あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-07


 石造りの部屋に堆く積まれた、がらくたとしか思えない数々の中で、コルベールはうなっていた。
「……これは……真鍮のようだが、この精度は……信じられない……」
 彼が手にしているのは、ヴェストリの広場で行われた決闘で、ふがくが『ワルキューレ』
撃破に使った機関短銃の薬莢だ。ばらまかれた薬莢は丹念に探すことでそれなりに
見つかったが、弾丸はかなり深く地面にめり込んだか、炸裂してしまったのか、見つから
なかった。
 なお、ボトルネック式の弾薬(カートリッジ)などこのハルケギニアにはほぼ存在しない。
しかも、残った薬莢だけでも真鍮に別の材質でメッキが施され、金色に鈍く光っている。
薬莢底部の中央にあるへこみは、おそらくこの薬莢に込められていた火の秘薬を爆発
させるための起爆装置――小さなハンマーのようなものか?――が打ち付けられた跡
だろう。そして、すべての薬莢が『寸分違わず同じ寸法に』作られている。それは自分が
発明した『鞴で気化させた油を火の魔法で爆発させてクランクを動かす装置』など比べ
ものにならない、そのすべてがコルベールの常識を遙かに超えるものだった。
「トリステイン王国、いやハルケギニアには存在しない『火』と『土』の技術……
 この技術を完全に理解する者が現れたなら……銃の、いや、世界の歴史が変わる……」
 コルベールのまぶたの裏に、かつて見た燃えさかる集落の光景がよみがえる。
 ――もし、あのとき、彼らの誰かがあの銃を持っていたなら――そこに小さな少女が
絶望と憎しみの視線とともにあの銃口を自分に向けている姿が浮かんだところで、
コルベールは思考を停止させる。じっとりと粘り着く脂汗。過ぎ去った忌まわしい過去は、
未だ彼を嘖んでいた――


「これ、いったい何だと思う?ルイズ」
 ギーシュとの決闘から3日後の夜――ふがくは難しい顔をしてルイズに手にしたものを
手渡す。なお、ふがくは腰の横綱でつながれていた背中の翼を外している。外せるとは
思っていなかったルイズは最初こそ驚いたが、それよりもキュルケから聞いた、ふがくの
腕の爆弾を召喚前に用意していた藁に腰を落としたまま壁に寄り添って寝るときも外して
くれないことへの恐怖が上回り、気にならなくなっている。実際どっちもどっち、ではあるのだが……
「……手紙、よね?誰から?」
「さあ?マルトーさんと厨房で料理した帰りに見覚えのないやたらプライドだけ高そうなのから
突きつけられたわ。
 マントの色がルイズと同じだから同級生かもね」
「はあ?どういういきさつよ?
 っていうか、そんな火気厳禁なものつけたまま火を使わないでくれる?」
「いいじゃない別に!
 それにソイツ、いきなり『ガーゴイルの分際で貴族と同列に座るとは不届きな奴』とか
言い出して――頭の中何か沸いてるかと思ったわ。
 あと、私はまだこっちの文字が読めないし……」
 ふがくが困った顔をする。ルイズは手渡された手紙に目を通すと、思わず吹き出した。
「何?」
「……悪いけど、要点だけ意訳して言うわね。
 差出人はヴィリエ・ド・ロレーヌ。風のライン・メイジでわたしの同級生。
 で、これ、果たし状……って言っていいのかしらね?単なる言いがかりつけてるだけにも
読めるけど……まぁ、とにかく、今夜学院本塔外で待つ、だって」
 ルイズは痛むこめかみを押さえている。よほどの内容が書かれていたのだろう。
「ふうん。つまり、ギーシュよりは強いってことね。
 でも……それって……もう始まってない?」
「……そうね。行く?」
 ルイズが全く気乗りしない様子を隠すこともない。
 ロレーヌ家はヴァリエール家には劣るがトリステイン王国の名門貴族に名を連ねる家柄
――ではあるのだが……そこの御曹司の性格ははっきり言って最悪だった。とにかく尊大で
自意識過剰、おまけに選民意識の塊。彼に比べればギーシュなどまだまだ甘い坊やで
しかない。そんな性格だからこそ、学院長であるオスマンから直々にお触れが出ている
状態でもふがくに言いがかりをつけられるのだろう。
「ほっぽってもいいけど……行かないとルイズの立場が不当に悪くなりそうね。
 仕方ないからちゃちゃっと片付けてくるわ」
 ふがくはそう言って立ち上がり、翼を背負う。その支度中にルイズも立ち上がった。
「……別にこなくてもいいのに。学院長と約束したし、自衛以外では傷つけないわよ?」
「今回のは思いっきり『自衛』じゃない!あんたの銃だと……やめた。怖い考えが浮かんだし。
 と、とにかくわたしが見届けるから、絶対殺しちゃ駄目よ!」
 ルイズはふがくの銃の威力を青銅の『ワルキューレ』から人間に置き換えた姿を想像して……
気分が悪くなった。
眉間を撃ち抜かれて首から上を破壊され、手足を撃ち抜かれてそこから先がなくなって……
そこでルイズは思考を強制停止させる。ロレーヌのことを快くは思ってはいないが、
一応は同級生。それが『挽肉よりもひどい』状態になる姿など見た日には、当分肉料理が
食べられなくなるどころか眠れなくなりそうだった。


「……いったいどういうつもりかね?僕を侮辱しているのかい?」
 すでに双月が天空高くに昇った時間。学院本塔の下で待つロレーヌはこめかみを
ひくひくさせながら言う。その様子を全く意に介さず、ふがくが呆れたように言い返す。
「悪いけど、私、まだこの国の文字は読めないの。
 アンタが日本語で書いてくれたら待たせることなく一撃で終わらせてあげられたのに」
「ふっ。無教養の言い訳か。さすが『ゼロのルイズ』の……」
 ロレーヌの言葉をかき消すように、その足下に銃弾が炸裂する。見ると、ふがくがいつの間にか
あの機関短銃を手にしている。その銃口からは煙が立ち上り、その左手のルーンが
刻みつけられた本人の気持ちを代弁するかのように強く輝いていた。
「……ルイズ、悪いけどこれで理由ができちゃったから……つぶすわ」
 その瞳は怒りに燃え上がり、まるで活火山のよう。その噴火を呼び起こした当本人は、
未だ逆鱗に触れたことを自覚できず、まるで『恥』という言葉を知らないかのようにその
サンディブロンドの髪をかき上げ、軽薄な笑みをその顔に張り付かせていた。その様相の中、
ルイズが大慌てでふがくの手を引く。
「ま、待ちなさいよ!
 ミスタ・ロレーヌ、今の言葉、取り消してもらおうかしら?貴方に死なれたらわたしの
夢見が非常に悪くなるの」
「僕はミスタ・グラモンとは違う。ミス・ヴァリエール、君の使い魔ごときに後れを取ることはない」
 そう言って、ロレーヌは『フライ』の魔法を唱え空に舞い上がる。それを追うようにふがくも
背中の6発エンジンを発動させる。
「最初に空を飛んでる生徒ばかり見たからいつかはこうなるって思ったけど……私の動きに
ついてこれるかしら?」
「バカなことを。喰らえ!ラナ・デル・ウィンデ!」
 速度で大幅に上回るふがくに追い越されたロレーヌは、高度を上げた後失速しながら
『エア・ハンマー』の呪文を唱える。不可視の空気の槌が一見見当違いの方向に打ち出され……
ふがくがそこに吸い込まれるように命中した。
「……嘘。あんな速度で飛び回るふがくに当てるなんて」
 ルイズが予想外の展開に驚く中、ロレーヌは地面に激突する寸前に『レビテーション』、
そして再び『フライ』を唱えて空に舞い戻る。『風』のライン・メイジの面目躍如、ロレーヌも
傲慢無礼ではあるが決定的に暗愚というわけでもない。
 先のギーシュとふがくの戦いを見たロレーヌは、『狙って当たらない相手なら動きを
予測してそこに撃てばよい』と考えた。それはふがくのいた世界では『見越し射撃』と
呼ばれ、トリステイン王国でもトリステイン魔法衛士隊、そして風竜隊のような空戦戦力で
用いられる技術。そこにロレーヌは誰に教えられることもなくたどり着き、実践した。
 この戦法に問題があるとすれば――それはドットスペルといえども連続して魔法を使う
必要があるためライン・メイジにとって疲労度が非常に高いことだ。だが、ロレーヌは
その前に相手を倒せると自身の力を過信していた。
「いたた……単なるバカじゃないってことね。
 距離も遠いし……それに失速する前を狙わないと……」
 ふがくは『エア・ハンマー』が命中したおなかをさすりながらつぶやく。失速しながら撃たれた
それは結果的に下からふがくを狙い撃った形になった。しかし、それはふがくにとっては
やっと巡り会えた『一方的ではない空戦』の痛みでもある。
「ふがく、笑ってる?」
「へぇ。ロレーヌも意外とやるじゃない」
「……相手の実力を見極められないのは致命的。でも、あのときよりは成長している」
 ルイズの後ろから声がかかる。振り向くと、そこにはキュルケと寝間着姿のタバサが
立っていた。
「……キュルケ、タバサ。どうしてここに?」
「だって、窓からルイズたちが本塔に歩いて行くのが見えたしねぇ。まさかロレーヌが
相手だとは思わなかったけど」
 キュルケはさっきからロレーヌに対して『ミスタ』の敬称をつけていない。何かあったのだろうか……
それはルイズの考えの及ばないところではあったが、キュルケもそれについてルイズに
説明する気はなかった。
「銃撃の音に気づいたから……
 けれど、彼のあの性格は多分変わることはない。もう一度痛い目を見たら、少しは……」
 タバサの言う『もう一度』とはどういうことだろう?ルイズが知らないところでタバサと
ロレーヌに何かあったのか……多分、タバサの性格では聞いても答えてくれないと思った
ルイズは、視線をふがくに戻す。そこではほとんどの攻撃を躱されながらも時折ふがくに
『エア・ハンマー』を命中させているロレーヌと、『フライ』での飛行中や失速中に狙い撃つも
躱され本塔基部に穴を穿っているふがくの姿があった。一発でも当たればロレーヌの命は
ない。そしてロレーヌの『エア・ハンマー』はふがくの体力をわずかずつ削っていく。
だが、この決闘もついに終焉を迎えようとしていた。
「ラナ・デル・ウィンデ!」
「ちゃんと狙いなさい」
 本塔の壁際に追い詰められたロレーヌが至近距離で『エア・ハンマー』を放つも、ふがくに
易々と躱される。
「しまっ……!」
「私の勝ちよ」
 失速するロレーヌに向かってふがくが銃口を向けたとき――ルイズがそれに割って入った。
「『アンロック』!」
 ルイズが魔法を使う――が、その見当外れな魔法がそのまま効果を現すことはなく、
ロレーヌの後ろの壁に爆発を起こす。その爆風の勢いでロレーヌがふがくの小さな体に
見合わない大きな胸の中に顔を埋め……発射された銃弾は目標を見失ったまま本塔を
反対側まで撃ち抜いた。爆発があった場所の壁が人一人が通れるくらいの穴を開けて
崩落し破片が地面に落ちたことで、ようやくルイズたちは我に返る。

「……嘘」
「……やっちゃったわね。ルイズ……」
「……あそこは宝物庫。最強レベルの『固定化』と『強化』がかけられていた場所……
そこに穴が開くなんて……」

 ルイズたちが現状を何とか認識しようとしているとき、ふがくは空に上がったまま胸に
顔を埋めたまま気を失っているロレーヌを引きはがそうと苦労していた。
 そのとき、空が急に暗くなる。上空にいるふがくは別として、地面にいるルイズたちは
それに気づくのに一瞬遅れた。
 それは全高30メイルはありそうな、土塊の巨人――ゴーレムだった。ゴーレムは
穴の開いた宝物庫に誰かを送り込むと、上空にいるふがくに拳を振り上げる。ロレーヌを
かばってまともに狙いをつけられないふがくは、ゴーレムの手の届かない高度まで上昇
するしかなかった。
「あはははは!」
 それは女の高笑い。ルイズが声の方向を見上げると、そこにはゴーレムの肩に乗り
ローブのフードを目深にかぶった女が重厚な装飾を施された細長い箱を抱えている。
「まさかこんな形で手に入れられるとは思ってなかったわ。あなたたちが壁に穴を開けて
くれたおかげよ。
 どうもありがと」
 ゴーレムを見上げるルイズたち。その高度では自分たちにできることはない。高らかに
勝利宣言する女――いや、彼女こそ市井の噂に名高い盗賊『土くれのフーケ』!
「『破壊の杖』、確かにいただい……!」
 勝利宣言の途中、フーケは猛烈な悪寒を感じた。やばい――盗賊の本能でフーケは
ゴーレムから飛び降りる。そこに、上空から黒い塊が落ちてきた。
 ゴーレムの上半身が大爆発を起こす。タバサの魔法で守られたルイズたちをも
巻き込んだ爆風が消えた後、ゴーレムは二本の足を膝から下を残すのみの姿となっていた。
やがてそれも崩れ、ただ焼け焦げた土の山が残るだけとなった。

「逃げられた……?」
 上空から精密爆撃を行ったふがくが唇をかむ。その視線は学院の外、森の中へと
向けられていた。

「――な……いったい何が……どうなってるのよーーっ!」
 そして、未だ状況を理解できていないルイズの叫びが夜の学院に響き渡った――


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