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ツガイノツカイマ-前編

「――夜明けには、君を導く者がここに来る手筈になっている。
 まずは彼らに従い、彼らの言う通りに動くんだ」

長い口付けの後、青年は青い瞳の少女に向け、そう囁いた。
少女はすぐには答えず、伏し目がちに、そっと傍らのベッドへと瞳を向けた。
月明かりに照らし出された純白のシーツの上には、小柄な青い髪の少女が、御伽噺の姫君のように静かに横たわっていた。

自分と全く同じ姿の、同じ色の瞳を持った、鏡映しのような少女。
生まれてからこの方、その存在すら知ることすら無かった、生き写しの双子の姉。
大国ガリアを統べる冠を抱く筈だった、うら若き王女、シャルロット・エレーヌ・オレルアン。

「明日からは、君が彼女の代わりになる」

穏やかな若者の言葉が、少女を色褪せた現実へと引き戻す。
振り向き仰ぐ視線の先で、若者の瞳が、それぞれに異なる輝きを放つ。

「……彼女は、どうなってしまうの?」

「さっきも言ったとおりさ、彼女はジョゼットとして、君の代わりになってもらう。
 大丈夫、彼女の存在は真実を知る者にとって重要な人質でもある。
 絶対に手出しをしないと誓うよ」

「…………」

いつかの日と寸分違わぬ、憧れの若者、ジュリオの笑顔。
少女は静かに瞑目した後、ゆっくりと首を振るった。
元より、かつて自らが抱いた想いに殉じると決心した彼女である。
今更、同じ血が流れているだけの他人の末路を案じるなど、偽善も良い所であった。

「私の事はどうでもいいわ、ただ、あなたの望むがままに……」

少女の確かな決意に、若者は静かに頷くと、横たわる少女の体を、表で待つ風竜の背へと乗せた。
忠実なる若者の僕は、頭部を撫でる右手を合図に、大柄な成竜にあるまじき穏やかな動きで上空へと飛び立った。



「それにしても……」

風竜を巧みに操りながら、その背にくくりつけた少女を、じっ、とジュリオが見つめる。
一瞬の交錯の後、再び生き別れとなった妹と寸分違わぬ、青い瞳に青い髪。
全く瓜二つの器を有しながら、片方はメイジの最高峰、もう一方の中身は【虚無】
一種狂信的とも言えるブリミル教の信徒たる彼も、二人を分かつ数奇な運命に、興味を抱かずにはいられなかった。

「ガリアという国は、何か双子に呪われてでもいるのかな?
 もっとも、おかげでこちらは、切り札を秘匿することが出来たわけだが……」

「……ん」

「!」

眼前の少女が唐突にもらした呻きに、ジュリオの思索が中断される。
彼女を昏倒させた眠り薬は、それほど強力な代物とは呼べないが、
それでもこれほどの短時間で、覚醒出来るものではない。
それが、若くしてスクウェアの高みに至った少女の精神力ゆえなのか、
あるいは、初めから体内に何らかの備えを施していたのか。
一連の行動の中で初めて起こった誤算に、神の右手は、用心深く状況を探る他は無かった。

「……これは、驚いたな。
 流石に若くとも大国ガリアの統治者……、と、言ったところか?」

「……く、うぁ…・・・」

「ああ、だが、その戒めを解くほどの力は戻っていないようだね。
 できればそのまま、おとなしくしていただけると助かるよ。
 迂闊な事をされて、地面にまっ逆さまなんて事態になっては、こっちとしても後味が悪いからね」

「…………」

「大丈夫、これ以上、こちらは手荒な真似をする気は無いよ。
 ただ、現世の事はきれいさっぱり忘れて、片田舎の僧院に引っ込んでもらえれば十分さ」

「……だ、……め」

ようやくといった感じで聞こえてきたシャルロットのか細い声に、ジュリオが内心で落ち着きを取り戻し、
未だ夢半ばと言った風の少女に向け、続けざまに言葉を放つ。

「そんなに邪険にする事は無いよ。
 なに、君がこれから行く場所は、住んでみれば風光明媚な良い土地だよ。
 君は知らない事だろうが、何せそこは、
 かつて、ガリアの政争に追いやられた君の妹君が住んでいた場所なんだからね」

「…………」

「生まれながらにこの世の光を知らなかった哀れな少女さ。
 姉として、せめて残りの半生を肩代わりしてあげてもいいんじゃないかな?」

「……だめ、こない、で……」

「……何だって?」


軽口を叩きながら対主の観察を続けていたジュリオも、そこで異変に気づいた。
うなされるようにうわ言を繰り返す少女、その耳に、彼の言葉は届いていない。
例えるならば、トランス状態に陥った呪い師が、本人の意思とは裏腹に体を動かすように、
何か外部から届いた超感覚が、彼女の急速な覚醒を促していたのだ。

刹那、見えざる脅威に怯えるかのように、風竜の背がビクリと跳ねる。

「――と!」

あわててジュリオが右腕を差し出し、愛竜を落ち着かせて体勢を立て直す。
だが、その額には大粒の汗がじっとりと滲み始めていた。
いかに一瞬、それも油断していたとはいえ、【神の右手】ヴィンダールヴの制御下にある成竜を怯ませる脅威など……、

その瞬間、心音が一つドクリと高鳴り、ジュリオは自らの見落としに思い至った。

「来ては……、来ては、ダメ…… シル、フィード……」

「……まさか!」



『 ク ワ オ オ オ ォ オ オ ォ ォ ォ ―――ッ ! ! 』



大気を切り裂くような金切り声が轟き渡り、咄嗟にジュリオが後方を仰ぎ見る。
その視界の先に映ったのは、ゆうに成竜を上回ろうかという巨体を有した、半人半鷲のキメラ。
しなやかな黒髪を振り乱しながら憤怒の形相で突っ込んでくる、有角の乙女であった。



シャルロットが【彼女】と初めて出会ったのは、少女がまだ、タバサと名乗っていた頃――。
うららかな陽光の降り注ぐ、トリステイン魔法学院の庭先での事だった。

草原を覆い尽くさんばかりの威容で出現した【彼女】を前に、居合わせた生徒たちはもちろん、鉄面皮で通っていた少女ですらも、
その時は、まるで呆けたように、ただ茫然とその巨体を仰ぎ見る事しか出来なかった。

その半身は、さながら巨大な猛禽。
巨鳥の骨格を有した、スラリと長い後ろ足から生える、象のように逞しい爪。
羽の一枚一枚が人間の子供くらいはあろうかという、猛々しい荒鷲の翼。
漆黒の体毛を内側から押し上げる、巨竜のような鱗と蛇腹。
大型の鯰が取りついたかのような巨大な尾ひれは、まるでそれ自体が一個の生物のように、力強く艶やかにうねる。

だが、タバサをさらに驚かせたのは、巨大な乙女の姿を備えた上半身であった。

女性的な柔らかさを持つ双丘に、ほのかに丸みを帯びた美しいくびれ。
体格に比してほっそりとした両腕の先に生える、前足を兼ねた、恐ろしく鋭い鉤爪。
艶やかな漆黒の長髪を掻き分けて生える、冠のように大仰な三本の角。
愛らしいふっくらとした両頬の脇には、カサゴのように鋭く尖った両耳。

この強烈な個性を有した生物が一体何者であるのか……?
常日頃より古今の書物を読み耽り、教員顔負けの知識を持つタバサであっても、その正体を推し測れなかった。
強いて言うならば、人工的に様々な生物を掛け合わせた【合成獣】と言うのが、最も近い答えであろうか?

だが、かつて遭遇したキメラ達がもたらした、特有のおぞましいイメージと、
眼前で不思議そうにこちらを覗きこむ、大きく澄んだ【彼女】の瞳とは、タバサの中で、どうしても一つにはならなかった。

これだけ奇異な外見でありながら【彼女】は美しかった。
野を駆ける野生馬が、空を行く大鷲が、天高く潮を吹く勇魚がそうであるように、
【彼女】の存在はあまりにも自然で、唯そこに在るだけで、タバサの心を震わすのだ。

ともあれその後、コンタクト・サーヴァントの儀式はつつがなく進み、
新たにシルフィードの名を得た【彼女】は、無事、少女の使い魔となった。


使い魔との共同生活が始まり、タバサがまず驚いたのは、シルフィードの奔放な性格であった。

【彼女】は好奇心がひときわ旺盛で、生徒と言わず使い魔と言わず、気に入った者には鼻を鳴らして擦り寄っていった。
これが犬猫なら話も分かるが、相手は成竜をも凌ぐ体躯を誇る肉食獣である。
臆病な使い魔達の中にはパニックを起こす者も少なくなく、【彼女】の行く所、常にトラブルが絶えなかった。

そのくせ、シルフィード自身、巨体に似合わぬ臆病な一面があった。
とりわけ鼠は大の苦手で、学院長の使い魔、モートソグニルと鉢合わせになった時には、
周囲の者が手を付けられないほどの狂乱を引き起こした。
その大立ち回りの結果、タバサはシルフィードを学院内に乗り入れる事を禁止されたのである。

そんな、目を離せば何かと手を焼かせる使い魔であったが、タバサ自身は【彼女】の奔放さを愛した。
猛禽の翼を雄大に広げ、大空を悠然と舞うシルフィードの姿は、地上のタバサからは、大層美しいものに見えた。

【彼女】の美しさは、その在り方によるものだ、と、タバサは思う。
獲物を追うための翼、獲物を捕らえるための鉤爪、獲物を喰らうための牙――。
多くの野生動物がそうであるように、【彼女】の五体は、極めてシンプルな生命活動のために形作られている。
シンプルなものは、ただ、それだけで美しい。

彼らの美しさに比すれば、人の世は、余計なしがらみに縛られ過ぎている。
人質に縛られ闇の稼業に手を染め、心底を欺きながら復讐の牙を研ぐ少女などは、その最たる例であろう。

ガリアの政争の暗部を担う北花壇騎士団に所属し、人知れず、度々本国に呼び出されるタバサであったが、
その任務の際に、使い魔のシルフィードを伴う事はなかった。
【彼女】の巨体と奇異な外見が、隠密行動の多い北花壇騎士の任に沿うものではない、という理由も確かにある。
だがそれ以前に、タバサは【彼女】の美しい生き方を、自らの裏仕事で汚したくは無かったのだ。

その代わり、タバサは任務より戻ると、まっすぐにシルフィードの元へ行き、その背に跨った。
【彼女】の翼で風を感じ、広大な天空を駆ける時のみ、少女は人の世の業から解放され、自由な魂でいられたのだ。
たとえ任務の役に立たずとも、タバサにとってシルフィードは、やはりかけがえの無いパートナーであった。

だが、それゆえにタバサの心中には、一抹の心めたさが残った。
満面の笑みを浮かべ頬を擦り寄せてくるシルフィード。
その笑顔は、タバサが【契約】によって【彼女】の在り方を歪めてしまった証なのだから……。



「もう、出てきても大丈夫」

安らかに寝息をたてるシルフィードを横目に、タバサが後方に呼びかける。
ほどなく、かさり、と草むらを掻き分け、一人の少女がタバサの前へと姿を見せた。

「……本当に、こんな形のお別れで良いの?」

「それが、この子ためだから」

予想通りのタバサの回答に、金髪の少女・ティファニアは、その端正な面立ちを沈鬱そうに歪めたが、
しばしの瞑目の後、ふう、と大きく息をつき、右手に持った一本の杖を、ゆっくりと眼前に掲げた。

やがて、漆黒の闇に包まれたリネン川のほとりに、何かの旋律のような、奇妙な詠唱が響き始めた。

ゆっくりとタバサが周囲を見渡す。
対岸に点々と映る輝きは、敵陣の篝火。
大河を挟んでじりじりと対峙を続けていたトリステイン・ロマリア連合とガリア。
少女の長年の悲願を乗せた決戦の時は、既に間近まで迫っていた。

もしも、この戦に勝つ事が出来たならば、タバサはガリアの玉座を戴く正当な主、
シャルロット・エレーヌ・オレルアンとして、故郷の地を踏む事になるだろう。
だがその時、目の前で無邪気な寝顔を見せるシルフィードは、どうなってしまうだろうか?
【彼女】の雄大な体躯は、新生ガリアの象徴、新たな王の持つ力の証として、人々より称えられ、さぞかし大いに崇められる事であろう。
そしてそれは【彼女】のあるべき姿を、今まで以上に酷く歪める事になる。

そっと、シルフィードの脇腹を撫でる。
そのなめらかな肌に刻まれた、一際大きな傷跡は、
半年ほど前、姦計にかかり囚われの身となったタバサを助けた際に負ったものだった。
幸い命に関わるほどの怪我では無かったが、傷は消えなかった。
その傷跡を見る度に、タバサは己が身が引き裂かれんばかりの、深い悲しみに包まれた。

「シルフィード……」

穏やかな口調で、タバサが彼女の鼻先に手を乗せる。

「この名前を呼ぶのは、これで最後。
 もう、契約に縛られる必要は無いわ。
 あなたが何処から来たのか、私は知らないけれど、
 今度こそ自由な空で、生きて、恋をして、子を成して……」

「……下がって、タバサ」

促されるままに、二、三歩、タバサが後方へと後ずさる。
それに合わせ、ティファニアが静かに右手を差し出す。
やがて、杖先からこぼれる淡い輝き、大いなる始祖の伝えた忘却の光が、ゆっくりと【彼女】の全身を包み込む。

数瞬とも永遠とも思える時間の果てに、やがて光は潰え……。
その日、タバサは【彼女】と別れた。



確かに、別れた筈だった……。



――そう、確かにあの時、二人は別れた筈、だったのだが……。

始祖ブリミルの定めた契約のルーンは、当人の残した【虚無】の力すらも拒むと言うのか?
あるいは、未知なる獣の持つ本性が、魔法の影響すらも排除したという事なのか?

【彼女】は、シャルロットと名を戻した少女の許に、再び姿を現した。

「シル…… フィード……」

再び目を覚ました時、シャルロットの眼前には、決死の表情を浮かべる【彼女】の顔があった。
久しぶりに目にした使い魔の姿に、少女の胸がぎゅっ、と締め付けられる。

かつての美しい姿は見る影もなく、艶やかな毛並みはそこかしこに傷き、鮮やかな血潮を滴らせていた。
雄大に広げた翼からは、大きな羽が不揃いに抜けおち、柔らかそうな産毛を中空に散らす。
かつて【彼女】が深手を負った時のような無残な姿に、
シャルロットはたちまち自身の立場を忘れ、その身を引き裂かれるかのような深い悲しみに包まれた。

本来ならば、成竜にも匹敵する体躯と武器を有した彼女を、こうまで一方的に追い込む事の出来る獣などありはしない。
いかに始祖ブリミルが従えし使い魔【神の右手】ヴィンダールヴに御されているとは言え、
獰猛さにおいて火竜に劣る風竜が、未知なる猛獣を相手に、ここまで闘える筈がない。

だが【彼女】の備えた、敵を跡形もなく焼き払う炎も、獲物を砕く大きな牙も、
今では口元を塞ぐシャルロットに封じられている。
しなやかな両腕より伸びる鋭い鉤爪は、成竜の短い前足よりも、器用に相手を引き裂ける筈だが、
それも迫りくる敵からシャルロットを守るため、闇雲に振り回されるのみであった。

「もう、いいの……、逃げて、シルフィ……」

主の口元からこぼれた、弱々しい声を省みる事無く、シルフィードがきっ、と敵を睨み据える。

「ゴルロロロォッ!!」

激しい咆哮と共に奮われた鉤爪はしかし、人竜一体となった対手を前に、虚しく空を切る。
同時に、上空へ逃れた風竜に踏付けにされ、シルフィードの体躯ががくりと沈む。

「ガァッ!」

鮮血と羽毛が宙を舞う中、シルフィードは尚も不屈の意志を見せて風竜を追う。

(駄目、あの時と同じ、シルフィードは怒りで我を忘れている)

震える腕を必死で動かし、シャルロットがドレスのスカートへと手を伸ばす。

(私が……、私が何とかしなくては……!)

右腿のガーターより、すっ、と得物を引き抜く。
右手に携えられたそれは、細く小さな一本の杖。
戴冠以来、万一の事態のために用意していた唯一のスペアは、
そのサイズ差が功を奏し、敵に気付かれる事無く手の内に残っていた。

(一発勝負……)

自らの体力と得物の不安さを推し測り、覚悟を決めたシャルロットが大きく息を吐く。
遠目には、再び意識を失った少女が、獣の口中でだらりと弛緩したように見えた。
ダメージで動きの鈍い獣を仕留めんと、風を巻いて風竜が旋回する。
シャルロットの眼前に、成竜の大顎がうなりを上げて迫る。


(今!)

シャルロットがカッ、と両目を開き、渾身の思いを乗せて詠唱を解き放つ。
狙いは違わず、凝結した氷の礫が、風竜の右目へと吸い込まれていく。

「グロアァッ!」

「何ッ!?」

対手の怯んだ一瞬を見逃さず、シルフィードが振り払った鉤爪の一撃が、敵の右翼を大きく薙ぎ払う。
思わぬ反撃を浴び、深手を負った風竜が悲鳴を上げる。

「ギョアアアァァァ」

「くぅ! 落ち着け、大勢を立て直すんだ」

背後のジュリオが懸命に呼び掛けるも、その声は忠実なる僕には届かない。
主の動揺と激痛によって制御を解かれ、暴走する成竜の体躯がシルフィードと交錯する。
激しい衝撃によって、シャルロットが中空へと投げ出される。
渾身の力を使い果たし、身動きの取れない少女の眼前に、鞭のようにしなる風竜の尾が迫る。

「――ぐッ!?」

「! し、しまったッ!?」

ジュリオの叫びと同時に、シャルロットの体が糸の切れた人形のように跳ね上がり、
支えるまもなく地上へと落下していく。
悲痛な金切り声を上げ、シルフィードが豆粒のようになっていく主の後を追いかける。

「くっ、何と言う事だ」

ようやく愛竜を御したジュリオが、常ならぬ悲痛な面持ちで、少女の消えた地上を見つめる。
いかに人目を避け、低空で飛行していたとは言え、人が死ぬには十分な高さである。
ましてシャルロットは、成竜の尾撃を腹部に受けている。
常識的に考えれば、彼女が生きている可能性は万に一つもありえなかった。

と、なれば、せめて陰謀の露見せぬよう、少女の死体を回収したいジュリオであったが、
今となっては、それも叶わぬ夢であった。
任務は隠密行動であり、ジュリオが今宵、この地に居たことを、他の者に知られる訳にはいかない。
この上、復讐に燃える手負いの獣に立ち向かう余力など、深手を負った愛竜には残されていなかった。

幸い彼女が落ちたのは、人里離れた深い森の中である。
彼女の屍が世に出る可能性は限りなく低い。

「……仕方ない、か。
 その見事な忠誠心を立てて、躯は【彼女】にくれてやるとしよう……」

上空をゆっくりと旋回しながら、ジュリオは少女の落ちた先を見つめ続けていたが、
やがて一つ嘆息すると、ゆっくりと竜の頬を撫で、そのまま南の空へと消えた。





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