あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は紅き薔薇‐05



「おめでとう、ルイズ」
祝福の声がした。

真っ白な建物。
美しい装飾の施された場所。
美しくも荘厳、始祖ブリミルの祝福を受けたかの様な、神々しい場所。
ルイズはそこに居た。

赤い絨毯の上を歩いて行けば、途中に家族が立っていた。

「それでこそ我がヴァリエール公爵家の娘だ」
「流石は私の娘」
「ちびルイズにしては、やるわね」
「おめでとうルイズ」

父と母、二人の姉が口々に誉め讃える。
それがとても誇らしくて、ささやかな胸を張った。

――そうだわ、私はスクウェアクラス……いいえ、ペンタゴンなのよ!
今までの輝かしい軌跡を思い浮かべる。
そう、確かに自分は『ゼロ』だった。
落ちこぼれ、魔法が使えない『ゼロ』のルイズ。
それが悔しくて悔しくて、何度も草葉の影で泣いた。

しかしそれは全て過去。
変わったキッカケは使い魔召喚の儀式だった。
自分が召喚したのは、神聖で美しく強力な使い魔。
白の翼。 鋭き爪と牙。 その目は蒼く、銀や白に彩られた鱗をしていた。
風竜かと思ったルイズを更に驚かせたのは、その竜が言葉を話した事。
『我が主よ、我は主と共に』と言い、頭を垂れた。
ただの風竜ではない。
絶命したはずの風韻竜だった。 それがルイズに頭を垂れたのだ。
召喚の儀式において最も素晴らしい使い魔を呼んだのは、彼女だった。

それからルイズの素晴らしい奇跡という名の軌跡が始まった。
ルイズは、今まで成功しなかった魔法が使える様になった。
フライやレビテーションなどのコモンから始まり、風の偏在などのスクウェアクラスのメイジレベルの魔法を難なく使ってみせた。
錬金をすれば、黄金や白金、挙げ句の果てにはオリハルコンやミスリルなどの伝説級のものを錬金。
火のスペルを唱えれば、火竜ですら逃げ出すほどの圧倒的火力。
風の偏在を使えば、一気に十五体のルイズが現れる。
水のスペルを唱えればヴァリエール家の力をもってしても治せなかった姉の病気を治す。

これだけではない。
なんと、虚無まで使用可能になった。
伝説の系統、虚無。
王家の血を引いているヴァリエール家ならばおかしくもない。

ルイズは、あらゆる系統においてスクウェアクラス並みだった。
故に、王女ではなく女王となったアンリエッタにより新たなクラス、ペンタゴンが作られルイズは唯一そのクラスとなった。

聖地へ行き、エルフを圧倒。 聖地を奪還。
ロマリアに居る聖下自らの祝福を受けていれば、始祖ブリミルの神々しい姿を見た。
平民の間でもルイズは人気だった。

品行方正、容姿端麗。
胸さえ無視すれば完璧なルイズ。
始祖の再来とまで囁かれた。

そして今。
幸せの絶頂に居た。

歩くは赤い絨毯の上。
飾り気の無い、だがヴァリエール家の娘としてふさわしい最高級の絹で織り上げた純白のドレス。
娘の晴れ姿に男泣きする父から離れ、今後の運命を共にする男性の手を取る。

「美しいよ、ルイズ」

「あぁ……ワルド様」
髭のある青年。
『閃光』と呼ばれるスクウェアのメイジ、若くして隊長になる将来有望な者。
そして、ルイズの婚約者。
しずしずと歩む二人の行く途中には、見覚えのある二人。
キュルケとタバサ。
赤く扇情的なドレスと、青くその体格の幼さを隠す上品なドレス。

「やるじゃない、ルイズ」
「……凄い」

――当然だわ。
しかし一つ不思議なのは、ツェルプストーは兎も角タバサまで、まるで王族の様な服装をしている事。
考えてもみればタバサの家名は不明だ。

絨毯の先には司祭を勤める者。
若く美しい女王、アンリエッタ。
最後に会った時より何年も経ったがその美しさは増すばかり。
その傍には何処かで見た気もするが、よく思い出せない金髪の青年。
しかし何処かアンリエッタの雰囲気と似通い、またその手にする指輪を見て確信する。

――そういえば、そうだったわ。
あの青年はアルビオン皇太子だ。
アンリエッタ女王とは恋仲で……あぁ、違う。
今日から二人も夫婦になるのだ。
アルビオンとトリスティン。
始祖ブリミルの血を継ぐ二人の王族の結婚式はルイズとワルドの次。

――……でもアンリエッタ女王はウェールズ皇太子と恋仲だったかしら。
思い出せない、がそうなっているからにはそうなのだろう。

愛を誓うかの声に、ルイズもワルドも躊躇い無く頷き、指輪を交わし誓いの口づけを交わす。

「さぁルイズ! 新婚旅行だ、ハネムーンだ!」
「えぇ、ワルド様!」
手を取り合い二人は駆け出した。
行く先には、ルイズの召喚した風竜。
その背には一流の細工師による籠。 天井は無いが大きなハートマークがある。

――あぁ、私は幸せよ!
ルイズが強く握れば、ワルドが更に強く握り返す。
二人の愛は不滅!
未来永劫変わる事も無い!
風韻竜の背に乗せた籠に乗り、二人は旅立つ。
行く先は無い。
ただ、二人の気持ちが行く場所へ。

「あぁ、ワルド様……私はなんて幸せなのかしら」

「でもねルイズ。 僕は少し悲しいよ」
ワルドは首を横に振る。

「僕達は、夫婦だよ。 これからの一生を共にするというのに家名で呼ばないでほしいんだ」

「あ……」
言われてみればそうだ。
ルイズは淑女の様に奥ゆかしく顔を赤らめた。

「そうね、……ジャック」

「ありがとう。 僕のルイズ」

「あぁ、ジャック!」
「ルイズ!」
ルイズは繊手をワルド――ジャックの背中に絡めお互いに抱き合う。

二人を祝福するは、虹。
美しい虹。
虹のアーチをくぐり抜けると、雲が紫色に輝いた。
そこから人影が現れる。

「ルイズ……あれは、まさか」
「そうよジャック……見た事があるわ! 始祖ブリミルよ!!」

――あぁ、始祖まで私達を祝福して下さるだなんて!
嬉しさのあまりに涙が流れる。

「ルイズ、どうしたんだ? 涙なんか流して」

「何も無いわ、ジャック。 私は……――――?」
声が違う。
顔をあげればそこには品の無いマントも杖も無い黒髪の平民。
「きゃぁぁ!」
平民を突き飛ばす。
平民は籠の端に軽く背中を打っただけですぐに起き上がる。

「ああ、あんた誰っ!」

「誰って……」
平民はにっこり笑いかける。

「お前の使い魔、だろ?」
「え、え、えぇっ!?」
すると突然足元が揺らいだ。
見ると、輝かしい使い魔の姿が一変している。
白い身体から、赤い衣服。
此方を睨む、赤いドレスの人形。

「おまえは私のしもべよ。 一生仕えなさい」
口を開き、言う。

「う、嘘よ!」
首を横に振り否定するルイズを平民が襲う。

「ルイズぅ……」
平民がルイズにのし掛かる。

「あんなに愛を囁きあったのに……」

「し、知らないわよ、この……!」
杖を振るいファイアーボールを唱える。
しかし、平民を巻き込んで爆発するのみ。

「え、嘘……」
何度唱えても結果は同じ。
爆発爆発爆発爆発爆発爆発。

「優しい夢の時間は終わりよ。 此処からは、悪夢の時間」
ルイズの傍に赤い人形が立っていた。
人形の足元から赤い薔薇の花弁が沸き上がり、ルイズの籠の周囲を覆っていく。

「おまえがペンタゴンになんて、なれるわけが無いじゃないの、おーほっほっほ」
人形の高笑い。

「ゼロ! ゼロのルイズ!」
平民が囃し立てる。
ルイズは両耳を塞ぎ、その場に小さくなった。

「ゼロ! ゼロ! ゼロ!」
しかし声は、はっきりと聞こえた。
聞きたくない、でも聞こえてしまう。

「ち、違う……」
涙が出てきた。

「おまえはゼロ。 平民と同じ卑しき者なのよ」

「違うわ! わ、私は、私は……っ!!」

籠の周囲に仮面を着けた者達が現れる。
多種多様な仮面を着けているが、彼らはルイズの知る人物達によく似ていた。
「平民! さっさと出ていきなさい!」
白い仮面をした金髪の女性が言う。

「なんと汚らわしい。 おまえのせいで私が姦通したなどという噂が立ったのは、死刑では足りませんね」
ルイズに似た、しかし威圧感も何もかもが違う鬼の仮面をした女性。

「恥ずかしいことだ。 我がヴァリエール家の家族と騙る平民が居たとは……」
立派な衣服と立派な仮面の金髪の男性。

「あぁ、私のルイズ、ルイズは何処なの? 偽物じゃない本物のルイズは!」
ピンクブロンドの優しげな仮面をした女性。

「私の幼馴染みが平民だったなんて……許せません。 ヴァリエールにも、厳重な処罰を」
高貴な雰囲気を持つ、白いドレスをした少女。

「あぁら。 ヴァリエール家じゃないのにどうして学院に居たのかしら?」
褐色の肌に赤毛、飾り付けも派手な仮面をした少女。

「…………早く、消えて」
青い髪をした小柄な、黒い仮面を着けた少女。

「なんという事だ。 ヴァリエール家が平民を僕の婚約者にするだなんて失望したよ、侮られたものだ」
髭の生えた、白い仮面の青年。

消えろ、消えろ、消えろ、消えろ。
仮面の彼らは口々に言う。
耳を塞いでも声は消えない。
何度も何度も、ルイズの耳にこびりついて取れない様に。
「分かったかしら?
おまえに未来は無いのよ。 私のしもべ――奴隷として仕える運命しかない」
勝者の笑みを浮かべて人形は、ルイズを指す。

「嫌よ、そんなの、違うわ!
誇り高き貴族が、ヴァリエールの娘が!」
誰かの奴隷になるなど絶対に有り得てはならない。

「なぁに? まだ認めないなんて、くだらなぁい」
薔薇の花弁の向こうに黒い影が見えた。

「今更何をしたって、現状は何も変わらないのかしらー!」
金の影。

「まったく、チビで胸も無い人間が偉そうに口を聞くんじゃねぇですぅ」
翠の影。

「君を守る家や家族は、何処にも無いんだ」
蒼の影。

「何処にも居場所が無いなのー!」
桃の影。

「偽りの時間が終わりを告げる……」
そして、白の影。

合計、六つの影がそこにある。
全てがルイズを笑う。

「だ、黙って……黙りなさい……」
がたがたと身体を振るわせる。

「おまえに、未来なんて無いのよ」
目の前の赤い姿が、言った。
残酷な、宣言。
その宣言にルイズは一瞬、目の前が黒くなった気がした。
「う、嘘、嘘、そんなはずがないわ……」

ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ。
消えろ、消えろ、消えろ、消えろ。
声は止まず、ルイズの心を蝕む。

――こんなの、こんなの、有り得ないのよ! 夢なんだわ!

「可哀想な人間。
おまえを庇う人も居ないなんて、人望が無いのかしら?」
人形が嘲笑う。

爆発に気絶していた平民の姿がどろりと溶けた。
肌の色と青、そして黒の泥となりルイズに触れようと襲う。

「ルイズ……ル、イズ……ル…………イ……」

「嫌、嫌!!」
泥が足に絡まろうとする。
必死で逃げようとするが、籠は狭く逃げる事は出来ない。
いっそのことと飛び降りようとすれば、仮面を着けた二人に阻まれる。

「嫌、嫌! 助けて、助けて!!」
手を伸ばしても、誰も助けてはくれない。

足に泥が絡みついた。
人肌と同じ温度で身体を這う。

「いや、嫌よ。 誰でも良いの、助けて、助けて……!!」
涙で前が見えない。
涙と薔薇の花弁が視界を遮る。

泥は、やがてルイズの下半身を覆う。
上半身まで絡み、覆わんとする。

「いや、いやぁぁぁ!!」
懇親の、叫びを上げた。

薔薇の花弁から誰かが現れ、ルイズの手を掴んだ。
その姿は花弁と同じ色彩の…………。






「あぁぁぁっ――!!」
ルイズは跳ね起きた。
見覚えのある天井。 気持ちの良いベッドと枕は汗で濡れている。

「はぁ、はぁ……」

――ゆ、夢……?
窓を見れば、まだ夜も明けたばかり。
生徒も寝ている頃だ。

夢であると判断し、肩の力を抜いた。

――良かった……。
あれか現実だなんて思いたくもない。

ベッドの傍にあるドレッサーの椅子に、真紅が座っていた。
ルイズを見ていない。

「随分とうなされていたわね。
眠りが妨げられたわ」

「う、五月蝿いわね」
ルイズは窓の外に視線を移す。
見れば、使用人が働いていた。
それも静かに。 貴族を起こさぬように。

「悪い夢でも見たのかしら?」
真紅が問う。

「…………」
ルイズは黙る。
答えるつもりがないのではない。
答えられないのだ。

悪夢だった。
だが、どうしてだろう。
悪夢だと断言出来るのに、内容が思い出せない。

覚えているのは、最後に誰かが助けてくれた事。
それだけ。

「貴族か悪夢なんて見るはずがないわ。
うなされていた? そんなはずがないじゃないの」
精一杯の虚勢をはる。
「そう」
と、真紅はさして興味も無い様に言う。
椅子から降りると、昨日の夜二人で紅茶を飲んだ机の上に置いた箱――トランクの前に行く。

「今度からはうなされないでちょうだい」

「うなされてなんか無いわ!」
ルイズが言うと真紅は優しく微笑み、トランクの中に戻った。

トランクを閉める音。
ルイズは一人になる。

――誰だったのかしら。
あの時、助けてくれたのは。

――もしかして……ワルド様?
しかし、すぐに違うと思い直す。
ワルドにしては手が小さく、そして柔らかい。

ワルドの手があんなに小さく柔らかいだなんて、信じられない。
あれは、女性――少女の手だ。

「……そういえば」

――真紅はどうしてドレッサーの椅子に座っていたのかしら。
化粧品など少ししか無い。
あとは櫛などだ。

ドレッサーの上は片付いており、鏡に埃は無い。
彼女は、ただ座っていただけなのだろうか?
分からない。

「ふ、あぁ……」
安心したら、睡魔が襲いかかってきた。
目がとろんとしてくる。

ルイズは再び、横になる。
眠気は深くなり、眠りという名の暗闇に沈んだ。

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