あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

攻撃力0の使い魔-07


宝物庫の中に取り残された 2人の男…オスマンとコルベールのあいだには、気まずい沈黙が流れていた。

「……いやはや……してやられたわい」

先に沈黙をやぶったのは、白髭の老人:オスマンのほうだった。
長い髭を撫でながら、気まずい空気を誤魔化そうとするかのように、軽い調子で話を切り出す。

「あの者が『カード』を持っておった以上『英雄の宝札』を譲ってくれと言いだす可能性は考えておったが……
 まさか、わしらの目の前で あれほどまで堂々と…かつ 一方的に持ち去ってくれるとは、さすがに予想できなかったのう」

と、わざとらしく肩を竦めてみせる。
一方、禿頭の中年男性:コルベールのほうは いかにも気落ちした様子だった。

「申し訳ありません、オールド・オスマン……私が あの使い魔を連れてきたばかりに『英雄の宝札』を……」
「それは わしとて同じじゃよ、コルベールくん。それに 君も、あの者から戦意や敵意は感じなかったんじゃろう?」
「はい……しかし、それが迂闊でした……戦意や敵意が無いことに油断して あの使い魔の思惑を見抜けなかったのは、私の落ち度です……」
「そう自分を責めるでない。今回は むしろ『英雄の宝札』を差し出すことで あの者と戦わずに済んだことを、幸運に思うべきじゃろう。
 わしらが真に守るべきは、宝物庫の中身などではなく、ほかでもない生徒たちじゃからの」

そう言いながら、オスマンは 宝物庫の扉を閉めて 鍵をかけた。
さらに『サイレント』の魔法をかけて 音が外に漏れないようにする。

「まあ、済んだことは もうよい。それより 重要なのは今後のことじゃよ、ミスタ・コルベール」
「……はい」

本日2度目の真面目モードになったオスマンを前に、コルベールも無意識に背筋を伸ばし 精悍な表情を浮かべる。

「たしかに、今日のところは あの使い魔との交戦を避けることができた。
 それは大いに結構なのじゃが、やはり あのような『力』を このまま野放しにしておくわけにもいかん。
 下手をすれば、この学院のみならず トリステイン……いや、ハルケギニア全土に混乱を もたらすことになりかねん。
 そうなる前に、あやつの目的を見極め、然るべき処置を考えんとな」

オスマンが深刻な顔で そこまで言ったとき、コルベールの顔つきが若干 変わった。
戦士の精悍な表情の中に、研究者としての好奇心が顔を覗かせている。

「あの、オールド・オスマン」
「……何かね?」
「先程から ずっと気になっていたのですが、本当に あの『カード』には それほどの『力』があるのですか?
 たしかに『カード』の印刷技術は、このハルケギニアより数段優れている 素晴らしいものでした……!
 しかし、特に何らかの魔法が込められているようには見えませんでしたが……」
「……君が そう言うのも、無理は無い。我々の『ディテクト・マジック』は、あの『カード』にも『デュエルディスク』にも反応せんからのう。
 じゃが、あの2つのアイテムは、間違い無く 我々の…このハルケギニアの常識を超えた『力』を持っておるよ」
「ハルケギニアの常識を超えた力……やはり先住魔法でしょうか?」
「……いや。少なくとも、わしが かつて見た『カード』の『力』は、四大系統魔法とも先住魔法とも 大きく異なっておった……」

と、オスマンは低い声で静かに昔話を語り始めた。

「わしが初めて あの『カード』に出会ったのは、そう……数十年前のことじゃ。
 ある日、わしは森の中で 見たことも無い巨大なドラゴンに襲われての。
 そいつは、それぞれ異なる5つの首を持ち、さらに その首すべてから ヘクサゴンスペルにも匹敵するブレスを吐く、とんでもない怪物じゃったよ」
「へ…へクサゴンスペル!? そんなドラゴンが このハルケギニアに……いや、この世に存在するのですか!?」
「ふむ……これは わしの勘じゃが、もしかすると あのドラゴンも『カード』によって発生したものだったのかもしれん」
「な、なんですって!?」
「いや、あくまで わしの勝手な推測じゃよ。今は気にせんでくれ」
「……そう…ですか。わかりました……続けてください」
「うむ。では、話の続きじゃ。
 そんな人智を超えたバケモノを相手に、わしも全力で……むしろ150%の力で応戦したのじゃが、まるで歯が立たなくてのう。
 精神力も使い果たして、逃げることすら ままならず、さすがに死を覚悟した……そのときじゃった。
 突然、どこからともなく、左腕に 変わった形の器具を付けた若者が、わしの前に現れたのじゃ」
「……! では、そのときの若者が……!」
「『英雄の宝札』と『召喚の盾』の元の持ち主じゃよ。
 彼が 左腕の『デュエルディスク』に『カード』を置くと、雪のように白い氷の鎧とマントに身を包んだ亜人が現れ ドラゴンの前に立ちはだかった。
 そして、その亜人の捨て身の攻撃によって ドラゴンは打ち倒され、わしは九死に一生を得たのじゃ。
 そのときの彼と 彼の呼び出した亜人の姿が まさに勇者や英雄のように見えたことは、今でも よく覚えとる」
「なるほど、だから『英雄の宝札』ですか……それで、その若者は その後 どうなったのです?」
「彼は……わしが礼の1つも言う前に、いつのまにか姿を消しておったよ……
 じゃが どういうわけか、彼の『カード』と『デュエルディスク』は その場に残されていてのう。
 ひとまず わしは それらのアイテムを持ち返り、そのあと 捜索隊を編成して 彼を探したが……彼は見つからなかった。
 そして 結局、いつまで経っても 彼に『カード』と『デュエルディスク』を返せないまま 時は流れ……今に至る、というわけじゃ」

そこまで話すと、オスマンは 長く深く息を吐いた。
コルベールは、オスマンから得た情報を 静かに頭の中で処理している……

「……あの『カード』に、そこまでの『力』が……たしかに、我々の常識を遥かに超えていますね……」
「うむ……信じ難い話かもしれんが、事実じゃよ。あの『カード』には、それだけの『力』がある。
 杖どころか詠唱すら無しに、スクウェアメイジ以上の戦力を発揮する『力』がのう。
 そして、そんな『カード』を所持していた あのユベルという亜人も、やはり 我々を遥かに超える『力』を持っておるハズじゃ。
 ミスタ・コルベール。君は、そのような相手と 何の情報も無しに戦って、勝ち目があると思うかね?」
「……いいえ。しかし、オールド・オスマン。
 なぜ あの亜人は、それだけの『力』を持っていながら、わざわざ 我々に接触してきたのでしょう……?
 それに、すでに自分の『カード』を所持していたにもかかわらず、新たに『英雄の宝札』を手に入れようとした理由とは……」
「ふむ……たしかに、どうにも解せんのう。やはり、そこには 何らかの思惑があったと見るべきじゃろうな。
 その点も含めて、今後 君には、あのユベルという亜人の監視を…………む?」

オスマンは、何かを察知したのか、目を閉じて 押し黙った。

「……そうじゃな。なぜか今 宝物庫の前にいるミス・ロングビルにも、協力してもらうとするかの」

一般的に メイジと使い魔は感覚を共有できる。らしい。
宝物庫の外で待機していた オスマンの使い魔であるネズミのモートソグニルの「眼」が、宝物庫付近の廊下に ロングビルの姿を捉えたのだった。

「……ふむ。さて、今日の色は…………あぁッ!? モートソグニルっ!」

おおかた、使い魔に ミス・ロングビルのスカートの中を覗かせようとして、逆に そのネズミを捕縛されたのだろう。

「オールド・オスマン……あなたという人は……」

性欲に負けて真面目モードを維持できなくなったオスマンを前に、コルベールは無意識に溜め息をつき 呆れた表情を浮かべた。

■■■■■■

(……ったく、あのエロジジイ……!)

学院長秘書のロングビルは、心中で悪態を垂れ流しながら、見るからにイライラした様子で 足早に廊下を歩いていた。
今 現在 彼女がイライラしている原因は、大きく分けて3つ。
1つめは、例によって 学院長のオスマンによるセクハラ。
だが、こんなものは今に始まったことではないし、ロングビル自身も その対策とストレス発散法くらいは心得ている。
2つめは、学院の宝物庫に保管されていた「英雄の宝札」が盗まれたこと。
セクハラジジイが深刻そうに悩んでいる様子自体は非常に愉快ではあったのだが、問題は その宝を奪った「人物」だった。
そして、3つめ。宝物庫から「英雄の宝札」を持ち去った「人物」……ミス・ヴァリエールの使い魔の監視を、オスマンから命じられたこと。

(チッ……なんで あたしが……冗談じゃないよ……!)

おそらく あの亜人は、自分の…学院長秘書:ロングビルの「正体」に気づいている。
確証は無いが、そのことを ほのめかすような発言は多々あった。

(さて……どうしたもんかねぇ……)

あいつが 学院内の人間にロングビルの「正体」をバラしたところで、信憑性の無い「噂」の域は出ないだろう。
だが、何の根拠も無い噂でも、一度 周囲から疑いを持たれてしまえば、今後の活動に支障をきたす可能性は十分にある。
もっとも、そうなったところで この学院から出ていけばいいだけの話ではあるのだが。

(まあ、それも悪くないかもしれないね)

給料と宝物庫のことは少し惜しいが、この学院に対して そこまで未練も愛着も無かった。
それに、そろそろ故郷の「家族」の顔が見たくなってきた頃でもあったし、アルビオン国内の情勢のことも気がかりだった。
「妹」たちへの仕送りの問題だけなら「副業」の割合を増やせば解決するが、内戦については……

「ふふっ、何か心配事かい?」
「っ!?」

突然 頭上から聞こえた トーンの低い穏やかな女性の声。
ロングビルが ハッとして頭上を見上げると、ユベルと名乗った亜人が 翼を広げて天井付近を浮遊していた。

(この あたしが、まったく気配を感じ取れなかったなんて……こいつ、やっぱり……)

ロングビルが軽く戦慄しているあいだに、ユベルは ゆっくりと床まで降りてくる。
そして、2メイルを超える高度にある3つの目で ロングビルを見据えると、その緑色の唇を開いた。

「そんなに怖がらなくてもいいだろう? ボクは ただ、キミに頼みたいことがあるだけさ」
「……わたくしに…頼みたいこと…ですか?」

それは、学院長秘書:ロングビルへの依頼なのだろうか。それとも……

「そう……『土くれのフーケ』であるキミの腕を見込んで、頼みたいことがあるんだ」
「……!」

やはり知っていた。トリステイン全土を騒がせている、貴族ばかりを狙って盗みを働く怪盗……「土くれ」の異名を持つ盗賊:フーケ。
それが、トリステイン魔法学院・学院長秘書:ミス・ロングビルの裏の顔だった。

「おまえ……なぜ、あたしの『正体』を知っているんだ……?」

ロングビルは、フーケとしての口調で、第三者に聞かれないよう 小声で尋ねた。

「ふふふっ……キミの『正体』なら、キミ自身の『心の闇』が ボクに教えてくれたよ」
「心の…闇だって?」
「そう……キミは この世界を憎んでいるハズだ。キミから すべてを奪った、貴族たちが支配する、この世界をねぇ……」
「……! おまえ、まさか……!?」
「あぁ……ボクはキミの本当の『正体』も知っている。この世界の魔法使いたちは ずいぶん偽名が好きみたいだね」

そこまで見抜いているとは……この亜人が ここまで厄介な相手だとは思わなかった。
ロングビルは、警戒の度合いを さらに濃くし、いつでも動けるように身構える。彼女の腕は、杖を しっかりと掴んでいた。
そんなロングビルを見て、ユベルは口の端を歪めて笑った。

「っふふふふふッ……! ボクを攻撃するつもりかい? そんなことをしても キミ自身が傷つくだけだよ」
「ふん、たいした自信だね……」
「ボクは事実を言ったまでだ。もちろん、キミごときに負けるつもりも無いけどねぇ」
「っ、そうかい……ま、あたしも別に あんたと戦おうなんて思っちゃいないさ」

この亜人は、オスマンとコルベールの目の前で宝を奪い去るほどの手慣れだ。
ロングビルも オスマンから詳しい経緯は聞いていないが、おそらく 何かしら先住魔法の類でも使うのだろう。
そんな奴と正面から戦うなど、リスクが大きすぎる。彼女が今 杖を握っているのも、いざというときに逃走するためであって、戦うためではない。

「……それで? あたしに何をさせようってんだい……?」
「ほう、思ったより素直だね……まあいい。キミには ボクのために働いてもらうよ、ロングビル」
「……ッ!?」

突然、ロングビルの視界が闇に覆われた。ユベルの大きな手が、ロングビルの顔を正面から鷲掴みにしたのだ。
ロングビルからは見えないところで、ユベルの額のルーンが光を放つ。

「お…おまえ、何を……!?」
「ふふ、心配しなくても ボクはキミの味方だ。ボクがキミに力を貸してあげるよ。
 ボクも だいぶ力が戻ってきたからね。キミには 少し多めに分けてあげる。
 この世界のルールをボクの支配下に置くためには まだ足りないけど、キミが愛する者と共に堂々と生きていける世界を手に入れるためには、十分だろう」
「や、やめ……うああああぁっ!」

ロングビルは、自分の中に「力」が流れ込んでくるのを感じた。得体は知れないが、とにかく大きな「力」だ。
そこらの間抜けな貴族たちなど 軽く蹴散らせるだろう。いや……これだけの「力」なら、王家すら滅ぼせるかもしれない。
このハルケギニアを常識ごとブチ壊してしまえば、平民だろうがエルフだろうが分け隔て無く堂々と生きられる世界が誕生するかもしれない。
彼女の心の中の闇に、一筋の力強い「光」が射した。
だが、ロングビルは気づけなかった。「力」と共に ユベルから分け与えられた、その「光」の「正体」に。

「……っぐ……! っはぁ……はぁ……」

ユベルが手を離すと、ロングビルの視界にも光が満ちる。気持ち悪い感触の汗が、顔を伝って 床に滴り落ちた。

「よかったね、ロングビル。これで、ボクたちは友達だ」
「……!? な、何…これ……!?」

光を取り戻したロングビルの視界が、さっきまで 自分の左腕があったハズの場所に、奇妙なモノを捉えた。
ドラゴンのように硬質そうな紫と茶色の皮膚、指先から飛び出した鋭いツメ……これは、まるで……

「おまえ……! あ…あたしに…何をした……!?」」

ロングビルは様々な感情で声を震わせながら、不気味に変貌した自身の左腕を突き出して ユベルに見せつける。
彼女の左腕の肘から先の部分は、ユベルのものと まったく同じ姿に変質していた。

「それが、ボクがキミに与えた『力』の証だよ」
「な…っ! あ、あたしに、バケモノになれってのか!?」

第三者に聞かれることも おかまい無しに、ロングビルは声を張り上げる。

「ふふ、バケモノ…か……っふふふふふッ……! たしかに、そうかもしれないね。でも、キミは このことを喜んでくれていいんだ。
 だって、キミは……これで ようやく、キミの愛する者と 同じ場所に立てたんだもの。半分、バケモノになることによってね。
 それとも キミは、人々に恐れられる存在の血を半分引いているからって、キミの『妹』をバケモノ扱いしたりするのかい?」
「っ! そ、それは……」

そんなことはない。あって たまるか。どんなことがあっても、あの子だけは守ると誓った。
ハルケギニアの貴族どもが どんなに あの子を恐れようと、自分は あの子の味方だ。バケモノ扱いなど、死んでもするものか。

「っふふふ、そうだろう? どんな力を持っていようと、キミはキミだ。キミの大切な人が何者にも代えられないのと同じようにねぇ……」

優しく囁くように紡がれた その言葉が、ロングビルの心の弱点に突き刺さる。
すでに冷静な判断力を失っている彼女の恐怖と困惑を黙らせるには、それで十分だった。

「……ところで、ロングビル。これが何か わかるかい?」

と、ユベルは左腕を不気味に変形させて そこから何か四角い物体を取り出した。
それは、様々な絵の描かれた 色とりどりの四角い紙切れの束だった。

「これは……!? あぁ、今の あたしには わかる……これが、あんたの『力』の象徴なんだろ……?」
「ふふふふふっ……そうだよ。これは、この学校の宝物庫にあった デュエルモンスターズのカードだ。
 オスマンは『英雄の宝札』と呼んでいたみたいだけどね」

この亜人は、宝物庫から持ち出したオスマン秘蔵の宝を わざわざ自分に見せつけた。その行為の意味するところは……

「さて、ロングビル。ボクがキミに頼みたいのは、情報収集だよ。
 このハルケギニアに これと同じような『カード』が ほかにも存在しているかどうか、調べてほしいんだ」
「……つまり、あたしに それと同じ物を探して 盗んで来い…と?」
「いいや。もし『カード』についての情報が見つかっても、キミが盗み出す必要は無いよ。キミは、ボクに そのことを教えるだけでいい」
「なるほどね……でも、なぜ 自分で探そうとしない? あんたは、この学院の宝物庫に その『カード』があることを、自分で突き止めたんじゃないのか?」
「……ボクは まだ、このハルケギニアのことを よく知らないからね。キミのような者に手助けしてもらったほうが効率が良いのさ」
「で、その料金が この『力』ってわけか……」

と、ロングビルは すでに人間のソレではなくなった自分の左腕を眺める。
このユベルという亜人は、故郷の「妹」のことを知っている。そして、それが 自分の弱点だということも。
ここで自分が こいつの頼みを拒めば、こいつの邪悪な「力」の矛先が あの子に向けられるかもしれない。
それだけは、なんとしても避けたかった。

「……ハァ。わかったよ。あまり気は進まないが、あんたに協力してやる。
 この『力』があれば、フーケの仕事も 今よりはラクになりそうだし……何か、今まで以上のことができるかもしれないからね」

もちろん、故郷の「妹」たちの身を案じての決定だ。それは間違い無い。
だが、この新たな「力」を 早く貴族どもで試してやりたいという、自分でも信じられない感情があるのも事実だった。

「ふふっ、キミが何をしようと キミの自由だけど……大きな力には 大きな責任が伴うよ、ロングビル」
「ふん、そんなことは 言われなくても わかってるさ……ところで、これ…この手、元に戻せるのかい?」
「さあ? ボクがキミから『力』を抜き取るか……キミが何か それ以上の『力』を手に入れれば、たぶん 元に戻るんじゃないかな。
 もっとも、ボクは 今のところ、キミに その『力』を返してもらうつもりは無いけどね。
 だって、それがあるかぎり キミはボクから逃れられないんだもの」
「……! 初めから それが狙いだったのか……!」

完全に やられた。だが、相手が最初から自分に目を付けていた以上、どう転んでも 結果は同じだったかもしれない。
力づくで従わされるよりは、たとえ形だけでも「協力者」という立場にあるほうが、いくらかマシだ。

「チッ……まあいいさ。こうなったら、覚悟 決めるよ。
 哀れなロングビルは……わたくしは、密偵としての任務を遂行するため、あえて あなたの協力者になった。それで よろしいですね?」
「あぁ、そうだね。それじゃあ『カード』のこと……頼んだよ」
「えぇ、わたくしなら大丈夫ですわ。では 早速、事態の進展をオールド・オスマンに報告してきます」

と、ロングビルは踵を返して去って行こうとする。

「……あぁ、待って、ロングビル。もう1ついいかい?」

足早に学院長室へ向かおうとするロングビルの背中に、ユベルの声が投げかけられる。

「……なんでしょうか?」
「キミは地属性……土系統の魔法使いで、土や岩からゴーレムを作りだす能力を持っているんだろう?」
「えぇ、そうですが……それが?」
「せっかくだから、キミに ボクの持っている2種類の『ゴーレム』を貸してあげるよ。キミはボクの協力者だからね」
「え?」

ロングビルが その言葉の意味を理解できず ポカンとしているあいだに、ユベルは 左腕から2枚のカードを取り出す。
どちらも、オレンジ色の縁取りのカードだ。
一方には 炎のような溶岩のようなゴーレムの絵が、もう一方には 石か金属で出来ていそうな灰色のゴーレムの絵が、それぞれ描かれている。
それを見て、ロングビルも ユベルの言ったことの意味を理解した。

「それを…わたくしに?」
「あぁ……今のキミなら、使い方がわかるハズだ」

ロングビルは、それぞれ別のゴーレムが描かれた2種類のカードを ユベルから受け取る。

「っ!? これは……!?」

その瞬間、ロングビルの頭の中に それらの情報が流れ込んできた。
カードに書いてある文字は読めないが、そのカードの持つ能力や効果が手に取るようにわかる。
ロングビルの額には、ユベルの額…の目の中にあるのと同じ「ミョズニトニルン」のルーンが うっすらと淡く輝いていた。

(面白いじゃないか……! 怪盗フーケの新しい『力』……今夜にでも、早速 試させてもらうとするかねぇ……!)

その日の夜を境に「土くれのフーケは、土のトライアングルではなく、火と土のスクウェアだった!?」という噂が囁かれ始めるようになるのだが、
それはまた別のお話。


新着情報

取得中です。