あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの修羅-5

 ギーシュとの一件から、学院の生徒達のアズマに向ける視線が、ほんの僅かではあるが変化していた。
 ドジで間抜けな平民では無く、得体の知れない使い魔だ、と誰かが言い出し、それが定着した。
 当のアズマは、そんな評価など知ったことかとばかりに、ルイズの使い魔として、へらへらとした顔をしながら日々を過ごしている。

「わたしが馬鹿にされてる時は、誰に何か言う事もなかったのに、どうしてメイドの時はあんなつっかかったのよ」

 決闘を終えた日の就寝前、どうしてもその事に納得がいかなかったルイズは、意を決してアズマに尋ねたのだが、彼から返って来た意外な言葉に、その目を丸くした。

「おまえは強いからな」

 どこか羨ましそうに自分を見るアズマに、それ以上ルイズは言葉を続けることが出来なかった。
 それから、お互い言葉を交わすことも無く床に就いたのだが、アズマはなかなか寝入る事が出来ず、自分の言った発言を反芻しながら静かに呟いた。

「……ほんと、俺なんかと違って、ルイズは強いよ」

 たった数日暮らしただけの間柄だが、ルイズの誇り高さとその勤勉さを、嫌と言う程アズマは目の当たりにしていた。
 だからこそ思う。このまま自分は、ドジで間抜けなふりを続けていいものかと。
 こんな臆病で弱虫なままでは、結果として自分を呼び出したルイズまでも貶めるかもしれない。

「雹、か。とっくに忘れてたと思ったのにな」


 決闘の際に用いた己の技を思い、ふっとその顔に笑みを浮かべながら言う。
 ――雹。銃などの飛び道具に対して素手で勝つ為に、その練習相手として生み出された彼の一族ならではの技。
 広場に赴く前に、食堂から拝借したフォークでその技を行ったのだが、名を捨てる以前より、その技の切れは遥かに増していた。

「よく分からんなぁ」

 その一言で考える事を放棄し、アズマは藁の寝床に背をもたれかけ、そのまま目を瞑った。



 平穏な日々を送っていたアズマに転機が訪れたのは、それからまた数日が経ってからの事だった。
 巷で話題を呼ぶ、貴族相手に巨大なゴーレムを使って盗みを働く一人の盗賊、土くれのフーケの登場が、事の発端だ。
 彼女によって盗み出されたのは、学院に伝わる秘宝、破壊の杖と呼ばれる物だった。
 その翌日、急遽編成された追跡隊の中には、ルイズの名前があった。彼女の熱心な志願により、最初は渋っていた学院長のオスマン氏も、ついには熱意に押されて参加を許したのだ。
 最も、追跡隊と言ってもアズマを含め、たったの五人。それも五人の内三人が学院の生徒と来ている。流石のアズマもこの事態には頭を抱えた。ろくでもない大人達がいたものだと。
 紆余曲折を経て、追跡に参加する一人、ロングビルが突き止めたフーケの潜伏先で彼らを待ち受けていたのは、巨大ゴーレムによる襲撃だった。
 同行していたキュルケ、タバサによる魔法攻撃も歯が立たず、撤退も止む無しと思われた時、ただ一人ルイズだけが敢然とゴーレムに立ち向かい、杖を振っては失敗魔法による爆発をお見舞いする。

「止めろ、ルイズ! こんなのに敵いっこねぇ!」
「うるさい! 弱虫! あんたはそうやっていつだってのらりくらり逃げてるけどね、こっちは貴族なのよ! 誇りがあるの! 敵に背を向けるって事は、自分の名前を捨てるのと一緒なのよ!」

 ゴーレムを目の前にし、その足を震わせながらも毅然と言ってのけたルイズに、アズマは心の中に刃物を突き立てられた様な気がした。
 逃げ続けても、得られる物などありはしない。名を忘れたふりをして逃げ続けても、きっと自分は救われない。自分はあの小さな少女の半分の勇気も持ってはいない。

 ――――だけど、

「きゃあっ!」
「ルイズ!」


 ゴーレムの拳がルイズを掠める。掠めただけとは言っても、あれ程巨大な拳だ、人の身体を吹き飛ばす事など造作もなかった。
 まるで人形の様に吹き飛び、傷ついたルイズの身体をアズマは咄嗟に抱きとめた。

「いい加減……本当の力を見せてよ……」

 ギーシュとの決闘の際、アズマが見せたその実力の片鱗に、どことなく気づいていたルイズは、彼の腕の中で力無く呟いた。
 アズマの中で何かが弾けた気がした。

 ――――今、思い出してしまった。

「ちょっとアズマ!? あんたまで何してんのよ!? 逃げないと!」
「早く」

 風竜、シルフィードに乗ったタバサとキュルケが、アズマからルイズを受け取りながら、同じくシルフィードの背に乗れと言う。
 だが、アズマはにっと笑ってこう返した。

「大丈夫だよ。あれは俺が倒すから」

 ――――『陸奥』という名前を。


 身構えた瞬間、左手の甲に光が灯り、アズマは身体全体がまるで羽毛の様に軽くなった感覚を得た。そして、同時に金剛の如き力が身の内から溢れ出して来るのを感じる。
 アズマは、彼の名を表す字、雷の如き素早さでゴーレムの足元に潜り込み、その拳を当てた。

「…………ッ!」

 本来ならばこんな巨大な物、破壊出来るわけが無い。だが、今の自分ならば……
 拳にありったけの力を篭めて、それを開放する。

「やっぱり無駄よ!」

 ゴーレムに変化は無い。目障りな足元の虫を踏み潰すかの様に、その巨大な足を下ろそうとした瞬間。
 ――ゴーレムは内側から瓦解する様に崩れ落ちた。

「……アズマ」

 怪我によって気を失う寸前、ルイズはアズマの姿を見てふっと微笑んだ。
 アズマはそのゴーレムの姿を確認し、突き出した拳を構えたまま呟く。

「……陸奥圓明流奥義、無空波」

 彼が本当の意味で、その名を取り戻した瞬間であった。

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