あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

攻撃力0の使い魔-03


(ここ…どこ……? 寒い…苦しい…何も見えない…何も聞こえない……)

ルイズは、凍てつくような寒さの 真っ暗な闇の中にいた。
全身に力が入らない。
まるで重さが無くなったかのように 体が軽い。
にも かかわらず、開放感は いっさい無い。
むしろ、あまりの閉塞感に 気持ち悪くて吐きそうになる。
とにかく寒い、苦しい。何より……寂しい。心細い。

(どうして……? こんなに好きなのに……なんで こんな仕打ちを……)

心の中で誰かに呼びかける。
自分がこんな苦痛を味わう原因を作った、その誰かに。
それが誰かはわからないが、ルイズは その人物のことを知っているような気がした。
その人物のことを思うと、胸が苦しくなる。たまらなく愛おしくなる。

……どのくらいの時間が流れただろう。未だ、ルイズの苦しみは続いていた。
そして……彼女は気づいた。

(そっ…か……そうよ……わたしは…苦しんでるかぎり…絶対 あなたを忘れない……
 だから…わたしに こんな苦しみを……そうなんでしょ……?)

その結論を手にして、ルイズは たまらなく嬉しくなった。
その発見に、胸が熱くなる。
心が、熱く焼けただれて、吐き気がするほど嬉しかった。

ある時……突然、世界が揺れた。
ルイズの知覚できる範囲…世界が、何かに引き寄せられている。
引き寄せる力が強くなり、体も どんどん重くなっていく。
世界が激しく揺れ、赤熱した光で視界が満たされる。

(熱い……! たすけて……! たすけて……)

誰かの名を呼び、助けを求める。
元より、自分の知っている人間は その人だけだ。自分の世界には、その人しか いらない。
自分の意識と体が激しく焼き尽くされるのを感じながら、ルイズは名前を呼び続けた。

凄まじい衝撃が走った。あたりに轟音が響く。
熱い……! 痛い……! 苦しい……! だが、まだ自分は生きている。
何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。体が動かない。立ち上がれない。歩けない。
……左腕に力が入る。

(……! 動く……!)

左腕だけは、まだ感覚が残っていた。
ルイズは、左手で力いっぱい地面を引っかくように握り締める。そして 指を開く。
また握る。また開く。
そうやって左手の握力だけで体を動かしていく。
焼けただれた肌と地面が擦れて痛い。が、気にせず進む。
地面を握った指先の爪が割れて痛い。が、それも気にせず進む。

ルイズは、文字どおり「左腕だけ」で前に進んだ。
自分をこんな目に遭わせた、愛しい人を目指して。
左腕以外の部位が さっきの出来事で焼失したことなど、今はどうでもいい。
彼に会いたい。いや、会わなければならない。
そして、伝えるのだ。いかに自分が彼を愛しているか。いかに自分の愛が強いか。
そうだ。世界を、自分の 彼に対する愛で満たそう。
そうすれば、きっと……喜んでくれる。

「……っ!!」

シーツを跳ねのけて飛び起きる。
気がつくと、ルイズは 部屋の中…ベッドの上にいた。
カーテンが綺麗に整えて開けられた窓から、朝日が差し込んでいる。

「あっ!」

思わず、自分の体を確かめる。
……手も、足も、胴体も、頭も、ちゃんと全部揃っている。
なぜ そんなことをしたのか自分でもわからないが、とにかく ホッとした。

「……夢?」

そういえば、何か…とてつもなく苦しくて…そして悲しい夢を見ていた気がする。
だが、どんな夢だったのかは思い出せない。汗だか涙だかわからない水滴が、頬を伝って滴り落ちた。
大量の水分を含んだネグリジェが気持ち悪い。こちらは間違い無く汗だ。
だんだん頭がハッキリしてきたルイズは、部屋の中を見回す。誰もいない。

(まさか、昨日のことも夢……!?)

いや、そんなハズはない。事実、昨日 自分は使い魔の召喚に成功した。
その証拠に、昨日の夜 脱ぎ散らかした衣服が 無くなっている。
ルイズの召喚した使い魔が、洗濯のために運び出したのだろう。
今 あいつが部屋にいないのも、きっと そのためだ。
どんどん正常な思考を取り戻していく頭で状況を整理していると、突然 ドアのカギが回され 扉が開く。
そして、昨日 ルイズが召喚した亜人:ユベルが現れた。

「……やあ。おはよう、ルイズ。よく眠れたかい?」

トーンの低い女性の声で、ごく自然に呼び捨てにしてくる。だが、もう いちいち気にしない。

「ちょっと…ノックくらいしなさいよね……まあ…真面目に仕事してるみたいだし、許してあげるけど」
「あぁ……洗濯なら、そのへんにいたメイドに頼んでおいたよ。ボクより 彼女たちのほうが ずっと上手いだろう?」
「あ、あんたねぇ……洗濯も使い魔の仕事だって 昨日 言ったでしょ」
「そうかい? でも 残念だが、ボクはキミの召使いになるつもりは無いからね」

どうやら「使い魔」についての認識が根本的に食い違っているようだが、それは今後ゆっくり教育していけばいい。

「……まあ、済んだことはいいわ。じゃあ…ホラ」

ルイズが ベッドから降りて床に立ち、そのまま じっとユベルを見つめる。

「着替えさせて」
「なに?」
「あんたが わたしの着替えを手伝うの」
「……それも使い魔の仕事なのかい?」
「そうよ。だから早くして」
「……言っただろ。ボクはキミの召使いじゃない。下僕でもなければ奴隷でもない。言わば協力者だ。
 キミや ほかの人間でもできることを、なぜ ボクがしてあげなきゃならない?」
「な…っ!」

なかなか思いどおりにならない使い魔に、ルイズは だんだん腹が立ってきた。
たしかに 使い魔の召喚と契約は大成功を収めたと言えるが、正直 今の関係は、ルイズが理想とする貴族の姿には ほど遠い。
さすがに奴隷ではないにせよ、使い魔は 下僕であるハズなのだ。
だが「自分は下僕ではない」と言う相手に「いいや、おまえは下僕だ」などとは言いづらい。相手が未知の亜人ならば、なおさらだ。
そこでルイズは「使い魔」という言葉の定義を利用して、それとなく使い魔の立場を伝えることにした。

「使い魔っていうのは、そういうもんなの! いいから言うとおりにしなさいよ!」
「……ふっ、そうかい。キミがそう望むなら……仕方無いね」
「へ?」

急に素直な反応を示すユベルに、拍子抜けして 思わず間抜けな声が漏れる。
が、すぐに 主人としての威厳を示すために立ち直る。

「わ、わかればいいのよ、わかれば。そこと そこと…あと そこに着替え入ってるから」

その言葉を聞いたユベルは背中の2枚の翼を広げ、宙に浮き上がる。
そして……ルイズに乗り移った。

(ちょっ…何してるのよ! 昨日 これはしないって言ったじゃない!)

そう困惑するルイズの頭の中に、ユベルの声が響く。

(何を驚いているんだ。簡単なことだろう?
 キミは、ボクに着替えを手伝わせたいと思っている。逆にボクは、キミが自分で着替えればいいと思っている。
 その2つの条件を、同時にクリアしようとしただけじゃないか)
(……っ!)

たしかに間違ってはいない。だが、何か釈然としない。
ルイズが反論を考えているうちに、ユベルはルイズの体で ルイズの着替えを済ます。
着替えが完了すると ユベルはルイズの体から抜け出し、さらに部屋からも出て行こうとする。

「あっ、ちょっ! ご主人様をほっといて どこ行く気よ!」
「……キミはこれから、食堂へ朝食を摂りに行くんだろう? でも ボクはキミたちと違って 物は食べないからね。そのあいだ、好きにさせてもらうよ」
「って、こら! 待ちなさいったら!」

……部屋の外で、ユベルの動きが止まる。だが、ルイズを待っているわけではないらしい。
ルイズの位置からは壁で見えないが、廊下にいる何かと向き合っているようだ。
廊下に飛び出したルイズは、その「何か」の嬉しくない正体を発見した。

「はぁい、おはよう ルイズ。そうやって並ぶと、ホントに子供みたいね?」
「っ! キュルケ……!」

ルイズよりも背が高くてスタイルの良い 赤い長髪で褐色の肌をした少女。
朝っぱらから出会って早々、体型のことを冷やかされる。身長か、それとも胸か。
……が、そのライバルが 自分の使い魔に上から見下ろされているという愉快な構図が、ルイズの怒りを相殺した。

「……で、あなたが ルイズの使い魔さんね? 初めまして。
 あたしはキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー」

亜人の顔を、キュルケが見上げる。親友タバサの1.5倍近い身長から、3色の視線が降り注いでいる。
見たことも聞いたことも無い種族の亜人だ。たしかに「悪魔」と言われても、嘘には聞こえない。

「ボクはユベル。よろしく、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー」
「……キュルケでいいわ」
「なんで わざわざフルネームで言いたがるのよ……」

長い名前を1発で覚えて すらすら言うユベルに つっこむ。
ツェルプストーと仲良く会話するな、とは言い忘れる。

「それにしても……ゼロのルイズが、まさか亜人を召喚するなんてねぇ……驚いたわ」
「ふん、何言ってるのよ。こうして使い魔の召喚と使役には成功してるんだし、もう『ゼロ』じゃないわ」
「……そう。よかったじゃない」

胸を張るルイズを、特に馬鹿にするでも茶化すでもなく、キュルケは軽くねぎらった。

「ところで……ねぇ、ユベル。あなたって…女? それとも男?」
「……!?」

幼い頃から刷りこまれてきた、ツェルプストー家の忌むべき特質のことがルイズの頭をよぎった。

「ツェルプストーっ! あんた まさか、人の使い魔に手を出す気!? それも亜人に!」
「え? い、いや! そんなつもりは無いわよ! パッと見 男か女かわからなかったから、興味本位で訊いただけ!」

ルイズの懸念と疑念を払いのけるように手を振ってキュルケは否定する。
さすがに、この相手に手を出そうなどとは思わない。

「ふーん……そう? でも、訊いても無駄よ。本人もわかってない…というより興味無いみたいだから」

その質問については、すでにルイズが昨日のうちに済ませてしまっていたのだ。
まあ 一般的な感性の持ち主なら、ユベルの その左右非対称な性別の正体が気になるのも 当然だろう。

「あら、そうなの? まあ たしかに、綺麗に半分ずつだもんねぇ……それが正解なのかしら?」

「脱いでみれば わかるかも……」という考えが頭をよぎるが、すぐさま思いなおす。
もし、その性別の象徴も半分に分かれているのだとしたら……? そんなものを見る心の準備は できていない。
そんなキュルケを、ユベルは無言で品定めをするように3つの目で見つめ続けている。
男たちの 性的な意味を多分に含んだ熱視線とは、まったく違う。
少なくとも、キュルケの女性としての魅力を はかっているわけではない。
その異質な視線に耐えられなくなったのか、キュルケが口を開く。

「あっ、それより……! あたしも使い魔を召喚したのよ。誰かさんとは違って、一発でね!」
「う……うるさい! 試行錯誤の末に誰よりも大成するタイプなのよ、わたしは! たぶん!」

キュルケの背後から 大きな赤いトカゲが姿を現した。ユベルの視線が そちらに移る。

「このトカゲ……炎属性・爬虫類族か」

トカゲを見たユベルが そう呟いた。その「なんとか属性・なんとか族」という表現に、ルイズは顔をしかめる。
昨日 何度 質問しても、ユベルが「闇属性・悪魔族」というものについて 答えてくれなかったからだ。
だが、なんとなく予想はついていた。
そして、このキュルケの使い魔に対するユベルの評価で、その予想は信憑性を持った。

「……あー、つまり火系統のトカゲって意味ね」

つまり「闇属性・悪魔族」のユベルは……?

「トカゲじゃなくて『サラマンダー』よ。尻尾の先に火が灯ってるでしょ。
 しかも、フレイムは 火竜山脈に生息する亜種で、普通のサラマンダーより ずっとレア物なんだから」
「れ、レア度なら こっちだって負けてないわよ……! どこから来たかわからないくらいレアなんだから!」
「え? ルイズ、あんた……自分の使い魔に出身地も教えてもらってないの?」
「わたしだって知りたいわよ! でも、本人がわかってないんだから 仕方無いでしょ!」

まるで レアカードを自慢し合う子供のように 使い魔談義をする2人を、ユベルは見守る。
十代の父が、幼い十代にプレゼントした最初のレアカード……それが「ユベル」だった。
過ぎ去った日に思いを馳せ、決意を固める。

(十代……ボクは必ずキミを取り戻してみせる。そして……)


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