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プロローグ前編 幻想の世界


この世に悪があるとすれば、それは人の心だ
エドワード・D・モリスン


・・・・・・・・・・・・・・・

アセリア・・・そこはマナに祝福され、天空に二つの月が存在する世界

かつて、この世界に一人の異邦人が降り立った・・・その名はダオス

ダオスは、魔族や魔物達を率いて、人類との戦いを始めた

過去、現在、未来・・・時を超えて続く戦いは、6人の勇者達によって幕を閉じる

クレス・アルベイン
ミント・アドネード
チェスター・バークライト
アーチェ・クライン
クラース・F・レスター
藤林すず


激しい死闘の末、ダオスを制する勇者達・・・これで、世界は救われると思われた

だが、ダオスの死は別の世界の終わりを意味していた

彼の故郷である、デリス・カーラーン・・・そこに生きる人々の死を

勇者達はダオスの使命を知り、マナの流出を防ぐ結界を世界樹・ユグドラシルに張る

彼の故郷を救う唯一の方法であるマナの結晶『大いなる実り』が生まれるように

悲しき魔王の故郷が、救われる事を信じて・・・・・・

そして、勇者達はそれぞれの時間へと帰り、己の時を過ごし始める



アセリア歴4205年・・・後世の歴史書に記されるダオス軍との戦い、ヴァルハラ戦役から3年後

この物語は時空戦士の一人、クラース・F・レスターの住むユークリッド村から始まる

「うむ・・・また失敗か。」

ユークリッド村、クラース魔法修練所・・・その地下にあるクラースの研究室
時空戦士の一人、クラース・F・レスターは頭を悩ませていた

「可笑しいな・・・理論的には、間違っていないはずだが…なら、詠唱に問題が…。」

目の前の魔法陣と書物を交互に見ながら、クラースは考える
ダオスとの戦いから三年後の現在、彼は新たな召還術を習得しようとしていた
テーマはこの世界において、未だ契約していない未知の精霊達との契約である

「伝承によると、セルシウスやヴェリウスといった精霊達がいるとあるのだが・・・。」

しかし、伝承に存在するだけで、何処にいるのかは解らない
ならば、此方から呼び出そうと、此処で召還の儀式を行っていた
だが、何度やっても精霊は呼びかけには応えない

「やはり、伝承だけの存在なのだろうか・・・・・・いや、そう結論付けるのはまだ早いな。」

クラースは呼吸を整えると、もう一度召還の儀式を行う事にした
これまで何度も失敗したが、こうなれば成功するまで続ければ良いのだ

「我が名はクラース・F・レスター・・・指輪の盟約により、この儀式を司りし者なり。」

詠唱が始まると、目の前の魔方陣が輝きだす…此処までは順調だ
が、次からが問題である…精霊が自分の呼びかけに答えるか否か
失敗なら、魔方陣はその輝きを失ってしまう

「今はまだ姿を見せぬ精霊よ、我が声に耳を傾け…此処に現れたまえ…そして我と契約を交わさん。」

先程までは、此処で魔方陣の光は消えたのだが、まだ魔方陣は輝きを失っていない
クラースは焦らずに精神を研ぎ澄まし、詠唱を唱え続け……そして

「出でよ……心を司りし精霊・ヴェリウス!!!」

力強く精霊の名を叫ぶ・・・すると、魔法陣から眩い光が溢れだした
今までとは違う強い光にクラースは目を瞑るが、確信する

「来たか、未知なる精霊が!?」

やがて、光が収束していき・・・クラースは目を開けた
そこには、誰も見たことのない精霊の姿が・・・

「なっ・・・これは!?」

精霊は何処にもいない・・・いるのは、一人の少年だけだった
見たことのない服を纏い、分厚いノートらしきものを持って仰向けに倒れている

「子ども・・・まさか、呼び出されたのはこの子なのか?」

もう一度辺りを見回すが、精霊らしき姿は何処にも見えない
結局、成功するかと思われた召還も失敗に終わってしまった

「また失敗か…いや、それよりもまずはこの少年の安全を確認せねばな…。」

クラースは自分が呼び出してしまったであろう少年の無事を確認するべく、傍へ歩み寄った

「おい…君、大丈夫か?」

少年…平賀才人が、気が付いた時に聞いた第一声はそれだった
誰かが自分を呼んでいる…そして、背中の感触から自分は倒れている

「(あれ…俺は一体……。)」

才人は目を瞑ったまま、己の記憶の糸を辿ってみる
確か、修理されたパソコンを受け取って、家に帰る途中に…

「(急に景色が歪んだ気がして…それで……。)」
「おい、返事をしろ!!」

思い返していると、再び自分を呼ぶ声が聞こえ、体を強く揺らし始める
才人はとりあえず思考を一度中止し、呼びかけに答える為に目を開けた

「ん、此処は……。」
「気が付いたようだな。」

目を開けると、才人を覗き込むクラースの姿があった
クラースの独特の格好を見て、才人の第一印象は・・・

「(何だ、このおっさん…いい歳こいてコスプレかよ。)」

そう思った才人は起き上がると辺りを見回し、自分が建物の中にいる事に気付いた
そして最後に、足下に描かれていた召還用の魔法陣へと視線をおとす

「(うわっ、何だか本格的だな…もしかして、黒魔術とかってやつ?)」
「見た所、怪我はないようだな…君の名前は?」

才人が戸惑っていると、クラースが名前を尋ねる
どう答えれば解らず、才人は不安から返事を返せなかった

「…っと、まずは自分から名を名乗るのが礼儀だったな…私の名はクラース・F・レスター、此処で学者をしているものだ。」
「えっと、その…俺、平賀才人って言います…って、日本語分かりますよね?」
「ん、日本語…まあいい、君の名は平賀才人君と言うのだな。」

クラースが名乗った事で、不安ながらも才人は自分の名を告げる
しかし、東京の街を歩いていた自分が、何故こんな所にいるのだろうか

「あ、あの……俺はどうしてこんな…。」
「クラース、新しい召還術は成功したの?」

才人がそれを尋ねようとした時、今度は上の方から女性の声が聞こえてくる
その中にある聞き慣れない単語に、才人は首を傾げる

「(召還術?召還術ってどういう事だ?)」
「ミラルドか……すまんが、お茶を用意してくれないか、予想外の事が起こったんだ。」

クラースの返答に「解ったわ。」との返事が聞こえ、足音が遠ざかっていく
それが聞こえなくなった後、クラースははぁ、と溜息をついて才人を見る

「此処で立ち話もなんだ、突然の事で驚いているかもしれんが、上で話をしよう。」
「えっ…は、はい。」

取りあえず返事を出した才人は、クラースと一緒にこの地下室から上へと出る事になった

「はい、どうぞ。」
「あっ、どうも。」

上に上ってしばらく経った後、居間に案内された才人は女性からお茶を受け取った
彼女の名はミラルド・・・クラースと共に此処で暮らしている女性だ
今ではようやくクラースと結婚し、レスターの性を名乗っている

「(何なんだろう、この人達…変だけど悪い人達ってわけじゃなさそうだし…それに此処は何処なんだ?)」

自分でも賢くないと思っている頭で現状について考えつつ、受け取ったお茶を飲む
あっ、これ美味しいや…などと思った後、兎に角此処が何処なのか尋ねる事にする

「あの…此処は一体何処なんですか?」
「此処はユークリッド村…ユークリッド大陸のほぼ中央にあるのどかな村だ。」
「ユークリッド村?」

何だそれ、此処は東京じゃないのか…才人は視線を近くの窓に向ける
窓の外には、青い空と田舎の村といったのどかな風景の一部が見えている
東京に、こんな景色が見える場所なんてあっただろうか?

「それで…俺、何でこんな所にいるんですか?」
「ん? ああ、それはだな……うむ、その…。」

才人の問いに、クラースは答えに戸惑って歯切れが悪くなる

「クラース…貴方のせいで、この子こんな所に着ちゃったんだから、ちゃんと説明しないと。」
「まあ、そうなんだが…しかし、理論は間違っていなかったのに、何故彼が呼び出されたのか…。」
「そんな事は後で考えなさい、ほら早く。」

才人はこの夫婦のやり取りを見て、何となく二人の上下関係を理解した
この人、絶対奥さんに尻に敷かれてるな、と…すると、クラースの目が光る

「君…今、私の事を「尻に敷かれマンだ。」等と考えてはいないだろうな?」
「い、いや、別にそんな事は……。」

慌てて、首を振る才人……ってか、尻に敷かれマンとか思ってないし
まあ、それは置いとくとして…と、ようやく本題へと入る

「まずは君に詫びなければならないな、こんな所に呼び出してしまって。」
「呼び出した? 俺が? あんたに?」

此処で才人はその言葉の意味を考えてみる
もしかしたら、自分は何かの手違いで、ドラマか映画の撮影に連れてこられたのかもしれない
そして此処はきっと、映画村みたいな所なのだろう、ならあの魔方陣も二人の格好も納得できる
そうだ、そうに違いないと、その性格ゆえのプラス思考で結論付けた

「出来れば、今すぐにでも送り返したいのだが…君が住んでいた所は何処なんだ?」
「本当ですか? だったら、お願いします。」

一時はどうなる事かと思ったが、これで家に帰れる
さっそく自分の家の住所を二人に伝える才人…だが、この希望はすぐに打ち砕かれる事となる

「「………………………。」」

才人が自分の住所を伝えた後、二人はしばらく黙り込んでしまった
それに、何だか疑わしい視線で見つめるが、才人はそれに気づかない

「あの…住所は言ったんだから、早く家に送ってくださいよ。」
「才人君…もう一度確認を取るが、君が住んでいた町は…トーキョーだったかな?」
「そうですよ、東京…此処日本の首都じゃないですか。」

何、当たり前の事を聞いて来るんだ…これで何度目だよ
先程から、何度も何度もクラースは才人に住所の確認を行っている
そのせいで、才人の口調にも苛立ちが出始めていた

「日本…ジャポンの事かな?」
「ジャポン…ああ、ジャパンね、そうそう、英語じゃ日本はジャパンですよね。」

笑いながら、才人が答えると、「うむ…。」と呟いてクラースは独り言を始める
聞き耳を立てると、「忍者の里の人間かと思ったが…。」とか「トーキョーなんて町は…」といった声が聞こえてくる

「すいませんけど、俺送ってもらえるんですか、駄目なんですか!?」

ちゃんとした返答がない事に腹を立てた才人が、少し声を荒げて尋ねる
と、ガタンと大きな音を立てながら、クラースが立ち上がった
怒ったのか…と驚く才人に背を向け、彼は近くの本棚に手を伸ばした

「……すまんが場所が解らなくてな、地図を出すから教えてくれないかな?」
「なんだ、場所が解らなかっただけか…だったら、初めから言えば良いのに。」

そして、クラースは地図を持ってくると、テーブルの上へ広げる
えっと、俺の家は…と、才人が家の場所を指し示そうと地図を見るが…

「な、何じゃこりゃ!?」

才人は驚いた…驚くしかなかった
その地図は世界地図なのだが、自分が知っている地図とは全く違うものだった
そこには日本もなければアメリカもない、知っている国が全然なかった

「何って、この世界アセリアの世界地図よ…で、此処はユークリッド大陸北部にあるユークリッド村。」
「アセリア? ユークリッド大陸!? そんな名前の大陸なんて聞いた事ないですよ!?」

ワケが解らない…どういう事だ!?
混乱する才人を見て、クラースとミラルドは互いに目を合わせる

「ねぇ、クラース…この子、もしかして……。」
「ああ…どうやら、私達の世界よりも遠い所から呼び寄せてしまったのかもしれんな。」
「何、どういう事!?」

二人が納得するが、才人は納得できない…説明を求める
しばらくして、クラースは才人に真実を告げた

「此処は君がいた世界とは違う世界だと言う事だよ…平賀才人君。」

「………本当に…本当に俺、異世界に来ちゃったんですか?」

しばらくして…半信半疑ながらも、ようやく才人は今の自分がどういう状況なのかを理解する
クラースの言葉から色々混乱したりもしたが、説明を受けて今は落ち着いている

「ああ、そのようだ……理解出来たかね?」
「はい、説明を聞いたらそうとしか思えないし…何より、俺の世界には月は一つしかありませんから。」

今の状況を理解できた一番の要因は、このアセリアの空に見える二つの月の存在だった
シルヴァラントとテセアラ…夜となった今、二つの月は輝きを放っている

「それで、俺はこの世界に来たのはクラースさんの召還術ってやつのせいなんですよね?」
「そうだ…すまんな、全て私の責任だ…まさか私の召還術が異世界へ通じてしまうとは……。」

一体何処で間違えたんだか…クラースは一人ごちる

「いえ、それよりも…俺、ちゃんと元の世界に帰れるんですか?」

まさか、一生この世界で暮らさなきゃいけないのか…不安ばかりが募る
もう二度と、家族や友人に会えないのだろうか…

「いや、君は私が責任を持って元の世界に送り返す…その為には、返す方法を探さなければならないが。」
「当てはあるんですか?」
「それをこれから研究する…時間は掛かるだろうが、必ず見つけてみせるさ。」

召還術は専門だが、召還した対象を元の場所に帰す送還術に関しては殆ど知識がないに等しい
古い文献や友人達をあたって、方法を見つけるしかない

「でも…もし、見つからなかったら俺はどうしたら…。」

その言葉に、一瞬沈黙が入る…が、すぐにクラースは笑みを浮かべる

「失敗を考えていては、成功なんて出来やしないさ…まあ、私を信じろ。」

その言葉に、才人は迷う…この人を本当に信じて良いのだろうか
自分をこの世界に呼び寄せた張本人…だが、逆を言えば唯一元の世界へと帰れる方法に近い人物だ
当てがない以上、自分はクラースに頼るしかない…才人はそう考え、ゆっくりとだが頷いた

「決まりだな…さて、私は早速君を元の世界に帰す方法を探すとしよう…ミラルド、後は頼むぞ。」
「ええ、でも無理はしないでね…この前だって、徹夜続きだったのに。」
「何、新しいテーマが出来たとでも思えば大丈夫さ。」

ミラルドの言葉に頷くと、クラースは脱いでいた帽子を取って地下室へと足を運んでいった
その姿が奥へと消えた後、ミラルドは才人の方へ振り向いた

「さて…取りあえず、元の世界に帰れる目処がつくまで貴方は家に居候って事ね、色々手伝って貰うけど良いかしら?」
「え、手伝うって…何を?」
「そうね…掃除、洗濯、買い物とか色々ね。」

才人はこの家にいる間、家の雑用を手伝う事になった
やっぱり、ただでいられるわけないか…と、残念そうに呟く

「当然でしょ、貴方を呼び出した責任はクラースにあるけど、働かざる者食うべからず…それは理解しなさいね。」

解らない事は色々教えてあげるから、とミラルドは優しく告げる
まあ、無理難題を押し付けられたわけじゃないし、別に良いだろう

「じゃあ、早速だけど晩御飯にしましょうか…お腹空いてるでしょ?」
「そう言えば…。」

もう時間はこの世界では夜…ご飯を食べる時間だ
お腹も思い出したようにぐぅ、と腹の虫を鳴かせ、それを聞いてミラルドはクスクスと笑う

「貴方、何かリクエストはある? まだ夕食のメニュー決めてないから。」
「リクエストですか? えっと……。」

そう言われても…と思ったが、今朝の母親との会話を思い出した
今夜はハンバーグよ…母の顔と共に、その言葉が頭の中で何度も響く

「……ハンバーグ、ハンバーグが食べたいです。」
「ハンバーグ? それで良いの?」
「はい、母さんが今日の晩御飯に作ってくれるって言ってたから…。」

その言葉に、ミラルドは何も答えない…気まずい空気が流れる
だが、しばらくしてミラルドは優しく微笑んだ

「…良いわ、なら晩御飯はハンバーグね、美味しいのを作ってあげるから期待しなさい。」
「ミラルドさん…あ、ありがとうございます。」

ミラルドの優しさに触れ、思わず才人は泣いてしまった
ほらほら、泣かないの、男の子でしょ…と、彼女は優しく慰める
才人は瞳から流れる涙を拭い、落ち着きを取り戻す

「晩御飯は私が作るから、貴方は食器の準備をお願いね…棚はそっちよ。」
「はい。」

ミラルドに言われ、食器棚へと足を運ぶ才人
半時間後には、美味しそうなハンバーグが、夕食の食卓に並んだ

「ご馳走様でした、ご飯美味しかったです。」
「お粗末様、異世界の人の口に合ってよかったわ。」

夕食が終わり、後片付けがすんだ後に才人はミラルドに部屋に案内された
此処はクラース達の生徒が寝泊りする所だが、今は空いている
元の世界に戻る目処が経つまで、しばらく此処を使わせて貰える事になった

「じゃあ、明日から本格的に手伝ってもらうから…しっかり休んでおきなさい。」
「わかりました…お休みなさい、ミラルドさん。」
「お休みなさい。」

ミラルドはそう言うと、クラースのいる地下室へと足を運んでいった
手には夜食を乗せたお盆があり、それを彼に届けにいくようだ
彼女の姿が見えなくなった後、才人は戸を閉めてベッドに倒れこんだ

「はぁ……何かとんでもない事になったけど、何とか生きていけそうだな。」

クラースさんもミラルドさんもいい人だ…今の所、帰る方法以外で心配する事はないか
ふと、才人は視線を窓の外に見えるシルヴァラントとテセアラに向けた

「二つの月か…何か、似たような光景を見た事がある気がするけど…気のせいだよなぁ。」

二つの月…何だか、以前から知っているような気がする
変な既視感を覚えるが、気にせず才人は布団に包まる

「まあいいか、今は帰る方法を見つけてもらうまで、この家で働けば良いんだし。」

取りあえず今は、此処で暮らしていこう…それしかない
才人は目を瞑って、眠りにつこうとする

「明日からこの家の手伝いか…洗濯とか大丈夫かな、洗濯機なんてないだろうし。」
「まあ、でもミラルドさんが教えてくれるって言ってたから、何とかなるかもな。」
「クラースさん…本当に元の世界に戻る方法を見つけてくれるかな?」
「俺、本当に……何時になったら…。」

色々考えているうちに、才人を睡魔が襲ってくる
やがて彼は何も言う事もなく、寝息を立てながら眠りについた



眠りにつく才人、その下の地下室ではクラースが送還術の研究を行っている

後ろでは、必死になって本を読み漁るクラースを、ミラルドが優しく見守っていた

こうして、アセリアの夜は静かに更けていった……



一方その頃、地球ともアセリアとも違う別世界、魔法が世の理を成す世界では……

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!」

ハルケギニア大陸…トリステイン王国、トリステイン魔法学院
この日、この学院では春の使い魔召還の儀式が行われていた
一生を共にする使い魔を呼び出すこの神聖な儀式は、今最後の一人がそれを行っている

「五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし『使い魔』を召還せよ!!!」

彼女…ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは己の使い魔を召還する為に、呪文を唱えた
だが、彼女の使い魔は召還されず、爆発だけが起こるだけだった

「またかよ、ゼロのルイズ!!」
「一体何時までサモン・サーヴァントを失敗すれば気が済むんだよ。」

周りからは、既に召還の儀式を終えた生徒達の非難の声があがる
ルイズは杖を握り締め、キッと同級生達を睨み付ける

「ちょっと失敗だけでしょ、黙っててよ、気が散るから。」
「そう言うのも何度目だよ、いい加減にしろって。」
「本当、本当、次の授業に遅れちゃうわ。」

そう、彼女だけは何度やっても失敗ばかりで使い魔が召還されないのだ
最初は馬鹿にしていた生徒達も、飽きてきたのか呆れるばかりである
口論になりそうな所を、引率の先生が割って入る

「ミス・ヴァリエール…もう時間も時間ですし、今日はこれまでにしませんか?」
「ミスタ・コルベール、もう一度…もう一度やらせてください!!」
「しかしですね、これ以上続ければ後の授業に差し支えますし……。」
「お願いします、次は…次は必ず成功させますから!!!」

それでも、ルイズは必死に続けさせてもらえるよう、先生に懇願する
2年生に上がる為に大切な使い魔召還の儀式…それを失敗したまま終わらせたくは無い
ルイズの必死の説得に折れたコルベールは、彼女に最後のチャンスを与えた

「解りました、ミス・ヴァリエール…後一回だけ、チャンスを挙げましょう。」
「ありがとうございます、ミスタ・コルベール。」
「ですが、次が本当に最後ですよ…成否に問わず、これで今日の召還の儀式は終了しますからね。」

その言葉に頷くと、ルイズはもう一度杖を構えてサモン・サーヴァントを行う準備をした
後ろでは、生徒達の談笑が聞こえ、中には成功するか賭けをする者達がいる

「(見てなさいよ…今度こそ、凄い使い魔を召還してやるんだから!!!)」

精神を集中させ…周りの声を聞かないように努力する
そして、ルイズはゆっくりと、召還の呪文を唱え始めた

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!」

お願い、まだ見ない私の使い魔……

「五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし『使い魔』を……。」

私の呼びかけに答えて…私が、私が『ゼロ』ではない事を…証明する為に

「召還せよ!!!」

呪文を唱え終えると、一際大きな爆発がルイズの前で起こった
食い入るように結果を見つめるルイズ…そして、爆発の煙が晴れると…

「そんな……。」

そこには、使い魔はいなかった……最後の最後で、また失敗したのである
ショックのあまり、ルイズはその場に座り込んでしまった

「失敗ですか…約束どおり、これで今日の使い魔召還の儀式は終わります…良いですね?」

コルベールの言葉に、ルイズはただ黙って頷くしかなかった
そして、生徒達は各々の使い魔を引き連れて、その場から立ち去っていく

「最後の最後で失敗か…やっぱりゼロのルイズは期待を裏切らないよな。」
「所詮ゼロはゼロって事よ。」

同級生達の中傷の声が聞こえるが、もうルイズはそれに答えない
全員が学院へと戻り…残ったのは、ルイズとコルベールだけとなった

「ミス・ヴァリエール…明日の放課後、もう一度使い魔召還の儀式をやりましょう。」

唯一人、使い魔召還を果たせなかったルイズに、コルベールはそう告げる
だが、彼女は何も答えずに、その場に座っているだけだった

「……今日は授業を休んで部屋でゆっくりしなさい、先生には私が言っておきますから。」

彼女の気持ちを察したコルベールはそう言うと、その場から立ち去っていく
そして、この場にはルイズただ一人が取り残された

「……どうして…どうして成功しないの?」

震える声で呟くルイズ……彼女は今、泣いていた
悔しかった…今度こそ、自分が『ゼロ』でない事を証明出来ると思ったから

「私がゼロだから? 落ちこぼれだから? ねぇ、何でなのよ……。」

芝生に涙を落としながら、彼女はグッと拳を握り締める

「どうしてなのよ~~~~~~~~~~~~!!!!!」

透き通るような青空に向かって、ルイズの叫び声が木霊する
残念ながら、その問いに答える者は誰もいなかった



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