あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ベルセルク・ゼロ-25


「リーダーの部屋は甲板にあるよ!」
 パックの先導の下に装備を取り戻したガッツ、ワルド、そしてルイズはウェールズのいる船長室を目指す。
 通路の向こうから5人もの空賊が迫ってきた。
「止まれ!」
「これ以上は進ません!!」
 空賊達は剣を構え、突進してくる。ガッツが空賊たちの前に躍り出た。
「シッ!!」
 一刀の下に突出してきた2人を斬り飛ばす。
「ヒュウ! さすが相棒だぜ! よっしゃよっしゃコレよコレ!! 燃えてきたぁ!!」
 ガッツの手の中で歓喜の声を上げているのはデルフリンガーだ。
 狭い通路ではドラゴンころしをまともに振り回すことは出来ない。
 かつてのトリステイン学院での一件のように壁を破壊することを厭わなければ振れなくも無いが、何しろここは空の上。
 ガッツはこの船がどういった機構で空を浮かんでいるのかまったく分かっていない。ほいほい船体を傷つけるような迂闊な真似をする気にはならなかった。
 だが、通路が狭いことでデメリットばかりがあるわけではない。
 今回のように敵が5人で襲ってきても同時に襲いかかれるのは精々2人まで。
 ならばガッツにとって撃退することは容易い。
 もちろん、それはガッツにとってだけのことではなく―――

「がっ……!」
 ガッツが剣を振り切った隙を突いて襲い掛かってきた盗賊が崩れ落ちる。
 それだけではない。後ろにいた残りの2人も既に床に倒れ付していた。
 刺突剣(レイピア)の形状を模した魔法の杖を振り、血を払う。

 撃退が容易なのは―――この『閃光』のワルドにとっても同様のことであった。

「すごい……」
 ルイズはあっという間に空賊を撃退した2人の手際にただ感嘆の声を上げていた。
 やはりこの2人の剣の腕は今までルイズが見てきたどんな男と比べても図抜けている。
 特に、ルイズはまたもガッツに驚かされていた。
 ルイズは今までガッツが強いのはあの大剣『ドラゴンころし』を振り回せるからだと思っていた。
 あの馬鹿げた鉄塊を振り回せる常識外の膂力。それこそがガッツの強みだと。
 もちろんそれもある。だが、それ以上にガッツの強さの基礎には揺ぎ無い技術があった。
 それが、デルフリンガーを振るガッツを見て初めてわかったのだ。
「ホント、つくづく一体何者なのよあんたわ……」
 ルイズは呆れ笑いのような表情を浮かべてガッツを見る。
 ガッツの剣の技量は若くしてグリフォン隊の隊長に上り詰めたワルドと比較しても劣るものではないとルイズは感じていた。
(でも……2人の剣はとても対照的だわ)
 ガッツの剣は鋭い剣筋と強大な威力でもって鎧ごと敵を叩き割る言わば『剛』の剣。
 対するワルドは変幻自在の剣筋で相手を惑わし急所を突く『柔』の剣。
 もっとざっくり言ってしまえば直線と曲線、そんなイメージだった。
 そんな正反対の2人であるのだが、その即席のコンビネーションは実に見事なものであった。
「これなら敵のリーダーの所まで無事にたどり着きそうね!!」
 ルイズが自信満々にそう言った時。
 がちゃり、と音をたて船室のドアが開き、
「よっしゃああああ!!」
 ルイズは飛び出してきた空賊にがしっとあっさり捕まってしまった。
「…あれえ?」


「しまった! 待ち伏せしている敵がいたか!!」
 先を行っていたワルドとガッツは立ち止まり、ルイズのほうを振り返る。
 ルイズはその喉にナイフを突きつけられていた。
「あの馬鹿……なにぼっとしてやがったんだ……」
 「放しなさいよ!」などと喚きながら空賊の手を逃れようともがくルイズの姿に、ガッツは頭を抱えた。
「へ、へへ……」
 これで絶対的優位に立った空賊はにやりと笑ってみせる。
「この娘の命が惜しけりゃ剣を捨て…ってこらおい暴れるな!」
「うぎぐがぎぎぎ…! は、な、せぇええええええ!!」
 空賊の制止の声もお構い無しにルイズはジタバタともがき続ける。
「こ、この…! 下手に暴れると喉が切れるぞ!! 大人しくしてろ!!」
 だが断る。
 ルイズはなおもお構い無しに暴れ続けた。
 そもそもルイズがこんな形で敵にとっつかまるのは初めてではない。フーケの時に続き2回目だ。
 既にルイズにはこんな状況に多少の慣れがある。決して自慢できることではないが。
「こ、んのぉぉおおおおおお!!!!」
 ルイズの杖が光った。同時に空賊の頭上で天井が爆発する。
 爆散した破片が空賊の頭を直撃した。たまらず空賊は頭を抱え悶絶する。
 その間にルイズは空賊の腕から逃れると、
「ちょえいやぁああああ!!!!」
 空賊の股間を容赦なく蹴り上げた。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
 声にならない声を上げて空賊は昏倒する。
「いつまでも足手まといでいられるかってのよ!!」
 はあはあと息を整えながら、ルイズは胸の前で力強く魔法の杖を握ってみせた。
「凄いじゃんかルイズ!!」
「ああ、僕も驚いたよ!! 大したものだ!!」
「ふ、ふん! 私が本気を出せばこんなものなのよ!!」
 こちらに駆け寄ってきたワルドとパックに胸を張ってみせる。
 本当はナイフを錬金しようとしていたことは黙っておいた。
 ガッツはというと、折角自分が自重していたのにほいほいと船体を壊してみせたルイズをじとりと睨みつけていた。


「駄目です! 敵止まりません!! 真っ直ぐそちらに向かっています!!」
 通信筒から悲鳴のような報告が上がってくる。
「どういうことだ…連中の動き、まるでこの船の構造を把握しているようではないか!!」
「連中をこれ以上殿下の元に近づかせるな! 全戦力を持って圧殺しろ!!」
 後甲板に設けられた船長室の中で3人の男達が焦りの声を上げている。
 その男達はそれぞれがこれまでアルビオンを支えてきた重鎮であり、また同時に王国屈指のメイジでもある。
 空賊の頭領に扮したウェールズの態度は驚き慌てる3人とは対照的だった。
 通信筒に怒鳴り続ける男の肩を掴んで下がらせると、落ち着いた様子で口を開いた。
「船内に残る全兵士に通達。脱走した者達を食い止める必要は無い」
「殿下!?」
「船内では数の利を十分に生かすことができないからね」
 目を見開いた重鎮達にウェールズは微笑みかける。
「現在戦闘可能な者は直ちに甲板に集結。そこで狼藉者を迎え撃つ。時間は幾許も無い。 急げ!」
 そこまで言って通信筒から手を離すと、ウェールズはふうと息をついた。
「殿下」
「何かな?」
「恐れながら申し上げます。あまりにも危険です。殿下の目と鼻の先まで賊が近づくのを許すなど」
「しかしこれ以上最後に残ったアルビオンの勇者達の命を無駄にするわけにはいかない。私が敵にその身を晒すことで皆の命を買えるなら喜んでそうしようじゃないか」
「殿下……」
「おっと、そうだ」
 ウェールズは思い出したように再び通信筒に歩み寄る。
「操舵室、船をしばし静止させろ。甲板で祭りが始まるからな」
 重鎮達は苦笑を浮かべ、やれやれとそれぞれに頭を振ってみせた。
「どうした? 私は何か間違っているか?」
「ええ。先ほどの言葉遣い、とても王族に相応しいものではありません」
「くく、長く空賊の頭なんてやっちまったからな。たまに混ざっちまう」
「お戯れを」
 ウェールズと3人は互いににやりと笑ってみせた。


 程なくして、甲板には20人を超えるメイジたちが集結していた。
 集結したメイジはその全てが甲板に上がる階段を注視している。
「来たぞ!! あっ…!」
 階段の下を覗き込んでいた見張り役の男の額にナイフが突き立った。
 次いで聞こえてくる、階段を駆け上る足音。
 甲板にいた全員が一斉に杖を構え、魔法を放つ準備を整える。
 だが、飛び出してきた影に、その場にいた全員が虚を突かれた。
 小さな虫のようにも見えるその姿。全く想定外の乱入者。
 賊は黒尽くめの剣士と長髪のメイジ、それと桃色の髪をした少女だったはず。
 見覚えの無い妖精(ピスキー)の姿に魔法の発動が遅れた。そしてその隙をついて、
「んパックスパーク!!!!」
 小さな妖精の体が強烈な光を放つ。パックの姿を注視していた全員の目が眩んだ。
 パックの『パックスパーク』の光を合図に今度こそガッツとワルドが飛び出してくる。
「あ、相棒お願い! もう少し俺を使って!? あ、ちょ」
 デルフリンガーを鞘に戻し、ガッツはその背に負ったドラゴンころしに手をかける。
 そして―――!

 ド ゴ ン ! ! ! !

 強烈な轟音と共に、一振りで5人のメイジたちを吹き飛ばした。


「なんという……」
 船長室に備え付けられた小窓から甲板の様子を伺っていたウェールズ達は言葉を失っていた。
 あれは剣なのか? あんな馬鹿げた鉄の塊が?
 馬鹿な、あんなものを人間が振れるはずがない。ああ、つまりアレは化け物なのだ。道理で船内で進撃を止められないはずだ。
 最初の一撃で5人を死に至らしめた化け物は、既に剣を斬り返し、さらに犠牲者の数を増やしている。
 甲板に戦場を移したのは間違いだったか? 船内で十分に己の利を生かせなかったのはこちら側だけではなかったのだ。
 いや。ウェールズは思い直す。
 最初の光で目を眩ませていた者達が立ち直り始めた。彼らの魔法が発動すれば間違いなく賊を討つことが出来るだろう。
 何故ならば、今甲板に出ているアルビオンの勇者達は全員がトライアングル以上のメイジなのだから。
 だが、またもウェールズの誤算。ワルド。彼もまた、スクウェアのメイジなのだ。
 ガッツより一足遅れて甲板に躍り出たワルドは、しかしその場にいた誰よりも早く術式を完成させた。
「『エア・ハンマー』!!」
 ワルドによって生み出された風の槌がガッツの体を叩く。
 ガッツの体が吹き飛び、その場にいた20余名の頭上を飛び越え―――船長室の前に降り立った。
「しまったあ!!!!」
 甲板に集結したメイジの誰かが叫ぶ。
「殿下!! お下がりください!!」
 ドアを開け、中に飛び込んできた瞬間即死級の魔法をぶつけてやる。
 ウェールズの護衛として船長室の中に残っていた初老のメイジがドアを注視する。
 またも、愚策。全てが裏目。

 バ ガ ァ ン ! ! ! !

 鉄の塊が壁を突き破り、黒い剣士が飛び込んでくる。
「馬鹿な…」
 その姿を認めた初老のメイジは言葉を失った。

 ここの壁は、砲弾の直撃にすら耐えうる強度なんだぞ――――?

 それでも初老のメイジは即座に自分を取り戻し、杖を黒い剣士に向ける。だが、その一瞬の間が致命的だった。
 壁を突き破り猛烈な勢いで侵入してきた黒尽くめの男は、既にウェールズの身柄を拘束していた。
 ガッツは床に引き倒したウェールズの背中に圧し掛かり、その喉に投擲用のナイフを突きつけて、
「さて、取引といこうじゃねえか」
 そう言って、不敵に笑ってみせた。


 アルビオン本国艦隊旗艦イーグル号。
 その船長であるアルビオン王子、ウェールズ・テューダーはその身を縄で拘束され、船長室に備え付けられた豪華な椅子に座らされていた。
 その喉元には変わらずガッツのナイフが突きつけられている。
 ガッツの隣にはワルドとルイズ(甲板突撃時居残りさせられた)の姿もあった。
 豪華なディナーテーブルを挟んだ向かい側にはウェールズの護衛を務めていた初老のメイジを始め、数人の男達が集まっていた。
「…何が望みだ」
 口火を切ったのはウェールズだった。それは喉から搾り出すような声だった。
「アルビオンへ向かってもらいたい」
 答えたのはワルドだ。
「アルビオンへ? 何しに? 貴族派にでも加担しに行くのか?」
「馬鹿言わないで!」
 ルイズが憮然とした顔で声を上げた。
「誰が薄汚い反乱軍に加勢なんてするもんですか! 私達はアルビオンの正当なる政府、つまりは王室への使いなの!!」
「王室に? お前、どこからの使いなんだ?」
 ウェールズの顔が呆然としたものに変わっている。意外なウェールズの反応にルイズの方がたじたじになるほどだった。
「な、なによその反応。トリステインよ」
 今度こそ、ウェールズの目は点になった。トリステイン。愛しいアンリエッタの国。
 ということは、つまり?
「ふ、ふふふ……」
 思わず笑いがこみ上げて来た。なんということだ。では彼らは何のために死んだのだ。
 いや、これは事故。そう、これはもはや事故としか言いようがない。
「はっはっはっは!!!!」
「な、何よ! 何がおかしいのよ!!」
 突然笑い始めたウェールズにルイズは肩をいからせる。
「いや、失礼。なあ、そこの君。名は何と言う?」
「…ワルドだ」
 ワルドもまた、ルイズほどではないが困惑していた。何かこの盗賊のリーダー、先ほどまでと雰囲気が全く違う。
「先に名乗らせた無礼を許してくれ。何しろ、このナリで私の名を名乗ってもとても信用されないだろうからね。では、ワルド君、ひとつお願いがあるのだが」
「何だ?」
「私の髪の毛を取ってくれないか?」
「はあ?」
 ルイズが思い切り困惑の声を上げた。
 ワルドは何も答えず、ある種の予感を持って空賊のリーダーのぼさぼさに荒れた黒髪を引っ張った。
 するり、とあっさり黒髪のカツラが外れた。
「え!?」
 と目を丸くしているのはルイズだけで、ワルドは心中やはりかと呟いていた。
「ではその髭も?」
「うむ、そういうことだ」
 ワルドがウェールズの顔の髭を掴み引っ張るとそれも偽物だったらしく、びりびりと音を立てて剥がれた。
「はっ!? えっ!? はっ!!?」
 ルイズの困惑は止まらない。そこにいたのはもう粗野な空賊の頭領などではなく、金髪の凛々しい若者だった。
 しかも、しかもしかもルイズの記憶が正しければその顔は。
「では名乗ろうか。アルビオン皇太子、ウェールズ・テューダーだ。こんなナリでは格好がつかんがね」
 ウェールズは縄で拘束され、喉にナイフを突きつけられた自分の姿を一瞥して苦笑した。
「では用件を伺おうか、トリステインからの大使殿。その前にこの縄を解いてくれるとありがたいが」
「はあ~~~~~~~~~!!??!!?!?」
 ルイズの渾身の叫びが船長室を抜け、大空へと溶け込んでいった。


 ルイズ達を乗せたイーグル号はウェールズの居城ニューカッスルへと向かっている。
 ルイズ達がウェールズの元を訪ねた目的、『アンリエッタの手紙』がそこにあるという話だったからだ。
 今度は倉庫などではなく、立派な客室に案内されたルイズであったが、今は甲板に出て風を感じている。
 頬を撫でていく風は心地よい感触であったが、ルイズの顔は浮かなかった。
 視線を下に落とす。
 甲板に付いた赤い染みが目に入る。
 つい先ほどまで、ここにはたくさんの死体が転がっていた。
 トリステインからの大使として来た筈の自分達が、そうとは知らなかったとはいえアルビオンの兵を何人も殺したのだ。
 その事実はルイズの心に深い影を落としていた。
 そのことについて謝ったとき、ウェールズは気にしなくていいと言ってくれた。
『君たちは精一杯自分達の任務を遂行しようとしたにすぎない。むしろ、悪いのはこちらだよ。知らぬこととはいえ、他国の大使を捕らえて監禁したんだ。これはその罰といってもいい』
 そんな風に言ってくれた。だが、ルイズの心は晴れない。
『いいかいルイズ。客観的に考えるんだ。客観的に見て、あの時相手を空賊として認識していた僕達の行動に責められる謂れはないよ』
 先ほどワルドはそう言って俯く自分を励ましてくれた。だけど、ルイズの顔は上がらない。
 理屈で考えれば確かにそうだろう。だが、そうやって心を整理できるほどルイズは大人になってはいなかった。
 ガッツは―――主人の気持ちを一番汲み取るべき立場にいるはずの使い魔は、まったく気にしちゃいない様子だった。
 アルビオンの兵を殺してしまったことについても、それでご主人様が落ち込んでしまっていることについても。
 パックはりんごに夢中でかぶりついてた。
 あ、なんか腹立ってきた。
 怒りの力でルイズは何とか顔を上げる。
 誰かの視線を感じた。
 振り返る。
 少年がいた。恐らく、ルイズとそう変わらぬ年頃の。
 亜麻色の髪をぼさぼさに伸ばした少年がこちらを睨みつけている。
「な、なによ?」
「……ふん」
 ルイズが声をかけると少年は憮然としたまま視線を逸らし、船内へと降りていった。
「……なんだってのよ」
 やはり、歓迎されているわけがない。
 それをあからさまに示した少年の態度に、ルイズは再び肩を落とすのだった。


「それにしても……」
 ルイズは少年の顔を脳裏に浮かべ、首を捻る。
「どこかで見たことあるような…?」
 しかしふわふわした記憶は形にならず、ルイズは首を傾げたままあてがわれた自分の部屋に戻っていった。


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