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ゼロの黒魔道士-54


ビリビリと伝わる、魔力。
目に見えない『立ち入り禁止』の看板のようなものだった。
入り込めない。
空気そのものが、ボク達を拒絶していると感じる。
クジャと会って感じたイライラやザワザワが、一瞬に冷や汗になってしまった気がする。
魔力に覆われた、恐怖そのもの。
それが、ボク自身の臆病さを、睨みつけて動けなくしていた。

恐怖を覆すのは、勇気ばっかりじゃない。
「ファイヤボールっ!!」
それは、キュルケおねえちゃんの、感情の塊、だったんだと思う。
「ちょ、いきなりっ!?」
「勝負は先手必勝よ、モンモランシーっ!」
大きさも、火力も、『ファイガ』を越えるかもしれない巨大な火の玉。
大砲の弾よりも速く、エルフを飲み込む……って見えたはずなんだ。

「え!?」
「危ないっ!?」
炎の向きが、180度反対になって跳ね返る。
勢いを、そのままに。
確認するよりも早く、デルフを持つ手が先に動いて良かったと思う。
「ゴハッ!?……くぅ~、久々にいい炎吸い取ったぁ~」
デルフに吸い取らせなかったら、みんな黒こげになっちゃったかもしれない。
それほどにすごい炎の魔法だったんだ。
跳ね返されたキュルケおねえちゃんが、唖然とした顔になっている。
「魔法を……跳ね返した?」
「これが……エルフ……」
ルイズおねえちゃんも驚いているみたいだ。

魔法を、跳ね返す魔法。
確かに、ハルケギニアではあまり聞かないけど、ボクが旅した場所にはあった。その魔法。
「……『リフレク』?」
それは、魔法を跳ね返す白魔法の一種。
感じた魔力の壁の正体は、これだったのか。

「私はエルフのビダーシャル。お前達に告ぐ」
透き通るような声で、エルフが言う。
ガラスみたいに綺麗な声だけど、その分、冷たい感じがした。
「私は戦いを好まぬ」
「あ、あらそそそ、そうなんですか?で、でしたら私はこのへへへ辺ででで」
モンモランシーおねえちゃんが後ろを向いて逃げようとしたけど、
その目の前で部屋の扉が閉じられた。
素早い風の動き。きっと、ビダーシャルって名乗ったエルフの仕業だ。
「が、約束がある」
緩やかに、両手を腰の位置まで降ろして構えを取るエルフ。
そこには、隙というものが一欠片も見当たらなかった。
「故に、お前達を攻撃する。悪く思うな」
「ななななな!?」
「モンモンッ!!」
ギーシュは、モンモランシーおねえちゃんの護衛に回った。
やれること、できること、やらなくちゃいけないこと。
考える必要すら、無いみたいだ。
「……デルフっ!」
「あいよっ!」
このエルフを倒さなくちゃ、タバサおねえちゃんを助けに行くことも逃げることもできない。
なら、倒す、それだけしかないんだ。


ゼロの黒魔道士
~第五十四幕~ Destati


間合いを詰めるため、一気に走る。
ガンダールヴの力が与える速度を、最大限に生かして。
「せいっ!!」
ジャンプからの、振り下ろし。
「ふむ」
これは、左に避けられる。だけど、ここからが本番だ。
「つぇいっ!」
振り下ろした勢いで、斜めに身体をグルンと空中で回転させる。
デルフを逆手に持ちかえて、背後のエルフに向かって思いっきり突く。
二撃目。それは、エルフの身体を確かにとらえた……はずだったんだ。
「ほう」
「えっ」
グネリ。音がしそうなほど、空気が歪んで、それ以上デルフが進まない。
物理攻撃も……跳ね返した!?
そう思った時には、ボクの身体ごと地面に弾き飛ばされていた。

魔法攻撃も、物理攻撃も跳ね返す?
そんな魔法なんて、存在するのっ!?

「石に潜む精霊の力よ。我は古き盟約に基づき命令する。礫となりて我に仇なす敵を討て」
エルフの呪文が静かに響く。
それに呼応して、石床がめくれあがって、バラバラと雨あられのように降り注いだ。
「きゃぁっ!?」
「ファイヤーボールっ!」
「うわわっ!?わぁっ!?」
全部を避けたり、受け切ったりすることは無理だ。
せめて、ルイズおねえちゃん達に降る分あ防がなくては……

ビシビシと身体のあちこちに容赦なく石のつぶてがぶち当たる。
1粒1粒が、はじけ飛びそうな力で、ボクの身体を貫こうとする。
「……く……ッハァ……ケホッケホッ」
身体がバラバラになりそうなぐらい痛い。
「あ、相棒、大丈夫かっ!?ちきしょう、流石先住魔法、チートもいいとこだぜっ」
「……スーッ……ハァァァァアア……」
息を、整える。
痛みがよりはっきりしてくる。
でも、その分、倒れずには済みそうだ。

「飽食なる星よ、魔空より来りて
         光も闇も平らげよ! グラビデ!」
「む?」
『リフレク』か知らないけど、跳ね返されることも考えて、エルフよりも少し離れた場所に重力球を生み出す。
やや引きずられるように、体勢を崩すエルフ。さっきの小石もその重力球に引きずられてエルフのそばをかすめる。
その隙を縫うように、間合いを再びつめる。
エルフのやや右斜め、死角からの攻撃。
「はぁぁっ!!」
「無駄だ」
グネリ。まただ。また空気の渦のようなものに、剣が捕えられる。
物理攻撃も、魔法攻撃も、この魔力と空気を混ぜたような力で防がれてしまっているのだろうか?
「く……はぁぁぁあああああああああ!!!!!」
それでも、もしかしたら。
押す。出来る限りのスピードで、その魔力の壁を削るように、連続で斬りつける。
それでも、全く届かない。届かせてくれない。

「ライバルのピンチに颯爽と登場っ!! ギーシュスペシャルダイナミックブレードアターック!!」
「ギーシュっ!?」
ギーシュが、斬りかかった。エルフの真正面から、隙だらけに振りかぶって。
「む」
髪の毛の先だけ触れさせて、エルフはそれをすぐに避けた。
「ふん」
空気を押すように、エルフが手を外に向ける。
「わぁっ!?」
「ぐわっ!?」
胸が押された、と思ったら、ボクは本棚の奥までめり込んでいた。
風の壁でそのまま突き飛ばされたんだ。
そう気付くときには、目の前が、だんだんと、暗くなってきてしまった……


「相棒っ!?相棒っ!?打ちどころ悪かったか!?おい、あいぼ――」
声が、だんだん遠く小さくなる。
暗い。暗闇の中にいるようだ。
エルフは、強い。
どうすれば、勝てる?どうしたら、勝てるというんだ?
答えが出ないまま、暗闇の淵に落ちていきそうだった。

「1つだけ言わせてくれ。『目に見える物だけが敵ではない』」
目に見える物だけが敵じゃない?
なんで、クジャの言葉がここで気になるんだろう?
でも、何故だかその言葉が、闇の中の光のように感じたんだ。
光を、辿るように、状況を思い出す。
物理攻撃も魔法攻撃も跳ね返す、壁。
でも、そこに何か違和感があった。
『跳ね返し方』が、明らかに変だったんだ。
……見えない、敵?
まさか!?


目を見開いて、立ち上がる。
部屋の中は、酷いことになっていた。
本という本が、床石という床石が舞い散り、
みんな痣だらけの酷い状態だ。
部屋の中央に立つエルフ1人が悠然としている。

「まだ、立つか?そのしぶとさは賞賛に値するな」
「……まばゆき光彩を刃となして……」
わずかに見つけた光を目指し、紡ぐ、呪文。
狙うのは、「見えざる敵」。
そう、気付いたんだ。
『最初からあのエルフだけが敵では無かった』ということに。

    「地を引き裂かん! サンダー!」
唱えた呪文の矛先は、ルイズおねえちゃんのすぐ真後ろ。
丁度部屋の扉の真正面の位置。
「きゃあああ!?」
悲鳴と共に、崩れ落ちる、『部屋の中央のエルフ』。
そして……
「くっ!?」
入れ替わるように、姿を現した『ルイズおねえちゃんの背後のエルフ』がルイズおねえちゃんを羽交い絞めにした。
「ルイズおねえちゃんっ!?」
「見破ったのは見事。 だが、こちらも果たすべき約束がある」
まだ、勝負はついていない。
「ルイズおねえちゃんを、離せ!!」
ボクは、デルフを構えなおした。

このエルフを倒さなくちゃ、タバサおねえちゃんを助けに行くことも逃げることもできない。
なら、倒す、それだけしかないんだ。


ピコン
ATE ~Night of Fate~

「ふー……む?」
手札を並べるように、書類をザッと開いた。
王の持つ手札は、さっぱりと役手になっていない。いわゆるブタ、というヤツだ。

イザベラの出した気まぐれな北花壇騎士団への命令文、
アーハンブラ城への余剰と思われる増兵要請、
レコン・キスタの思わぬほど速い内紛の鎮静化、
トーマスが盗み出したロマリアの輸入品のリスト、
ラ・ロシェール付近で目撃されたらしい幽霊騒ぎ……

いくつかは些細で、真っ当な理由がつけられる。
例えば、イザベラの気まぐれなど日常そのものだ。
そんな彼女が、季節外れの極楽鳥の卵を食べたいなどと言い出しても、不思議でもなんでもない。
アーハンブラ城にしたって、以前からやる気の無い上官を嫌がり、転属届けを出す兵士がよく出る場所。
増兵も、その穴埋めを希望していると考えれば、ごくごく自然の成り行きだ。
レコン・キスタの内紛にしたって、所詮は小物同士の背比べ。
いつ飽きて鎮静化してもそう不思議なことではない。
幽霊騒ぎ至ってはお笑い話にしかならない。
「亡国の皇太子の霊」?オカルト話にしても陳腐でありふれている!

だが、どこか気になる。
そう、どこか気になるのだ。

ジョゼフは、チェスプレイヤーだ。
盤の上を見降ろし判断を下す、チェスプレイヤーだ。
その視点は常に高みに有り、些細な駒の動きを見つけることに長けたチェスプレイヤーだ。
その彼が見つけた異変だ。何か意味があるに違いない。
ジョゼフは、己のカンというものをこれ以上ないほど信じていた。
信じなければ、勝負師とは言えまい。そうだろう?

だが、その意味するところとなると、これは難しい。
チェスには相手がいる。
その相手の顔が見えないのだ。
違和感のある手札、その意味するところを理解するのは骨が折れそうだった。

今はまだ、熟考すべきときなのかもしれない。
このゲームは長丁場になりそうだ。
そう考えジョゼフは大きく伸びをした。
脳が糖分を求めている。
真夜中ではあるが、菓子の1つぐらい食べても問題あるまい?
アーモンドたっぷりのタルトでも食べようかと、手元のベルを鳴らそうと手を伸ばした。

静かに、王の間のドアが開く。
ベルに伸ばした手を引っ込める王。こんな時間にノックもしない訪問者、誰かの見当はついていた。
案の定、流れる銀髪にふざけた衣装が「部屋に入る」との言葉も無くスッと入ってきた。
「クジャ!どうした?早いお帰りだな!聖地のエルフ共に飽いたか?」
糖分よりもよっぽど良い気晴らしが現れたことに、笑みを浮かべながらそう言って歩み寄る。
王自らが立ち上がり迎えるこの男こそ、彼のゲームパートナー。
素晴らしきゲームを紹介してくれた、偉大なる劇作家。
やや自己愛がすぎるのは玉に傷ではあるが、その美貌があれば自己愛もしようと納得できてしまう。
そう言えば、疲れているのかその美貌がやや霞んで見えるような気が……

チェスと現実が違う点、それは、待ち時間の存在だ。
現実において、『気付いた瞬間』に反応できなければそれは意味が無い。
ジョゼフについて言えば、虚無魔法である“加速”を使えばもっと素早く反応ができたことだろう。
回避することも可能であったかもしれない。
しかし、たら、ればを語っても意味が無い点ではチェスも現実も同じことだ。

それは一瞬のことであった。
クジャの右手が、『伸びた』。
いや、より正確に言うならば、『飛んだ』であろうか?
少なくとも、クジャの胴体と右手が離別することを『飛ぶ』と表現して良いならば、間違いなく『飛んだ』のだ。
そして気付いた時には、クジャの右手がジョゼフの左手に『食らいついて』いた。
そう、『食らいついた』のだ。文字通り。

「――ッ!?」

襲うのは、混乱と激しい痛み。
薬指の根元が食いちぎられ、血が噴き出す。
熱く絡みついて締め付ける、青白い手。
離すまいと、マニキュアを付けた爪がギリギリと皮膚の中に食らい込む。
手が、手を喰らう。それは異様という表現が陳腐に見えるほど異様な光景であった。

「クジャ、何の真似……いや、質問が不粋だであったようだな、暗殺者よっ!!」
だが、彼は王である。
暗殺者の1人や2人に惑うようでは、王とは呼べまい。
彼はこのゲームを一瞬の混乱の内に理解した。

「(この『右手』、振り払うのは骨だな)」
食らいついている『右手』、平然と立つ『クジャの姿をした者』、そして食われようとしている『自分』。
劣勢。こちらが不利であることは盤上を舐めまわさなくても明らかな事実だ。
なかなかに難解な詰将棋。
そのような中、王が導きだした解答は、実にシンプルかつ大胆な物だった。

「――ふんっ!!」
斬り落とす。自らの、左手と共に。
使用した獲物は果物ナイフ。
右手が届く範囲に、果物鉢が存在したことに感謝する。
噴き出す血と痛み?関係無い。
呪文を唱えるにしても、彼は『無能』なのだ。
得体の知れないものを、即座に斬り落とす。
この即断力こそ、ジョゼフが王である理由なのだ。

「せいっ!」
ベトリと自らの左手と右手が床に落ちるよりも前に、
そのままの勢いで、果物ナイフを投げつける。
狙いは、暗殺者。避けられても構わない。
杖を探って“エクスプロージョン”を唱える隙さえできればそれで良い。

「――っな!?」
それは、杖を取りだした瞬間と、絡み合う手が地面に落ちた刹那と、全く同じタイミングであった。
ナイフは、避けられた。それは問題ない。予想通りだ。
だが、その避け方が問題であった。
長い銀髪がついた頭が、グラリと落ちるように、地面に崩れる。
それはまるで、糸が切れたマリオネットのように。

偽クジャの頭が地に落ちるより前、それらと繋がっていた右手が姿を変えて動き出す。
イタチ。
大きな青い目を持ったイタチが、ジョゼフの左手薬指を、ついている指輪ごと食いちぎって駆けだした。
「エコーか!!?」
先住の魔法により姿かたちを変えることができる幻獣。
ジョゼフも本での知識では知っていた。
だが、そこで示されていたエコーの特性は臆病で大人しいというものであったはず。
何故、ジョゼフの左手を食うという荒技を?

続けざまのゲーム展開に、ジョゼフの呪文詠唱は追いつかない。

逃げるエコー、
落ちた偽クジャの首、
ニヤリと笑う顔、
光る暗殺者の口。

ジョゼフが“エクスプロージョン”の呪文を唱え終わる頃には、
エコーは光る偽クジャの口に吸い込まれ消え去った後であった。
「ふん」
ジョゼフは、鼻を鳴らして溜めた魔力を適当に分散させた。
見たところ、目の前の偽クジャの身体はもう動かないようだ。

「(……土の人形。他人に似せたゴーレムの類か)」
ナイトガウンの帯で適当に止血しつつ、つま先で検分を開始する。
どうやら、どこかの馬鹿が土人形とエコーを組み合わせて暗殺者に仕立て、このガリア王の下に遣わせたらしい。
暗殺者にとって残念なことに、この首は奪われなかった。
その意味であればこのゲームはこちらの勝利であるはずだ。
だが、何やら引っかかる。
ゲームが終わったはずなのに、後味が非常に悪い。

王の類稀なる勝負勘は、彼の頭を背後のテーブルへと向かわせた。
「むぅ、右手だけではなかなか不便だな……」
水メイジを呼ぶよりも先に、先ほどテーブルに広げた書類を探る。

目指す一文は、すんなりと見つかった。
『エコー他幻獣12箱分 ウルの月、エオローの週、エオーの曜日』
ロマリアの輸入品目のリストの1行。
そこで全てが繋がった。
「フフ……フハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
ジョゼフは、笑った。
それは、彼に久方ぶりに訪れた充実感であった。
相手の顔が、見えたのだ。
チェスの相手の顔が。その性格も、その手の内も、その戦法も。
同時に、自らが手元に広げた意味の無い書類群の意味を知る。
何もかもが1本の線につながって、綺麗なロワイヤル・ラファエル・アヴェニューを作り上げる。

「どうやら、この1局は俺の負けのようだなぁ、クソ坊主共!!だが、まだゲームは始まったばかりだぞっ!!」
ジョゼフは、足元の土人形を蹴飛ばして、ベルを鳴らした。
左手の治療と、アーモンドたっぷりのタルトでも食べるためだ。
脳には栄養が必要だ。これから偉大なるチェスゲームが始まるのだ。
運命の夜に、ゲーム開始のベルが、静かに鳴り響いた。


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