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ハルケギニアの狼-03


 第三話 「したたかな男」


「土くれ」のフーケの捕獲と「破壊の杖」の奪還に立候補したルイズ、キュルケ、タバサの三人。
ロングビルの案内でフーケの潜伏先と思われる小屋へ向かう。
斎藤に行く気は全くなかったが、フーケが土のトライアングルだと聞くと何かを思いついたのか、付いて行くことを引き受けた。

件の小屋へ着き「破壊の杖」と対面するも、それは斎藤を含め、誰にもに全く見覚えのないものだった。
「破壊の杖」を見つけた喜びもつかの間、突然小屋の屋根を吹き飛んだ。
フーケのゴーレムが現れたのだ。


タバサの放った竜巻が直撃しても、キュルケの火球が直撃しても、ルイズの爆発が直撃してもゴーレムはびくともしない。

 「無理よこんなの!」
 「退却」

キュルケの声に呼応するように、タバサはシルフィードを呼び飛び乗る。
無謀にもゴーレムへ向かって行くルイズをレビテーションで無理矢理シルフィードへ乗せ上空へ退避する。

上空から火球や氷の矢でゴーレムの肩に居るフードの人物を狙うも、それらは全て土の壁に阻まれてしまう。
それならばとタバサが風の刃で足を切断するが、すぐに再生してしまう。
攻撃が通用しないとわかるとキュルケは撤退を提案した。

 「あたしたちじゃアレの相手は無理だわ。「破壊の杖」は無事取り返したんだし、学院へ帰りましょう」

だがその意見に異を唱える人物がいた。ルイズである。

 「冗談じゃないわ! フーケの討伐も任務のはずよ!」
 「そんなこと言ったって、あたしたちの魔法が通じないんだからどうしようもないでしょう。何かいい手でもあるのかしら?」
 「それは……! それは、無いわ。でも! 敵に背を向けるわけにはいかないのよ! わたしは貴族なんですもの!」
 「賢い選択とは言えないわねヴァリエール。そんなに名誉が大事なら独りでやってくれないかしら。巻き込まれる方はいい迷惑よ」

現状を理解していないルイズに、キュルケは辛辣な言葉を浴びせる。
二人の意見は平行線のままだったが、不意に斎藤が口を開いたことで言い争いは終わりを迎えた。

 「お前ら、あの木偶人形の気を引き付けておけ」
 「何のために? あれに私たちの魔法が聞かないのは実証済みのはず」

斎藤の提案する行動に意味が見いだせないタバサは、彼に説明を求める。
その質問に対し彼は当然といった風に答える。

 「何のためにだと? 決まっている。裏で人形遊びを楽しんでいる臆病者を引きずり出すんだよ」
 「何言ってんのよ。フーケならあのゴーレムの肩にちゃんといるじゃない」

そう言ってキュルケはゴーレムの肩に居るフーケを指さす。
眼下ではゴーレムがこちらの様子を窺うように佇んでいた。
その肩にいるフーケにも特に動きが見られない。
こちらの魔法はゴーレムに効果はないが、ゴーレムの攻撃もまた空に居る彼女たちには届かない。

動きが見られないフーケを見てタバサは彼の意図に気が付いた。
杖を振り竜巻を発生させ、その風で舞い上がった砂埃を盾にシルフィードを急速降下させる。
フーケが被っているローブの隙間から見えたのは、人の形をした土の塊だった。
つまり本物のフーケはどこか別の場所、森の中にいることになる。
そしてその事実がそのままこの膠着状態を打破するための手段となる

 「ようやく気が付いたようだな。とにかくアレの相手をしておけ」

言うだけ言って、斎藤は森の奥に姿を消す。
それを見届けるとタバサは、二人に目配せをして竜巻を止める。
それが止むと同時に火球と爆発がゴーレムを襲う。
当然の如くゴーレムは直ぐに修復されるが、三人に先ほどのような焦りは浮かんでいなかった。

 「フン、下らん人形遊びに随分とご執心の様だな」
 「!?」

背後からかけられた声に勢いよく振り返る。
そこにはルイズの使い魔である一人の平民が立っていた。

フーケは全く彼の気配に気付かなかった。
それなりの修羅場をくぐり抜け、それなりの実力を付けてきたつもりだった。
今だって三人のメイジを相手に優位に立っている。
なのにこいつは、目の前にいるこいつは隠れてゴーレムを操っていた自分をあっさりと見つけ出し、その上正体まで見破っている。
そして何よりあの目が良くない。
あの目は間違いなく数多の修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の戦士の目だ。
魔法が使えることはなんのアドバンテージにもならないと結論付け、同時にルイズ達の相手をしていたゴーレムを分解し構える。
それに応えるように、斎藤は刀に手をかけた。


ゴーレムの相手をしていたルイズ達は、突然それが崩れ去ったことに驚きを隠せない。

 「な、なにが起こったの!?」
 「あたしたちの攻撃で、ってワケじゃなさそうね……」
 「恐らく、彼が理由」

タバサの考察に二人は斎藤が消えた森へ勢いよく顔を向ける。

 「つまり、フーケと一対一ってこと? 助けに行かなきゃ!」
 「その必要はないと思う」
 「そうね、むしろ『邪魔だ』って言われるわね」
 「でも、彼の剣は折れてるのよ!? 相手は三流のギーシュじゃなくてあのフーケよ!?」

確かにキュルケが言うようにフーケは強敵だ。
だが、ルイズには斎藤の負ける姿が全く想像できなかった。
あの人を見下したような目をフーケにも向けているのだろう。
そんなふてぶてしさの塊のような男が、たかが盗賊に引けを取るとは思えなかった。
平民だとか、トライアングルクラスだとか、そんな次元を超えた部分であいつは戦ってきたのだろう。
だからあいつはとても強い。
それが、ギーシュとの戦いを間近で見たルイズの感じたことである。


予想外のことに、フーケの思考は一瞬停止してしまった。
なにせ相手の得物はその中ほどで折れてしまっているのだ。
そんな武器として機能しないものを構えているのに、何故自分はこんなにも怯えているのだろう。

 「そんなナマクラでこのあたしをどうにかできると思っているのかい!? 人を馬鹿にするのも大概にしな!!」

そう叫ぶと同時に等身大のゴーレムを複数生成し、そのまま斎藤に突撃させる。
彼は刀を振り回すでもなく、その身のこなしだけですべての攻撃を避け続ける。
その背後に一体のゴーレムが静かに生みだされる。
前面のゴーレムの相手に集中させ、その隙を突いて背後から始末するという作戦だった。
彼に気付いた様子は見受けられず、フーケは勝利を確信した。

 「見え見えなんだよ、阿呆が」

だが、斎藤には通用しない。
後ろを見ないまま伏兵ゴーレムの腹に蹴りを入れ、その反動を利用しフーケへ突っ込む。
咄嗟に壁を作り突撃を防ごうとするが、それよりも早く彼が投げた刀が手に当たり杖が吹き飛ばされてしまう。

 「しまっ……ガハッ!」

刀を投げても彼の突撃は終わらず、その勢いのままでフーケの首を掴み地面へ叩きつける。

 「殺すなら、さっさと……」
 「俺は破壊の杖だとか盗賊の討伐なんかに一切興味はない」

フーケの言葉を遮るようにとんでもないことを口に出す。
ルイズあたりが聞いたら顔を真っ赤にして怒り出すだろう。

 「貴様は確か土の属性だったな。なら俺の刀を直すコトなど容易なはずだ」

未だに何を言われているか分からないといった表情をしたフーケを見て、呆れたように斎藤は溜息を吐く。

 「俺の刀を直すコト、俺の部下になるコト。この二つを引き受けるのなら見逃してやらんこともない」

ここまで聞いてやっとフーケは彼の目論見を知る。
彼女自身の身柄と命を材料として、裏取引を持ちかけてきたのだ。
斎藤とは別の感情が籠った溜息が零れる。
フーケに選択の余地などなかった。


フーケが森の奥へ消えるのを確認してから彼は小屋の前へ姿を表す。
それを確認したタバサは、シルフィードを地面に降ろした。

 「フーケは!? どうなったの!?」

焦るように問いかけてくるルイズを鬱陶しく思いながら、先ほど考えた出鱈目な顛末を告げる。

 「抵抗しないのなら命だけは助けてやると言ったんだがな。それを無視して襲い掛かって来たんで始末した」
 「ウソ、でしょう……?」

その報告に三人は驚きが隠せない。
トライアングルクラスのメイジが二人いてもまったく歯が立たなかったメイジを殺してしまった。
それも魔法を使わず、しかも一騎打ちで。

 「フン、もうここに用はないはずだ。さっさと帰るぞ」

信じられないといった表情をしている三人を無視し、彼は荷馬車が止めてあるほうへ向けて歩き出した。


学院全体が舞踏会で盛り上がっているころ、斎藤は密かにフーケと接触し、彼女の錬金で自分の愛刀を直させていた。

 「この程度か?」
 「……鉄を錬金するのってすンごく精神力を使うんだけど? しかもこの剣…刀だっけ? 細いくせに複雑な造りしてるし!
  剣のくせに! 剣のくせに!!」
 「こんなもんでは満足など到底出来ん。出来んが妥協してやる。ぐだぐだ言っている暇があったらとっとと情報を集めて来い」

フーケは斎藤に「異世界」に関係ありそうな物を調べさせられていた。
そんな意味の分からない仕事は引き受けたくはなかったが、裏取引をしてしまった以上最低限の仕事はしなくてはならない。
それにこの男を二度も敵に回したくないという本音もフーケの中にはあった。

 「チッ……わかったよ。精々首を長くして待ってるんだね、この触覚前髪野郎!」

だから悪態を吐きながらも大人しく彼の言うことを聞くことにしたのだった。


フーケは闇に消え、斎藤は学院へと戻る。
そこには紫煙が僅かに漂うだけだった。

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