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萌え萌えゼロ大戦(略)-08



「『アンロック』!」
 ピンクブロンドの落ちこぼれ令嬢が唱えた失敗魔法の爆発、そしてそれに続く使い魔の
ガーゴイルが撃った本塔を貫くほどの銃撃――厳重な『固定化』と『強化』をかけられ、
連日の『錬金』でも太刀打ちできなかった宝物庫の壁があっけなく崩れ、穴が開く。
「なっ……?
 何なのあの魔法、それにあの銃。私でも手に負えない頑丈な宝物庫の壁を破壊するなんて」
 ふがくとロレーヌの決闘が行われている場所から少し離れた物陰で、翠の髪の女が
目の前の現実に驚愕の表情を浮かべていた。
「――何はともあれ、これはチャンスね。あの大きさの穴なら十分通れるわ……」
 ずいぶんと運が向いてきたじゃないか――薄く笑みを浮かべた翠の髪の女、フーケは
全員が状況を理解する前に行動を起こす。『錬金』で30メイルのゴーレムを生成、それに
飛び乗って宝物庫への侵入を果たした。

「――これ、だね?……って、なんだいこりゃ?これが『破壊の杖』なのかい?」
 壁の穴から一直線に続く床の穴に足を取られないように気をつけながら、フーケは宝物庫の
奥に恭しく納められていた重厚な装飾が施された細長い箱を手にする。重さは……何とか
持てるくらい。しかし、確認のために中を改めたフーケは思わず素っ頓狂な声を上げそうに
なった。
「ま、まぁ、いいわ。使い方は解る人間に聞こうかねぇ……」
 フーケはそうつぶやいて壁にいつもの領収書を残す。事を終えてゴーレムに乗り移ったが……
眼下に見下ろす貴族のお嬢ちゃんたちに勝利宣言をしている途中――尾てい骨から
駆け上ってくる悪寒に体を震わせた。

 ――やばい――

 裏家業で命の危険にさらされたことも幾たびか。そのフーケの経験が最大級の警鐘を
鳴らし、それに従ってゴーレムから飛び降りて『フライ』を唱える。それからすぐ……
フーケはゴーレムを襲った大爆発の爆風に体ごと吹き飛ばされた。
「……こんなところで……死ねるかい!」
 木の葉のようにもみくちゃにされながらも何とか体制を立て直すフーケ。それでも
『破壊の杖』の箱を離さなかったのは執念か。
 そうして這々の体で森に逃げ込んだが、その間ずっと誰かに見られているような感覚が
離れなかった。


 『土くれのフーケ』の襲撃の翌朝。トリステイン魔法学院の朝はまるで昨夜の騒動が
なかったかのように、これまでと同様すがすがしいものだった。
「う……うぅん。
 ……昨夜はすっごいことがあったけど、今朝という素晴らしい一日を迎えられたのも、
偉大なる始祖ブリミルと、女王陛下のご加護だわ」
 遠くに小鳥のさえずりが聞こえる朝。開け放たれた窓から柔らかな朝の光が差し込む
部屋でルイズが目覚める。
 部屋の中には彼女しかいない。ふがくは……また多分厨房だろう。この3日間で、
ずいぶん厨房の料理人や使用人たちと仲良くなっているような気がする。

 あのパイン缶を食べた翌日だったか、芋で作った『コロッケ』とかいうクロケットみたいな、
どちらかと言えばロマリア南部の米で作る名物料理アランチーニに似たような揚げ物料理を、
ふがくが『♪今日もコロッケ 明日もコロッケ♪』などと妙な歌を歌いながら作っていたので
半ば無理矢理試食させてもらったが、材料が芋に肉の切れ端を挽いたものと平民に
お似合いなほど貧乏くさい以外は味も悪くなかった。コロッケを食べながら、あのシエスタとか
いった黒髪のメイドが涙をにじませていたのが気にかかるが――夕食に出たクロケットを
揚げた油で作ったものだからまがい物とはいえ貴族の料理に近いものが食べられたことが
うれしかったのだろう。多分。
 さて、とベッドから抜け出してネグリジェを脱ぎ始めたあたりで、鍵をかけているはずの
扉が勢いよく開かれた。

「ルイズ!学院長がお呼びよ!
 先生方もすでに集まってらっしゃるわ」

 真っ先に入ってきたのは褐色肌の女――キュルケ。その後ろにはタバサがまだあくびを
している。鍵のかかっている部屋に許可なく『アンロック』をかけて解錠するのは規律違反
なんだけど……そう思ったのも一瞬。ルイズは予想外の面々のことを聞いて混乱しかけた。
「え……?どうしてわたしたちが?」
「ばれたのよ。昨日のことが」
 キュルケの後ろから現れた、背中の翼と車輪の足が特徴的な自分の使い魔ふがくが言う。
「昨日の夜のことに私たちが絡んでいるのが、よ。まだあのロレーヌとかいう貴族は
目を覚ましてないけど、ルイズに渡した手紙を見せれば原因も知れるわ」
「……貴族同士の決闘は禁じられている。ふがくはこの学院の中だけ准貴族として扱われる
から、そこに接触する可能性もある。
 何より、昨日二人が破壊したのは宝物庫の壁」
 タバサがルイズとふがくに視線を向けた。
「――というわけだから、先に行ってるわよ。あんたも早く着替えてきて」
「ちょ、ちょっと待ってよ!
 わたしだけ遅れていくなんて嫌よ!すぐに準備できるから!」
 そう言ってルイズは大慌てで身支度する――が、その姿はボタンを掛け違えたブラウスに
寝癖のついた髪と、ひどいものだった。
「髪くらい梳かしなさいよー。待っててあげるから」
 そう言ってキュルケは溜息をついた――


「――で、具体的な被害はどの程度だったのかの?ミスタ・コルベール」
 ルイズたちが学院長室に呼び出された後、オスマンはコルベールに昨夜の被害状況を聞いた。
「まず、宝物庫の側壁が崩落。それに宝物庫の床、階下の螺旋階段、階段の側壁と
一直線に複数の貫通跡があります。それ以外には本塔の基礎の石が特定範囲破壊され、
構造が少々不安定になっています。
 宝物庫に格納されていた宝物は奇跡的にも奪われた『破壊の杖』以外に被害はなく、
また無人の時間帯でしたので死傷者もありません」
「ふむ。
 ――つまり、昨夜ミスタ・ロレーヌの挑戦状を受けたミス・ふがくが、ミス・ヴァリエールたちの
立ち会いの下決闘を演じ、その際に撃ち抜いた壁の穴からあの盗人が入り込んだ、と
いうわけじゃな」
 机からルイズたちを見るオスマンの視線は厳しい。
「やはりフーケですわ。壁には犯行声明が刻まれていましたし」
「学院にまで手を出すとは、けしからん」
 シュヴルーズや他の教師たちも次々にフーケへの恨み言を口にする。

「まったく……。
 まさか『固定化』も『強化』も無視して宝物庫の壁が破壊されるとは思わなんだわい。
本塔の基礎まで被害が出るとは。
 それにしても、この千載一遇のチャンスをまんまとものにするとは、フーケとやらは
ずいぶんと悪運が強く、そして大胆な奴じゃのう。
 魔法学院にいるのはほとんどメイジ。その油断もあったじゃろうが、まさか魔法を使う賊に
襲われるとは誰も考えとらんかったからのぅ」
 オスマンはそう言ってふがくを見る。
「……ま、ミス・ふがくの爆撃でゴーレムは破壊されたからの。
 本塔の修繕費は今回の騒動を引き起こしたロレーヌ家とヴァリエール家に請求すると
して……ところで、ミスタ。ミス・ロングビルはどこに行ったのかの?」
「はぁ、それが朝から姿がなく……」
「この非常時に何をしとるんじゃ……」
 オスマンの言葉にルイズが冷や汗をたらし、ロングビルの所在を聞かれたコルベールが
言葉に詰まる。そのとき、学院長室の扉が勢いよく開かれた。
「すみません!遅くなりました」
 扉を開けて息を切らせながら入ってきた、知性的な眼鏡をかけた翠の髪の女、ロングビルは
コルベールに詰問され、遅刻の非礼をわびる。そして、手にしていた書類を改めて持ち直した。
「実は、今朝方からの騒ぎを聞きつけて急いで調査をしておりました。
 その結果……フーケの居場所が判りました」
 その言葉に周辺の教師たちから、おお、と声が漏れる。
「近在の農民に聞き込みをしたところ、近くの森の廃屋に黒ずくめのローブをまとった
不審人物が入っていったそうです」
「……黒ずくめのローブ。フーケだわ……」
 ルイズがつぶやく。ロングビルは言葉を続けた。
「……おそらく、その不審人物がフーケではないかと……」
「ふむ。なるほどの。それは確かに重要な情報じゃ。よくこの短時間にそこまで調べたのぅ」
「では……早速王宮に報告しましょう。
 王宮衛士隊に頼んで兵隊を差し向けてもらわなくては」
「その必要はないわ」
 ロングビルの報告にオスマンがうなずき、シュヴルーズが王宮からの派兵要請を提案した
まさにそのとき――ふがくがそれを却下した。
「どうせ徒歩か馬での移動なら距離は知れてるわ。ミス・タバサのような風竜でも使えば
多少距離は伸びるけど、そういうのは確認できなかったのよね?ミス・ロングビル?」
 そう言ってふがくはロングビルに話を向ける。
「……え、ええ。学院からですと徒歩で半日、馬で4時間というところですわ」
「その程度、私なら10分で行けるわ。ミス・ロングビル、詳しい場所を教えてもらえるかしら?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
 ロングビルに場所を聞こうとするふがくをルイズが止めた。
「……何?」
「わ、わたしも行くわよ。わたしの目の前であんなことをされた以上、黙っていたら貴族の
名折れよ!」
 そう言うルイズの横で、キュルケとタバサがそれぞれの杖を掲げる。
「そういうことなら、わたくしにも責任の一端がありますわ。それに、ヴァリエールに負ける
わけにはいきませんもの」
「わたしも行く……心配だもの」
「……バカな!君たちは生徒だ。危険すぎる」
「それならばミスタ、君が行くかね?
 ……他には誰もおらんのか?フーケを捕らえ、名を上げようとする貴族はおらんのか!」
 コルベールの制止をオスマンが押しとどめ、居並ぶ教師にハッパをかける……が、
オスマンに呼応する者は一人もいなかった。それを確認してから、オスマンは改めて
ルイズたち5人に向き直った。

「トリステイン魔法学院は、諸君らの働きに期待する!」
「杖にかけて!」
 オスマンの言葉にルイズたちの唱和が続いた。


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