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ハルケギニアの狼-01


 第一話 「狼とゼロ」

その男にとって、今目の前に広がる風景は全く奇怪なものであった。
つい先程まで彼は雪に囲まれた土地にいた筈である。
だが、今いる場所はそんな寒さの厳しい場所ではなく、暖かい陽気に包まれたどこぞの屋敷の庭のように思えた。
ちなみに彼の記憶にこのような場所は存在しない。
にもかかわらずその男は落ち着いた様子で目だけを動かす。
周りに同じ格好をした少年少女が大勢と、自分に警戒を露にしている人物を三人確認できた。
一人は頭部の寂しい中年の男性で、もう二人は遠巻きにこちらを観察している青い髪の少女と赤い髪の少女だとわかった。

周囲の確認を終えた男――斎藤一は、理由は不明だが自分がどこか外国の学校にいるものだと考えた。
もしそうだとしたら日本語は通用しないだろう。
未だに警戒している中年男性他二名を無視し、煙草に火を点けながらこの後についてどうしたものかと考える。
すると、目の前にいたらしい桃色の髪をした少女から声を掛けられた。


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール―――通称『ゼロ』のルイズにとって今日は、とても重要な日だった。

今日はサモン・サーヴァントという、自分のパートナーとなる使い魔を召喚する神聖な儀式の日である。
同級生が次々と使い魔を召喚をしているのを見て彼女は、自分はもっとすごい使い魔を呼ぼうとやる気になっていた。
そうこうしているうちに彼女の順番が回ってきた。
いつもは周りの野次に対し言い返す彼女だが、このときに限ってはそれらの野次を一切無視していた。
彼女は集中して呪文を詠唱するが、起こるのは彼女の期待に反する爆発だった。
ほれ見ろと言わんばかりの顔をしていた同級生達は、その表情が次第に驚きに染まっていく。
爆発で起こった砂埃の向こう側に何かがいるのだ。

 「ゼロのルイズが成功したぁ!?」
 「明日雪降ンぞ! 雪!」
 「いやいや、雪じゃ済まねーだろ。槍ぐらいで丁度いいぜこりゃ」

殆どの生徒はこのように騒いでいたが、ルイズの耳には全く入って来なかった。
その代りに、期待と不安が入り混じった感情が心の中を駆け巡る。


そんな風に浮ついている広場とは反対に、警戒心を強める人物が二人だけいた。

 「これは……!!」

一人は教師である『炎蛇』のコルベール。
彼は砂埃の向こうに影が見えた途端悟った。
この煙の向こうにいるのは自分と同じかそれ以上の修羅場を潜り抜けた、相当な実力者だと。
その者が生徒に危害を加えようとするなら、自分は全力をもってその脅威を排除しようと。
――だとえ『炎蛇』に戻らざるを得ないとしても。

 「……!」

もう一人はルイズの同級生である『雪風』のタバサ。
彼女は自分の儀式が終わると、他の生徒には興味がないといった様子で読書を始めていた。
だがコルベールと同じタイミングで彼女はその人物が自分以上の実力者だと悟り、本を閉じ杖を掴む。
彼女を知らない者がその様子を見ても、興味を示した程度しか感じないだろう。
だが彼女の親友であるキュルケには彼女の異常な警戒心を確かに感じ取っていた。

 「どうしたのよタバサ? ヴァリエールの召喚したものがそんなに気になるの?」
 「危険」
 「…そんなに?」

タバサは相変わらずの無表情で首を縦に振るだけだったが、キュルケにはそれで充分だった。
すぐに杖を掴むとルイズの爆発によって舞い上がった砂塵の向こうを、強い眼差しで見つめていた。

 「あんた、誰よ?」
 「……」

突然のルイズの問いに、斎藤は一瞬言葉を失う。
日本語が通じないだろうと考えていたらいきなり日本語で声を掛けられてのだ。

 「ちょっと、聞…」
 「ここはどこだ」

反応を示さないことにイラッと来たルイズが再び質問をしようとしたが、斎藤の声にかき消されてしまう。

 「先に聞いてんのはこっ…」
 「ここはどこだ」
 「……トリステイン魔法学院よ」

ルイズは言い返そうとしたが、斎藤の有無を言わせぬ威圧感に負け、質問に答えた。
そしてその答えを聞いた斎藤はルイズの頭を疑った。
魔法を東洋で言う妖術の類と彼は認識していたが、彼はそのようなものの存在を信じていなかった(彼や彼の宿敵等が一般人から見れば
妖術使いにしか見えないということは置いておく)。なので、

 「もう一度聞く。ここはどこだ」
 「だ、だから! トリステイン魔法学院よ! あんたはわたしに召喚されたの!! つまりわたしはあんたのご主人様なの!」
 「フゥー…話にならんな。…おい、説明しろ」

ルイズを頭が残念な奴と認定した斎藤は煙草の煙を吐き出し、コルベールに声を掛け説明を求める。

 「わ、わかりました。少し待って下さい……今日は解散にします。皆さんは戻りなさい」

万が一斎藤と戦うことになったときに被害が及ばぬように生徒たちを戻らせ、彼と一対一になれる状況を作り出す。
指示を受けた生徒たちはそれぞれに談笑しなが学院へと帰っていくが、ルイズ、キュルケ、タバサはその指示を無視していた。

 「何をしているんだ。君たちも戻りなさい」
 「いえ。アイツはわたしが呼び出したんです。わたしにはここにいる義務があります!」
 「私も彼には個人的に興味がありまして」
 「右に同じく」

コルベールはその三人に早く戻るよう注意するが、彼女らには言うことを聞く気がないようだ。

 「いや、ですが…」
 「心配要りませんわ、ミスタ・コルベール。自分の身ぐらい自分で守れます」
 「しかしだなぁ…」

コルベールとしては危険な可能性があるこの男とはなるべく一対一の状態になりたかった。
だが、そう上手くはいかないだろうとも考えていたし、その証拠に召喚した本人のルイズが残ると言い出した。
このことはコルベールにとって予想の範囲内だったが、キュルケとタバサまで残ることは予想できなかった。
しかもテコでも動きそうに無い。
どうしたものかと、残り少ない髪の毛を気にしながら彼は本気で悩んでいた。

コルベールが彼女たちの対応に困っている頃、斎藤は空を飛ぶ生徒たちに目を奪われていた。

 「本当に妖術――魔法とやらが存在しているのか。・・・全く、面倒な事この上ないな」

魔法があろうが無かろうが、これからのことを考えるためにも情報が必要だった。
彼は煙草を捨て、火を足で消しながら声を掛ける。

 「お前ら、言い争いなら後でやれ。そんなことより今の俺の状況について説明しろ」
 「これは失礼…オホン、私の名はコルベールと言います。先程も彼女から聞いたと思うが、ここはトリステイン魔法学院です。
  先程までここではサモン・サーヴァントの儀式を行っていました。そして、」
 「待て、そのサモンナントカとやらは一体なんだ」

もう「魔法」については認めざるを得ないと判断していた斎藤は、聞いた事が無い言葉の説明を求めた。

 「サモン・サーヴァントとは使い魔を召喚する一種の儀式です。そして、召喚された使い魔は召喚したメイジと契約を結び、メイジの一生のパートナーと……」
 「一生だと……?」

使い魔の説明を聞いて、斎藤は不快感を隠そうともせずに声を出す。
剣呑な空気を感じたタバサとキュルケは警戒を強め、杖を握る手に力を入れる。
ヴェストリの広場を再び、緊迫した空気が覆う。
コルベールはなるべく彼を刺激しないよう、言葉を選びながら話を続ける。

 「確かに、行き成り呼び出されて一生仕えろと言われたら怒りもするでしょう。だがそうしないと彼女が進級できないのです。」
 「貴様らの都合なんざ知らん。今すぐ俺を元いた場所に返してもらおうか」

取り付く島が全くない。
これで「返す方法はありません」なんて言ったらどうなってしまうのだろうか。
先ほどから広場に満ちている息がつまりそうな空気が読めないのか、黙って二人のやり取りを聞いていたルイズが口を開く。

 「無理よそんなの。召喚された以上、あんたはわたしの使い魔になるしかないの。不本意だけどあんたで我慢してあげるわ」

先ほど自分の質問を無視されたことを根に持っているのだろう。
してやったりといった顔でない胸を張っている。

コルベールは一瞬、彼女が今どんなルーンを唱えたのか理解できなかった。
少なくとも、彼に知識にこんな危険な爆発を起こす可能性のある魔法は存在しなかった。

――思い出した。「クー・キヨミ・ビ・トシ・ラズ」という魔法が虚無にあったはずだ。
  他にも「オテ・ア・ゲ・ザム・ラ・イ」とか「ブ・チギ・レ・ザム・ラ・イ」とかもあった。
  それらの魔法は非常に強力無比であるため使うことを禁じられ――

そんなトリップしているコルベールをよそに、斎藤の顔に浮かんでいた不快感がさら強くなる。
自分たちとの実力差と、彼の人相の悪さから、タバサとキュルケは彼の不快感を明確な敵意と判断してしまった。
そしていつでも攻撃に移れるように杖を構えルーンを唱え始める。
幸か不幸か、その戦場にも似た雰囲気のおかげでコルベールは現実に戻ってくることが出来た。
そして、臨戦態勢にあるタバサとキュルケを庇うようにして斎藤の前に割り込む。

 「わわ、わかりました! でしたらこういうのはどうでしょう!」

彼は元の場所へ帰る手段は必ず見つけるから、それまでの間ルイズの使い魔の代わりをやってくれないかと提案した。
他にどうしようもない斎藤は、その提案をやれやれといった顔で引き受けるのだった。


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