あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-41


「・・・・・・重畳」
ウォルターはトリステイン魔法学院の遥か上空で呟いた。
タバサから、任務受諾と決行日付及び時間の連絡があり、こうしてやって来た。
多少の下見と下調べをしていたとは言え、ここまでスムーズに来れるとは・・・・・・。

(未だに戦勝気分でボケてんのかな?)
無断でトリステイン国内に侵入し"これ"を運んでいる以上、ラッキーではある。
余計な戦闘をしなくていいのは、素直に助かる。

 領内侵入の都合上、夜というのは固定であった。
昼間じゃ簡単に見つかってしまう。あまり派手にやり過ぎると、任務にも支障が出る。
アーカードが最も力を発揮する夜は、正直お断りだったが・・・・・・しょうがない。

 ウォルターは魔法学院を鳥瞰する。
タバサはちゃんと任務を遂行しているだろうか。
任務を受けたと見せ掛けて実は裏切っている、という可能性も無きにしも非ず。

 尤も"これ"があるのなら、例えそんなことになっても大丈夫だろう。
それならそれで、"これ"のいい実験ケースになる。
――――――を相手にしても大丈夫だったし、夜のアーカードも多分イケるだろう。


 ウォルターは視線を移すと、無数のガーゴイルに吊り上げられた"それ"を見つめる。
改めて思う、自分に刻まれた『ミョズニトニルン』のルーンは凄い。
(まるでロボットだもんなぁ・・・・・・)
"それ"に限らず、あらゆる魔道具を意のままに操る凶悪な能力。

 この世界に溢れる魔道具は非常に便利なものが多い。
そしてこの"ヨルムンガント"のような兵器も作れる。
地球の現代科学が上回るのも相当数あるけれども、同時に代替出来ない物も多い。
  (特に自律人形系なんかは真似出来ないね)
ガーゴイルやスキルニルのような、精巧な人型の精度は目を見張るものがある。
他にも特殊な魔法効果を持つ魔道具が色々あるし、対応力はピカイチだ。

 とってもすごく便利な力だ。
魔道具をふんだんに使えば、アーカードに勝てる可能性はグンと上がる。
が、やはり自分の力だけで勝ちたいという願望があるので、対決の時は自粛するが・・・・・・。

(でも向こうも何かしらのルーンが刻まれてるんだよねぇ・・・・・・)
『ガンダールヴ』だとか、『ヴィンダールヴ』だとか。
自分同様、何かしらのルーンが刻まれている筈。

 尤も、向こうがその力を使ってくるのなら、その時はこっちも使うだけだ。


(・・・・・・にしても、こんなに警備薄くていいもんかね)
心配する義理もないし、こちらにとっても好都合なのだが。
学院は一度襲われた筈だ、クロムウェルが雇った部隊に。
だのにも拘らず、こんなにもあっさり行けるとは些か・・・・・・いや、あまりに拍子抜けである。
尤も時間も大分経っているし、別に戦時中というわけでもないからそれも仕方ないのかも知れない。

(流石にロマリアは、こうまで楽勝にはいかないよなぁ・・・・・・)
アルビオンの森のハーフエルフや、トリステインの魔法学院の一生徒とは比べ物にならない。
ロマリア教皇ともなれば、居る場所もその警備も尋常ではないだろう。
こんな"デカブツ"が、ロマリア領内に侵入するのを易々と許すとは思えない。

「さてっと・・・・・・」
上空でぼーっとしていても仕方が無い。とりあえずは一人で降りて確認する。
"これ"を一度降ろせば、また回収するのが面倒だし、相応に大きな騒ぎになる。


(それに・・・・・・)
『虚無』にだけは注意するようにと、ビダーシャルは言っていた。
強力な先住魔法に対しても、虚無だけは対抗出来るらしかった。

 だから闘わずに済むならそれに越したことはない。
虚無の担い手たるルイズと、アーカードを同時に相手するリスクを負うことはない。
アーカードとは、ルイズを攫ってから然るべき場所で闘えばいい。

 浮遊感を味わいながら、ウォルターは一直線に落ちていく。
結構な加速度がついたところで、難なく学院の塔に糸を引っ掛け急制動を掛けた。

(えっと確か・・・・・・)
予め調べ聞いていたルイズの部屋の位置を確認する。
都合良く部屋の窓は開いていた。ウォルターはそれが自分を誘い込む罠かどうかを考える。

 学院には他の大勢の人の気配で溢れていた。張り詰めている様子は全くない。
周囲の被害を無視して暴れるとは思えないので、部屋で待ち構えていることはなさそうである。

(杞憂だったかな・・・・・・タバサは任務をしっかり果たしてるのかも)

 ウォルターはそう確信すると、ルイズの部屋へと躊躇する事無く飛び込んだ。


「久し振り、ミス・ヴァリエール」
「・・・・・・ウォルター・・・さん?」

 窓からの突然の来訪者は、アルビオンで会った青年であった。
アーカードの世界の住人、ガリア王の使い魔で執事。

 地上から自分の部屋まで何メイルあるのか。
高さなど関係ないかのように忍び込んできたのだった。  
 ウォルターは軽く部屋を見渡し、アーカードの不在を確認したところで口を開く。
「突然の訪問、失礼。少し話したい事があるんだけどいいかな?」
「でもアーカードは今いないわよ?」

 アーカードは「所用がある」とか言って、少し前に外へ出て行ったのだった。
何故だか、デルフリンガーを持っていったのが・・・・・・ちょっと気になったが。

「あぁ、君と話したかったんだ。だから大丈夫。それにアーカードはいない方が都合がいい」


 ルイズは首を傾げる。
アーカードはいない方が都合が良いということは・・・・・・。
つまるところ、私だけに話したいって事がある、ということか。

「アーカードには聞かれたくないことなの?」
「ん?・・・・・・う~ん、まぁそうだね。他人には見られたくないし、聞かれたくないかな」
ますます疑問符が浮かぶ。会って間もないのに、秘密の話とは・・・・・・。

「とりあえず外で話そっか、とても綺麗な・・・・・・いい月夜だし」


 ウォルターに促され、窓から外へと出るハメになった。
ルイズをお姫様抱っこする形で、ウォルターは悠々と華麗に着地する。
少し気恥ずかしかったが・・・・・・まぁよしとする。

「ルイズでいいわよ」
「僕も、ウォルターでいいよ」
ルイズもウォルターも、何となく他人行儀なのが合わないと感じた。
ウォルターが歩き出し、ルイズもそれに続く。二人は月夜の空を並んで歩く。


(・・・・・・順調だなぁ)
アーカードは不在。タバサが上手く誘導してくれているのだろう。

 時間的な余裕を前にして、ウォルターは少しだけルイズと話をしたくなった。
アーカードの認める、アーカードの新たな主人。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと。

「それにしても・・・・・・いきなり部屋にやって来るなんて、どうかと思うわよ」
「あぁ、ごめん。ちょっと訳有りでさ」
「訳有り?まさか・・・・・・不法入国とかじゃないわよね?」
「大丈夫大丈夫」

(なんせバレたところで力尽くで捻じ伏せられるからね・・・・・・)

 一見して他愛のない会話が続く。
少ししてウォルターは立ち止まり、夜空を見上げる。
ルイズもそれにつられて、同じように雲一つない夜空を見上げた。

「ほんと今夜はいい月夜だねぇ・・・・・・」
「そうね」
「僕の世界じゃ、月は一つしか無いんだ」
「そうらしいわね・・・・・・アーカードも言ってたわ」
それから二人は黙って、浮かぶ双月を見つめる。


 暫くして、ウォルターは視線をルイズへと移す。
それに気付いたルイズも、ウォルターと視線を交わし合う。

「ルイズ、僕はね・・・・・・アーカードと闘いたいんだ」
「・・・・・・うん」
 アルビオンでウォルターが叫んだ、アーカードへの宣戦布告。
勿論それは、傍にいたルイズも一緒に聞いていた。

「でないとね、前へ進めないんだ僕は・・・・・・。あいつに勝つまで、前に進めない」
ウォルターは続ける。ルイズは口を挟まず、静かにそれを聞く。

「所詮この世は、修羅の巷の一夜の夢だ。一睡、一酔、死神の一夢の残骸。
 だから裏切った。身も心も死神になった。命を・・・・・・全てを、賭けた。そして負けた。
 本当ならその後に死んだ筈だった。でも何の因果か、今はこっちでこうして生きている。
 だから僕は・・・・・・また全てを賭けようと思う。そうしないと一歩も進めないから。
 ねぇ、ルイズ。君は・・・・・・命よりも大事なもの、己の命すら賭けられるものはあるかい?」

 ウォルターは軽い雰囲気で言ったが、ルイズはその裏にある真剣な想いを敏感に汲み取る。
だからこそ茶化したりはしない。はぐらかしたり、誤魔化すようなこともしない。
その問いに関して、本気で考え、全力で答える。


「矜持よ」

 貴族としてのプライド。私が私である事の誇り。

「昔・・・・・・私は私が嫌いだった。落ちこぼれで、何をやっても失敗ばかりで・・・・・・。
 努力しても努力しても、一向に魔法は上達しない。重圧に苛まれる毎日だった。
 小さい頃から、自己嫌悪をしない日なんて無かった。何もかもを疎んだわ。
 けれど今は違う。私は私を好きになれた。今は私が私である事に、確固たる自信がある。
 それを踏みにじられる事は、私という存在の否定。私の命を踏みにじられる事と同義なの」

 真っ直ぐ嘘の無い視線と、その言葉に、ウォルターは目を瞑ると穏やかな笑みを浮かべた。

「いい答えだ」
アーカードに相応しき主。気高き人間の姿がここにある。
ウォルターの顔から、浮かんていた笑みが消える。
(遠慮はいらないね・・・・・・)
この少女は――――――間違いなくアーカードの主だ。

「・・・・・・ルイズ、僕は今から君を攫う」
「へっ?」
ウォルターはルイズを見つめながら近付いていく。


 てっきりルイズは身構えるかと思いきや、その反応は全く違ったものだった。

「えっと・・・・・・あの・・・・・・ち・・・ちょっと待って、ウォルター。その・・・気持ちはありがたいのだけど・・・・・。
 でも・・・ほらっ私達はまだ会って間もないし・・・・・・。いやいや、時間なんて関係ないって事はわかってる!!
 けど・・・・・・物事には順序ってモノがあるでしょ・・・、そういうのはお互いをよく知ってからだと思うの。
 後から知ればいい、って人もいるけど・・・・・・私は違くて・・・何て言ったらいいのかな、育んでこその愛だと思うの。
 ・・・・・・あっ!別にあなたを気に入らないとか、そういうわけじゃないから!!そこは勘違いしないでね。
 それにその・・・・・・贔屓目無しに、あなたはかっこいいとも・・思うし。いきなり押し掛けてきた情熱も買うわ。
 強引なのが嫌いってわけじゃないのよ、私としても時にはそうやって迫られたいって思うこともあるし・・・・・・。
 でもね、私ってちょっとそういうのにトラウマって言うか・・・・・・前にも似たような事があって――――――」

「ッッ!?ちょっとストップ!!」

 声のトーンを上げ下げして。
身振り手振りで説明するかのように両手を振って。
見当違いの事を少しずつ流暢になりながら。
早口で捲くし立てるようにペラペラと喋り止まらないルイズ。

 ウォルターは暫しの間、その全く予想だにしなかったリアクションに呆気に取られていた。
が、我に返ってその内容を察するとすぐさまそれを制した。
何をどう勘違いしたのか、ルイズはウォルターが懸想していると思い込んでいるようだった。  

「・・・・・・え?わかってくれた?」
「何か齟齬があったかなぁ・・・・・・。別に僕は君に見惚れたわけでも、プロポーズしたわけでもないよ」

 二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
「えっと・・・・・・」
ルイズの顔が、たちまち茹だったタコように真っ赤に染まる。

「~~~~~ッッッ!!!」
ルイズは声にならない声を上げる。早とちりし過ぎた。
いきなり見つめられて、変に距離を詰められて。ワルドを思い出してしまった。
そんなワルドと言う前例から、ウォルターの言葉を曲解してしまった。
私だけに話したいこと・・・・・・。アーカードがいないのが都合が良いこと・・・・・・。
部屋に来た時にウォルターが言っていたその二点を背景に、おかしな解釈をしてしまった。
一人で勝手に妄想して、暴走して、酷く恥ずかしい思い違いをしてしまっていた。


「んっ・・・・・・と、ごめんなさい。今のは忘れてくれるとありがたい・・・・・・です」
急にしおらしくなったルイズはそう言った。
「クスッ」と小さく笑うウォルターの顔を見るのが恥ずかしくなり、ルイズは顔を下に向ける。

(馬鹿だ私・・・・・・本っっっ当に恥ずかしい・・・・・・)

 そこでルイズははたと気付いて、顔を上げる。
「??じゃぁ・・・・・・攫うってどういう意味?」

 ルイズがそう訊ねた瞬間、シュルシュルと糸が絡まり動けなくなる。
「こういうこと」
「なっ・・・・・・!!?」
ウォルターの手から伸びた糸がルイズを雁字搦めにしていた。

「僕も手段を選んでられないんでね、悪いけどアーカードと戦う為に利用させてもらう」

 その言葉に、ルイズはすぐに思考を切り替える。
「・・・・・・敵と認識していいのね、ウォルター」
ルイズの問いに、ウォルターは「あぁ」と頷いた。


 次いでウォルターの額のルーンが光ると、二体のガーゴイルが空から現れる。
ルイズは糸に巻かれれながらも、器用に太股のベルトにさしてあった杖を引き抜いていた。

 悠長にエクスプロージョンを詠唱している暇はない。真下の土を錬金する。
失敗魔法が、自分と糸とウォルターとを巻き込んで爆発を起こした。
ルイズは煤けながらも、必死に糸を振り解こうと体を動かす。
しかし糸は思いのほか頑丈で、微塵にも切れる気配が無い。

 ウォルターは怯むこともなく、ゴホンと咳払いを一回だけすると腕を振り上げた。
ルイズはそのまま空中へと勢いよく投げ出され、糸から開放される。
しかし次の瞬間には、二体のガーゴイルにそれぞれ両腕を掴まれた。
さらにウォルターは糸を解く時に、ルイズの杖だけを器用に奪い取っていた。

「残念」
ウォルターはそのまま杖を地面へと捨てる。


「くっ・・・・・・」
ルイズはガーゴイルの手から逃れようと暴れる。
杖がないから魔法で吹き飛ばすことは出来ない。
高度的にこのまま落ちればタダでは済まないだろう。
杖があったとしても、『浮遊』や『飛行』の使えない自分には危険な高さ。
だがそれでも、このまま捕まるよりはマシだった。

「ただの女の子の力で、振り解けるものじゃないよ。杖もないメイジに出来ることはない」
それでもルイズはどうにかこうにかしようと暴れ続ける。

 躯のバネを利用し、ガーゴイルに蹴りを入れようするも当たらない。
サーベルは部屋に置いてきてしまった。
尤も、あったとしても腕を掴まれてる状態では、どうしようもない。

「大人しくしてもらえると、こっちとしてもありがたいんだけどなあ。
 変に怪我でもされたら困るし、そんなことになったら後々アーカードが恐いしね。
 ルイズ、今の君に出来ることは何もない。・・・・・・だからさっさと諦めてくれないかな」

 その言葉に、ルイズはウォルターを睨みつける。

「言った筈よ、私にとって大切なものは『矜持』だと!!諦めればそれは私じゃなくなるのよ!!」

 諦めを踏破する・・・・・・か。
つくづくアーカードの主人だなとウォルターは笑う。


「さすがは我が主、それでこそ仕えるに値する」

 静かな夜に響き通る芯の通ったその声に、ウォルターは振り向く。
微笑みかける、幼い少女の姿がそこにあった。
それに呼応するかのように、ウォルターの顔にも同じように笑みが浮かぶ。

 アーカード、人間の様な化物。最凶の吸血鬼が、そこにいた。



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