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ドラゴンナイト・ゼロ-02



「うおー久しぶりのベッドだー!」

「勝手にダイブするな!」

昼に行われた春の使い魔の儀からなんやかんやあって、夜。
龍騎とドラグレッダーを伴い、ルイズは自室に戻って来ていた。
狭い部屋ではなかったが、住人が二人と一匹に増えると流石に窮屈に感じる。
特に、部屋に入るなり嬉々としてベッドに飛び込んだ龍騎が寝転んでいるベッドの上は。

(ま、一人のままよりはいいか)

思えば、どんな魔法を使っても必ず爆発に帰結する自分が、正体不明だが使い魔を二体も召喚できたのは奇跡に近いだろう。
始祖ブリミルに感謝――するかどうかはまだ早い。

常識人(竜?)そうなドラグレッダーはまだしも、初対面の人物を当たり前のように殴る龍騎は危険だ。
毛筋一つの油断が、死を招くかも知れない。
だがこの状況は……ロデオのようなものだ。
荒馬を乗りこなせるかどうかは、騎手の腕にかかっている。
そして自分は、龍騎という荒馬を見事乗りこなす名騎手となるのだ。

「そういえば聞きそびれてたんだけど……」

「あん?」

「あんた達って何なの?」

どこから来たのか、何者なのか。
鎧を着た人間にも見えるし、鎧を着た人間のような亜人にも見える。
馬を馴らすにも、種類ごとのコツがあるのだ。
使い魔がどんな存在か、主人は知っておく義務がある。
しかし、問いの答えは返って来なかった。

「ぐーぐーむにゃ」

「話の途中で寝るな!」

「ぶほぉ!」

仰向けになって寝息を立てる龍騎に、ルイズは全体重をかけた二―ドロップをぶちかました。
下手に手心を加えて舐められるのは御免だ。
殴り合いに発展しそうな雰囲気を、ドラグレッダーの声が割る。

「ワシと龍騎のことについて知りたいなら、少し長くなるが教えよう。龍騎、また寝ようとするな」

――――パラレルミラーワールド。

それは龍騎のような、仮面ライダーと呼ばれる戦士だけが住む世界。
彼らは皆ライドモンスターと呼ばれる使い魔を入れたカードを持ち、自在に呼び出して戦う事が出来た。

「仮面ライダーとは、かつて人類のために戦った正義の戦士達だ。一応、龍騎もライダーなんだが……」

「路地裏にたむろってるチンピラの方がぴったりね」

「返す言葉もない……」

龍騎は元々仮面ライダーではなく、別の世界で平和に暮らしていた少年だった。
そんな彼が何故龍騎となり、パラレルミラーワールドに連れて来られたのか。

それは、シャドームーンという悪の仮面ライダーと戦うためだった。
パラレルミラーワールドだけでなく、全ての世界を支配するという野望を抱く彼は、自分と同じ悪の心を持つライダーを部下に、また正義のライダーを洗脳して戦力を集めた。

かつての仲間と戦う事ができない正義のライダーには、過去のない新たなライダーが必要だったのだ。
彼らの期待通り、龍騎は見事シャドームーンを倒し、パラレルミラーワールドの救世主となった。

「救世主ねえ」

「何だテメ―その目は」

ベッドの端に腰掛け、ルイズは龍騎にじっとりとした視線を送った。
妙に鋭い目で睨み返してくる彼が、救世主と呼ばれる男だとは到底思えない。
良くて殺人鬼だ。
別の世界の話と合わせて、さてどこまでが真実か。

「まあ使い魔として役に立つなら何でもいいんだけどね。で、龍騎は強いの?」

「それは……強いは強いんだが……」

言いかけて、ドラグレッダーは目を逸らした。
薬草や鉱石集めは最初から期待していないし、今のところ視覚が共有になる気配はない。
ならば残る一点、主人を守るための戦闘能力に望みをかけたいところだが、ドラグレッダーは何故か言葉を濁す。

(……今さら考えても仕方ないか。もう召喚して、契約したんだし)

とにかく、使い魔を得られたことは大きな前進だ。
もちろん、踏み出した先に落とし穴が無いとも限らない。
しかし、ゼロだ無能だと呼ばれて鬱々していた頃よりも、ずっと心が晴れやかだった。
新しい何かが始まる。
そんな気がした。

………気がしたが。

「ぐごーぐごー」

「いい加減ベッドから降りなさいよこのアホ!」

梃子でも動かなかったので、結局一緒に寝ることになった。
全く何もして来なかったのが逆に気に障った。



ルイズは夢を見ていた。
何処までも広がる草原と、遠くに臨む山以外何もない世界で、龍騎とドラグレッダーが言い争う夢だ。

「ぬがー! もー我慢できねー!」

両手を鉤爪のように広げ、龍騎は叫んだ。
いつもの事なのか、ドラグレッダーがうんざりとした溜息をつく。

「だから、何度も言ってるだろ。この世界で勝ち続ければ元の世界に帰れるって」

「勝ちまくっただろーが! 仮面ライダーズもシャドームーンもライダーズその他大勢も新しく来た電王とかキバとかディケイドも! なのに全然帰れねーぞ!?」

どうやら、自分は龍騎の記憶を見ているらしい。
いつか、使い魔と契約して両者の間に繋がりが生まれると、そういう現象が起きると本で読んだことがあった。

ということは、龍騎も自分の記憶を見ているのだろうか。
人に知られたら恥ずかしくて首を括るような記憶も。
………朝起きても、怖くて聞けない。

「だいたい、お前は自ら望んでこの世界に来たんだ。諦めろ」

「お前が脅したんだろーが! ヤクザみてーなことしやがって!」

どうやら、二人の関係も色々と複雑なようだ。
ヤクザが何かは知らないが、龍騎は無理やりパラレルミラーワールドに連れて来られたらしい。
その辺りは使い魔となり得る生物をほぼ強制的に召喚するサモン・サーヴァントと似ていて、ルイズは少し心苦しかった。

彼女は貴族であり、多少なりとも傲慢な部分はあるが、他人が嫌がることをしたら罪悪感が生まれるくらいの心は持ち合わせていた。
もっとも、龍騎は毛筋ほども気にしていなかったが。

「もういいよ。こーなったら自分で出口見つけて帰ってやる」

そう言うと、龍騎はあちこちを掘り返し始めた。
傍目には、イモか何かを掘ってるようにしか見えない。
ドラグレッダーは二度目の溜息と共に言った。

「そんなことをしても帰れないぞ。第一出口なんてあるわけ……」

「あったー!」

「あったの!?」

龍騎の目の前には、光り輝く姿見のような物体が浮かんでいた。
これについても、ルイズは授業で習っていた。
サモン・サーヴァントの魔法により作られた、使い魔を呼び寄せるためのものだ。
それを出口とは、一体何の根拠があって……

「なんか知らねーけど、たぶんコレだ! 何か入れるし!」

……何の根拠もなかった。
それほど帰りたいということなのかも知れないが、いくらなんでも思慮に欠けているのではないか。
これから使い魔として働いてもらう以上、それでは困るのだ。
せめてオウムよりは物事を考えてもらわなければならない。
普段なら注意してやるところだが、いかんせん夢の中である。
ルイズに出来ることなど一つとしてありはしなかった。

「おっしゃーさらばパラレルミラーワールド!」

「ああっちょっと待て龍騎ー!」

迷わず飛び込んだ龍騎と、それを追うドラグレッダー。
後の展開は知っての通り。ああ顔が痛い。



「………あーアホらしい」

それが、起床したルイズの第一声だった。
穏やかな朝である。
窓からは新品の日の光が差し込み、床に降り積もっている。
それによって部屋中の陰影は濃さを増し、まるで絵画の世界のようだった。
小鳥のさえずりが、覚醒したばかりの耳に優しく響く。

しかし。

しかしルイズは、昨夜の夢の内容を覚えていた。
使い魔は主人の映し鏡。
風の魔法を得意とするメイジには鳥など羽がある者、水の魔法を得意とするメイジには蛙のような水棲動物と、主人のイメージを喚起させる存在が選ばれる。

じゃあ、自分に龍騎とはどういうイメージなのだ。
アホということか。
今夜はアホとアホでダブルアホか。

(私って、自分で思ってるほど優雅で美しくないのかしら)

たしかに、他の同年代の女子と比べて、体の発育がいいとは言えない。母や姉譲りの桃色の髪は自慢だが。
そして性格は―――ああ、この際だから認めよう。
正直、ヒステリックな部分がある。
だがこれは、周りにゼロと呼ばれ過ぎて、少しひねくれてしまったからだ。
元から自分に備わっていた資質ではない。断じて違う。

(でも、もしかしたらお似合いの主従なのかもね……)

ルイズは、ベッドの端でぐーすか寝息を立てる龍騎に目を向けた。
視線を床に移すと、ドラグレッダーが長い体でとぐろを巻いて眠っている。
初対面から全く友好的ではない龍騎に、まともそうに見えて実は……なドラグレッダーこそ、こんな自分には相応しいのかも知れない。

ぱしん。
ルイズは両手で頬を叩くと、鬱々した感情を追い払った。

「こんなだからゼロ呼ばわりされるのよ。卑屈になってる場合じゃないわ」

とりあえず、使い魔を召喚し契約できたという事実だけ喜べばいい。
全ては、そこから始まるのだ。

「……まずは、呑気に寝こけてるアホどもの教育かしらね」

そう言って、ルイズはどこからともなく乗馬鞭を取りだした。



「いってーなテメ―! 人が寝てんのに鞭なんかで叩きやがって!」

「ご主人様より寝坊してる使い魔なんて初めて見たわ! 普通早起きして起こす方でしょ!」

「何で俺がそんなことしなきゃなんねーんだよ」

朝っぱらからがっぷり四つのルイズと龍騎。
ドラグレッダーはふわあと欠伸代わりの火を吹いた。
放って置けば殴り合いに発展するだろうが、仲裁に入っても無駄だろう。二人とも、根本的に子供である。
龍騎がやり過ぎれば後頭部を刺すなりして止めればいいと考えながら、ドラグレッダーは今朝になって二発目の火を吹いた。

「何でもなにも、あんたは使い魔でしょうが。主人の身の回りのことをするのは当然でしょ」

「チッ、そうだったな……本当に金くれるんだろうな?」

「働き次第ね」

龍騎はそれでも不服そうだったが、それ以上は逆らわなかった。
金の力は偉大だ。

「分かったら、さっさと仕事なさい。そこの制服と、クローゼットから下着取って……ぶっ」

指示を聞くが早いか、龍騎は迅速に椅子にかかっていた制服を引っ掴み、クローゼットから下着を一枚取り出し、ルイズに投げ渡した。
渡したというか、顔面に叩きつけた。
わざとではない。単純に粗暴なだけだ。
重力に従った制服が、ばさりと音を立ててルイズの足元に落ちる。

「………まあいいわ。じゃあ、次は私に着せなさい」

ルイズはネグリジェを脱ぎ捨て、新たな下着を身につけながら言った。
他にも何か言いたそうな顔をしていた、龍騎にとってはどうでもよかった。

「げっ、そこまでするのかよ、気色わりーな!」

「ぶち殺すわよこの野郎。普通は平民……平民?……が貴族の肌に触れる機会なんてないのよ」

「知るかんなこと。ていうか着替えくらい自分でやれ」

「給料アップ」

「少々お待ち下さいお嬢様」

金の力は本当に偉大である。
打って変わって従順になった龍騎の手により、ルイズは昨日と同じ制服姿となった。
その足元では、龍騎が女王に使える騎士のように片膝を突き頭を垂れている。
プライドの欠片もないとはこの事を言うのだなあと、ドラグレッダーは今更ながらに思った。

「さ、行くわよ。これから食堂に向かうから、道程くらいは覚えておきなさい」

ルイズの声は、若干弾んでいた。
金の話をチラつかせれば、捻くれ者の龍騎を簡単に操縦できる。
純粋な忠誠心が欠片もないのは複雑だが、使い魔らしく振舞ってくれるのはありがたい。
しかし、龍騎とドラグレッダーを伴って部屋の扉を出ると、ルイズの機嫌は一瞬で悪くなった。
天敵が現れたのだ。

「あら、おはようルイズ」

燃えるように赤い長髪。
いかにも健康そうな小麦色の肌。
ルイズよりもすらりとした長身。
ルイズよりも年上のような、大人びた雰囲気。
ルイズよりも豊満な、ブラウスの中に収まり切らない胸。
ルイズよりも………

(クソぁ!)

ルイズはぎりりと奥歯を噛み締めた。額に青筋が浮いているかもしれない。
彼女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
ヴァリエール家とも浅からぬ因縁がある、隣国ゲルマニアからの留学生である。
ルイズの心境を知ってか知らずか、キュルケは涼しげな顔で龍騎とドラグレッダーに目を向けた。

「あなた達がルイズの使い魔? すごいじゃない、竜に…………えっと、あなたは?」

「あん? 俺は龍騎だよ、仮面ライダーの。じろじろ見んなコラ」

龍騎が赤く裂けた目でキュルケを睨みつける。
普通の男なら、キュルケに見詰められたら頬を染めるなりするものだが、彼は数少ない例外のようだ。
少なくとも巨乳派ではないらしい。

「………よく分からないけど、一度の『サモンサーヴァント』で二体も使い魔を召喚するなんて、もうゼロのルイズって呼べないかしら?」

「馬鹿にしてるの?」

「どうかしら」

キュルケは、突いても突き返してくるということがない。
自分一人がガキのようにみっともなく喚いているかのようで、そこがまたルイズには気が喰わなかった。

「でも、私の使い魔もなかなかよ。おいでフレイム」

キュルケの呼び声に応じ、彼女の部屋の中から巨大なトカゲが姿を現した。
全長は、尻尾も入れればキュルケよりも大きいだろう。赤い体からは、夏の大気のような熱気が振り撒かれている。
主に火山などに生息する、サラマンダーという種族だ。

「うおーあったけぇ! こいつがいればコタツいらねえな!」

「ふふ、ありがとう。コタツってなに?」

龍騎ははしゃぎながらサラマンダーに手を当てた。ころころと態度を変えるのは、まるで子供のようだった。
思えば、龍騎の声音は男性というには高い気がする。
適当に「少年」というカテゴリーに当て嵌めていたが、実際は何歳なのだろうか。
しかし、ルイズとしては龍騎の年齢よりも、キュルケの前で虚勢を張る方がずっと重要だった。

「ふ、ふん。それならこっちの勝ちね。ドラグレッダーは羽はあるし! 強そうだし!」

「私のフレイムも、見てよこの尻尾。ここまで鮮やかで大きな炎の尻尾は火竜山脈のサラマンダーしかあり得ないわ。好事家に見せたら値段なんてつけられないわよ」

「マジで!?」

おおと叫んだ龍騎の目が、一瞬にして欲望の色に染まった。
フレイムへの評価が、便利な暖房器具から一獲千金の宝に変わったのである。
それを見て、やばい、とルイズは思った。
龍騎なら、このサラマンダーを攫って何処ぞへ売り飛ばすくらいはしかねない。
キュルケは嫌いだが、フレイムとやらに罪はないのだ。

「キュルケ……こいつの前でそういう話はしない方がいいわよ」

「何で?」

予防線を張られ、龍騎がチッと舌打ちをする。
やはり売るつもりだったようだ。恐ろしい。

「そっちの竜も、あたしの方が相性良さそうだけどね」

キュルケに顔を寄せられ、ドラグレッダーは照れるように長い首を引いた。
こちらはしっかりと男のようだ。去勢も考えておくべきか。

「ふん、微熱が二つ名のあんたに使いこなせるかしら?」

「少なくとも、男の子はイチコロよ? きっとこの竜もね」

口元に艶やかな笑みを寄せながら、キュルケは胸を張った。
ルイズも胸を張り返した。
龍騎の脳裏に、スイカと小皿の対比が過る。
ルイズは目尻に浮かんできた滴を拭うと、それでも負けじとキュルケを睨みつけた。
なんか哀れだなあと、龍騎は漠然と思った。

「ふふっ、じゃあお先に失礼」

このやりとりに飽きたか、キュルケは優雅に赤い髪を掻き上げ、くるりと踵を返した。
去ってゆく彼女の後を、フレイムが長い尾をくねらせて追う。
一人と一匹の背中を見送りながら、ルイズはぷるぷると肩を震わせていた。

「あああああああの女ー!!」

「あっはっはっは、見事に完敗だったな」

「お黙り!」

瞳に赫怒の炎を灯し、ルイズは乗馬鞭を打ち振るった。
だが、寝込みを襲われなければその程度の攻撃を喰らう龍騎ではない。
ひょい、ひょいと容易くかわし、ルイズを翻弄する。

「叩きたいならドラグレッダーにしろよ。ほれ」

「こらワシを盾にするな! 痛っ! お前も本当に叩くな! 痛い!」

「………少しすっとしたわ」

ルイズは乗馬鞭を懐にしまうと、改めて食堂に向かった。
彼女の怒りを一身に受け、蚯蚓腫れだらけになったドラグレッダーだったが、普段龍騎から受けている仕打ちに比べればまだマシだった。
黙々と足を振り動かすルイズの隣に、龍騎が並ぶ。

「そういえば、さっきキュルケってのが言ってたゼロのルイズのゼロって何だ?」

「……あんたは知らなくていいのよ」

「あ、そうか。その薄いむ……」

爆音は、廊下の向こうまで響いた。


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