あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

神龍への願い

 かつて、ゼロのルイズと呼ばれた少女がいた。
 短期で気難しく激発しやすい感情を持て余した、しかし誇り高く家族や周囲の人間の幸せを願える優しい少女が。
 だけど、その少女はもういない。いるのは、始祖ブリミルをも超えたと謳われる伝説の魔法の使い手であり、そんな自分を嫌悪するルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールというメイジである。



 始まりは、春の使い魔召喚の儀式。
 魔法の成功率ゼロのルイズという不名誉な呼び名を持つ少女は、このときに初めて魔法を成功させた。
 召喚されたのは、今までに誰も見たことのない姿をした幻獣。
 その長大な全長に比べれば細くみえる長く伸びた蛇体に、巨体に比べれば小さい鷲の爪を生やし、頭部には鹿に似た角を生やした不思議な幻獣。
 神々しさすら感じるその幻獣は、召喚者であるルイズにこう言った。

「さあ、願いを言え。どんな願いでも一つだけ叶えてやろう」

 何を言っているのだろう?

 ルイズは、そう思う。
 彼女の目的は使い魔の召喚と契約であり、召喚を成功させたのなら、次は契約以外の目的などありはしない。
 だから、そう言おうとしたのだ。
 だけど、ルイズの口からこぼれ出たのは別の言葉だった。

「わたしを、魔法を使えるようにしなさい」

 それは、少女が物心ついた頃から、常に願って止まなかった願望。
 そのためなら、何を代わりに差し出しても悔いはないと思えるほどに渇望していたもの。
 そんな彼女の願いに、幻獣は頷きを返す。そして幻獣が何かをした後でルイズの肉体が薄く発光した。

「願いは叶えてやった。では、さらばだ」




 それでルイズと幻獣の出会いはおしまい。その後、何度召喚の呪文を唱えても幻獣が少女の前に現れることはなかった。
 そのことで、ルイズを使い魔に逃げられたのだと嘲る者もいたが、そんな声はすぐに消える。
 なぜなら、その日からルイズは魔法を成功させるようになったから。
 どの系統に目覚めたのかと問うのは、無意味なことである。
 魔法の成功率ゼロの彼女が目覚めたのは、全ての系統。水も土も火も風も、虚無ですら自在に操るようになっていたのだから。

 もっとも、周りの者はもちろん、彼女自身もすぐにはそのことに気付かなかった。
 使い魔召喚の翌日に起こった決闘騒ぎが、少女に自分の力を自覚させる。
 決闘相手のドットメイジの少年が作り出した青銅の等身大女戦士のゴーレムを、ルイズはファイアー・ボールの一撃で吹き飛ばし、少年が次いで生み出した六体のゴーレムを、更に唱えたカッター・トルネードの魔法であっさりと消し飛ばしたのだ。
 ファイアー・ボールは、ゼロと呼ばれていた少女には不可能な魔法であるし、カッター・トルネードに至っては、スクウェアスペルである。それを使いこなす彼女を、もはや誰もゼロとは呼べまい。
 そして、少女は自身の実力に見合った活躍を繰り広げる。
 土くれのフーケと呼ばれる盗賊の魔法で生まれた30メイルの土ゴーレムには、同じ大きさの鉄ゴーレムを作り対抗し学院の宝物庫を守り抜き。
 王女の命でアルビオンに旅立ったときには、旅を共にした三人の学院生徒や婚約者の手助けもあってだが、
失われし虚無の魔法の数々をもってしてレコン・キスタを名乗るアルビオンの貴族派を追い払い余命のないはずのウェールズ皇太子の命を救いさえした。
 その際、ルイズの婚約者たるワルド子爵が、何かに失敗したような苦い顔をしていたが、そこはどうでもいい。

 四系統と虚無すら使いこなすメイジである彼女を、多くの者はブリミルの再来と呼び称えた。
 この瞬間が、自分にとっての絶頂であったのだとルイズは思う。
 その後の人生は、彼女にとって楽しいものではなくなっていく。
 ルイズが生まれた公爵家は、トリステイン王家に仕える血筋である。
 しかし、少女に目覚めた虚無の力は、それを許さないものであったのだ。
 そもそも、トリステイン王国は始祖ブリミルの虚無の魔法を操る血筋を持って権威とする国である。
 そこに、王家の血の連なりにあるとはいえ、王族でない者に始祖から伝えられた虚無が発現してしまえば、それは王家を脅かしてしまう。
 彼女の存在は、本人の意思とは関係なく王家と公爵家に反目をさせあう結果となるのだ。
 しかし、ルイズ自身にも、彼女の父たるヴァリエール公爵にも、王家を簒奪しようとする意志はない。
 だが、先代の王亡き後、王妃マリアンヌが王位を継ぐことを拒否し続けた結果、この国は長い王不在の時を鳥の骨と呼ばれ嫌われている枢機卿マザリーニによって取り仕切られ、そのことに多くの貴族が不満を持っていたのである。
 結果として、虚無の血を伝えたヴァリエール公爵家に王位を移せという動きと、それをさせまいという考えを持つ者の間で、トリステイン王国は割れた。
 ルイズは、自分が尊敬する姫様と、お互いに望みもしないのに敵対しなければならくなかったのである。


 そんなルイズが魔法学院に通い続けられるはずもなく、実家に帰った彼女は懐かしい人たちに会う。
 それは、父であり、母であり、姉たちである。
 ルイズが、誰よりも大切に思う下の姉のカトレアは、今も変わらず妹を大切に思ってくれていて、ささくれた心を解きほぐしてくれて泣きたくなるほどに嬉しかったのだけれど。
 その姉が、会話の途中で咳き込んだ時に、ルイズは浮かれていた自分を恥じた。
 そう。自分が虚無に目覚めようが、他の全ての系統の魔法を使いこなそうが変わらないものがある。
 今の自分にも、救えない人間がいる。
 誰よりも大切に思う人間だけを、自分は救えない。

 それだけではない。
 ルイズの虚無のことが知れてから、国内の多くの貴族がカトレアに婚姻を申し込んできた。
 今までは、体が弱くヴァリエールの名も持たないカトレアに婚姻を申し込む貴族は皆無と言っても良かった。
 だけど、虚無の血を伝え、王家に手の届いた公爵家の娘との婚姻は国の貴族たちには大きな意味を持つ。
 別に死なれても繋がりを持った後なら構わない。そんな、浅ましい思考がそうさせたのだ。
 本当なら、虚無の担い手本人であるルイズにも申し込むべきなのだろうし、実際にそうした貴族もいたのだが、彼女には婚約者がいて、公爵はそれを理由に全てを断った。
 だけど、カトレアの方への申し込みは、そうはいかない。
 誰にも引き取ってもらえない、死にぞこないの娘を引き受けてやるのだから、感謝してもらっても構わない。
 そんな事を本気で思っている貴族を納得させるのは簡単ではないのだから。

 大切な姉を、自分の存在が苦しめる現状を歓迎できるような性根はルイズにはない。
 それに、ふとしたことで思うのだ。
 自分の力は、本来の自分のものではない。使い魔召喚のときに現れた幻獣に貰ったものにすぎないのではないかと。
 そして、こうも思う。
 なぜ、あの時自分は姉の体の治療を願わなかったのかと。
 ルイズの想像が正しければ、そう願っていたなら今の自分の栄光はなかっただろう。
 だけど、大好きな姉は救えていたのだ。
 なのに、それをしなかった自分をルイズは嫌悪する。
 姉の命よりも自身の欲望を優先した自分を、潔癖な少女は許せない。だから、ルイズは己の浅ましさに絶望し続けるのだ。


小ネタでドラゴンボールからシェンロン召喚


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