あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は紅き薔薇‐01


その日は、使い魔召喚の儀式である『サモン・サーヴァント』が行われる日。
トリスティンの魔法学院より少し離れた草原で、儀式は行われていた。
儀式が始まってより、少ししか時は経っていない。
しかし、既に風竜の幼生、火竜山脈のサラマンダーなど、メイジの実力を見るならば使い魔を見よとの言において、
そのメイジの実力は『素晴らしい』と言うべき使い魔が召喚されていた。
他にもカエルやフクロウやバグベアー、ジャイアントモールなど様々な使い魔を召喚する中、最後に残ったのはたった一人。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
ヴァリエール家といえば知らぬ者はいない王家の血をも持つ公爵家。
そして、烈風のカリンとその名を轟かせた女性の三番目の娘でもある。

貴族とは、一部の国を除いてほとんどがメイジ。
つまりはルイズもメイジであるのだが……。

「いい加減にしろよ!」
「これで何回目なの!」
「これだから『ゼロ』なのよ!」

「五月蝿いわね! 今のは、軽い練習よ!」

「なんだよ、魔法成功率『ゼロ』のクセに!」

……全く、評価されていない。

いいや、評価はされている。

始祖ブリミルの血を継ぎし三本の王権の一であるトリスティンの王家の血を持つ公爵家の娘でありながら、彼女は『ゼロ』だった。

それも、良い意味ではない。

魔法成功率、ゼロ。

生まれてこの方、成功した事は無い。

だからゼロ。
『ゼロ』のルイズ。


ピンクブロンドの髪に鳶色の目。
胸は無視して、将来は美人になるだろう可愛らしい少女。

だが貴族に最も必要なのは外見の美醜ではなく、メイジとしての能力。
此処は平民でも貴族になれるゲルマニアではなく、トリスティンなのだ。

「ミス・ヴァリエール。
今日はもう止めましょう」
頭の砂漠化絶賛進行中の教師、コルベールが言う。
ルイズが始めて、かなりの時間が過ぎている。

こんな事は有り得ない。
全てのメイジが使い魔を一発で召喚するにも関わらず、ルイズは何度も失敗しているのだ。
彼女の周囲に爆発の跡が残っているのが何よりもの証拠である。

「いいえ、ミスタ・コルベール。
やらせて下さい!」
ルイズに諦めの色は無かった。

本当は諦めてしまいたい。
でも、そうすればルイズは留年――最悪の場合、退学になってしまう。
そうなるとルイズに待つのは母と上の姉のお仕置きだけではない。

何処かの貴族との婚姻か、一生を部屋で過ごすか。

ルイズは公爵家の娘である。
婚姻相手となれば相応の相手ともなろうが、ルイズは同時に『ゼロ』。
より良い血を残したがる貴族としては受け入れられても、
より良いメイジの才能を欲しがる貴族に受け入れられるわけがない。

ルイズにそんな未来は選べなかった。

「あと一回……あと一回だけでも、お願いします!!」

「……分かりました、あと一回。
続きは明日となります」
ルイズの必死の願いに、コルベールは折れた。
彼としても劣等生と呼ばれ蔑まれるルイズを助けたい思いがある。

……その思いは、『自分より劣った物に対する憐憫』にもよく似ていたが。

ルイズは深呼吸を繰り返した。

――大丈夫よ、やれば出来るわ、ルイズ。
心の中で自分を勇気付ける。

そうだ、もしかしたら、自分が召喚するべき対象に退っ引きならぬ事情があるのやもしれない。
もしかしたら、家族に別れを告げているのやもしれない。
もしかしたら、召喚する対象は召喚の門より大きいのやもしれない。

きっと素晴らしい物が現れる。
ツェルプストーのサラマンダーやタバサの風竜よりも素晴らしい物が。

それこそ始祖ブリミルに匹敵しうる程の力を持った。
だから遅い。
そう、力が強いからこそ遅いのだ。

それに、真打ちは遅れて登場する。
それが物語の原則。

――そう、大丈夫よ。 私はヴァリエール家の娘なのだから。
ルイズは念じる。

深呼吸をした後軽く息を吐き、全身をリラックスさせた。
杖を高く掲げ、呪文を唱える。

「宇宙の果ての何処かに居る私の僕よ。 神聖で美しく強力な使い魔よ。
私は心より訴え求めるわ、我が導きに応えなさい!!」
そう、唱えたと同時。

本日最大級の爆発が訪れた。

「こほ、こほっ……」
煙に噎せ返る。
至近距離で煙を受けたルイズは咳を繰り返した。

しかし、視線は爆発した場所に向けられている。

――私の、私の使い魔は……!?
その視線はさ迷い、居るだろう使い魔に向けられる。
もう、何でもいい。
ユニコーンもグリフォンも竜も期待しない。
ただ、自分がゼロではないという証明が欲しい。
胸を張ってメイジだと言える証拠が欲しい。

誰からも侮辱されない、公爵家の名誉と誇りを傷つける事が無い、使い魔が欲しい。
その為ならばたとえ巨大なカエルでも構わない。

ただ、使い魔が欲しい。
その一心。

――ああ、始祖ブリミル。 私に使い魔を……!


煙が途切れた時、そこには何も無かった。

「あ……」
ルイズの緊張の線が全て切れた。
地に膝を着く。

そして。

「くっ…………あははは!!」
「使い魔が居ないぞ!」
「やっぱり『ゼロ』ね!」
「いいやもしかしたら、塵かもしれないぞ!」
「流石は『ゼロ』!」
周囲の生徒の嘲笑は彼女に聞こえない。
コルベールも何と声をかけるべきか分からず、黙ったまま。

――どうしよう……どうしようどうしよう!!
胸に溢れるのは絶望。 全てを失ってしまった。
公爵家の名を地に貶めてしまうような事をしてしまった!

死んでしまいたい。
消えてしまいたい。

深い深い絶望の淵。
もう望む物は手に入らない。

――私は……『ゼロ』、なのね……。

ずっと否定していた。
有り得ないと否定していた。

しかし、使い魔の召喚すら出来ない彼女を『ゼロ』と呼ばずして何と呼ぶべきか。

「う……ううっ……」
この身を無かった事にしてしまいたい。
消えて、しまいたい。

しかし。
そんなルイズに声がかけられた。

『――――あなたは』

「っ!?」
ルイズは跳ねる様に起きる。

――何なの、今の声は!
聞いた事が無い声だった。
念の為に周囲を見ても、こんなにはっきりした声が届く距離に誰も居ない。

『あなたは、巻きますか? 巻きませんか?』

「なに、これ……」
女性とも男性とも言いがたい声だった。

『巻きますか? 巻きませんか?』
その声は問う。

「ミス・ヴァリエール?」
空を見てぼんやりとするルイズにコルベールが心配そうに声をかける。

だがルイズは応えない。
聞こえていないのだ。

『巻きますか? 巻きませんか?』

巻くか巻かないか。
どちらかと問う声。

ルイズに迷う暇など無かった。
現れた希望を逃したくない。

「私は――」
ルイズは、まるで縋る様な声を出す。

「私は、巻くわ!」
凛、とした声。

突如声を出したルイズに皆が沈黙する。
あまりにも様子がおかしい。
嘲笑するに、出来なかった。

誰もが固唾を飲み見る。
ふと、誰かが気付いた。

「何かしら、あれは」
指を差す。
その先には取っ手がついた茶色い箱のようなもの。
ルイズの膝元に、それはいつの間にか置かれていた。

やがて誰もが気付き、ルイズも気付く。
それは、茶色をした、金の飾りある上品なもの。

――私の、使い魔が此処に……?
内心呟くと、ルイズは誇りも何もかもかなぐり捨てた様に箱を開ける。
見たことの無い箱だったが、開けるのは容易かった。

まず見えたのは、はっきりとした紅。
血の様なとも炎の様なとも言えぬ、美しい紅。
次に見えたのは金。
柔らかな、まるで絹の様な手触りと艶やかさ。
そして白。
陶器を思わせる、白。

紅いドレスに身を包んだ、金の髪に白い肌の少女がまるで、王子の口づけを待つ姫の様に眠っていた。

「これは……」
傍まで来ていたコルベールが呟く。

――ゴーレム、だろうか。 いや、しかし……。

これは、人形だろうか?
そう思うにはあまりにも立派だった。

ルイズはその人形を手に取る。

――柔らかい……。
小さな子供ほどしか無い大きさの人形だった。
だが、その触り心地は。 手触りは。
大切に育てられた、深窓の姫君の様な上品さと可憐さを持っていた。

まるで、生きているかのよう。

「――ミス・ヴァリエール。 おめでとうございます」
コルベールは素直に言った。
風竜やサラマンダーの様な強さは無いかもしれない。

だが、この美しさは。
彼女が述べた『美しい使い魔』そのものだった。

ルイズはハッとすると、これが自分の召喚した使い魔であるのを思い出した。

――これが、私の使い魔……。
ルイズは、人形を抱く腕とは逆の手で人形の額に杖を当て、契約の言葉を口にする。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
そして、契約の口付け。
使い魔の、髪で隠れた額にルーンが刻まれていく。

今この時より。
誇りを胸にするルイズと、誇り高きローゼンメイデンの第五ドール、真紅との契約が一つ行われたのだった。


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