞いてもらいたかっただけなの!!
 戦時下のアルビオンへ赴くなど、そんな危険なこと、、
 頼めるわけがありませんわ!」
「この身をご心配頂けるなんて、感謝の極みに御座います!
 でも、ご安心ください、姫さま。
 私、こーいうの得意なんです!!」

アンリエッタがポロリと涙をこぼす。
「この私の力になってくれるというの? ルイズ、、」
「もちろんですわ、姫さま!」
ルイズが瞳をうるませつつアンリエッタの手をとる。

「友情を確認しあってるところ悪いんだけど、、、
 その話、あたしも聞いてよかったの?
 あたしー、一応ゲルマニア貴族なんだけど」
「え?」「あ」
手を取り合う二人が固まる。
「ご心配なく姫さま。
 後顧の憂いは今すぐこの場で永久に! 取り除きます!!」
ルイズが椅子を振りかぶる。
「ちょ、冗談よ冗談だって!
 人の恋路に口出す野暮天なんて
 ツェルプストーにはいないわよ!」
キュルケが顔を引きつらせ両手をぶんぶんと振った。


アンリエッタが机でしたためた手紙をルイズに手渡す。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡して下さい。
 すぐに件の手紙を返して下さるでしょう。
 それから、これは母君から頂いた『水のルビー』です。
 せめてものお守りに、、」
アンリエッタから手紙と指輪を受け取る。
「明日にでも馬車と手形を仕立てさせます」

ルイズがにっこりとお辞儀を返す。
「いいえ、それには及びませんわ、姫さま。
 言いましたでしょう?
 こーいうの、得意なんです。
 そうそう、キュルケ。
 私がいない間に姫さまに手ぇ出したら頃スわよ!!」
ギロリとキュルケを睨みつける。
「あのねぇ、あたしだってそんな命知らずじゃ無いわよ。
 安心して行ってらっしゃいな。
 長引いたら明日の授業は代返しといたげるから」
キュルケがため息をつく。

「冗談よ。
 さ、行くわよ、シュレディンガー!」
「了解っ!」
自分の使い魔の猫耳頭を抱え込む。
「では。
 朝には戻りますわ、姫さま!」
にっこりとそう言うと、ルイズは使い魔と唇を重ね、『跳ん』だ。

==============================

「きゃ!
 な、何を、、、え?」
突然の行為にアンリエッタが思わず目を伏せ、目を開けると
そこに二人の姿はなかった。
「え?、、、へ?」
「あら、ご存じなかったんですか? 姫さま。
 これがあのシュレちゃんのチカラですわ。
 今頃二人はもうアルビオンですよ」

「あの使い魔さんの、、チカラ?」
「そう、あの子はどこにでもいてどこにもいない。
 だから、どこにだって行けるそうなんです」
「え、、? それはまた、、なんという、、、」
「ま、マジメに考えるだけ無駄ですわ」

その時、コンコンとガラスをノックする音がした。
「ぅわお、いい男」
窓を開け覗き込んだ顔に、キュルケが思わず声を上げる。
「あのー、、姫殿下。 私はどうすれば、、、」
「あら、ごめんなさいワルド。 忘れてたわ。
 部屋に戻って待っていて頂戴、朝には戻るわ」
「は、はあ、、、 かしこまりました」
髭を蓄えた男前が窓を閉めて夜に消える。

キュルケがベッドに座るアンリエッタの横に腰をおろす。
「ふう。
 夜は長ごう御座いますわ、姫さま。
 宜しければ、小さな頃のルイズとの思い出でも、、
 お聞かせ願えますか?」
暗い面持ちで隣に座る姫君に、キュルケは優しく微笑んだ。

  。。
 ゚○゚


浮遊大陸アルビオン。
宵闇に包まれようとする白の大陸、そのはるか上空。
そこにルイズ達は居た。

「うわー! すごい!
 ラピュタは本当にあったんだ!」
「ラ、、?
 アルビオンよアルビオン。
 えーと、暗くてよく分っかん無いわね」
降下しながら空中に浮かぶ大陸を目を凝らして見下ろす二人を
突如として閃光が照らし出し、数瞬遅れて爆音が空を震わせる。

「ルイズ、あれ!!」
大陸と空との境界、せり出した岬の突端にそびえる城の一角が
煌々と燃えている。
「うそ?! あれってニューカッスル城じゃない!」
目指す手紙の所有者、アルビオンのウェールズ王子が居ると
思われるニューカッスル城は、今まさに艦砲攻撃を受けていた。
「え?アレって船? 戦艦?
 ルイズ、戦艦が浮いてる!」
「じょーだんじゃ無いわ、行くわよ!!」

==============================

二人が口付けて跳んだ先は、およそ城の中とは思えぬ巨大な洞穴の中だった。
直後、轟音が洞窟を揺らし、岩の破片をそこらじゅうに降らせる。
「ちょ、何よここ、ホントにニューカッスル城の中なの?!」
「そうとも、で、君らは誰だ?」
後ろからの突然の声に二人が振り返る。
そこに居たのは篝火に照らされた凛々とした金髪の青年だった。
「こやつら、何者だ!」 「猫耳の亜人? 貴族派の間諜か?!」
杖を掲げた兵士達が二人を取り囲む。

「ち、違います、私達は貴族派なんかじゃありません!
 トト、トリステインの大使です!」
「ふざけた事を、、取り押さえろ!」
「まあ待て。 トリステインの大使といったな」
金髪の青年が進み出る。
「その大使殿がこんな所に何の用だ?」
「その、、アンリエッタ姫よりウェールズ皇太子殿下へ、
 こ、この手紙を!」
手紙を取り出そうとした時、ポケットから指輪がこぼれ
青年の足元へと転げ落ちる。
「あっ、、! 姫様の指輪!」

青年がつま先に触れたその指輪を拾い上げる。
「これは、、! トリステインの『水のルビー』、、」
その時、青年の指にはめられた指輪と拾い上げた指輪の石が共鳴し、
虹色の光を振りまいた。

「水と風は、虹を作る。 王家の間にかかる虹だ。
 皆、杖を下げよ。
 このお二方はまごう事なきトリステイン大使であられる」
周りの兵士が杖を引き、二人に礼を取る。
青年は居住まいをただし、威風堂々、名乗った。
「ニューカッスルへようこそ、猫耳の大使殿。
 私がアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」


手渡した手紙を一読し、件の手紙の返却を快諾したウェールズに付き従い
二人は砲撃の止んだ城内の階段を上っていく。
(ルイズー、その手紙って何が書いてあるんだろ?)
シュレディンガーが歩きながらこそこそと耳打ちする。
(しっ!)
  前を行くウェールズをちらりと見つつ、猫耳に口を寄せる。
(あんたってニブいわねー。
 姫様の口調で気付かなかったの?
 ラブレターよラブレター。
 姫様がゲルマニアにお輿入れしようって時に
 そんなものが見つかっちゃったら一大事でしょ?)
(へー。
 でも元カレに「ラブレター返してー」なんて、
 可愛い顔してあのお姫様もキツいねー)
(なに言ってんの!
 それだけ王家の責任ってのは重いものなのよ!
 それに、、それだけじゃないわ。
 書いてらっしゃる時にチラッと見えちゃったんだけど、
 殿下へトリステインへの亡命を、、)

「さあ着いた、この部屋だ」
扉の前で立ち止まったウェールズの声にかしこまる。
質素な部屋の机の中にしまわれた小箱を取り出す。
「宝物でね」
幾度も読み返されたのだろう、ぼろぼろになった手紙を
最後に一読した後、ルイズに差し出す。
「さ、確かにお返しいたしますよ、大使殿」
うやうやしく頭を下げ、王子より手紙を押し戴く。

「明日の朝、非戦闘員を乗せた最後の便が港を出る。
 大使殿はその船に乗って姫の下へお帰りなさい」
「え、、、?
 最、、後?」
「そう。
 明日の正午に攻城を開始すると、叛徒共が伝えてきた。
 城の中に残る兵共々、王家の誇りを存分に示すつもりだ」
「そんな、、、
 王軍に、、勝ち目は、無いのですか?」
「此方は三百、彼方は五万。 万に一つも無かろうさ。
 私に出来ることは、王家の務めを果たす事だけだ」
ルイズを見つめ、にこやかに微笑む。

ルイズの中で、現実が急に色あせていく。
皇太子は、この人は、明日の戦いの中で死ぬつもりなのだ。
あの手紙には、確かに亡命を勧める一文が添えてあったはずだ。
しかし、それをおくびにも出さず、己が務めに殉じようとしている。
どうして、恋人の切なる願いより、死を選ぶのか。
己が愛する人より大切なものなど、この世にあるのだろうか。

あるのだろう。

そしてそれこそが、貴族の務め、王家の務め、なのだろう。
優しく見つめる皇太子の瞳の中に、確固たる意思が見える。
己が憧れる真の貴族の姿が、そこにはあった。

あふれ出ようとする全ての感情と、言葉と、涙とを飲み込むと、
歯を食いしばって面を上げ、ルイズは精一杯の笑顔を返した。


「御武運を、お祈りいたします。 殿下」
「お心遣い、痛み入る。 大使殿」


 †


最後の晩餐会。
絶望的な決戦を明日に控えた城内。
それでも兵達は皆、晴れやかな顔をしていた。
「猫耳の大使殿、このワインをお試しなされ! 上等なものですぞ!」
「いやいや、それよりこの鳥の蜂蜜焼きを! 頬が落ちますぞ!」
かわるがわるルイズをもてなす貴族達に、にこやかに答える。
シュレディンガーは年老いた貴族達が語る武勇伝を
目を輝かせて聞き入っていた。

やがて老王が立ち上がり、二人の大使への謝辞と
兵への労いが述べられると、共に立ち上がっていた貴族達から
「アルビオン万歳!」の大合唱が沸き起こる。
そこに居並ぶ誰も彼もが、曇り無き決意を顕わにしていた。


老王が去り、なお続く晩餐会で。
ルイズはテラスで一人、夜風に煽られていた。
「あ、ここに居たんだー」
声に振り返ると、猫耳の使い魔がそこにいた。
「どしたの? 不機嫌そ」
「どうもしないわよ」
不機嫌さを隠しもせずにそっぽを向く。

「すごいねー。
 雲と一緒にふわふわ浮いてるなんて。
 この大陸も、船も」
身を乗り出し、眼下を見下ろす。
宙に浮かぶ白の大陸の、切り立った岬の突端に築かれたニューカッスル城。
その端に構えられたテラスの下には、雲しか見えない。
「ここのみんなも意固地にならないでさー、
 この雲みたいに亡命でも何でも、
 どこにでも行っちゃえば良いのに」
のん気につぶやくシュレディンガーの胸ぐらを掴み、
歯を喰いしばり、ルイズは激しい剣幕で使い魔を睨みつける。

「あんたは、、、!
 あんたには、判んないわよ!!
 彼らは、誇りを捨てた叛徒どもを相手に、
 貴族の務めを全うしようしているの!」
「そーかなー?」
眉を上げ涼しい顔で返す。
「国と領地と領民を守ってこその貴族でしょお?
 死んで守れるものなんて、ひとっつもないよ?」
「貴族の誇りを守れるわ!」
「だから死ぬの?
 それがルイズの思う『貴族の務め』?」
「そうよ!
 彼らこそ、、彼らこそ、本当の貴族だわ!!」
知らず、絶叫する。

「だったらルイズ。
 、、、どうして泣いてるの?」

その言葉で初めて、ルイズは自分の頬を伝うものに気付いた。
唇を震わせ、シュレディンガーを見つめ、胸に顔をうずめる。
小さく震えるルイズの頭をシュレディンガーが優しく抱く。

「シュレ、、、
 あの人たちに、今日、はじめて会ったばかりなのに、、
 私、、、わたし、、
 私、あの人たちを、死なせたくない、、」
シュレディンガーは涙に濡れた頬にそっと手をそえると、
顔を引き上げてその唇にやわらかく口づけた。

==============================

突風が髪を巻き上げる。
今までいたテラスよりさらに上、中空に張り出した見張り塔の
狭く急な円錐形の屋根の上に二人はいた。
「わわっ?!」
バランスを崩し、あわてて屋根の中央の避雷針を掴む。

「ルイズ、見える?」
隣で同じく避雷針を掴んだシュレディンガーが、
もう片方の手で遥か彼方を指し示す。
いくつもの山々の向こうに、天を照らす光りが見えた。

「あの港町に、さっきこの城を砲撃していた船、貴族派の旗艦
 『レキシントン』号をはじめとした戦艦三隻が寄港してる。
 王と王子を生け捕りにして「公平な」裁判にかけるのは諦めたみたい。
 明日正午に殲滅戦をしかけてくるってさ」
ルイズがつばを飲みこみ、彼方の光を見つめる。


「けれど」
シュレディンガーが向き直る。
「僕ならルイズをあそこへ連れて行ける。
 誰にも気付かれず、誰の目にも留まらず」
ゆっくりとルイズの目を見る。

「そして」
猫がうすく笑う。
「ルイズには『破壊の魔法』がある。
 モチロン戦艦を沈めるのは難しいだろうけど、
 動力炉や機関部を、燃料庫や火薬庫を
 壊して回る事は出来る、かもしれない」
「、、、!」
ルイズの瞳に光が戻る。

「そうすれば彼らを助ける事が出来る、かもしれない」
「そうよ、それだわ!
 私、皇太子を、、彼らを助ける!!」
ルイズが叫ぶ。

「でも」
緩やかに、その輪郭が夜に滲む。
闇が、さえずる。

「本当に、それで良いの?
 本当に?
 本当に?

 確かに彼らを助ける事は出来るかもしれない。
 でも、あとたった三百人が死ぬだけで終わるはずだった
 この戦争は、もっともっと続くことになるだろうね。
 三百どころじゃあない、もっと死ぬよ、もっと死ぬ。
 そしてその中には、君自身も居るかもしれない。

 僕はカオスの伝導体、
 僕は世界の特異点。
 確率世界の僕の中で、
 虚無〈ゼロ〉と無限は等価となって
 眠れる分岐が目を覚ます。

 僕は君に約束したよね。
 いつでも、なんどでも、どこへだって、
 君が望む場所に連れて行ってあげる、って。
 でも、僕自身はただの力、ただの君の使い魔だ。
 この力を使うのは、君の意思だ。 
 さあどうする? ご主人様。

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

いつしかそこには、いつもと同じ姿をした、
しかし、ルイズの見知らぬ使い魔が居た。
その闇が、目を見開き、口元を歪ませ、問いかける。
その力を、『この世界』に使うのか、と。

確かに、この力を使えばどこにでも行ける。
戦艦の中へも、宝物庫へも、敵国の王の寝室でさえも。
この力を『この世界』へ使うとは、そういうことなのだ。
だが自分に、世界の運命を変える権利などあるのか。
だが自分に、人の命を奪う権利などあるのか。
否、そんな権利など、誰にも無い。 神にも悪魔にも、私にも。
あるのは権利ではない、運命を変える覚悟、命を奪う覚悟、ただそれだけだ。
その覚悟が、、、自分に、あるか。

顔を上げ、息を吐き、目を開く。

「私をなめないで、使い魔!!
 私は言ったわ、「彼らを助ける」と!
 「助かれば」でも「助けたい」でも無い、
 「助ける」と言ったの!
 それは何も変わらない、変わらないわ!

 彼らが死ぬのがこの世界の定めというのなら、
 そんな定めは、私が変えてみせる!
 変えられた運命が私を殺すと言うのなら、


 そんな運命、 変 え て や る ! ! 」


手を離して屋根を蹴り、己が身を夜空に投げた。

もはや心に曇りは無い。
満天の星に包まれ、両手を広げ、遠く足元に浮かぶ
ニューカッスル城を、アルビオン大陸を見上げる。

「はははっ!
 了解っ!
 やっぱり君はすごいや、ルイズ!!」

いつの間にかそばに来ていたシュレディンガーが
満面の笑みを浮かべている。
その手を繋ぎ、夜空を滑る。
「そう、それが第一歩だよ、ご主人様。
 ではご案内いたしましょう、ミス・ヴァリエール。

 目覚めた分岐のその先へ!」

その夜、一人の少女と一匹の使い魔は
自らの運命と契約の口付けを交わした。


==============================


その日の未明ーーー、
アルビオン貴族派の旗艦『レキシントン』号は
正体不明の襲撃者の手により攻撃を受け損傷、
動力源の「風石」の大半と火薬の半分を失逸した。
また、伴船二隻もこの攻撃により係留樹より墜落、大破した。
これによりニューカッスル攻城戦は実行されず、
転機を掴んだ王党派は地下へ潜伏、ゲリラ戦に転ずる。

王党派による「大反攻」が、開始された。


 †


 オ マ ケ
==============================
「ふう、何とか朝には戻れたわね。
 あら、キュルケ。 姫さまはお休み?」
「そ、そーなのよ。 た、旅の疲れ、とかかな!
 アンったら疲れて寝ちゃって。 ねえ?」
「はぁ?! アンだあ~~っ?!
 姫さまをなんて呼び方してんのよ!!」
ベッドで毛布をかぶっていたアンリエッタがぴょこりと顔を出す。
「ち、違うのよ、ルイズ!
 キュルケとは待ってる間に、お話をして仲良くなったの!!
 ご、ごめんなさいな、ルイズ。 こんな格好で。
 ええと、あの、、そう! 長旅の疲れ? で!」

シュレディンガーがこわばった笑顔で、しっとりと湿った布切れを拾い上げる。
「えっと、ルイズー? こんなん見付けちった、あははー、、」
「そ、それ?! 私のショーツッ、、!」
アンリエッタが赤面し手を伸ばした拍子に、毛布で隠していた乳房がこぼれる。
「あ、、、、」

ルイズの猫耳が、ゆっくりと、逆立っていく。
「、、、キュルケ? 、、、姫さま?
 あなたさまの初恋のお相手の命を救うため、、、
 こっちは命がけで、お務めを果たしてきたってのに、、、
 ばっ、、!

 フッ! ザッ! けっ、ん、なぁ~~っっ!!!」


ルイズの怒りが白み始めた空を震わせた、とか。

  。。
 ゚○゚




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