あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズと彼女と運命の糸-01


 ※フェオの月 ティワズの週 ラーグの曜日

 とうとう明日が使い魔召喚の儀式だ。
 ついにこの日がやってきてしまった。
 明日という日に、私は試されるのだ。この魔法学院に、強いては貴族というものに相応しいかどうかを。
 始祖ブリミルよ、お願いします。明日の使い魔召喚の儀だけは、どうにか成功させてください。
 もし、儀式を無事終える事が出来たなら、この先どのような苦難が待ち受けていようと、私はそれを受け入れます。
 ですから、なにとぞわたくしめの願いを受け入れて下さい。お願いいたします。



ルイズと彼女と運命の糸

= サガ2 秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY 異伝 =



 ※フェオの月ティワズの週イングの曜日

 ―― 午前

 結果から言うと、儀式は成功した。
 そして、私が詠唱した通り神聖で美しく、そして強大(たぶん)な存在が召喚に応えた。
 召喚されたのは、私と同い年くらいの少女だった。
 肩にかかるほどの金髪が片目を隠し、体の線が良く分かるピッチリとした服を着ている。
 よく観察すると、その服はかなり大胆なデザインで、胸の谷間がはっきりと見えてしまっている。
 しかも、凄いミニスカートだ。走りでもしたら、容易に中が見えてしまうだろう。
 そして、二の腕半ばまであるグローブと、太もも半ばまであるブーツを履いている。
 全体的にみれば肌の露出は少ないが、きわどい部分が多々見受けられる。
 褐色の肌が色気を振り撒き、男の目を釘付けにしてやまないだろう。
 しかし、彼女の姿を直視する者は殆どいなかった。

 なぜなら、金の髪から鋭く尖った耳が覗いていたからだ。
 つまり、彼女はエルフだった。一人で優れたメイジ数十人分にも相当するとも言われるエルフだ。
 かくいう私も、冷静に観察できているわけではなく、恐怖で足が竦みこの場から離れなくなったにすぎない。
 彼女は、キョロキョロと周りを見渡し首を傾げている。
 一見、何の害意も伺えないが、油断してはいけない。気を緩めれば最後、頭からマルカジリにされるのがオチだ。

 永遠に続くかと思われた緊張を絶つ者がいた。
 その救世主の名は、ミスタ・コルベール。私たちの先生だ。
 心の中で拍手喝采をする。ひそかにコッパゲとか言っててごめんなさい。これからは真面目に講義を聞きます。

 多くの者が固唾を飲んで見守る中、ファーストコンタクトは無事果たされた。
 どうやら、いきなりこんなところに出てきてビックリしていたらしい。
 ミスタ・コルベールとも普通に受け答えしていたし、意外と怖くないのかもしれない。
 少しだけホッとした。

「ミス・ヴァリエール、彼女の事で話し合わねばならない事がありますので一緒に来て下さい。
 オールド・オスマンの指示を仰ぎます」

 まあ、そりゃそうよね。
 エルフが使い魔なんて聞いたことがないし、何より私も嫌だ。
 近くにいるだけで生きた心地がしない。



◆ ◇ ◆




 ―― 午後

 そんなこんなで学院長に会いにいき、事情を話し合った結果、様々な事が判明した。
 まず第一に、彼女はエルフではないそうだ。エスパーという種族らしい。
 人にはない特殊な能力を使う事が出来るそうだ。
 ……エルフと何が違うんだろう? よく分からない。

 そして、私たちに最大の衝撃を与えた事がある。
 それは、彼女は違う世界から来たというのだ。
 最初は眉唾で信じる気など更々なかったのだが、彼女が語った世界を股にかけた冒険は真に迫っており、私はすっかり信じてしまった。
 ミスタ・コルベールやオールド・オスマン、そして同席していた学院長秘書のミス・ロングビルも、いくらかは彼女の話を信じているようだ。
 これからどうするのかと問うと、天の柱というモノを探すのだそうだ。
 世界は天の柱で繋がっているそうで、それさえ見つければ元の世界に戻れると彼女は話した。

 だが、ミスタ・コルベールが食い下がる。
 聞けば伝統が云々、サモン・サーヴァントで呼び出されたモノは必ず使い魔にしなければいけないとか言っていた。
 伝統や慣習も大切だと思いますが、それにこだわり過ぎるのはいかがかと思いますよ。
 ていうか、ホント勘弁して下さい。

 私が困った顔をしていると、オールド・オスマンが助け船を出してくれた。
 曰く、保留にすればいいんじゃね? と。
 それから話し合い、コントラクト・サーヴァントをするにしても、再びサモン・サーヴァントを試みるにしても、時間を置いてからという具合に落ち着いた。
 そして、とりあえず彼女は、三ヶ月の間は私の使い魔として振舞ってくれると約束してくれた。
 その代わりに、彼女の捜索を出来る限り手伝わないといけない。
 三ヶ月後、もしも新たに使い魔を召喚する事に決まったら、エルフの不思議パワーで契約を絶ち切られたと言う事にするらしい。
 なんか適当だ。

 だがその場合、私は使い魔に逃げられたという不名誉な事実を得るわけで、
なんとしてもこの三ヶ月で彼女を籠絡しなくてはならないわけだ。
 エルフが使い魔…… よく考えたら凄いメリットがあるのではなかろうか?
 メイジの、いや、人の天敵ともいえるエルフを使い魔にするなど前代未聞だ。
 そしたら、私は『ゼロ』などと蔑まれなくても済むのではないか?
 それどころか、羨望の的だろう。少しやる気が出てきた。
 よし! 彼女を使い魔にする。これが私の目標だ。
 そう決意を新たにしていると、彼女がポンと両手を打ち鳴らした。

「ああそうだ。使い魔にはなれないけど、友達にならなれるよ。
 よろしくね、ルイズ」

 そう言って笑顔で手を差し伸べてきた。
 友達…… か、いい響きね。

「よろしく……」

 私はちょっとだけ恥ずかしくなって、言葉少なに握手をした。






◆ ◇ ◆


 ―― 夜

 彼女にも名前があるのだが、後々に名前を残していいものか判断に迷うので、日記では『彼女』で通そうと思う。
 不都合があるとも思えないが、何となく気になってしまったので、そういうルールを自分で敷く。
 晴れて使い魔に出来たなら、彼女の名前を日記に記そう。
 なんだか、その時が来るのが楽しみになってきたわね。
 話し合いが終わり学院長室から出ると、既に日は暮れて夜になっていた。
 以外と長時間話し合っていたんだ。

 夕食を済ませた後、部屋で彼女と今後の打ち合わせをした。
 使い魔のフリをしてくれるのだから、使い魔がなんたるかを話しておかなければならない。
 といっても、本当の使い魔じゃないから五感の共有など出来はしないし、秘薬集めも私自身が必要としていないので意味がない。
 そういうわけで、彼女に要求するのはただ一つ。
 すなわち、私を守る事。これに尽きる。
 何が出来るのかと聞くと、彼女は4つの特殊能力を使えると答えた。

「まずはね、炎の能力ね。辺り一面を火の海にしたり、一定範囲内のモノを消し炭に出来るわ」
「なんだか物騒ね…… 他には?」
「傷の治療かな。致命傷じゃなきゃ、ある程度までは治せるよ」
「便利ね―。水の秘薬いらずじゃない」
「あとは、指からビームを発射できるよ」
「ビーム? 何ソレ?
 まあいいわ。戦闘力は申し分ないみたいね。
 今日は色々あって疲れたわ。もう寝ましょう」
「私のベッドは?」
「ソファでいいでしょ。じゃ、お休み~」
「……お休みなさい」

 彼女は不満顔だったけど、気にしない気にしない。
 それにしても、今日の日記は長いわね。十日分は書いたんじゃないかしら?
 さ、寝よ寝よ。お休みなさ~い。



◆ ◇ ◆


 ※フェオの月 ティワズの週 オセルの曜日

 ―― 午前

 今日は朝からキュルケに出会った。最悪だ。
 アイツはこれ見よがしに、自分が召喚した火蜥蜴を自慢してきた。うんざりする。
 そして彼女にも目をつけて、色々と話していた。
 彼女がエルフ(エスパーだけど、キュルケは知らない)だという事は昨日のことで知っているはずなのに、物怖じしていない。
 まあ、厚かましいだけよね。
 ちなみに彼女の耳は、ヘッドバンドで抑えて目立たないようにしてある。
 少しは騒がれずに済むはずだ。

 午前の講義はミセス・シュヴルーズのものだった。
 ミセス・シュヴルーズは講義室内を見まわしてから、使い魔の話を切り出した。
 召喚された使い魔を見る事が毎年の楽しみだとか。
 そして、ミセス・シュヴルーズは彼女を見ると僅かに顔をひきつらせたが、なにも言わずに授業を開始した。
 たぶん、オールド・オスマンから聞かされていたのだろう。
 騒がれないのに越したことはない。クラスの連中も、彼女の事を遠巻きにちらちらと観察しているようだ。
 その視線がうっとおしいが無視することにする。
 そして講義中に彼女と少し話しをした。
 どうやら彼女も学校に行っていたことがあるようで、この空気が懐かしいらしい。
 そう言えば、エルフは人間と比べて非常に長命だと聞く。
 もしかしたら、彼女もこう見えて私よりもかなり年上なのかもしれない。

「失礼ね。まだ十六歳よ」

 どうやら声に出てしまっていたようだ。彼女がムッとした顔になる。
 しかし、同い年じゃないか。少し身近に思えた気がする。
 そうして彼女とお喋りに夢中になっていると、ミセス・シュヴルーズに指名されてしまった。
 錬金で石コロを望む金属に変えろというのだ。
 よし、やってやろうじゃないか。
 サモン・サーヴァントは成功したのだ。錬金もきっと成功する。





 ―― 昼

 結局、錬金は失敗した。
 失敗の爆発は講義室内をしっちゃかめっちゃかにして、ミセス・シュヴルーズを吹っ飛ばしてしまった。
 そのおかげで、午前の授業は潰れたが、私は講義室の片づけを命じられてしまった。
 彼女が手伝ってくれたのでそれなりに早く終わり、昼食には間に合いそうだ。
 そして、アルヴィーズの食堂に行く道中、彼女はこんなことを言ってきた。

「それにしても、凄いねルイズ。
 あんな爆発が使えるなんて。私には真似できないよ」

 皮肉だろうか?
 彼女はニコニコ笑っているので、本気なのかからかっているのか良く分からない。

「私も頑張れば使えるようになるかな? アレ。
 どうやったのか教えてくれる?」

 ああ分かった、コイツ天然だ。悪気はないんだろうけど、それが殊更私の神経を逆撫でる。
 ムカついたので昼食は抜きにしてやった。
 彼女は不平不満を言っていたが、知ったことか。
 これに懲りたら、不用意な言動は慎んでほしい。









 用意された食事に舌鼓を打っていると、彼女がデザートを配っていた。
 なんでそんな事をしているのかと聞くと、お礼だそうだ。
 どうやら、メイドが彼女に食事を用意したらしい。
 その事に不満を感じるが、彼女はまだ正式には使い魔ではないのだ。
 威張り散らして愛想を尽かされたのではたまらない。彼女を使い魔にすると決めたのだから。

 そんな事を考えていると、騒ぎが起こった。
 振り返るとギーシュが何かを喚き立てている。
 その対象は彼女だった。
 事情はよく分からなかったが、どうにも八つ当たりらしい。
 周りのクラスメイトはギーシュを何とか諌めようとしているが、事情を知らない者は囃したてている。
 マズイ、なんとかして止めないと。でも、野次馬の所為でうまく近づけない。
 にしても、ギーシュは何を考えてるのかしら? 彼女がエルフだという事は、アイツも知っているはずなのに。
 だけど、仲裁に入る間もなく、ギーシュは一方的に決闘宣言をして食堂から出て行ってしまった。
 彼女に話しかけると、かなり怒っていた。
 もう止めるのは無理そうだが、一応注意だけはしておく

「くれぐれもギーシュを殺さないでね?」
「善処するわ」

 大丈夫かしら? すごく不安だ。




 ―― 午後

 午後の講義はもう始まっているというのに、ヴェストリの広場には多くの人間でごった返していた
 人垣はギーシュを中心に円となっている。彼女と対峙している。
 ギーシュが気障ったらしく前口上を述べていたが、私の耳にはほとんど入ってこなかった。
 ただただ、彼女が人殺しをしないように祈っていたから。
 杖さえ取り上げれば決闘は終わりだと教えたけれど、上手くやってくれるだろうか?

 そして、ギーシュが杖を振ると七体の青銅製のゴーレムが生まれた。
 彼女はビックリしていたようだけど、慌ててはいない。余裕が見える。
 それにしても、決闘の前に魔法を使うのはルール違反じゃないかしら?
 おもむろに、ギーシュは自分の魔法の特性を教え始めた。なるほど腐っても貴族、決闘は公平にという事か。
 それに倣って、彼女も自分の魔法をギーシュに教えるため指を上に向けた。
 そして……

「貫通光線!」

 その叫びと共に一条の光が空を貫き、上空の雲にポッカリと穴が開けた。
 予想外の光景に、辺りが水を打ったように静かになる。ギーシュを見ると、顔が青ざめ明らかに腰が引けていた。
 あらかじめ聞かされていたとはいえ、これには私もビックリだ。
 自然と彼女の対面からは、野次馬が潮が引くようにいなくなる。巻き添えを喰らわないためだろう。
 あんなもので手加減なんて出来る筈がない。
 辞めさせようと決心するのと同時にギーシュが吠えた。

「くぅ…… 中々やるようだな!
 しかし、貴族は退かぬ媚びぬ、顧みぬぅ!
 我が名はギーシュ・ド・グラモン! 推して参る!」
「その意気やよし!」

 アンタ男だよギーシュ。そう、退かぬものを貴族と呼ぶのよ!
 玉砕して来なさい、骨は拾ってあげるわ!

「行けっ! ワルキューレ!」

 ギーシュが七体のゴーレムに合図を送った瞬間、彼女は指を突き付けた。
 その瞬間、光が瞬き、全てのゴーレムは蒸発してギーシュは黒焦げになった。



 ―― 夕方

「杖だけをふっ飛ばすつもりだったんだけど、失敗しちゃったわね」

 彼女は肩を竦めながらこんな事をのたまいやがった。
 あんなもの、直撃しなくても近くを通っただけで大火傷するに決まっている。
 その事を告げると、『ああそういえば……』とか言っていた。気づいていなかったようね。
 幸いギーシュは、火傷はヒドイものの命に別条はないそうだ。
 でも、私には止められなかったという罪悪感があり、彼女にはやり過ぎたという罪悪感があるので、
お見舞いに行く事になった。
 手土産として、フルーツの盛り合わせを持っていく。

 医務室に入ると、クラスメイトのモンモンシーと栗色の髪の一年生がいた。
 私たちが入室すると、二人とも涙目で睨んでくる。
 ギーシュの浮気が原因で自業自得だというのに、放って措けないみたいだ。
 これが惚れた弱みというヤツか。
 長居するのも何なので、フルーツをモンモランシーに押し付けると、私たちはそそくさと医務室を後にした。
 ギーシュとはいうと、一年生の膝の上で幸せそうに眠っていたので問題ないだろう。




◆ ◇ ◆


 ※ウルの月フレイヤの週ダエグの曜日

 アレから1週間が過ぎた。
 学院長室に呼ばれて決闘の件を注意されたが、それ以外は特に何事もなく過ぎていった。
 この1週間でそれなりに彼女の事を知ることが出来た。
 聞く所によると、彼女は秘宝というモノを探しているらしい。
 秘宝というのは、持っているだけで力を与えてくれるもので、今では存在しない古い神々が残した遺産なのだそうだ。
 彼女も幾つかの秘宝を持っているようで、その中の1つの鏡を見せてくれた。
 鏡には『0』と数字が浮かんでおり、これはこの世界に秘宝が存在しないという事を示しているらしい。

 彼女が秘宝を集める切欠となったのが、父親の存在らしい。
 その父親は、秘宝を悪用させないため、彼女と母親を残して世界中を飛び回っていたそうだ。
 そんな父親を彼女は尊敬し、父に追い付くために秘宝を集めていたそうだが、その過程で現地妻の存在を知ることになった。
 それを知って彼女は激怒し、今では父親を見返すために秘宝を集めているらしい。
 酷い父親もあったものだ。彼女の感情には大いに賛同する。

 あと、自由時間に学院の外に出て周囲を探索していたらしいが、天の柱というものは見つからなかったそうだ。
 そりゃそうよね、そんなに高い塔なんて見たことがないもの。
 少し落ち込んでいたので、町に行ってみないかと誘った。幸い明日は虚無の曜日だ。
 そうすると、彼女は喜んでくれた。
 ならば話は早い、明日に備えて早く寝よう。



◆ ◇ ◆

 ※ウルの月 フレイヤの週 虚無の曜日

 ―― 日中

 久しぶりの城下町だ。相変わらず大勢の人が居て活気がある。
 この光景には、彼女も目を見開いている。連れてきた甲斐があった。
 今日は楽しもう。

 観光名所を梯子して、彼女にこの国を紹介して回った。
 彼女は私の説明にしきりに頷き、感心していた。トリステインがいい国だと分からせるのも大切だと思う。
 だが、観光もいいがそれだけでは息が詰まる。
 年頃の女の子らしく、午後はショッピングだ。

 服や身の回りの小物を見て回り、気がつくと秘薬を取り扱っている店にいた。
 『ピエモンの秘薬屋』は、路地裏にあって大して大きくない店だが、中々どうして掘り出し物が多い。
 出来合いの秘薬も質が良く、知る人ぞ知る隠れ家的な良店なのだ。
 冷やかし程度で秘薬屋を出ると、向かいの店が武器屋だという事に気がついた。入る前は気がつかなかった。
 彼女は興味を持ったらしく、私は手を引かれて武器屋に入った。

 店内は薄暗くて黴臭くて埃臭くて辛気臭くて、すぐにでも出て行きたかった。
 でも、彼女が並べられている武器を眺めていたので、私も仕方なく横に並んで見物する。
 店主が色々と話しかけてきたが、吹っかけてきているのが見え見えだった。まあ、少しは為になる話も聞く事は出来たけど。
 どうやら、巷では従者に武器を持たせるのが流行っているらしい。
 というのも、『土くれフーケ』なる怪盗が猛威を奮っているらだそうだ。
 怪盗なんてどうでもいいが、彼女も建前上は私の使い魔なのだから武器の一つくらい持っていた方がいいだろう。
 毎回あのビームを打たれたのでは、たまったものではないというのも理由の一つだけどね。

 そういうわけで、扱いやすそうな細剣をプレゼントした。彼女も喜んでくれたようでなによりだ。
 あと、彼女自身も短剣を買っていた。
 店主が言うにはナマクラらしいが、彼女はそんなことは気にしていないようだ。
 持たせてもらったが、刃に指を立てても全然切れそうにない。これなら、ペーパーナイフの方がマシだ。
 何故こんなモノを買ったのかを聞くと、どうやらこの短剣、彼女の世界の物らしい。
 魔力を込めることで切れ味を発揮する武器なのだそうだ。
 なるほど、それなら平民にはそれが分かる筈がない。私も言われなければ気付かなかっただろう。
 試しに魔法を使う要領で集中しながら短剣を振るうと、バターを切るように石壁に裂傷が走った。
 急いでその場から走って逃げた。切れ味が良すぎる。

 そうそう、どうして彼女がお金を持っているのか不思議に思ったけれど、偶々持っていた金塊をオールド・オスマンに売り払ったからだそうだ。
 なるほど、だから結構な額を持っていたのか。
 でも、金塊って偶々持ってるようなものだっけ?



◆ ◇ ◆

 ―― 夜

 何故かキュルケが私の部屋に来た。(何故か蒼髪の少女を連れて。クラスメイトだけど、名前を知らない)
 どういうわけか、彼女にプレゼントを持ってきたようだ。
 プレゼントは剣だった。しかもただの剣じゃない、インテリジェンスソードだ。
 たしか、あの武器屋にあったものではなかったか? 話しかけられた記憶がある。
 でも、どうでもよすぎるので、今の今まで忘却の彼方に追いやっていた。
 剣は身売りされたとシクシクと情けない声で泣いていた。気持ち悪い。
 事情を聴くと、相場の倍の値段で買い取ったらしい。そりゃ剣も泣くわ。

 彼女はこの剣が気にいったようだった。たぶん、同情もあるのだろう。
 だがしかし、そうは問屋がおろさない。
 ツェルプストーから施しを受けるなど、ヴァリエール末代までの恥。
 断固拒否。絶対にノゥだ。

「そんなムキにならなくていいのに……」

 そうは言うけどね、人には譲れないものがあるのよ。


 喧々諤々と口喧嘩をした結果、決闘で決着をつける事になった。
 決闘方法はロープでつるされたデルフリンガー(インテリジェンスソードの名前)を魔法で地上に落とすというものだ。
 デルフは喚いていたが、鞘に納めると静かになった。鞘に納められると喋れなくなるらしい。

 決闘は私が先行で有利に思えたが、結果はキュルケの勝ち。
 私は無意味に学院の壁を爆破しただけだった。
 悔しがっていると、三十メイルはあろうかというゴーレムが現れた。
 そのゴーレムは、あっという間に学院の壁を破壊し、その穴に何者かの人影が飛び込むのが見えた。
 私たちは逃げるのに精いっぱいで、何もすることが出来なかった。



◆ ◇ ◆


 ※ウルの月 フレイヤの週 ユルの曜日

 ―― 朝

 早朝、私たち4人は学院長室に呼び出された。
 昨晩の事情聴取の為だ。

 一通り事情を説明し終えると、オールド・オスマンが昨晩の犯行は『土くれフーケ』の仕業だと切り出した。
 犯行声明が残っていたらしい。
 それからは大変で、先生方がお互いに責任を擦り付け合って、見るに堪えない光景が展開された。
 そんな騒ぎも、オールド・オスマンの怒声でピタリと止む。

 オールド・オスマンが言うには、宝物庫が破られたとはいえ、盗まれたものは何もなかったらしい。
 なら、一体何のためにフーケは宝物庫を破ったのだろうか? 皆もそれが疑問らしく、一様に首を捻っている。
 その答えは、宝物庫にあった。
 宝物庫の壁には、こう記されていたとミスタ・コルベールが説明する。

『誰にも破れぬ宝物庫の信用を確かに領収いたしました。土くれフーケ』

 なるほど、確かに信用は丸つぶれだ。
 しかし、フーケも変な事をするものだ。宝物の一つも取らないとは。
 オールド・オスマンは苦笑しながら、自身の予想を語ってくれた。
 それによると、フーケは目当ての物を盗み出せなかったので、そんな機転を利かせたのだろうと。
 そして、フーケは『破壊の杖』を盗もうとしていたのだろうと、オールド・オスマンは言う。
 フーケが盗み出せなかったという『破壊の杖』とは、一体何なのだろう?
 それを尋ねると、説明するよりも実物を見る方が早いと宝物庫に案内された。


 『破壊の杖』を見て、なるほどと誰もが納得した。
 『破壊の杖』は大き過ぎたのだ。一人で持ち出せるわけがない。
 オールド・オスマンによると、この『破壊の杖』は数十人がかりで『レビテーション』を使わないと移動させる事が出来ないらしい。

「フーケも『破壊の杖』がこんなモノだとは思わなかったのでしょうね……」

 そう言ったのは、学院長秘書のミス・ロングビルだ。その言葉に私も頷く。
 そもそも、どうしてこれが杖なのか?
 鉄で出来た箱から、これまた鉄で出来た管が突き出しているようにしか見えない。
 これに杖などという名が付いているのは、詐欺でしかないと思う。

「これって、『レオパルド2』?」

 キョトンとした顔で彼女が呟くのが聞こえた。
 どうやら、彼女はこれが何なのかを知っているみたいだ。
 なんでも最新鋭の搭乗兵器らしく、戦車という物らしい。
 オールド・オスマンはコレを手に入れた経緯も話してくれたが、長ったらしいので割愛する。
 要約すると、命の恩人から譲り受けたものらしい。髭がダンディなおじさんだとか。

 さて、フーケについてはこれぐらいにしよう。
 今夜は『フリッグの舞踏祭』だ。彼女にもドレスを見繕ってあげないとね。
 夜が楽しみだ。



 ―― 夜

 気合を入れて着飾ると、普段は私の事を馬鹿にしている奴らがワラワラと寄ってきた。
 でも全員振ってやった。わたくし、そんなに安くなくってよ。
 そして、彼女と踊った。女同士で踊るのはどうかと思ったが、ロクでもない奴らと踊るよりはましだ。
 彼女は踊った事がないらしく、たどたどしいステップだったので私がリードした。
 双月が綺麗な夜だった。


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