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mission 10「Succession of Revenger」


「なんでこんなことになってしまったの?」
 深い夜の街道。
「ぼくを信じてくれるねアンリエッタ」
「でも……、でも、こんな……」
 困惑の表情を示すは、トリステイン女王アンリエッタ。
「わけはあとで話すよ。さまざまな事情があるんだ。きみは黙ってぼくについてくればいい」
 穏やかにそう宣う人物は、見る者が見ればすぐに今は亡きアルビオン王国のウェールズ・テューダーであると判るだろう。
「わたし、わからないわ。どうしてあなたがこんなことをするのか……。なにをしようとしているのか……」
「わからなくてもいいよ。ただ、きみはあの誓いの言葉どおり、行動すればいいんだ。覚えているかい? ほら、ラグドリアンの湖畔で、きみが口にした誓約の言葉。水の精霊の前で、きみが口にした言葉」
 どこまでも優しい言葉で、ウェールズは告げた。だがその足下に転がるのは、切り裂かれた死体だ。
「忘れるわけがありませんわ。それだけを頼りに、今日まで生きて参りましたもの」
「言ってくれ、アンリエッタ」
 つい先程、アンリエッタ女王は城を連れ出された。誘拐と言っても良いだろう。
「……トリステイン王国王女アンリエッタは水の精霊の御許で誓約いたします。ウェールズさまを、永久に愛することを」
 そして今死体となっている者達は、皆彼女を奪還せんとしてやってきた者達だった。
「その誓約の中で以前と変わったことがあるとすればただ一つ。きみは今では女王ということさ。でも、他のすべては変わらないだろう?変わるわけがないだろう?」
 そして女王は今、その手を下した男の腕に抱かれていた。
「どんなことがあろうとも、水の精霊の前でなされた誓約がたがえられることはない。きみは己のその言葉だけを信じていればいいのさ。あとは全部ぼくに任せてくれ」
(ふん……大した茶番だ)
 鼻を軽く鳴らして、侮蔑の表情でリッシュモン卿はそれを眺めた。
 レコン・キスタに内通し、アンリエッタ女王陛下を誘拐したのは彼だ。実行部隊の手引きをして王都トリスタニアに招き入れ、次いでそこを脱出していた。
「陛下、次なる追っ手が差し向けられるやも知れません。お早く」
「ありがとう、リッシュモン卿。私達のために」
「いえ……」
 下らぬ三文芝居は早々に収めて馬車に戻ってもらおうとそう言葉を交わした直後、耳をつんざくような甲高い音が辺り一面に響き渡った。
「な、何だ!?」
「きゃああああ!?」
 耳を押さえる面々の進行方向に、ゆっくりとその巨体が降りてゆく。月明かりに映されたのは真紅に彩られた巨大な竜の姿だった。
「あ……ああ!?」
「何だ……これは!?」
 次第に竜は唸り声を小さくしていき、やがて押し黙ったが、その右前脚がやおら振り上げられると、馬車がその巨大な前脚に押しつぶされた。
「ああ!?」
 更にもう一方の脚も振り上げられ、落下地点は
「うおっ!」
 慌てて飛び退くリッシュモンの眼前に真紅の脚が叩き付けられる。
『リッシュモン!』
 唐突に響くは女の声。
『貴様だけは、にがさん!』
 何故竜から声が聞こえる?これは韻竜なのか?その韻竜が何故、自分を狙う?
 疑問は尽きない。だが、自分が何をすべきなのかはすぐに悟り、彼は1も2もなくその場から逃げ出した。
「にがさんと言ったぁっ!」
 リッシュモンが雑木林へ駆け入った直後、真紅の竜ことラグナロクからタラップが降り、アニエスが飛び出して仇の一人を追った。
 続けて現れたのは、ライオンハートを肩に担いだスコールと、右手にカードの束、左手にダーツを持ったジョーカーだった。
「ジョーカー、ラグナロクの防衛に専念しろ。俺はオフェンスに回る」
「OK、流石に専門がどうのこうの言える距離じゃないしね」
 むっつり結んだへの字の口元と、皮肉に歪んだ口元とが良い対比だ。
「あなたは……」
(俺のことを覚えているのか)
 自分を見て驚きの顔をした女王に、そう判断を付ける。
「これは、この竜はあなたの竜なのですか?」
「竜……ええ、まぁそうです」
 ラグナロクが乗り物だと認識していないらしい物言いに今度は逆に内心で首をひねる。
(ラグナロクを調べているメイジが居たと思ったが……他の連中か、或いは女王の関知の外でか)
「平民が竜を従えるなんて……いえ、むしろ……お願いがあります。どうか私たちを連れて行って下さい」
 正気か?とスコールは眉間に皺を寄せる。
 その『竜』に、今し方馬車を壊させたのは誰だと思っているのか。
(いやそれ以前に、誘拐されたのではなかったのか? ……先程あの男と抱き合っていたようにも見えたのは、そう言うことか)
「報酬は十分にお支払いします」
「断らせてもらう。ここであんたを行かせない事が、先に受けた任務だ」
 きっぱりと、丁寧語も止めて言い切る。今の言葉で認識が変わった。彼女は今、敵だ。
「!? ……でしたら、それ以上の報酬を……」
「悪いが、金の問題じゃない」
 確かに自分は傭兵だ。だが、金だけでどうとでも動くと思われるのは甚だ不愉快だった。自分たちが動く要員の一つ、それは例えば――
「理由は、言えないが」
 ――仲間のため。
 トリステインをめちゃめちゃにしたくないというのは、アニエスの願いだった。
 ここでアンリエッタを行かせればトリステインが未曾有の混乱に陥るのは確実だ。ただし、今回これは表向きの理由に過ぎない。
 そもそもスコール達がここに赴いたのは、女王ではなく別の人物を追ってのことだった。
 リッシュモン卿――
 アニエスの仇の一人である。
 仇討ちに丁度良い時期を見計らうため、その動向を調査させていたのだが、その過程で見つかったのは彼の造反計画であった。
 自身から追われる身となってくれるのならば丁度良いと、計画決行を手ぐすね引いて待っていたのだ。
 ラグドリアン湖から帰った直後、決行寸前であると知ってすぐさま準備を整えラ・ロシェールへの街道上空で待ちかまえていた。
 よって、アンリエッタ女王の身柄奪還はついでもついで、アニエスの仇討ちから目を逸らさせるためのカモフラージュなのである。
「全力で止めさせてもらうっ!」
 ライオンハートを振りかぶり、駆ける。
 アンリエッタとウェールズの身を守らんとメイジが前に出てくるのを、構わず丸ごと切り伏せた。
 轟ッ!


 逃げなければならない。
 手っ取り早く姿を隠そうと、リッシュモンは近くの雑木林へと駆ける。ようやく木々の間に身を置いたと思った瞬間、直ぐ側の木に火の玉が直撃して燃え上がった。
「うお!?」
 慌てて四つんばいになりながら別な木の陰に身を潜める。
(火の先住も使えるのか!?)
「世の中ままならんものだな……?」
 身を縮こまらせるリッシュモンへと、月を背に立つ女の声が向けられる。先程聞こえたのと同じ声だ。
「お前の方で追われる身になるとは。あの時大人しくシュヴァリエになっていれば、もっと早くにこうしてお前の前に立っていられたかも知れん」
「!? ……何者だ!」
「私が誰であるかは重要ではない。それよりも重要なのは、貴様が覚えているかどうかだ」
 覚えている?どういうことだ、と首をひねる。
「二十年前、私の故郷は炎の中に消えた」
「……貴様、ダングルテールの反乱の生き残りか!?」
 すぐさま忙しく頭の中を探り返す。だが、何故それが韻竜の声を……? いや
(そうか……この女自身は身を隠していてあたかも竜が喋っていたかのように見せていただけか!)
 その竜が一緒に来れば驚異だが……木々の間に見えるあの巨竜はあの場から動いているようには見えない。
「反乱だと? 聞いて呆れる。そんなもの、貴様のでっち上げだろう。金に目のくらんだな」
 大半のデータが頭の中で整理されると、リッシュモンはゆっくりと立ち上がって女の――アニエスの顔を正面から見た。
 腰には剣を下げていて、右手は銃を握って肩に乗せている。
「それで、この私の前に現れたのか、力なき平民の分際で!」
 あの村にメイジは一人として居なかった。ならば、この女も当然メイジではない。
「その顔、思い出したぞ。先日シュヴァリエになるのを蹴った小娘か。ははは! 本来なら死なずに済んだ物をわざわざ死にに来たとは!」
「どういう事だ……?」
「貴様の代わりにアンリエッタが召し抱えた銃士隊の隊長よ! 私の邪魔をしようとしてあえなく散っていったが、本来ならあそこに居たのはお前だったはずだ!」
「……そうやって貴様は、自身の欲望のためにどれだけの者達を食い物にしていくつもりだ!」
 アニエスが激高して銃を向けて、一発。だが怒りに震える銃口はリッシュモンを捉えずに夜闇の中に消えていった。
「ははは! バカめ! ファイア・ボール!」
 間髪置かずにリッシュモンの杖から放たれた火球がアニエスを焼く。
「ふははははははははは! 力なき平民如きが仇討ちなどと片腹痛い! ははははは!」
「……ふふふ」
「!?」
 リッシュモンの高笑いに、別の低い笑いが被さる。未だ燃焼を続ける炎の中、
「全く、レオンハートがいつも私のことを心配するわけだ」
 文字通り涼しい顔でアニエスはしみじみと呟く。
「このような鉄壁の守りに比べれば、生身など脆弱その物だろうからな」
「な……効いていない!?」
「この程度の火で、私の復讐の炎を覆えると思ったか!このゲスがっ!」
 一喝するアニエスの前で、リッシュモンは後ずさる。
「ぬぅっ……!?」
 杖を掲げて火の魔法を乱れ撃つが、その全てをアニエスはものともせずに一歩ずつ近づいていく。
「貴様自身の炎で焼かれろ! ドロー ファイラ!」
「う、うわぁぁああああ!?」
 杖を必要とせぬ魔法は、狙われていることも判らなければ、避けるのもまた困難だった。
 その豪奢な服とマントに着火した火が、たちまち全身を包む。
「おおおおおおおおおお!」
 必死に地面をのたうち回って火を消そうと試みる。そんなリッシュモンに、アニエスは銃を放り剣を両手で構えて向けた。
「ふんっ! はぁっ! てやぁっ!」
「ぎゃあ!? あああ!? ああ!」
 傷が、まだ消えきっていない火に焼かれる。
「もう一度、感謝しよう。この国を捨てようとしてくれたことを。おかげで『他の者達』と違い、貴様には私自身の手で引導を渡せるのだからな」
「他の!? ……ま、まさか……」
 記憶に起こされるのは、『自分以外の関係者』達の『死因』。
「最近起きている流星による死亡事件は……!」
「メテオ」
 アニエスが無造作に唱えた魔法によって空から流星が降り注ぎ、その内の二つがリッシュモンの右腕と右足を砕く。
「があああぁあぁぁあああ!?」
「いかにも……私だ」
 ニィ、とサディスティックな笑みを浮かべる。
 仇討ちようとしてスコールが星々のかけらから精製した禁断魔法メテオ。これが為にアニエスの銃はビスマルク止まりだったのだが、アニエスとしてはこちらの方がありがたかった。
 メイジ達にはまさか想像にも及ばない流星の攻撃手段。この魔法の存在を知らなければ事故としか認識しようがない。
「無力な平民の手により、死ね」
 心底の恐怖が、リッシュモンの心胆をさむからしめる。
「ま、待てっ! 金なら!金ならいく……」
 制止するように左手を差し出すと
 ザッ
「ああああああああ!」
 アニエスの剣が走り、左手の親指が切り飛ばされる。
「楽には死なせん。貴様がその欲で殺めた者達と同じく……苦しんだ末に殺してやる」
 再び、リッシュモン自身の力を抽出する。
「ドロー ファイア」
「ひ……あ、あ……!」
 スコールの力添えにより加速した復讐者の行動は、まだ続く。


「ぐ……く……ぅ」
 うめき声を上げながらスコールは体を起こす。
「あ。委員長、起きた? 今回のフェニックスの尾の代金は後で請求するからね」
「何が……一体何があった……?」
「自滅しちゃったんだよ」
 隣に立つジョーカーがあっけらかんと言う。
「自滅……?」
「委員長、ST攻撃にドレインジャンクションしてたろう? あいつらにライブラかけてみな」
 そうジョーカーの指さす先にはアルケオダイノスと戦うメイジ達の姿。
「ドレイン……? 成る程、ライブラ」
 スコールの視覚にメイジの一人がターゲッティングされ、情報が送り込まれる。

アルビオン騎士
神聖アルビオン帝国の騎士。アンドバリの指輪の魔力によって生かされている死者。生半可な傷ではすぐに活動を再開する。
アンデッド系   に弱い   即死 は無効

「アンドバリの指輪!?」
 その単語に目を剥く。まさかこんなに早く足取りが掴めるとは。
「G.F.召喚、ラグドリアン!」
 手に入れたばかりのG.F.がスコールの形を宙に結ぶ。
「ラグドリアン、あの連中、アンドバリの指輪の力で蘇らされているらしいが、どうだ」
 スコールの言葉に、ラグドリアンはしばし首をかしげた後告げた。
『……その通りだ。間違いなく秘宝の力を感じる……だが秘宝そのものはここにはないな』
「そうか……」
「っと、委員長。悪いんだけど話はそろそろ切り上げてくれないかい。委員長が倒れてる隙を突かれてあの女の子が連れて行かれたんだ。こいつらは俺が引き受けておくから」
「了解した。戻れラグドリアン」
 ライオンハートを再び肩に担ぎ、ラグナロクの下をくぐって街道を駆け行く。
「さてと……G.F.ラムゥ、カード、とらえる!」
 それまでメイジ達を相手に大立ち回りを演じていたアルケオダイノスがカードと化し、ジョーカーの手元に帰る。
「全く、普通ならとっくにやられてる筈なんだけどな」
 アルケオダイノスに頭突かれ、尾でなぎ払われ、噛み付かれ、それでもなおメイジ達は動いていた。肋骨を折りながら、脚が潰されながら、腕が噛み千切られながら。
 アルケオダイノスが消えたことで戦列を組み直しながら、メイジ達はジョーカーの前に並ぶ。
「アンデッドってのは厄介だよ、ホント」
 カードの束からまた一枚を取り出す。
「動きようがない消し炭してやる。ラムゥ、カード、はなつ!」
 現れるはルブルムドラゴン。炎の竜であった。


 走りながらジャンクションを入れ替える。ドレインを外し、サイレスを。かばうを外して。オートヘイストを。
(体力は……回復している余裕はないか)
 だが属性防御に関してはかなり固めている。心配はしていなかった。
 そうしているうちに二人組の後ろ姿が見えた。雲に月が隠れ始めた夜道、鍛えていない女連れ、やはりそう距離は稼げなかったようだ。
(捉えた!)
 一応右手を向けて擬似魔法を放つ。
「ライブラ!」

ウェールズ・テューダー
旧アルビオン王家の皇太子。アンドバリの指輪の力によって生き返らされ操られている。
アンデッド系   に弱い   即死 は無効

(やはりあの男もか)
 声が聞こえて逃げ切れないと悟ったか、足を止めると二人はスコールの方に向き直る。
「何故です! 何故私とウェールズ様を行かせてくれないのです!」
 涙目になりながら、女王がそう叫ぶ。
(愛の逃避行か……判らないでもない)
 自身が、リノアを封印しようというエスタの施設から彼女を連れ出したのも、言ってみれば似たようなモノかも知れない。だが、あの時もそれを阻止せんとするエスタの兵が居た。
 今度は自分が、彼らの立場に立ったのだ。
 あの時は、おそらくラグナからの計らいであろう。彼の友人で補佐官であるウォードが現れて自分たちは見逃されたが、今現在そういった事象はなく、自分の成すべき事は彼女の身柄の奪還だ。
「悪いが、さっきも言ったとおりだ。全力で阻止させてもらう」
 かつてスコールは、世界全てを敵に回す覚悟でリノアをその腕に抱き留めた。
 そして今問題なのは、目の前にいる者達にそれだけの覚悟があるのかということだ。トリステイン一国全てを敵に回す覚悟が。
「い……良いでしょう。ですが、私はウェールズ様と添い遂げます! 止めたければ私ごと切りなさい!」
 震える声ながら、アンリエッタがウェールズの前に立つ。
(……近いな)
 ライオンハートでは諸共に切ってしまいそうだし、攻撃魔法でも巻き込んでしまう可能性が高い。
 手を出しあぐねる中、雨が降り出した。
「アンリエッタ、下がってくれ。君が死んでしまっては、どうしようもない」
「ウェールズ様、しかし……」
 ウェールズがアンリエッタの肩に手を乗せて引く。
「彼とは戦わない訳にはいかないようだ。協力してくれるね?」
「……はい」
 優しく呟くウェールズの言葉に頷き返しながらアンリエッタが、ウェールズがルーンを詠唱していく。雨を巻き込むように竜巻が、うねり始める。
 水が3、風が3。
 トライアングル同士の力を合わせた系統魔法の大技。
 王家のみに許された、ヘクサゴン・スペル。
 二つのトライアングルが絡み合い、巨大な六芒星を竜巻に描かせる。
(……大した勢いだ)
 迫り来る竜巻、否、既にスコールのジャケットや前髪は風ではためいているから巻き込まれ始めていると言っても良いだろう。
 だが、実はこのまま直撃を受けたところでスコールとしては痛くもかゆくもないどころか、属性防御で自身の活力となってくれるありがたい攻撃だったのだが、今回はそれをしなかった。
「お前を試すぞ、G.F.召喚デルフリンガー、まふうけん!」
『よっしゃぁぁぁあああ!危うくこのままずぅっと出番がねぇかと思ってたぜ!』
 片刃の剣が空中に像を結び、それが竜巻の中へと突入する。
 直後、竜巻の勢いが弱まる。
『うおおおおおお!? すげぇ! この姿になったからか!? 新品の頃より調子がいいぜ!』
 水が、風が、竜巻の中心部へと引き込まれていく。
(あちらは任せて良いか)
 ライオンハートを担ぎ直し、急速にその勢力を弱めつつある竜巻を迂回して反対側へと駆け込む。
「!?」
 スコールの姿を見止めてアンリエッタが再びその身を呈して前に出る。だが、今度はきちんと策がある。
「アンデッドにはこれだ!ケアルガ!」
「ぐふっ……」
 アンリエッタの後ろで、癒しの光に包まれたウェールズが呻く。
「ウェ――」
 異変に気づいたアンリエッタが振り向くのとほぼ同時に、スコールの跳び蹴りがアンリエッタの頭横をすり抜けてウェールズの胸板に直撃し弾き飛ばす。
「……っ!?」
「ウェールズ様!」
 オートヘイストのスピードを生かしてアンリエッタが駆け寄るよりも早くにウェールズの懐に飛び込む。
「連続剣」
 ぽつりと呟いたその言葉通り、スコールの剣が走る。
 轟轟轟轟轟轟轟轟!
「あ、ああああああ!?」
 血が飛ぶ、服の切れ端が飛ぶ、手が飛ぶ、脚が転がる、
 愛する男の惨状にアンリエッタは立ち竦んだ。
「……っ!」
「まだ動くか……!」
 ST攻撃サイレスで口が聞けなくなったのか、ぱくぱくと口を動かすだけのウェールズから距離をとると、スコールはライオンハートを大上段に構えた。
「フィニッシュブロー、ブラスティングゾーン!」
 光が、ライオンハートから伸びる、伸びる、伸びる。
 雲が裂け、雨が止む。ハルケギニアの者達には想像も付かない宇宙空間までも、その光は届く。
 光の柱そのものを抱えたかのようなスコールを、へたり込んだアンリエッタはただ見上げるしかなかった。
「何……これ」
 その光が、振り下ろされる。
「はぁぁぁぁああああ!」
 キュゴォォオォオオオオオ!
 その光の中に、ウェールズの体は溶けていった。


 手元に残ったカードは二枚。
「へへへ……どうだ、新顔。降参か?」
 目の前には余裕を浮かべた男。
 それまで無表情で通してきたジョーカーは、そこで不敵な笑みを浮かべる。
「降参するのはそっちだよ……セイム!」
 ぱん、と置かれたカードが左右のカードの色を変える。
「何!?」
「コンボ!」
 続けてもう二枚がひっくり返る。
「おおお!?」
「6対4、ダテにCC団ジョーカーは名乗ってないよ」
「ぐ、お……」
 行きつけの酒場。カウンター席でオレンジジュースを飲みながら、遠目にジョーカーのカードプレイを眺めていたスコールの隣に、アニエスが座った。
「……首尾は?」
「上場だ。マスター、いつものを。……眠ったままの彼女を、後発隊の連中がきちんと見つけて保護して行った」
 ウォッカの水割りを店員に頼みながら小さく続ける。
「俺たちとは、判らないかな?」
「何も証拠は残していないはずだ。彼女の記憶には残っているかも知れないが、あとは知らぬ存ぜぬで通すしかないだろう」
 まぁ、その点はどうにかなるだろうとは思っている。
 その為に持っているレアカードをジョーカーに頼んで『放って』おいてもらったのだ。リッシュモン襲撃の時間帯、スコールがここにいたことは誰でも証言してくれるだろう。
 そもそもアンリエッタのことが大きすぎて、森の中で転がっている焼死体にまで目は向くまい。
「そうだ、こいつを返しておく」
 合わされた掌から、シヴァ、ディアボロス、パンデモニウム、グラシャラボラス、サボテンダーがスコールの元に戻ってくる。
「ああ」
「あと、二人……」
 目の前に置かれた水割りの水面に目を落としつつアニエスは呟いた。



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