「雪風とボクとの∞(インフィニティ) ∞6」
――……今日はミツナリとデート……ランラランララーン……。
――……でもただ1つ心配なのは……メガネスキー・ミツナリのいつもの暴走……。
「……ミツナリ……お願い……今日だけは1日怒らずにいて……」
「? ボクは1度も怒った事など無いぞ」
拝むようにして頼んだもののあっさり流されて、タバサの頭に大粒の汗が出る。
「……とにかく……今日1日怒っちゃ駄目……の約束……」
そう言うとタバサは三成の小指に青い細紐を巻き付けて微笑んだ。
「!!」
――……でもただ1つ心配なのは……メガネスキー・ミツナリのいつもの暴走……。
「……ミツナリ……お願い……今日だけは1日怒らずにいて……」
「? ボクは1度も怒った事など無いぞ」
拝むようにして頼んだもののあっさり流されて、タバサの頭に大粒の汗が出る。
「……とにかく……今日1日怒っちゃ駄目……の約束……」
そう言うとタバサは三成の小指に青い細紐を巻き付けて微笑んだ。
「!!」
小指に結んだ約束
ケンカばかりの不良学生。そんなアイツが気になる風紀委員長の私。
「もうケンカしないで」
アイツの小指に結んだ約束。
けれどアイツはその約束を破った。
「もう知らない!」
でもそのケンカの理由を知った時私の心は……。
これはひと昔前の恋愛ものの黄金パターンであるが、今なおその輝きは色あせる事はない。
眼牙書房「あの日あの時あのセリフ‘80」(平賀才人著)より抜粋
ケンカばかりの不良学生。そんなアイツが気になる風紀委員長の私。
「もうケンカしないで」
アイツの小指に結んだ約束。
けれどアイツはその約束を破った。
「もう知らない!」
でもそのケンカの理由を知った時私の心は……。
これはひと昔前の恋愛ものの黄金パターンであるが、今なおその輝きは色あせる事はない。
眼牙書房「あの日あの時あのセリフ‘80」(平賀才人著)より抜粋
(感動ー!!)
小指を立てて全身で感動を表現する三成。
「わかったよ、タバサ。この小指に誓ってボクは今日1日仏様のように……」
頬を赤らめ笑みを浮かべてタバサにそう誓った三成だったが、その誓いを終えるより早く彼の背後で美女達がビラの配布を開始した。
「コンタクトレンズフェア開催中でーす」
「この機会にレッツコンタクトー!」
「ムガー!!」
「……早い……」
女性達に飛びかからんばかりに吼える三成をタバサはどうにか押さえ、小指に巻いた細紐を見せて正気を取り戻させる。
「……ミツナリ……小指……」
「はぅあ!!」
「……とにかくここから離れよう……」
タバサはなおも猛る三成の腕をつかみ、引きずるようにして(というか本当に引きずって)その場を後にしたのだった。
小指を立てて全身で感動を表現する三成。
「わかったよ、タバサ。この小指に誓ってボクは今日1日仏様のように……」
頬を赤らめ笑みを浮かべてタバサにそう誓った三成だったが、その誓いを終えるより早く彼の背後で美女達がビラの配布を開始した。
「コンタクトレンズフェア開催中でーす」
「この機会にレッツコンタクトー!」
「ムガー!!」
「……早い……」
女性達に飛びかからんばかりに吼える三成をタバサはどうにか押さえ、小指に巻いた細紐を見せて正気を取り戻させる。
「……ミツナリ……小指……」
「はぅあ!!」
「……とにかくここから離れよう……」
タバサはなおも猛る三成の腕をつかみ、引きずるようにして(というか本当に引きずって)その場を後にしたのだった。
それからしばらくして、お洒落なカフェの店内に2人の姿があった。
「もう大丈夫だよ、タバサ。すっかり落ち着いたよ」
「……本当……」
頷く三成の視線は、入店した客に笑顔で対応する眼鏡をかけたウェイトレスに向けられていた。
「あのめがねのウエイトレスさんを見たら、心はすっかり穏やかさ」
「……ミツナリ……デート中……」
若干声を荒げながらも、三成が落ち着いた事に安堵しつつタバサはジュースを口にした。
(……まあ……機嫌が直ったからいいけれど……)
そんな事を考えていると、隣のテーブルに座っている客の会話が耳に入ってくる。
「あの店員美人だな~」
「ああ」
「でも眼鏡を外した方がもっといいよな」
「うん」
客達の発言に三成は眼鏡の向こうから激しい光を放ち、タバサは飲んでいたジュースを噴き出した。
「あ、でも最近よく聞くんだけど、めがねっ娘萌えってあれ何なの?」
「ほら、よくあるじゃん。不細工な女が眼鏡外したら可愛くてキューンって。あれあれ」
「あー、そういう事かー」
「ちが――」
「……ミツナリ小指……」
今まさに絶叫せんとする三成を再度何とか押さえ込んだタバサだったが、三成にとって彼らの言葉は到底許しがたいものだった。
「ハルケギニアでは決闘を申し込む時に手袋を投げつけるというが、奴らの発言は僕にとってまさにそれ!」
「……それほど……」
タバサはとにかくこの場を離れるべきだと考え、三成を連れてカフェから出る事にした。
「……出よう……ミツナリ……もうすぐ芝居が始まる……」
「もう大丈夫だよ、タバサ。すっかり落ち着いたよ」
「……本当……」
頷く三成の視線は、入店した客に笑顔で対応する眼鏡をかけたウェイトレスに向けられていた。
「あのめがねのウエイトレスさんを見たら、心はすっかり穏やかさ」
「……ミツナリ……デート中……」
若干声を荒げながらも、三成が落ち着いた事に安堵しつつタバサはジュースを口にした。
(……まあ……機嫌が直ったからいいけれど……)
そんな事を考えていると、隣のテーブルに座っている客の会話が耳に入ってくる。
「あの店員美人だな~」
「ああ」
「でも眼鏡を外した方がもっといいよな」
「うん」
客達の発言に三成は眼鏡の向こうから激しい光を放ち、タバサは飲んでいたジュースを噴き出した。
「あ、でも最近よく聞くんだけど、めがねっ娘萌えってあれ何なの?」
「ほら、よくあるじゃん。不細工な女が眼鏡外したら可愛くてキューンって。あれあれ」
「あー、そういう事かー」
「ちが――」
「……ミツナリ小指……」
今まさに絶叫せんとする三成を再度何とか押さえ込んだタバサだったが、三成にとって彼らの言葉は到底許しがたいものだった。
「ハルケギニアでは決闘を申し込む時に手袋を投げつけるというが、奴らの発言は僕にとってまさにそれ!」
「……それほど……」
タバサはとにかくこの場を離れるべきだと考え、三成を連れてカフェから出る事にした。
「……出よう……ミツナリ……もうすぐ芝居が始まる……」
劇場の客席に座り、タバサは心配そうな表情で三成に視線を向ける。
「……大丈夫……ミツナリ……」
「大丈夫……、大丈夫だよタバサ……」
そう答えた三成だったがその肉体からは尋常ならざる殺気が放出されていて、どう考えても大丈夫そうには見えなかった。
「………」
「本当に大丈夫さ。僕はね、劇場が大好きなんだ」
「……あ……私も……芝居はやっぱり劇場で見ないと……」
「違うよ。芝居観る時めがねかける人が多いだろ♪」
(……そこなの……)
ほわーんとした三成の表情に一瞬苛立ったタバサだったが、
(……まあ……ミツナリの機嫌が直ってくれれば……あれ……何で私が怒るのを我慢しているんだろう……)
三成の機嫌が直った事に複雑な思いをしながらもひとまず安堵したタバサ。
しかし、三成の怒りを臨界点に導く存在は2人のすぐ傍まで迫っていた。
「ん? お前なんで芝居見るのに眼鏡外すの?」
すぐ前の席に座っているカップルの言葉がもたらす破滅を予感し、タバサの心臓が激しく高鳴る。
「だってこれ伊達眼鏡だしー、枠邪魔で見づらいからー」
「じゃあ何で眼鏡かけてんだ?」
「えーっ、だって眼鏡かけてると頭のいい人に見えなくなーい?」
「あー、見えるー! 超頭よく見えるー!」
「あ、お前あれじゃん、眼鏡っ娘じゃん。萌え~」
「やだー、キモーイ」
「萌えー」
「キモーイ」
「萌え萌えー」
「キモキモーイ」
本人達にしてみれば軽口のつもりなのだろうが、軽口とは受け止められない存在がすぐ隣に座っているタバサにとって彼らの言葉は洒落にならない暴言であった。
恐る恐る三成に視線を向けたタバサは、血が流れるほどに強く唇を噛み締めている三成に無数の手袋が投げつけられている光景を幻視した。
「……ひいいいいっ……」
「タバサ」
「……はい……」
「1つ頼みがある」
「少しの間目と耳をふさいでいてくれないか?」
「……あ……」
その言葉の意味するところに気付かないタバサではなかったが、
「頼む!」
「………」
三成の強い意志に負けて両目を閉じ両耳をふさいでメロディーしか覚えていない歌を口ずさむ。
「……ラララーラ……ラララー……ランランララーララ……ランララー……」
幕が開いて光に包まれた舞台が姿を現す。三成達よりも後方に座っている観客には、雄叫びと共にカップルに踊りかかる影が見えた事だろう。
「シャガアアア!!」
「え!? 何!?」
「……ラララララーラ……ランラランラララン……ランラランランララン……ランラランラー……ララララーラ……」
「おのれら百万べん死ねー!!」
「きゃー!」
「ちょっと、お客様ー」
「きゃー、ケインちゃん! ケインちゃん耳血が止まらな――」
「……大丈夫……ミツナリ……」
「大丈夫……、大丈夫だよタバサ……」
そう答えた三成だったがその肉体からは尋常ならざる殺気が放出されていて、どう考えても大丈夫そうには見えなかった。
「………」
「本当に大丈夫さ。僕はね、劇場が大好きなんだ」
「……あ……私も……芝居はやっぱり劇場で見ないと……」
「違うよ。芝居観る時めがねかける人が多いだろ♪」
(……そこなの……)
ほわーんとした三成の表情に一瞬苛立ったタバサだったが、
(……まあ……ミツナリの機嫌が直ってくれれば……あれ……何で私が怒るのを我慢しているんだろう……)
三成の機嫌が直った事に複雑な思いをしながらもひとまず安堵したタバサ。
しかし、三成の怒りを臨界点に導く存在は2人のすぐ傍まで迫っていた。
「ん? お前なんで芝居見るのに眼鏡外すの?」
すぐ前の席に座っているカップルの言葉がもたらす破滅を予感し、タバサの心臓が激しく高鳴る。
「だってこれ伊達眼鏡だしー、枠邪魔で見づらいからー」
「じゃあ何で眼鏡かけてんだ?」
「えーっ、だって眼鏡かけてると頭のいい人に見えなくなーい?」
「あー、見えるー! 超頭よく見えるー!」
「あ、お前あれじゃん、眼鏡っ娘じゃん。萌え~」
「やだー、キモーイ」
「萌えー」
「キモーイ」
「萌え萌えー」
「キモキモーイ」
本人達にしてみれば軽口のつもりなのだろうが、軽口とは受け止められない存在がすぐ隣に座っているタバサにとって彼らの言葉は洒落にならない暴言であった。
恐る恐る三成に視線を向けたタバサは、血が流れるほどに強く唇を噛み締めている三成に無数の手袋が投げつけられている光景を幻視した。
「……ひいいいいっ……」
「タバサ」
「……はい……」
「1つ頼みがある」
「少しの間目と耳をふさいでいてくれないか?」
「……あ……」
その言葉の意味するところに気付かないタバサではなかったが、
「頼む!」
「………」
三成の強い意志に負けて両目を閉じ両耳をふさいでメロディーしか覚えていない歌を口ずさむ。
「……ラララーラ……ラララー……ランランララーララ……ランララー……」
幕が開いて光に包まれた舞台が姿を現す。三成達よりも後方に座っている観客には、雄叫びと共にカップルに踊りかかる影が見えた事だろう。
「シャガアアア!!」
「え!? 何!?」
「……ラララララーラ……ランラランラララン……ランラランランララン……ランラランラー……ララララーラ……」
「おのれら百万べん死ねー!!」
「きゃー!」
「ちょっと、お客様ー」
「きゃー、ケインちゃん! ケインちゃん耳血が止まらな――」
「タバサ、すまん! 本当にすまなかった!」
夕暮れの公園。三成は平謝りしつつタバサの後を追っていた。
「……約束したのに……」
「だから本当に……」
「……約束破った罰……」
そう言うとタバサはおもむろに眼鏡を外し、
「……眼鏡捨てる……」
そう言ってゴミ箱の上に眼鏡をかざした。
「わー! 落ち着け、タバサー!! 頼む、それだけは……! 反省してる! 僕が悪かった! もうしません! ごめんなさい!!」
「……わかればよろしい……」
そう言って眼鏡を上げたタバサだったが……、
「めがねの上げ方はそうじゃなーい! こうだって前にも言っただろ!!」
「……ごめんなさい~……」
夕暮れの公園。三成は平謝りしつつタバサの後を追っていた。
「……約束したのに……」
「だから本当に……」
「……約束破った罰……」
そう言うとタバサはおもむろに眼鏡を外し、
「……眼鏡捨てる……」
そう言ってゴミ箱の上に眼鏡をかざした。
「わー! 落ち着け、タバサー!! 頼む、それだけは……! 反省してる! 僕が悪かった! もうしません! ごめんなさい!!」
「……わかればよろしい……」
そう言って眼鏡を上げたタバサだったが……、
「めがねの上げ方はそうじゃなーい! こうだって前にも言っただろ!!」
「……ごめんなさい~……」