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zeropon!-11

第11話

『襲撃の夜』


さわやかな風が吹く中、ルイズ一行は街道を進んでいた。
ルイズ一行と言っても、当のルイズは気絶、
「すぴーーーーー」
…訂正、爆睡中である。ワルドの攻撃も実はたいした怪我はしておらず、
実際はルイズ・ナッコーで残っていたエネルギーを使い果たし、
朝まで飲んでいた疲労、そして二日酔いに負けただけであった。
「メデン、この後はどうするの?」
後ろのほうでうなだれながらついてきていたワルドが希望に目を光らせ
咳払いを一つ、口を開こうとする、が、
「ご心配なく。この道を辿った先にラ・ローシュという街があります。
そこからアルビオンへ船が出ているそうなのので、そこから行きましょう」
言わんとしたことをすべて言われ社会復帰の機会を失ったワルドは再びうなだれた。
「しかしこんなにのどかでなんというか戦争の欠片もないもんだねえ?」
ギーシュが大きく伸びをしながら言った。
「まだここら辺には居ませんが近くの町にはごろつきが傭兵として集まっているようです」
「そういえば何でそんなに詳しいの?」
「いい情報源がいましてね…」
くくくと目を細めるメデン。その様子にキュルケは首を傾げた。

「うう、寒気がする」
その情報源ことロングビルことフーケは一足先にメデン達の目的地ラ・ローシュの酒場にいた。
「ふむ。なるほど…戦術的優位は貴族派のワンサイドゲームという事か」
フーケの対面に座る声の主が静かに紫煙を燻らせながら呟く。
「だろうね。マシな貴族が王党派、腐れ貴族が貴族派。
この世の九割が腐れ貴族なら自ずとわかるこった」
フーケがお手上げとばかりに軽く手を上げる。
「このまま行けば間違いなく全滅か」
ぺらりと紙の束をめくる声の主。その捲る腕、それは鋼鉄の腕だった。
フーケはその鋼鉄の腕を眺める。ごつごつと、まるで岩をそのまま削りだしたかのような
ごつごつと節くれだった腕。しかしそれがつながる体は生き物のそれ…まあ、体自体も
目玉と足、それに頭に巻いたバンダナだけだが。
彼の名はジョン・ドウ。パタポン族の中でロボポンと呼ばれ、鋼の腕をもって生まれたパタポンである。
「で?ジョン・ドウ。さっさと報酬をくれないかい?」
「そう急くな、ほら」
そういってどこからか取り出したふくろ。それをその自らよりも大きな腕を
使いフーケに渡す。中身はパタポン族の武器である。
「まいどあり」
この情報集め、フーケも最初こそいやいややっていたものの、確実な収入、
そしてなにより危険をおかさないで済むということで、
最近は盗賊家業はお休み。専らこっちをメインで活動していた。


渡された袋の中身を確認するフーケ。そしてにやりと笑う。
「まいどあり」
「しかし…そんなに稼いで何に使ってるんだ?独り身の女が使う額じゃないだろ」
「悪かったね、独り身で。別にいいだろう?乙女の秘密さ」
とんとん、と灰皿に灰を落としながら呟くジョン・ドウ。
「乙女はどうかと思うが…」
「あん?」
「…いいじゃないか、別に減るもんでもないだろうに」
ジョン・ドウの言葉に少し躊躇いながらもフーケが口を開いた。
「…仕送りだよ」
「仕送り?家族にか?」
「ああ、育ち盛りがたくさんいるもんでね」
「…ふむ、苦労してるんだな」
うんうんとうなずくジョン・ドウ。そのしみじみとした様子にフーケが言う。
「一応言っておくけど…私の子じゃないよ」
うんうんと、うなずき続けるジョン・ドウ。しかしその顔には冷や汗がたらりと浮かぶ。
「私はまだ23だよ…」
ややドスの聞いた声で呟くフーケ。
「…三十路前かと」
「よし、表に出な。ぶっ殺す」
フーケが手元にあったエールのグラスを全力で投擲するも、
既にその方向にはジョン・ドウの影も形もなかった。
が、運動力が消えるわけもなく、グラスはそのまま高速で飛行。
今まさに入ってきていた黒いローブを頭まですっぽりと被った男に直撃する。
「けぺ」
「あ」
投擲姿勢のまま固まるフーケ。蛙が潰れたような声を出し男は床にゆっくりと倒れる。
「…あんた、だいじょうぶ、かい?」
席を立ち恐る恐る近寄り、傍らに座って確認するフーケ。
しかし男はピクリともしない。
そんな二人に周囲も気付き、ざわざわしだした。
「やっちまいやがった…」
誰かがそんなことを言い出したのを聞いたフーケ。
すくり、と立ち上がるとつかつかと入り口に向かう。
そして、てへっと舌を出しながら、
「やっちゃった☆片付けといて!」
と、言い放ち脱兎の如く賭け出て行った。
「逃げやがった!」
「どうすんだよこれ…」
残されたのは観衆と死体のみ。
仕方がないので髭のマスターがやってきて男へと近づく。
「ん?なんだこりゃ?」
マスターが男の黒いローブを掴んで持ち上げる。
しかし、それには中身がなく、その中に入っているはずのものは、
影も形も無かった。


「なんか何事もなくついちゃったわね」
無事に着いたことが不満なようでキュルケが愚痴る。
「まあまあ何もないのが一番です。今日はこの町で宿を取る予定ですので
どうぞみなさんこちらへ」
どこからか取り出した小さな旗を手にメデンが先導する。
メデンが案内したのは「女神の杯」亭。
そして夜になって食事の頃。
「URYYYYYYYYYYYY!」
「だ、だれかヴァリエールを止めろ!?」
「もしゃ無もしゃもしゃ理もしゃ」
「ギーシュ、男の見せ所よ、私達忙しいから。あ、すいませーん。これあと五皿追加」
「ワルド卿!ルイズが…」
「ん?元気があっていいことじゃないか?はっはっは」
「(ダメだ…どうにかしなきゃこの人…)」
そこはさながら阿鼻叫喚の様相、
起きたルイズが迎え酒として既に10本目のワインを空け、
キュルケとタバサの前には大量の食事が運ばれており、既に最初にあった分など欠片もなかった。
ワルドにいたっては遠い目をしながらはっはっはと快活に笑っているがそれが逆に気持ち悪い。
ギーシュはそんな一行を律儀に突っ込んでいる。
キンっとグラスを合わせるのは合流したジョン・ドウとヒ・ロポン。
「…まだそれつけてるのか」
ジョン・ドウの問いに己が仮面をついっとさすりながらヒ・ロポンが返す。
「これは戒めだからな。外すつもりもない」
「そういえばヒ・ロポン、何故君だけ仮面をつけているのかい?」
唯一、人間でまともなギーシュが話に混じる。
「これは『ヒーローマスク』さ」
「ヒーロー?」
「そうだ、これを着けるものはパタポン界の神の力を得ることができるのさ」
「すごいな、神の力か…よかったらみせてもらえるかな?」
ヒロポンのマスクに手を伸ばすギーシュ。
「おっとこいつは勘弁してくれ。代わりのやつを見せてやるよ」
どこからともなくもう一個のマスクを取り出すヒ・ロポン。
それはヒ・ロポンが付けているオレンジのマスクとは違い全体が赤く、
表に炎をあしらったシンボルがあった。
「これは君のとは違うのかい?」
「俺のは千手の神シュババッサの面『シュバ』
お前に渡したのが灼熱の神メラアチーゼの面『メララ』だ」
「灼熱…炎の力が宿ってるわけか…」
何気なくその面を付けようとするギーシュ。
「やめとけ若いの。覚悟のないままそいつをつければ自分を失うぞ」
ジョン・ドウがそれを止める。
「自分を…失う?」
「正確に言えば記憶を失う、いやなことも何もかも、な」
「君も…?」
「俺も失っていた。違うな、忘れたかったんだがな」
「…つけるのはやめとくよ、モンモラシーの事を忘れちゃたまらないからね」


そう言って椅子を斜めに傾けて上を見上げるギーシュ。
「残念だねえ。これで僕もトライアングルかと思ったんだけど…」
そういってマスクを掲げ、それを仰ぎ見るギーシュ。
シュっ、カッ
そんなギーシュが仰ぎ見る一瞬前に頭があった場所に何かが通り過ぎる。
それはギーシュの喉元数サンチ前を通り過ぎ壁にそのキバを突き立てる。
ギーシュの命を刈り損ねたその矢は宿の窓からやってきていた。
同時に宿の入り口から雄叫びを上げながら数人の男が手に手に武器を持ち
押し入ってくる。
「伏せろっ!」
ジョン・ドウがその巨大な鋼鉄の腕でテーブルの端を掴む。料理が散乱するのも構わず、
そのまま片手で高く持ち上げ、半回転。
その勢いのまま振りぬき投げ飛ばす!
豪っという勢いと共に、今しがた入ってきた男達を巻き込みそのまま入り口に激突。
そのままバリケードになり、その他の敵の侵入を防ぐ。
そう、その他の、である。窓の外を見れば外を埋め尽くす無数のかがり火。
それはこの宿を先ほど入ってきた男達の同類。つまり傭兵の群れだった。
「なんなのよ、こいつら」
キュルケが倒したテーブルの裏で、握った鶏手羽を齧りながら愚痴る。
「まあ、十中八九私達を襲ってきたんでしょうけど…問題はどうするか…」
「僕に作戦があるんだが…」
ワルドが真剣な顔で小さく手を上げる。
「聞きましょう」
ワルドの提案をいやに素直に聞くメデン。
「単純な話なんだが、囮と本隊に分かれて、囮が敵をけん制してる間に
本隊が裏から逃げる」
「すばらしい案です」
メデンが素直に賞賛する。いやに素直に賞賛する。
「それで分け方なんだが…」
にこりと瞳しかない笑みを浮かべるメデン。
「ではワルド卿お願いします」
「へ?」
ガシリっとワルドの襟首を掴む巨大な腕。持ち主はもちろんジョン・ドウだ。
「頑張れよ、若いの」
そういうとワルドを高々と掲げ
「いや、僕は囮じゃなくて…」
「いっけー!」
「がんばってくださいね、ワルド卿」
「ファイト」
「まあなんとか頑張ってくれ」
皆の贈る言葉と共に、ぶんっと窓から外へ投げ飛ばした。
「のおおおおおおおおおおぉぉ…」
断末魔と共に外に飛び出す捨石ワルド。
「さあ行きましょう」
「尊い犠牲、無駄にしない」
「なかなか言うわねタバサ」
「あはははははは、せんじょうはじごくだぜーーー!」
「ヴァリエール…せめて婚約者が死んだんだから悲しもうよ」
「お前もなかなか酷いな」
裏口から港に続く道をひた走る。しかし、
「はしれ!はしるのよばしゃうまのごとく!」
「くっ、だれだ、この嬢ちゃんに酒飲ましたやつは!」
ジョン・ドウがその鋼の腕でよいどれルイズを抱えてるせいで、
思ったよりも足が遅い。
「ふうっ、ふうっ、腰に、くる…」
むしろあからさまに歴戦の兵が遅い、というか腰に来ているおじいちゃんだった。


「ねえ、なんか…」
「言わないでやってください…彼も結構な年なんで。しかしこのままでは…」
追いつかれるのも時間の問題である。後ろからは雄叫びと、金属が打ち鳴らす音。
「しかたないわねえ」
そう言って立ち止まるキュルケ。するりと、胸元から己が杖を出す。
「先に行きなさい、ここは足止めしておくわ」
「しかし、ルイズ様のご友人を危険に晒すのは…」
「あら?この程度危険のうちにはいらないわよ?」
余裕の笑みを浮かべるキュルケ。いつの間にか横にタバサも並んでいる。
「余裕」
「…ありがとうございます。では、ジョン・ドウ。ルイズ様をヒ・ロポンに。そして巫女の名において命ず」
「…ふう、ふう、な、なんなりと」
ルイズを渡し、膝に手を置いて息をついていたジョン・ドウが何とか息を立て直す。
「ルイズ様のご学友に危険が及ばぬようつとめよ」
「了解」
ぴっと敬礼するジョン・ドウ。
「それとキュルケ様、タバサ様これを」
メデンがどこからともなく取り出したのは赤く、表面に炎の紋様があしらった杖と、
蒼く、まるで氷のような硬質さを持った杖だった。
「なにこれ?杖に凄い魔力…契約しなくても手に馴染むわ」
杖を手に取ったキュルケは驚きの声を上げる。タバサもしげしげと杖を見る。
「それはパタポン族の武器『氷の杖』と『炎の杖』にございます。それさえあれば雑兵など物の数ではございませぬ
では…御武運を。さあルイズ様」
「きゅるけえ、たばさあ」
酔いどれのルイズがヒ・ロポンの背中で二人を呼ぶ。その顔は今にも
泣き出しそうだ。
「一緒じゃないの?」
泣きそうなルイズの頭をくしゃくしゃとなでるキュルケ。
「大丈夫、ちゃんと後から来るわ」
「ほんと?」
「ほんとよ」
それはぐずる妹をあやす姉のようだった。
「きゅるけ、たばさ…がんばってね」
ヒ・ロポンの背中に揺られながら手を振るルイズを見送った三人。
「んんーかわいかったわねえ。いつもあんなならいいのに」
「ツンデレ」
「…余裕だな?」
これから戦闘に入ろうかというのにまったく動じない二人にジョン・ドウがつぶやく。
「いたぞ!!」
「ぶっころせえええええ!!」
ぞろぞろと坂道を大勢の傭兵が駆け上がってくる。
それをちらりと一瞥するキュルケ。タバサが杖を構える。
「あらあら、彼らが食事の邪魔をした方かしら?」
「ハシバミ草…」
言葉と共に杖を振るキュルケ。それに合わせるタバサ。
そこに生まれるは劫火と氷気。
火の子が街を舞い、氷の結晶が彩る。その光が映し出す
二人の少女の横顔には青筋がぴくぴくと浮かんでいる。
「鶏肉の恨み晴らさせてもらうわ」
「めっさつ」
食い物の恨みはおそろしや、ラ・ローシュの慌しい夜が始まった。



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