あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-43


 突如平和な魔法学院で起こった襲撃事件。
ただでさえ、メンヌヴィルが率いたメイジ集団に続く、二度目の学院への襲撃。
例えそれを考えずとも、当然ながら大事にならない筈はなく。
とりあえずアーカードは王宮へと赴き、事件のあらましをかいつまんでだけ話す。

「そん・・・・・・な・・・」
ルイズが攫われた。
その事実を目の前にして、アンリエッタの顔が蒼白になる。
そして・・・・・・同時に圧し掛かる選択。
己の取るべき道――――――友を助けるか、それとも国の安全を考えるのか。

「気に病むことはない」
アーカードはそう言うも、アンリエッタの顔は険しくなる一方である。
見通しが甘かったのか?否、こんなことになるなんて誰にも予想なんて出来なかった。
ガリアが・・・・・・このような凶行を行うなど。
「・・・・・・それに、今から助けに行くしの」
「なっ!?しかしそれは・・・・・・」

 ――――――アーハンブラ城は、エルフが暮らす砂漠の国境にある城である。
元々はエルフが建てた城であり、砂漠の小高い上に建てられたその城は、今は廃城となっている。
当然ガリア領であり、奪還する為にそこへ侵入するということは、意趣返しに他ならない。
つまりはガリアとの戦争を意味することになるだろう。

 疲弊した今の国力でガリアと戦うこと、それは何を意味するのか。
最悪トリステインという国が滅びること。国力が万全な状態でも彼我の戦力差は圧倒的。
国を守る為に、友人を――――――見捨てる?それが王の取るべき道なのか?
アンリエッタは自問し葛藤する。


「迷うことなどない。選ぶ道は一つだ」
アンリエッタの葛藤を、見透かしたかのようにアーカードは言った。
その言葉は、どこか威圧するかのような声色だった。

「助けに行くしかない・・・・・・と?」
「そうだ」
「しかしそうなれば・・・・・・ガリアとの戦争は、間違いなく避けられません」
「フッ・・・・・・馬鹿な」
アンリエッタの言葉に、アーカードは嘲笑する。

「口が過ぎます。いくらマスターでも、我が主君を侮辱するような態度は慎んで頂きたい」
横に控えたアニエスが、アーカードの不敬な振る舞いに対してそう告げる。
そんなアニエスの忠犬っぷりに、アーカードは心底愉快そうに笑う。
一皮剥けるまでビクついていたセラスと違い、最初から物怖じしないというのも新鮮であった。

「これは失礼。・・・・・・何を悠長な事を言っているのかと思って喃」
アンリエッタは静かに耳を傾け、次の言葉を待つ。

「これはもう戦争だ。戦など疾うに始まっているのだよ、女王」
自国領に戦力を持ち込み、害意を以て争った。
さらに主人を攫われたアーカードにとってはもう、これは絶対に避けられぬべき戦。
そして・・・・・・数多くの戦争を体験してきたアーカードだからこそ、同時に感じているものがあった。
これから起こり得る、戦争の匂いというものを。


 アンリエッタは改めてそう言われて絶句する。
戦力を以てトリステイン国内を侵犯し、学院を襲い、ルイズを誘拐した。
確かに・・・・・・戦争と言っても差し支えはない状況。
刺激するのを恐れて静観を決め込んだとして、国家間の大戦争にならないと誰が言えようか。
   諸国会議の時、ガリア王ジョゼフからは得体の知れない何かを感じた。
貪欲な獣が人の皮を被っているかのような、何か途方も無く恐ろしいものを感じた。
そうだ、既に後手に回っているのだ。
相手に先手を打たせてしまっている。そして今は自分の手番。
それをパスをしてしまえば、相手にまた一手許す事になる。

「・・・・・・わかりました」
「ふむ、わかってくれたか」
「えぇ・・・・・・正式に抗議を致します。ガリアと、あのジョゼフ王と、私自ら交渉しましょう」
今のまま戦ったところで、トリステインが勝つ事は不可能である。
強国ガリアとまともに戦争をして、勝つ方法など存在しない。

 アーカードの溜息が耳に入る。わざと聞こえる声で漏らしたのがわかった。
度重なる考えの相違に辟易している、と言った感じである。
アーカードの気持ちは理解できる、痛いほどに感じ入る。
親友であるルイズが攫われて、平静な気持ちでいられる筈もない。
されどその上で、アンリエッタは毅然として問う。
「・・・・・・不服ですか?」
「不服だな」
「他に何か方法があると言うのですか?我が国は、強大な国力を持つガリアに対抗する術はありません。
 アルビオンとの戦争の時とは比較になりません。勿論、ルイズは私が命に代えても取り戻すつもりです」

 それがせめてもの自分に出来ること、最悪国を治めるのは別の誰かでも良い。
それでもルイズだけは、己が身を代わりにしてでも助け出す。


「なに、私がガリアを全て飲み込めばそれで済む」
アーカードはさも簡単なことと言った風に、その案を提示した。
小国トリステインが大国ガリアに勝つ方法を。戦略とは決して言えないその方法を。
確かに話に聞いただけであるが、アーカードの拘束制御術式零号開放ならば・・・・・・可能なのだろう。
しかし――――――。
  「それは・・・・・・なりません。それではガリアの兵も民も、無用に殺すことになるでしょう」
「戦場に立つのだ、それくらいは覚悟をしてもらわんと」
「あの王が元凶なのでしょう?兵達はその真意を知らぬまま、貴方に殺される事になります。
 兵達に非はありません、命令に従うだけです。そしてその家族は、耐え難い悲しみに襲われるでしょう」

 アンリエッタは少しだけウェールズのことを思い出す。
愛すべき者が死ぬことの辛さは身を以て知っている。
自分は死んだウェールズと、ほんの一時の間でも話せたから良かった。
己の心の折り合いをつけることが出来たから・・・・・・。
しかし皆が皆、そうして心の整理をつけることはできないのだ。

 一方でアーカードは心の中だけで嘆息をつく。
アンリエッタが王らしい風格を持つのは、素直に喜ぶべきことだった。
気高い人間であること、人としての美徳、それを持ち得る人間は例外なく美しい。
が、意見を違えるとなると、これはなかなかに困ったもの。
そしてアンリエッタの言う事にも理はある。
と、アニエスが何か考え付いたように口を開いた。

「ガリア王だけを殺せば良いのでは?確かあの国には未だ、亡きオルレアン公派がいると聞きます。
 予めその者達とコンタクトを取り利用すれば、ガリア王を暗殺した後も治めることは出来ましょう」

「現状、ガリア王だけを殺すことは不可能だ。何故私が、ルイズが攫われるのをみすみす許したと思っている。
 それに何よりも時間が足りない、正直今こうして会話している時間すら惜しい。悠長に準備している時間はない。
 恐らくルイズならば、こういった筋は通すだろうと、仕方ないから報告だけはしに来たがの。だが・・・・・・それだけだ。
 はっきり言ってしまえば、無駄な問答をする気もない。・・・・・・私に命令出来るのは、私が認めた主であるルイズだけだ」

 ウォルターが善処すると言った以上、ルイズに危害が加わらないように動くだろう。
故に早々に危険は及ばないかも知れない、が・・・・・・保障はない。
いつまで安全でいられるかもわからない。時間が経過すればするほど危険である。
ただでさえアーハンブラ城まで距離がある。シルフィードを飛ばしたとて相応の時間が掛かる。


「まっ・・・・・・そういうわけでの、私は私で好きにさせてもらう」
アーカードの言葉が、想いが、アンリエッタの心に突き刺さる。
国の為ならば、親友の為ならば、死ぬことも厭わない自分と心根は一緒なのだ。
しかしそれを思って尚、ここは王としての責務が勝る。

「・・・・・・それならば、私は貴方を止めねばなりません」
アンリエッタは覚悟を秘めた双眸で、アーカードを見据えた。
その言葉に呼応するように、アニエスが剣を抜く。
アーカードが命の恩人であろうと、主従の関係であろうと、ここはアンリエッタへの忠義が勝る。

「・・・・・・いくつか、貸しがあった筈だな」
力尽くで征くのは容易い、しかしそれは少し気が引けた。
かと言って説き伏せるのも面倒だと、それを口にした。

「だから、あなたの行動に目を瞑れと・・・・・・?」
「んむ」とアーカードは頷く。
アンリエッタは眉を顰める。確かにアーカードには恩義がある。
アンリエッタ自身が、自分の一生を懸けても返し切れないだろうと。
それほどまでに思っているほどの、大きな借りが。

「私は女王です、個人的な恩と国の大事を天秤に掛けることは出来ません」

 貸しを理由に容認しないとわかると、アーカードはアプローチを変える。
判明している事項を一つ一つ提示し、まともに説得しようとしたら時間が掛かる。
故に・・・・・・強い言葉で脅迫し、畳み掛けて思考力を奪うことにした。
「交渉が通じる相手だと思うのか?」
「・・・・・・正直、わかりません。ですが私はこの身を、己が命を懸けてどうにかして見せます」

 アンリエッタの強き言葉。嘘ではないと誰もが感じるだろう。
しかし言葉だけだ。保証などある筈は無し、何よりも悪手。
さらに面倒で追い詰められた状況になるやも知れぬ、その無謀な案を聞くわけにはいかない。


「リスク管理はきちんとせねばならん。その強き志は買うが、確証を得られないのでは納得いかぬな」
アーカードは矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。焦燥感を煽る為に。
「そうさの・・・・・・少しだけ最悪のケースを語ろうか。現在の状況から考えられる一つの可能性を。
 哀れ、交渉をしにいった勇敢な女王は殺され、国のトップを失ったトリステインはそう時を経ずして崩壊。
 さらに攫われたルイズが水魔法で操られ・・・・・・かつてタルブで見た、『エクスプロージョン』がトリステインを包む」

 ――――――タルブで見たあの奇跡の光。艦隊を一瞬にして沈めたあの虚無魔法の標的にされる。

「悪意ある虚無魔法が国を襲う。ガリア王ジョゼフの虚無も加わり、戦争の体裁も整えられぬまま国は滅びる」

 ――――――二つの虚無の前に、国は為す術なく滅びる。

「それと、ヨルムンガントと言う巨大な剣士人形。卓越した騎士のように動き回る、ゴーレムのような人型。
 それが街を、人を虫けらの如く潰すだろう。狂った王様は、何の罪もない者達を殺すことも・・・・・・まるで躊躇わぬだろう。
 ついでに先住の『反射』で、虚無以外のあらゆる攻撃が通用しない。つまり虚無を抑えられている今、止めることは出来ん」

 ――――――ガリアの属国になるだけならまだ良い。統治者こそ変われど民の安全は保たれる。
しかし・・・・・・それすらも保たれないと、虐殺されると、アーカードは言う。

「アレはこの私でも倒せぬ。さらに操るのは私と同等クラスの使い手。抵抗するだけ無駄と言うものだな。
 ちなみに『反射』はエルフの先住魔法だそうだ。ガリアにはエルフの協力者までいるのかも知れん喃・・・・・・」

 ――――――アーカードですら倒せぬ兵器。
そして・・・・・・エルフの協力者?

「奴らがその気になるだけで、トリスタニアは破壊され、聡明で気高き女王、貴方も殺される。
 一国を簡単に滅ぼせる力が、時間を掛ければ世界をも滅ぼしかねない力が・・・・・・彼奴らにはある」
   アンリエッタは黙ってアーカードの言葉を聞いていた。
否、聞くことしか許されなかった。それほどまでに衝撃的な内容。
アーカードとしては、時間の浪費と、面倒だから、と言う理由から端折っていたのかも知れない。
飽くまで推測の域を出ないものの、最悪のケースとして認識しておかねばならぬ全容。
こうまで聞かされては嫌でも想像してしまう。
アンリエッタの脳裏に浮かぶトリステインの終焉。
反論のしようもない。アンリエッタは自身の喉が渇くのを感じ、言葉が出なかった。

「ここで攻めずして、どうするか。連中がその気になっていない、今が好機なわけだ」
アンリエッタは目を閉じて考える。そして、一つだけ訊ねた。
「今、攻めれば・・・・・・勝てるのですか?」
「私の決意は、貴方が命を懸けると言ったそれと変わらない。アンリエッタ女王陛下」

 アーカードはアンリエッタの表情を見て確信し、ほくそ笑む。
少し誇張気味な言い回しだったが、思ったより上手くいった。
勿論そんなことは悟られぬよう、取り繕って言う。

「安心せい、九分九厘ガリア王はルイズと共にいる筈。今ならば、最小限の犠牲で勝てる戦よ」


 ――――――ウォルターはルイズを人質にとり、私をアーハンブラ城まで誘き寄せようとしている。
主人であるジョゼフの「虚無を集める」という命令に便乗し、私と闘うことにしたのだろう。
いずれにせよガリア王ジョゼフは、同じ虚無の担い手であるルイズと会おうとする可能性は非常に高い。
尤も、ルイズと会うにしても・・・・・・アーハンブラ城であるとは限らない――――――。

(だが・・・・・・ウォルターは私と闘いたがっている)

 「アーハンブラ城で待っている」とわざわざ言ったこと、つまりそこで戦う算段。
さらにルイズの安全について、ウォルターは「善処する」と言った。
なればウォルターは、ルイズから離れるような真似はすまい。
故にガリア王がアーハンブラ城へ来るよう、手を回すに違いない。
   所詮は気まぐれ。だからこそ「少佐のように零号開放させてみろ」とウォルターに言った。
故に命令であることも含めた上で、ルイズを攫うという強硬策に出た気持ちもわからないでもない。
だが同時にルイズはウォルターにとってもアキレス腱となる。
もしルイズが死んでしまえば、永遠に私と戦うことは叶わない。
よくよく考えれば、ルイズを扱うリスクについてウォルターは誰よりも考え、重々に承知している筈だ。
もしかしたらルイズに傷の一つでもつけることすら、恐れるかも知れない。

 心理戦と駆け引きはアーカードにとっても望むべくものであった。
人間の頃、幼少期から人の顔色を窺うことは常であった。
読み違えることが、直接命の喪失に繋がる危険も数あった。
故にそうした機微には誰よりも鋭く、同時に駆け引きも学んでいた。
さらにそこから積み重ねた自身の500年以上の経験。
そして三百万を越える記憶と思考を内に有していて、読み合いならお手の物である。
ウォルターの些細な言葉の節々からも、感情から思考パターンまでその心の内を読み取る。

 ガリア王がアーハンブラ城へ赴かず、ルイズと会わないのであればそれも良し。
ウォルターが直接危害を加えるとは思えないので、ルイズの安全については問題ない。
それならそれで、とりあえずはルイズを助け出し、ガリア王は後々に殺せば済む。

 ・・・・・・裏切り者であったウォルターの言を、信じるのは自分でも正直どうかと思う。
と思いつつも、ウォルターに対して妙な信頼をしている側面があるのもまた事実であった。
それに、相手の思考と合理性をいくら考えたとしても。心理を読むことに自信があっても。
詰まるところ、それらは全て推測の域は出ない。絶対的な確証足りえることはない。
故に・・・・・・当然それを基に、希望的観測で以て戦略を組み立てるのは危険な部分が多くある。
しかし・・・・・・ルイズの安全は、攫われた時点で既に自分の手からは離れている。
仮にアーハンブラ城にいなかったとしても、どこにいるかはわからない。
ガリア首都であるとも限らないし、どこか別の可能性だってある。
つまるところ、選択肢は一つしかないのだ。

 アーハンブラ城へ赴き、零号を開放し、その上で勝利し、そして救出する。


 アンリエッタはさらに考え、そしてようやく決断をした。
「・・・・・・わかりました。・・・・・・アニエス」
「はっ!」
アンリエッタに呼ばれ、アニエスは返事をする。
何となく察しはついていた。
「あなたなら力になれるでしょう、ルイズをお願いします」
「了解しました。では・・・・・・マスター」

 アニエスは剣を鞘に納めると、アーカードを見る。
「あぁ、構わん。足手纏いにはなるなよ」
アーカードは鷹揚に頷いた。

「・・・・・・ルイズを、お願いします」
アンリエッタはその言葉を繰り返した。
震える手を抑えるのが見える。
王として振舞っていても、やはりその心情は、全てを捨ててでも助けたいと思っているのだ。
アーカードは聞く者全てを信頼させるような、雄雄しい口調で答えた。

「無論だ」


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