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萌え萌えゼロ大戦(略)-10



「……こ、これが『破壊の杖』……?」
 ルイズが箱の中に納められていたものを手にとって――この非常時に一瞬固まった。

 それは確かに『杖』のようだった。後ろにラッパか漏斗の様なものが取り付けられた
白く細長いそれは小脇に抱えられるくらいに太く、全長もルイズの両腕の長さくらいはある
……が、問題はその杖の先端が見たこともない動物、白い毛で覆われているが耳と鼻と目の
周りが黒い毛になっている生き物――もしもルイズがそれを知っていれば
『パンダ』と答えただろう――の顔で、しかもそれが微妙に憎らしげな笑みを
張り付かせているのだ。その奇妙な造形がいかなる理由でなされたものなのか、
ルイズには理解できなかった。

「……でもそんなことは今気にすることじゃないわ!
 さあ魔法を出して『破壊の杖』!」

 ルイズが『破壊の杖』を振るう。しかし何も起きなかった……

「……出なさいよ!
 な……なんで?何も起きないじゃないの!」
 ルイズが再び『破壊の杖』を振るう。……しかし、何も起きない。そんなことを
しているうちにゴーレムがルイズに気づき近づいてくる。ルイズはその場から
離れながら、何度も『破壊の杖』を振る――が、やはり何も起きなかった。

「ルイズ!ああもう、何やってんのよ!」
 その上空、風竜シルフィードの背中からキュルケが叫ぶ。ルイズは『破壊の杖』で
どうにかすることに必死で、ゴーレムが次にどう出てくるかが見えていない。

 そうこうしているうちに、ゴーレムの巨大な拳がルイズに向かって振り下ろされようとして
――途中でがくがくとけいれんを起こしたゴーレムが土くれに帰って行く。
何故そうなったのか、ルイズたちには理由が分からなかった。

「……な、何?どうなってるの?」
 ルイズたちの頭の上に『?』が浮かぶ。その疑問が晴れないうちに、森での
戦闘が終わったのか、ふがくが気絶したロングビルを抱えてルイズたちの前に
戻ってきた。

「ふがく!」
「……ゴメン。逃がしちゃった」
 ふがくが言う。お姫様だっこされたロングビルを見ると、アップにしていた
髪が解け、緩やかな流れを作っている。どうやら後頭部を殴られて気絶しているらしい。
「どういうこと?」
「……爆撃で追い詰めたんだけど、アイツ、ミス・ロングビルを盾にしてて。
 手が出せないうちに人間サイズのゴーレムで私を殴りつけた後にミス・ロングビルを
気絶させて逃げられたわ。
 逃げるときにわざとゴーレムを崩して逃げたし、ミス・ロングビルを放っておくわけにも
いかないし……」
 ふがくはそう言ってゴーレムの拳を受け止めたらしく赤くなった左腕を見せて、
ロングビルを抱いたまま肩をすくめる。
「そういうことなら仕方ないわね。とりあえず『破壊の杖』は取り戻したんだし……」
 そう言ってルイズが手にしたままの『破壊の杖』をふがくに見せる。
そのとたん、ふがくの表情が一変した。だが、そこにあるのは驚きではなく
一種の呆れ。

「なんで……コレがこんなところにあるのよ……」
「知ってるの?ふがく」
「中華民国の鋼の乙女が使う空対地空対艦ロケット――確かにコレは『破壊の杖』って
呼ばれても不思議じゃないわ。飛ばないところも中国製だし」
 『チュウカミンコク』――またもルイズたちの知らない国。けれど、そこに
何故『そこのものなら動かなくても仕方ない』というニュアンスが漂うのだろうか。
 実はふがく本人はこれを使う鋼の乙女には遭遇したことがない。しかし、実際に
文字どおり刃を交えた姉、大日本帝国唯一の戦闘機型鋼の乙女、零式艦上戦闘機・レイと
大日本帝国が保有する航空機型鋼の乙女の大部分を占める爆撃機型鋼の乙女の一人、
九七式艦上攻撃機・ナナから伝わったその噂はいくつも聞いていたし、開発されていた
研究所に別ルートから入ってくる情報からもそれがどんな乙女なのかはだいたい
つかんでいた。
「これは発射されると目標までまっすぐ飛んでいって大爆発を起こす兵器よ。
 私みたいな航空機型鋼の乙女が使うものだから、命中すれば空からの攻撃に
弱い戦車くらいは一撃だし、下手な駆逐艦どころか装甲の薄い空母でも一発で
沈めるわ。そのいやらしいパンダ顔に沈められたら一生夢に見るわね」
 ふがくの言葉にルイズがゆっくりを視線を落とす。そこにはふがくが『パンダ』と
呼んだ動物の顔がある……が、そこである事実に気づく。
「何かよく分からないところも多いけど……今言ったことからすれば……
この『破壊の杖』って、爆発したらフネも一撃、ってこと……よ、ね」
 そうしてルイズはおそるおそるふがくを見る。首を縦に振ったふがくにルイズの
顔色が一気に蒼くなる。反射的に『破壊の杖』を放り投げようとして……慌てて
両腕で抱え込んだ。
「……何やってるのよ、ルイズ」
「あ、あ、当たり前でしょう!そんな危険なものだとは思わなかったわよ!」
 慌てふためくルイズ。その様子にふがくは大きく溜息をついた――


 ――帰り道。気がついたロングビルとともにルイズたちは風竜シルフィードに
乗っている。ふがくは独り真昼の照りつける太陽を背に受けつつ、シルフィードを
視界に収めながら飛んでいた。なお、飛び方自体は行きと変わらないため、
相変わらずシルフィードの悲壮な鳴き声が聞こえるのは幻聴ではないだろう。

「……さっきの私、一瞬自分じゃなかった」
 ふがくは独りごちる。それを聞かれたくないために彼女は一人飛ぶことを選んでいた。
 ゴーレムとの戦闘中、ルイズが絶体絶命の危機に陥ったとき、体が勝手に動いていた。
それも、普段の自分なら絶対にやらない危険な角度からの急降下までして。
そればかりかフーケことロングビルを見つけたとき、本気で消し飛ばしてやろうと考えた。
それまでの自分の言葉を反故にして、というより頭の中から消え去ったかの様に。
それに何とか抗って今の形に落ち着けたのは、多分に幸運だったのだろう。
「何だっていうのよ……すっきりしない。名前の発音が違うだけでイライラするし……
って、あれ?何かが抜け落ちているような……何だったっけ……」
 いらつくふがく。その表情が一瞬かげった。何か、大切なことを忘れているような――
ふがくはそんな気分にさせられている自分自身に戸惑いを隠せなかった。


「……申し訳ありません。わたくしがふがいないばかりに……」
 シルフィードの背中でロングビルがルイズたちに謝罪する。空からロングビルを
見つけたふがくがその周囲を爆撃して土くれのフーケを追い詰めたものの、
フーケと杖を交えていたロングビルを盾にされて取り逃がした――ルイズたちは
ふがくからそう聞いている。そしてロングビルもそのことを否定しなかった。
「仕方ないわよ。みんな生きてただけでも良かったと思ってるわ。少なくともわたしは」
「そうね。あのゴーレムにはさすがのあたしも肝を冷やしたわ。でも、あれだけ
派手にふがくに追い立てられたんだもの。しばらくは姿を現さないと思うわね」
 キュルケの言葉をロングビルは肯定した。
「……わたくしもそう思います。いえ、もう現れることはないかもしれません」
「……どういうこと?」
 タバサが口を挟む。
「言葉通り、ですわ。ミス・フガクはフーケに向かってこう言いましたから。
 『私は高度15000メイルから目標を精密爆撃できるくらいに目がいい』と。
仮にわたくしがフーケだとしても、そんな相手がいるところにもう一度姿を
現そうなんて考えません」
 その言葉にタバサは絶句する。ルイズとキュルケは意味を完全にはつかみかねて
いるようで、そのまま受け流してしまった。

(アルビオン浮遊大陸の高度が3000メイル。高度4000メイルにも上がれば寒さに凍え、
空気も薄くなり気を失いかねない世界――かつて高度8000メイルまで上がった竜騎士は、
その代償として二度と空を飛べなくなった……もしもふがくが敵に回ったら……
勝てない)

 タバサは心の中で想像する。仮に運命の歯車が狂い、ふがくが明確な攻撃意志を
持って風竜の3倍以上の速度で高度15000メイルから彼女の祖国上空に現れる姿を――
背中の6発エンジンが絶望的な羽音を奏でつつ、誰にも邪魔されることもなく、
抗おうとする者にどんなに手を伸ばしても届かない絶望を与え、一方的にすべてを
鉄と炎の嵐に包み込む姿を――そこまで考えたとき、彼女の肩に誰かの手が触れる。
「タバサ?どうしたの?顔色悪いわよ。それに、そんなに震えて」
「キュルケ……ううん。何でもない。そう。何でも……」
 タバサはそう言って平静につとめようとする。しかし、体の震えは収まらなかった。

「でも、これで解決ね。フーケが捕まえられなかったのは惜しいけど、
みんな無事だったし、『破壊の杖』も無傷で取り返したし」
 タバサを気遣ったルイズが話を変える。
「そうねぇ。
 ……ところで、ミス・ロングビル。貴女は学院長の秘書なのに、こんなことまで
しなくてもよかったんじゃない?」
 キュルケも同じく話を変えるためにロングビルに水を向ける。その言葉に、
ロングビルの表情に一瞬かげりが見えた。
「そうですね……。
 でも……いいのです。わたくしは、貴族の名をなくした者ですから……」
「ミス・ロングビル?」
 意外な展開にルイズがきょとんとした顔を向ける。だが、キュルケはその言葉に
より胸を躍らせた。
「いったい何があって、どういう理由で名を捨てたの?詳しくお聞かせくださいません?」
「よしなさいよ、この恥知らず。失礼よ!」
「いいじゃない。おしゃべりしたいだけなんだから」
 ルイズの抗議すらキュルケは軽く受け流した。その様子に、ロングビルは
気づかれないように小さく溜息を漏らす。

(……まったく。このお嬢ちゃんたちは。でも、こうしてみるのもいいものだね。
久しぶりにあの娘たちの顔、見たくなっちゃったよ……)


 ――こうして、巷を騒がせた盗賊『土くれのフーケ』による魔法学院秘宝強奪事件は
ほとんど外部に知られることなく幕を閉じる。
 そして、この一件以来、『土くれのフーケ』が巷を騒がせることはなくなり、
様々な憶測――一番多かったものが『有力貴族へ盗みを働いて護衛のガーゴイルに
血の一滴も残さず焼き尽くされた』というもの――が飛び交う中、
やがてそれすらも歴史の1ページへと、変わっていった。


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