あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-04


「……いいだろう。ヴェストリの広場で決闘だ!」
 黄金色に輝く青銅のバラの造花の杖を掲げて高らかに宣言するギーシュ。その様子に
ふがくの横にいる黒髪のメイドはおろおろとふがくとギーシュの間に視線を行き来させる。
本来ならばこの責めを受けているのは自分のはずなのだ。そんなメイドの視線を受けても、
その小さな体に不釣り合いなほど大きな胸を張り、ふがくはいささかも自信を失わない。
「いいわ。教育してあげる。この私、ふがくの辞書に『敗北』という言葉は載ってないのよ!」


「……うーむ。大変なことになってしまったのう……」
「よろしいのですか?『眠りの鐘』で止めた方が……」
 ふがくとギーシュが決闘を決めたまさにそのとき。舞台であるアルヴィーズの食堂の様子を
『遠見の鏡』に映して思案している二人の男がいた。オールド・オスマンとコルベールである。
「子供のケンカに大切な『秘宝』を使う必要もないじゃろう?アホらしいわい」
「あの……ですが……ふがく君の能力は未知数です。空を飛べるだけでなく、どれほどの
攻撃能力を持っているのか……ミスタ・グラモンの怪我、では済まないかもしれませんぞ?」
「なーにを言うかね。ミスタ・コルベール……わからんのかね?」
 そう言ってオスマンは目を細める。
「『だから』止めるな――と言っておるのじゃぞ」
「!」
 コルベールはその言葉の裏に隠された真意に気づいた。さすがに伝説と呼ばれるメイジ、
老獪である、と。
「この学院には厳重な『固定化』と『硬化』がかけられておる。そう簡単にどうにかなるもの
ではないわい。
 それに――もしミス・ヴァリエールが召喚したガーゴイルが伝説の『ガンダールヴ』だと
いうのなら、それが確認できるよい機会ではないか。このケンカ、見物じゃのう」
 はぁ、としかコルベールには言葉が継げなかった。


「な、何やってるのよあんたは!いきなりいなくなったと思ったら……主人に断りなく勝手な
ことをしないでよね!」
 ギーシュとふがくの間にルイズが割り込む。状況を飲み込むまで時間がかかったのだろう。
そのルイズをふがくは涼しい顔で迎える。
「あらルイズ」
「『あらルイズ』じゃないわよ!早くギーシュに謝りなさい」
「い・や・よ。私は悪くないもの」
「おーやおや……主人が恥を忍んで止めに入ってくれたんだ。今なら君の謝罪を受け入れるよ」
 ギーシュが前髪をかき上げふっと笑う。
「冗談きついわね。アンタこそ、遺書はもう書いてあるのかしら?」
 ギーシュの眉がぴくぴくと動く。こみ上げる怒りを抑えきれないのは明白だ。
「……先に行ってるぞ!あまり僕を待たせないでくれよ!」
 ギーシュが友人を連れてアルヴィーズの食堂を後にする。その後ろ姿を見て、ルイズが
ふがくを問い詰める。
「……どうしてよ。何でそんなにむきになるのよ!」
「私だけだったらここで一発はたいて終わらせたわよ。でも、アイツはルイズもバカにした。
 アイツに勝って汚名返上するわよ。絶対に。ここで私がアイツに完全勝利すれば、
もう誰もバカにはしなくなるわ。させてやるものですか」
「ふがく……」
 ルイズは気づく。ふがくは自分のために決闘を受けたのだと。だからこそ、これだけは
言いたかった。
「わかったわ。だけど、一つだけ約束しなさい。ギーシュは絶対に殺さないって」
「……私が超重爆撃機型鋼の乙女だって解ってるのかしら?一撃で広場ごと吹っ飛ばして
やろうと思ったのに」
「それは絶対に止めて。わたしが学院にいられなくなるから」
「冗談よ。解ってるから。そんなこと。それより『ヴェストリの広場』へ案内して」
 そう言ってふがくはルイズに案内されてヴェストリの広場へと向かった――


「あらルイズ。止めないの?」
「……禁止されているのは貴族同士の決闘。ガーゴイル相手では問題なし」
 トリステイン魔法学院の西側にあるヴェストリの広場はふがくの登場を待つ生徒たちで
あふれていた。娯楽の乏しい寮生活なので解らなくはないが、それよりも『ゼロのルイズ』が
呼び出した使い魔との決闘ということで集まった人間も多い。そこに現れたルイズたちを
待っていたのは、キュルケとタバサだった。
「キュルケ、それに……」
「……タバサ」
「あ、ごめん。タバサ。確かにふがくは貴族じゃないって言うけれど……」
 そこに金髪ドリル髪の少女――モンモランシーが駆け寄る。
「ちょっとルイズ!使い魔に止めるよう命令して!」
「モンモランシー……残念だけど無理。とりあえず殺さないようには命じておいたから」
「殺さないように……って……どういうこと?」
「最初は広場ごと一撃で吹っ飛ばす、って言ったのよ。ふがく。『チョウジュウバクゲキキガタ
ハガネノオトメ』だからって。とりあえずそれだけは止めたから」
「はぁ?何それ?どんな魔法を使うのよ?」
「さあ?始まるわよ」
 ルイズがそう言って視線をふがくに向ける。そこでは相変わらず気障な仕草で立つ
ギーシュと、すでに翼も広げ右手に最初に召喚されたときに見た金属と木を組み合わせた
杖を持ったふがくが対峙していた。
「逃げずに来たことはほめてやろう」
「能書きはいいわ。けれど、最初に一つだけ忠告させてもらうわ」
 そう言ってふがくはギーシュではなく周りに目を向ける。
「アンタたち全員、そこから1リーグ離れて伏せてなさい。巻き込まれて死にたくなかったらね」
 広場にいたほぼ全員、一瞬、それが誰に向けて言われたことなのか理解できないでいた。
そして理解できてからはその荒唐無稽さに嘲笑した。明らかな嘲りもある。
「そんなに僕にやられる姿を見せたくないのかい?」
 ギーシュも嘲る一人だ。ふがくを哀れなものでも見るような視線で見下ろしている。
「違うわよ。ここまでバカばっかりだとは思ってなかったけどね。しょうがないわ。
 そのままつきあうっていうならそうするといいわ。私は忠告したし」
「気は済んだかい?それならば……僕はメイジだからね。魔法で戦わせてもらうよ!
 出でよ!青銅のゴーレム『ワルキューレ』!」
 ギーシュが手にした黄金色の青銅のバラの杖を振るう。杖から1枚の花弁が地に落ち、
それがギーシュの呼びかけに応じてたちまち鎧をまとった女戦士の像に姿を変えた。
「僕の二つ名は『青銅』。『青銅のギーシュ』。君の相手はこの『ワルキューレ』がするよ」
「へぇ。結構やるわね。それなら、私は超重爆撃機型鋼の乙女らしく戦わせてもらうわ」
 そう言って空に舞い上がるふがく。背中の6発のエンジン音を響かせ、たちまち学院本塔より
高い位置まで駆け上がる。

「……うわ。やっぱり速いわね。フガク」
「ギーシュの『ワルキューレ』は対空戦闘を考慮されていない。フガクを甘く見て武器も
持たせていない」
「顔見せだけで降参するような相手とは思えないのにねぇ」
 キュルケ、タバサ、モンモランシー、そしてルイズの4人は近くの塔の屋根まで『フライ』で
昇っていた。ふがくの忠告を聞いたためであり、また『フライ』が使えないルイズはキュルケが
抱えて上がった。それについてルイズは文句を言おうとして、言える立場じゃないことに
気づき内心歯噛みした。
「ちょっとキュルケ、タバサ。どうしてそんなに落ち着いてるのよ。ルイズも、あの使い魔が
何する気なのか分かっているの?」
「モンモランシーも落ち着いたら?
 まぁ、さっき移動中にハルケギニアの単位を聞いてきたから何をするのかと思ったけど。
ふがくの国の単位とこっちの単位は違うようね」
「……ちょっとルイズ。あぁ、ギーシュったら。あっさり負けたら許さないんだから」
 地上でそのようなやりとりが行われているとき、ふがくは自分自身の動きに驚いていた。
(何よこれ?確かに私は戦闘開始からしばらくはぶっ飛ばせるけど……この体のキレ、
いったいどうなってんのよ?)
 そう。ふがくは今自分が勢いよく駆け上った動きに驚いていた。確かにふがくの最高速度は
389knot、つまり時速換算で720km/h。だが、今はそこまでは出していないにもかかわらず
その動きは機敏で優速。それでいて制御は失わず、むしろ思い描いたとおりに飛べている。
ふがくは左手のルーンが飛び立った瞬間から光っていることに、まだ気づいていなかった。
「さぁて、どうしようかな……ルイズと約束したし、こんなのお遊びみたいなものだし、
脅かすだけで終わらせられたらいいけど……」
 そう言ってふがくは自分の懐を探る。そこはふがくの場合爆弾倉になっている。……明らかに
そこには入らないような巨大な爆弾や魚雷も納められているのだが、ふがくはその原理までは
知らない。以前疑問に思ったことはあった。それで母親のようにお世話になっていた空母型
鋼の乙女、あかぎに尋ねたこともあったのだが……「女の子には不思議なところがいっぱい
あるのよ~♪」で終わっていたような記憶がある。
 ふと、ふがくの指にあるものが触れる。触れたとたん、その情報がふがくの頭の中に
流れ込んでくる。
「な、なんで私こんなの持ってるのよ?それに何これ?……けど、これならいけそうね」
 ふがくはそう言って地面にいる青銅の『ワルキューレ』を見下ろす。その、猛禽が獲物を
捕らえるような視線すら、今までより鮮明、かつ精密だ。
 ふがくが『それ』を投げたとき、誰もそれがなんなのか理解できていなかった。それは
砲弾のようでもあったのだが、球ではなく、大きな豆のような長細い形に尻尾に羽のような
板のついたものと、ルイズやギーシュ、そしてこの様子を『遠見の鏡』で見ているオスマンや
コルベールにとっても見たことのない形をしていた。

 金属の塊が柔らかい金属の箱を押しつぶすような音がした。そして何か液体がぶちまけられる音も。
『それ』は『ワルキューレ』の頭を押しつぶしてそのまま押し倒し、地面に真っ赤な塗料を
ぶちまけていた。見方によってはまるで『ワルキューレ』が頭を割られて血を流しているようにも見える。
「たいしたことないわね」
 ふがくが言う。ヴェストリの広場は静まりかえっていた。最初にその硬直から逃れたのは、
対戦者のギーシュ本人。
「……な、なんだ?今のは」
 ギーシュは今の一撃が自分を狙っていなかったことを始祖に感謝した。そして蒼白に
なった顔を何とかごまかして上を見上げる。
「爆撃演習弾よ」
「ば、ばくげき?」
「訓練で使う模擬爆弾――アンタにも分かりやすく言うと鉄の樽に爆薬の代わりに塗料を
詰めたもの。味方の艦や施設で訓練するのにいちいち本物使ってたらどうしようもないから、
とりあえず当たったことを確認するためのものよ。
 本当はもっと高々度から落とすけど、誤爆したくないし」
 再度沈黙する一同。次に我に返ったのはモンモランシー。モンモランシーは全力でルイズの
首根っこをつかんでかくんかくんと前後に振り始める。
「ルイズ!今すぐ使い魔を止めて!ギーシュの頭が割れちゃう!」
「ちょっと!モンモランシー?」
 キュルケがそれを止めようとするが、モンモランシーは聞く耳を持たない。
「ルイズ!聞いてるの!?」
「モンモランシー!」
 キュルケがモンモランシーの腕をつかむ。ルイズは……といえば、思い切り頭をシェイク
されて目を回していた。
「……これでは無理」
「そ、そんなぁ……ギーシュ?」
 タバサが冷静にルイズの様子を見る。その言葉にモンモランシーは屋根の上でがっくりと
膝を落とした。広場でも生徒たちが当事者のギーシュを残して我先に逃げ出している。
 その混乱の中、ギーシュは青銅のバラの杖から6体の『ワルキューレ』を作り出す。
今度の『ワルキューレ』たちはそれぞれ投げ槍や盾を持っている。ギーシュの目は、
まだ諦めてはいなかった。それが震える膝を隠しきれないでいたとしても。
「ぼ、僕はまだ負けてはいない!
 我がグラモン家の家訓には『命を惜しむな名を惜しめ』とある。君が言ったようにたとえ
敵わずとも、僕の、そして何より傷ついた二人の淑女(レディ)の名誉のため、最後まで
戦い抜く!」
「……ギーシュ……」
 モンモランシーのその様子を見て、キュルケは「なるほどね」とつぶやく。そして上を
見ると……ふがくがその小さな肩を震わせていた――ように見えた。
「……こ……この……バカァ!」
 ふがくがその手にした金属と木の杖――機関短銃――を構える。エンジン音も高らかに
高度を落とし、ルイズたちがいる塔の屋根より低い位置から、ハルケギニアでは聞いたことも
ないような金属音の連続発射音を響かせて『ワルキューレ』を1体ずつ、誤射も流れ弾も
ないように斜め上から撃ち抜いていく。青銅の盾では連射される銃弾は防げず、
またふがくの速度と機動に『ワルキューレ』の投げる投げ槍も難なく躱され――背中の
6発のエンジン音が響く中キュキュッ!とふがくの足の車輪が地面をこする音がしたときには、
ふがくはギーシュの目の前で銃を構えていた。
「……命はね、かけがえのない、たった一つの奇跡なのよ!それを……アンタ何考えてんのよ!」
「…………僕にだって譲れないものはある!それでも――今回は、僕の負けだ」
 ふがくの怒りの視線から目をそらさず、わき上がる恐怖を必死に隠し――そう言って
ギーシュは花弁のなくなった青銅のバラの杖を地面に落とす。それが決闘の終わりの合図。
そしてふがくが銃をおろした瞬間に左手のルーンの輝きも消えたが、それに気づいたものは
いなかった。

「ギーシュ!」
 屋根から降りたルイズたちから、モンモランシーが真っ先にギーシュに駆け寄る。
ルイズは何とか回復したが、まだ地に足がおぼつかない様子。それでももつれる足で
ルイズはふがくに駆け寄った――
「オ……オールド・オスマン?」
「う、うぅーむ。なんちゅう強さじゃ。あんなガーゴイルを造り出せる国が近くになかったことに
感謝せねばならんのぉ。
 あんなものが大挙して襲ってきたら今頃ハルケギニアは焼け野原じゃ」
 決闘の様子の一部始終を見ていたオスマンとコルベール。ギーシュ・ド・グラモンが
最下級のドットメイジだといえ、それが全くといっていいほど歯が立たなかった現実に、
苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
「召喚されたときに『ディテクト・マジック』で確かめましたが……」
「反応はなかった、ということか」
 対策済みで感知できなかっただけかも――という考えを、二人ともあえて口にしなかった。
「それより――このことを王宮に報告……」
「ならん!その必要はまだない!」
 コルベールの言葉をオスマンが握りつぶす。
「あの様子では『ガンダールヴ』なのか、それともガーゴイル本体の性能なのか判別がつかん。
 仮に『ガンダールヴ』だとしても、何故ミス・ヴァリエールの使い魔が『ガンダールヴ』に
なったのか、その理由が全くの謎じゃ」
 オスマンは本塔最上階の窓から空を見る。空は青々と澄み渡っている。戦禍の炎に
焼かれることのない澄み切った空だ。
「始祖ブリミルが用いたといわれる、伝説の使い魔『ガンダールヴ』――その強さはあらゆる
武器を使いこなし千の大軍をも一人で退ける、というが……だからこそ、この件は内密に
したいのじゃ。
 のぅ、ミスタ・コルベール。冷静になって考えてみなさい。
 王宮のボンクラどもに伝説の『ガンダールヴ』かそれに匹敵するような使い魔と
その主人を渡したりしたらどうなると思う?
 宮廷で暇をもてあます戦好きの連中が何をするか、分からん訳ではなかろう?」
「……」
「この件はワシが預かる。他言は無用じゃ」
「は……はい!」
 オスマンの言葉にコルベールが応じる。

 二人は知らなかった。学院長室の扉が少しだけ開かれ、それで中の様子に聞き耳を
立てていた女がいたことを。女は話の内容に満足すると薄く笑みを浮かべ――扉を閉めて
足音も立てずその場から去った。



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