あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-11



 ルイズたちが暮らすトリステイン王国から遙か東、そこに人々が『聖地』と呼ぶ場所がある。

 『聖地』とは、始祖ブリミルがハルケギニアに降臨したとされる地。そこは伝説に包まれ、
ブリミル教の最終目的地でもある。同時に、そこは一部のハルケギニアの人間にとって
奪還すべき約束の地だった。
 聖地へと至る途中にある『サハラ』と呼ばれる砂漠地帯は、エルフと呼ばれる、人間と
近く、そして異なる種族によって支配され、それが故に聖地への道は閉ざされている。
そしてサハラを抜ければ、そこは聖地、さらにその先には『ロバ・アル・カリイエ』と呼ばれる
東方の地。誰もがそこに行くことを望み、あるものはそのために生涯を費やす。しかし、
それが叶わぬ理由もある。

 ――そのサハラにあるオアシスの一つが、今、燃えていた――

 そこはそのときまではエルフの一部族の集落だった。ハルケギニアの人々が使う系統
魔法とは異なる、精霊の力を借りて行使する『先住魔法』の使い手たち。彼ら一人に勝利
するためには人間の力では10倍の兵力をもって当たらなければならないとされる彼ら
『だったもの』が、そこかしこに転がっていた。

 すべてが死に絶えた、と思われた瓦礫の中で、不意に崩れた壁が動く。そこから這い出る、
エルフの特徴である耳の長い若い男が、長い金髪を煤で汚し、唇をかみしめ握りしめた
拳から血をにじませながら怨嗟の声を漏らした。

「……おのれ、シャイターン(悪魔)め……」

 男がうめく。その視線は、遙か西を射貫くかのようだった――



「オールド・オスマン!生徒たちが無事に帰ってきましたぞ!」
 ルイズたち『破壊の杖捜索隊』が出発してからしばらく。太陽が中天から下がり始めた
頃合いに、コルベールが喜びの声とともに学院長室に駆け込んだ。
「分かっておる。じゃが、フーケは取り逃がしてしまったらしいの。
 ま、これでこの学院を狙おうなどと思う不届きものは当分出んじゃろ」
 オスマンはそう言って水タバコを吹かす。窓から広場を見ると、着陸したタバサの使い魔、
風竜シルフィードの周りには生徒たちで人だかりができていた。

「すごいわルイズ!」
「もう『ゼロ』なんて呼べないな」
「ステキだよ!キュルケ!」

 口々に上る賞賛の声。しかし、そこに水を差す声がした。
「どうせあの使い魔が一人でやったんだろう?『ゼロ』のルイズにそんなまねできるはずがないさ」
 それは意識が戻ったロレーヌだった。ルイズが何か言おうとする前に、彼の前に二人の
女性が立ちはだかった。
「なら、貴方はルイズがそうしたように30メイルのゴーレムにたった一人で立ち向かえるわけね?
ロレーヌ?」
「ミス・フガクがフーケを捕らえ損なったのは、わたくしを盾にされたからです。
ミスはわたくしが解き放たれるまで、ゴーレムに殴りつけられても耐えていたのですよ。
 ミスタ・ロレーヌ、貴方にその覚悟がおありですか?」
 キュルケとロングビル。二人が胸の前で腕を組んでロレーヌの前に立ちはだかる。
その迫力の前に、ロレーヌは言葉を失う。
「……第一、あんた最初にフーケが学院襲ったときにふがくの胸に顔埋めて気を失った
じゃない。ふがくに助けてもらっておいてよくそんなこと言えるわね」
 その後ろからルイズが続く。その顔に浮かぶのは呆れ。彼女たちの言葉に、ロレーヌは
二の句が継げなくなった。

「ミスタ・コルベール。あの『3人』を学院長室に呼んでくれんかの」
「――はい。3人ですね」
 その様子を窓から見ていたオスマンは、コルベールにルイズたちを呼ぶように告げる。
その視線は、今までコルベールが見たこともなかったほど、冷ややかなものだった――


「あ、ふがくさん!」
 ルイズたちが学院長室に呼ばれてから、ふがくは何をするでもなく学院を散策していた。
別に目的があるわけでもない。ただ、空からは見えないものが見たかっただけ――
それでも足のタイヤで滑るように移動するふがくの移動速度は普通の人間が歩くよりは
ずっと速い。そこに黒髪のメイド、シエスタが声をかけた。
「あ……シエスタ」
「はい!先日は本当にありがとうございました!『コロッケー』、ひいおじいちゃんが
作ってくれた味と同じで、とっても懐かしくておいしかったです!」
 戸惑うふがくに、シエスタは満面の笑みで答えた。ふがくが学院内で准貴族として
扱われているため、マルトーたちからは親しそうに見えてどうしても一線を引かれがちでは
あるのだが、シエスタだけは違っていた。

「そういえば、どうしたんですか?他の皆様は学院長様とお話しされているようですけど……」
「私は呼ばれてないしね。気になることはあるけど」
 シエスタに声をかけられてから、ふがくは彼女の歩みに速度を合わせている。その中で
ふがくが答えた。オスマンに呼ばれたのはルイズ、キュルケ、タバサの3人だけ。ふがくと
ロングビルはその中に含まれていない――貴族ではないのに貴族に準じた待遇を受ける
ふがくと、貴族の名をなくしたというロングビル。ことの真実を知れば、どれだけ滑稽なことだろう。
とんだ茶番ね、ふがくはそう思いながらも、それを決して口にはしない。
 そのとき、シエスタが思い出したように足を止めた。
「……ふがくさん。ちょっと左腕を見せてもらってもいいですか?」
「……別にいいけど……何?」
 そう言ってふがくも足を止めて千早の浅葱色の袖口をまくる。そこは……赤く腫れたままだった。
「……やっぱり。もしかして、ミスタ・ロレーヌと決闘したときのおなかの打身とかもそのまま
じゃないですか?」
 シエスタは真剣な表情でふがくに聞いた。その様子に、ふがくは表情を硬くする。
「いったい、アンタ何を知ってるの?」
「……普通の『女の子』なら、ちょっと腫れたくらいの怪我は放っておいても『治り』ます。でも、
『ハガネノオトメ』は、違うんですよね……部品を交換しないと『直ら』ない」
「シエスタ?」
 ふがくは警戒の視線を向けたままシエスタの姿を捉え続けている。シエスタはその視線を
受け止めたまま、ふがくの警戒を解こうとする。
「……今度、私がお暇をいただけたとき、一緒にタルブに行きませんか?ふがくさんに、
見てもらいたいものがあるんです」
「タルブ……って、シエスタの生まれた村?」
「はい。
 ……本当は、あと5年早かったらよかったんですけど……そうすれば、ひいおじいちゃんも
育てのひいおばあちゃんもいて、もっといろいろできたかも……」
「それ、どういうこと?アンタの村に、いったい何があるって言うの?」
 ふがくがシエスタの両肩をつかむ。しかし思いの外力が入り、シエスタが苦痛に顔を
ゆがませる。
「あ、ゴメン」
「い、いえ。でも、今ここでは言えないんです。それが決まりで……それでも、ふがくさんだったら……」
 目尻に涙を浮かべたままシエスタは言う。それを聞き終わらないうちに、ふがくは空に
舞い上がった。
「……なら、許可をもらってくるわ。そうしたら教えてもらうわよ。全部!」
 それだけを言い残すと、ふがくは本塔へと飛び去っていく。その姿を見送りながら、
シエスタは小さくつぶやいた。

「……これで、よかったんだよね?私、間違ってないよね…………おばあちゃん……」

 その言葉は途中から風に乗せられ天に消える。言葉を運び去った一陣の風がシエスタの
黒髪を優しくなでる。それはまるで彼女の言葉に応えるかのようだった。


「――というわけで、君たちの功績を称えたいと思う。
 フーケを捕らえていれば『シュヴァリエ』の爵位申請も出せたのだが、そこまではできん。
代わりに金一封と各自に1週間の特別休暇を与える。いつでも申請してかまわんから、
好きなときに使いなさい」
 緊張した面持ちのルイズたち3人の前で、オスマンは机越しに告げる。そこに、ルイズが
遠慮がちに言葉を紡ぐ。
「あ……あの……オールド・オスマン?」
「なんじゃね?ミス・ヴァリエール?」
「……ふがくには、何もないんでしょうか?
 私たち3人では、何もできなかったと思うんです。
 取り逃がしたとはいえフーケを追い詰めたのはミス・ロングビルとふがくですし、
『破壊の杖』を取り戻せたのもふがくのおかげなんです!」
 ルイズの言葉にオスマンは思案する。
「うーむ。いくら学院内では准貴族として扱っているとしても、彼女は貴族ではないからのう」
「でも!ふがくがいなかったらわたしたちは……――」
「別にいらないわよ、そんなもの」
 不意に後ろから声がかかる。ルイズが振り向くと、そこには見慣れた異国の装束に
鋼の翼を持つ使い魔、ふがくがいた。
「ふがく!」
「悪いわね。ノックしても誰も気づかないから入らせてもらったわよ」
「あんた、何しに……」
「学院長に話があるのよ。できれば、二人っきりで」
 ルイズが問いかけるが、ふがくは素っ気なく答える。そのたびに揺れる、キュルケにも
勝るともとも劣らない立派な双丘にオスマンの視線が自然と向けられる。
「う、うむ。ええじゃろ。褒美の代わりじゃ。
 というわけで、ミスタ・コルベール、君も下がってくれたまえ」
「え……そんな!……まぁ、仕方ありませんか……」
 鼻の下が伸びかけたオスマンに、コルベールが食い下がりかけて止める。一緒に
見られたくないとの思いが勝ったのだ。ルイズたちが学院長室を辞し、扉が閉められたと
同時に、オスマンが真剣な表情でふがくに向き合った。

「……さて、これでゆっくり話ができるじゃろ。
 私に何が聞きたいのかね?できる限り力になろう」
 机から向かい合うオスマンとふがく。オスマンは改めてふがくの姿を見る。その視線が、
自分に誰かを重ねたかのようにどこか遠くに向かう感じがしたとき、ふがくが口を開いた。
「……もう知っていると思うけれど、私はこの国、いえ、この世界に生まれた存在じゃない。
別の世界からルイズの『召喚』で呼ばれたわ。
 それに、あの『破壊の杖』――あれは私の国、大日本帝国の隣国、中華民国の鋼の乙女が
使う空対地空対艦ロケット。推進装置が故障して弾頭が生きてるから暴発の可能性が
ある危険物だけど……どうしてそんなものがここにあるのか知りたいわね」
「……知ってどうするつもりかね?」
 オスマンがふがくを見る。その視線は何かを試すようでもある。
「知りたいのよ。どうやって来て、どうやって帰ったか、それとも、帰れなかったのか」
 ふがくはオスマンから視線をそらさない。その視線を真っ正面から受け止めたオスマンは、
椅子から立ち上がるとふがくに背を向けるように窓からまだ高い太陽を見る。
「――あれは、あれを持っていたのは、私の命の恩人じゃ。もう30年も昔の話じゃよ……」
 そう言ってオスマンはゆっくりと語り始める――

「30年前――森を散策していた私はワイバーン……まぁ、竜の一種だと思ってもらえば
間違いないの。その魔物3体に襲われた。
 不意を突かれた私は杖を取り落とし、もうこれまでか、そう思ったときだった。天空より
クマンバチのような羽音を轟かせ、手にした槍でワイバーンの1体を一刀両断にした彼女が
現れたのは……」

 ――アチャー!私がキたからには、もうお前らのスキにはさせないアル!――

「――それはまさに天女のようだった。
 黒い髪を東方風に左右両方でシニヨンにまとめ、金糸で見事な刺繍が施された深紅の
東方のドレスを身にまとい、右手に刃の大きな槍、左手に見たこともない銃を手にし、
そして右腕には君の背中にあるような風車を、背中には青地に白い太陽の紋章を描いた翼を……
思わず己の置かれた状況を忘れて見入ってしまった」

 ――ここがどこだか判らないアルけれど、孫子曰く、『義を見てせざるは勇なきなり』アル。
ご老人、早く逃げるヨロシ。ここは我(ウォー)が引き受けるアル!――

「そこからはまるで舞を見ているかのようだった……右手の槍がきらめくと、ワイバーンが
まるで紙のように易々と切り裂かれて地面に墜ち――」

 ――中国四千年の力いまこそ思い知らせてやるアル!必殺!青竜刀演武!覚悟するアル!――

「左手の銃が火を噴くと、ワイバーンの鱗など何の役にも立たずに撃ち抜かれて地面に
たたきつけられた。そこで彼女は『破壊の杖』を両脇に抱え――」

 ――とどめアル!――

「打ち出された『破壊の杖』は、火を噴きながら飛んでいきたった1発でワイバーンを文字
通り消滅させた。そのとき、もう1発の方が力なく地面に滑り落ちたのじゃ――」

 ――アイヤー……不発だったアル……――

「とにかく、ワイバーンを全滅させた彼女は、私が無事なことを確認すると、そのまま天空に
舞い上がり東へと去っていった。結局、名前を聞けぬまま、な。
 そこで、残された1本を『破壊の杖』と名付け、宝物庫にしまい込んだ。いつか、恩人が
取りに来ることを願って、な」
 オスマンが太陽を見る。恩人の翼の紋章を思い出しているのだろうか。その背中に、
ふがくが言う。
「青天白日旗……それで、いったい誰がその鋼の乙女をこっちに呼んだの?」
「……それはわからん。彼女がどこからどうやってきたのか、今になっても分からんままじゃ」
 オスマンはふがくに向き直る。その視線が自分の翼に向いていることにふがくは気づいた。
「おぬしの翼の深紅の丸、それも太陽の紋章じゃろう?東方は太陽の昇る地。それゆえに
太陽を紋章とする国があるのじゃと、私は思っている」

(中華民国の鋼の乙女、戦闘機I-16・燕(えん)が最初に確認されたのは、帝国海軍による
真珠湾奇襲が行われる直前の日華事変末期――たしか初陣のレイが気づかずに踏み台に
したって聞いたような……以後、大東亜戦争中も太平洋戦線だけでなく欧州戦線でも
確認されているわね。
 でも、中華民国の鋼の乙女は燕完成後に帝国陸軍が開発施設を急襲して未完成のものを
すべて破壊したはず……それがどうして30年も前にここに……?)

 ふがくは混乱する。しかし、燕が太平洋だけでなく欧州にも現れているということは、
彼女は元の世界に帰れたはずなのだ。そうして思案にふけるふがくの左手を、オスマンは
そっと手に取る。
「その代わりと言っては何だが、おぬしの左手に刻まれたこのルーンの意味……これなら
知っとるよ。
 これは、『ガンダールヴ』という、ありとあらゆる武器を使いこなしたとされる伝説の使い魔の
印じゃよ」
「伝説の……そんなものがどうして私に?」
 ふがくの問いかけに、オスマンは再びふがくに背を向けるように窓から外を見る。
「どうしてか――私にも分からん。分からんことだらけじゃ。
 もしかしたらおぬしがこの世界にやってきたことと、その『ガンダールヴ』の印は何か
関係しているのかもしれんのぉ――」
 オスマンは言う。そしてそれ以上何かを聞くことを、彼は拒否しているようだった――


「……結局、シエスタのこと、言えなかったわね……」
 学院長室を後にして、ふがくは肝心のことを言えなかったことに悔しさを禁じ得なかった。
そして螺旋階段を下りようとしたとき、途中で眼鏡をかけた翠の髪の女が自分を待っている
ことに気づいた。
「ずいぶん時間がかかったみたいですね。待ちくたびれました」
「ミス・ロングビル……なんでこんなところに?」
 ロングビルの口調はいつもの通り丁寧だ。フーケの時のようなささくれだった様子はない。
「お礼と、挨拶を、ね。
 貴女のおかげで今わたくしはこうしていられるし、妹たちに悲しい思いをさせなくて
済みましたから」
 そう言ってロングビルはあの森での顛末を思い出す。

 あのとき、ふがくはこう言ったのだ。『ゴーレムで私を殴って、それから自分を殴って
気絶して』と。ゴーレムは一度生成してしまえば半自立的な行動を取らせることもできるが、
それも術者が意識を保っている間だけ。術者が気絶してしまえばゴーレムも維持できないのに
どうするのかと思えば――まさかフーケを逃がしたと出任せ言うための口実にするとは
考えていなかった。

「妹?」
 その言葉にふがくが反応する。
「ええ。アルビオンにね。血のつながらない妹だけど……これまでは仕送りばかりでしたけれど、
久しぶりに顔を見に帰ろうと思いまして、ね。
 ですから、しばらくはさよならですわ」
「……そう」
「そんなに心配しなくとも。1週間ほどで戻ります。
 わたくしも今回の件で危険手当が付きましたし、お給料を上げてもらえますから、
もう『副業』はしなくて済みますしね」
 そういってロングビルはふがくに微笑みかける。これが本当の姿なんだな、と思った。
「……それから……」
 ロングビルが視線をきつくして天井のある一点をにらみつける。
「……あのじーさまには、私のこともすべてお見通し、だしね。酒場でウェイトレスやるよりは
変なところに手を突っ込まれたりしないし視線の数も少ないけど、ずっと掌で踊らされて
いたというのも癪だわ」
「え?」
 ふがくが驚いた顔を見せる。その様子に、ロングビルはふがくの額を人差し指でつんと
つついた。
「……気をつけなさい。あのじーさま、貴女にはすべてを話していないから。
 これからどうなるのか、ミス・ヴァリエールが貴女を召喚したという小石の波紋が
どれほど広がるか――私はできればこれ以上関わり合いたくはないけど、それが無理でも
もう二度と貴女の前には敵として現れたくはないわ。だから、よく考えて進むことね」
「え?ミス・ロングビル?」
 それだけ言って先に階段を下りようとするロングビル。その途中で振り返る。
「……マチルダよ。マチルダ・オブ・サウスゴータ。でも、人前ではロングビルと呼んでほしいわね。
もう捨てた名前だからね……」
 そう言って、ロングビル――マチルダは手をひらひら振って先に降りてしまった。
後に残るのは、ふがく一人。

「……いったい、何がどうなっているのよ……」
 その言葉に応えてくれるものは、ここにはいなかった……

新着情報

取得中です。