あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ドラゴンナイト・ゼロ-01


「おきなわっ!」

金色の鉤爪が生えた足に顔面を蹴られ、ルイズは宙を舞った。
美しい放物線を描きながら、彼女は考えた。

(おきなわって、なに……?)

どうでもいいことだった。
例え休日に暇を持て余し、部屋のベッドに寝転んでいても、もっとマシなことを考えるだろう。
ルイズは次に、何で自分は蹴られたかについて考えた。
特に悪い事をした覚えはない。
確かに自分はゼロのルイズで、魔法もまともに使えない出来損ないかも知れないが、宙に浮かぶ強さで蹴られる程ではない筈だ。

(というか、誰に蹴られたんだっけ……?)

それははっきりしていた。
名前は知らない誰かに、だ。
彼――彼女である可能性もある――は、何度目かになる爆発と共に現れた。
爆発はルイズが起こしたものだった。
例え春の使い魔の儀という重大なイベントにおいても、ルイズの魔法は如何なく威力を発揮したのである。
もちろん、本人が望む所ではなかったが。
爆風が晴れると、ルイズの目の前で異装の人物が大の字になって倒れていた。
いや、いびきを掻いていた所を見ると、ただ寝ていたのだろう。

彼――めんどくさいので彼でいいや――は、三本のスリットが入った銀色の仮面を付けていた。
スリットに向こうには楕円形の真紅の目が覗き、まるでルビーのような輝きを放つ。
額から伸びた二本の角と、口元のマスクを挟む牙のように尖った部分が、ルイズは竜に似ていると思った。
体は、黒い二の腕と大腿部以外は炎のように赤い鎧で包まれている。
足には、鋭くはないが強靭そうな金色の鉤爪が生えていた。
腰に剣は無いし、鎧も見たことがないデザインだが、どこか国の騎士かも知れない。

(悪くないわね)

ルイズは胸の内でガッツポーズを取った。
黒髪をした同年代の平民の少年も悪くないが、騎士となればまた話は違う。
異国の騎士と姫君のラブロマンスに憧れなかったと言えば嘘になるのだ。
この時、ルイズの脳からは契約とか使い魔という単語は完全に失せていた。
それは、この日のために重ねた予習で疲れていたからかも知れないし、まさか人間が、という驚愕で混乱していたからかも知れない。
とにも、起こさないことには何も始まらないと、ルイズが彼に近づいた瞬間。

「わははは起きざまライダーキーック!!!」

………強烈な衝撃がルイズの顔面を襲った。



「あいたっ!」

長いような短いような滞空時間が過ぎ、ルイズは背中から地面に叩き付けられた。
口の奥が鉄臭い。
どうやら鼻血を垂らしているようだ。
貴族として、というか乙女として美しくない。

「あたた……な、なんなのよ一体……」

ルイズは上半身を起こし、ハンカチで鼻血を拭った。
すると、

「やったー♪ 寝たふり作戦大成功! 本日もオレさま絶好調ー!!」

起き上った例の赤い騎士が、両腕を天に掲げて歓喜を表現していた。
どうやら、あの蹴りは完全にわざと放ったものらしい。
寝たふり作戦とか言ってるし、およそ騎士とは思えない言動だった。
騎士じゃないのかも知れない。

「――――で、お前だれ?」

「え?」

気付くと、赤い騎士はすぐ目の前にいた。
間近で見て気付いたが、彼の身長はかなり低い。
子供と同じくらいだ。
赤い目が、ルイズの顔を覗き込む。
出会って間もないが、見知らぬ人物はとりあえず蹴ってみるという思考をしているのは確かだ。
下手にツンデレたら命はないだろう。
とりあえず、当たり障りのない言葉を並べようとしたルイズだったが、

「まぁいいや! トドメだオラー!!」

「えええーっ!?」

答える隙もなく、赤い騎士は拳を振り上げた。
どうやら、人の話を聞くのは大嫌いのようだ。
来世に彼と出会ったら、そう肝に命じておこうとルイズが思った、その時。

「ギャアアー!!」

悲鳴が上がった。
ルイズではなく、赤い騎士の。
ごろごろとのたうち廻る赤い騎士は、炎に包まれてより赤くなっていた。
天の……ブリミルの助けだろうか。

「龍騎! お前という奴はライダーどころか女の子まで!」

そう言って燃え上がる赤い騎士の傍に立ったのは、これまた赤い竜だった。
蛇のように長い体、金色の双角、巨大な翼に刃の尾。
今まで、ルイズはたくさんの図鑑を読んで来たが、彼のような竜は初めて見た。
しかも、喋るということは韻竜である。
もしかしたら太古の昔に絶滅した希少種かも知れない。

「敵は全部倒せって言ったのはドラグレッダーだろーが! いっつも邪魔しやがって!」

「敵かどうかわからんだろーが! いっつも汚い手ばっか使いおって!」

早々と復活した赤い騎士は、どうやら龍騎というらしい。
そして見たこともない竜の名はドラグレッダーのようだ。
龍騎とドラグレッダーは、ルイズを置いてけぼりにして口ゲンカを始めてしまった。
しかも彼らにしか分からない内容で、割って入る隙がないのが腹立たしい。
ルイズはふうと溜息をつくと、杖を振り、口の中で小さく呪文を唱えた。

「――――とりあえず死になさい」

「ギャア!」

一人と一匹の間の生じた爆発が、轟音と共に口ゲンカを中断させた。
人生と竜生も中断してればいいのにと思ったが、龍騎の生命力は異常だった。

「なにしやがんだコラ!!」

「こっちのセリフでしょーがいきなり蹴って! というかあんたら何なのよ!」

「テメ―こそ誰だこのクソババア!」

「バッ……!?」

ルイズと龍騎は額と額をぶつけて睨み合った。
ともすれば唇を重ねてしまうかも知れない状態だったが、血が上った頭にそんなことを気にする機能はない。
ドラグレッダーが二人に火炎を吐きかけようか悩んでいると、横合いから困り切った声がかかった。

「あのーミス・ヴァリエール。次の授業の時間が迫っているんだが」

「あん? 何だテメ―ハゲ」

「あらミスタ、いたんですか? 忘れてました」

不機嫌の煽りをモロに受けたのは、眼鏡をかけた禿頭の中年、ジャン・コルベール。
暇さえあれば研究室にこもり、枯れ果てた砂漠に草を生やす薬の開発にハゲんでいるともっぱらの噂である。
周囲には日頃ルイズをゼロだゼロだとバカにする生徒達が並んでいるが、面倒なので割愛する。

「……いやだから、早く彼と契約して下さいよミス・ヴァリエール」

ルイズは耳を疑った。
もしコルベールの言う彼が龍騎だとしたら、ハゲが脳にまで及んだとしか思えない。

「正気ですかミスタ!? こんなのと契約したら明日が私の命日です!」

「ふざけんな! こいつと契約するくらいなら死んだ方がまだマシだぜ!」

ここに来て、初めて意見が合った。
死んだ方がマシだというのはその通りにしてやりたくなるが、もしかしたら気が合う相手かも知れないと、ルイズは思った。
友達にはしたくないタイプだけれど。
龍騎が首を傾げる。

「―――で、契約ってなに?」

「ええー!! 知らずに反対してたの!?」

とりあえず、人の言うことは内容を吟味せずに反対する主義のようだ。
友達どころか関わり合いになりたくないタイプである。
時すでに遅しだが。
とはいえ話が進まないので、ルイズは龍騎に契約について説明してやった。
この一文で済むから小説は便利だ。

「なるほど。使い魔ってあれだろ、ゲームとかに出てくる……ゲッ、じゃあ俺がお前の奴隷になれってことかー!?」

「別にあんたじゃなくてもいいわよ。むしろ……」

ルイズはちらりと、空気気味なドラグレッダーに目をやった。

「ワ、ワシ?」

「わけわかんない奴より、竜の方が良いのよね~♪」

「んな無茶な……龍騎、なんとか言ってやってくれ!」

「よし、五百円でどうだ?」

「買った! いくらか知らないけど」

「えー!? ワシってワンコインの価値!?」

普通はいくら金を積んでも、なかなか竜を使い魔にすることはできない。
それも韻竜と契約したとなれば、もうルイズをゼロと呼ぶ者はいないだろう。
実家にも薄い胸を張って帰ることができるのだ。
しかし、人生はそう甘くはなかった。

「け、契約というならそもそも、ワシはもう龍騎と契約してるぞ!」

「え? そーだったの?」

「お前が聞くな! 現にお前とライドアップ出来るのは相棒のワシとだけだろーが!」

「でもカイザとギルスのとは合体できたぞ」

「セロハンテープでパーツくっつけるのは合体とは言わん!」

また訳の分からない単語が飛び始め、ルイズは顔を顰めた。
とにかく、ドラグレッダーは既に龍騎の使い魔で、ルイズとは契約できないということだ。
そうなると、少しまずいことになる。
成績にも響くだろうし、新たに「使い魔ゼロのルイズ」という不名誉な称号を与えられる可能性がある。
背中に刺さる「髪の毛ゼロのコルベール」の視線も痛い。
もう、道は一つしかなかった。

「仕方ないわね。龍騎、契約しましょう」

「やだ」

一刀両断だった。
まあ、さっき思い切り拒否してたから当然だろう。
しかし龍騎と契約しなければ、ルイズは今後ノー使い魔で生活することになる。
彼と契約したらしたで、命の危険に眠れない夜を過ごすことになりそうだが、その代わりドラグレッダーが手に入るのだ。
使い魔の物=主人の物。
ゼロの自分が竜を使い魔にする機会など、これを逃せば二度とないだろう。
女は度胸。必ずこのコントラクト・サーヴァントをモノにしてみせる。

「………給料払うって言ったら?」

「犬とお呼びくださいご主人様」

「早っ!」

見事な変わり身である。
ゴヒャクエンがいくらか知らないが、使い魔を金で売ろうとする男が、給料という言葉に喰い付かない筈がない。
だが、まさか膝まづいて手の甲にキスまでするとは思わなかった。
わかりやすい男だ。

「ゲヘヘヘ、結局1号もシャドームーンも金持ってなかったからな。ライダーより使い魔の方がお得だぜ」

「龍騎……一応正義の味方なんだから……」

仮面に赤い裂け目のような目と口を浮かべて下品に笑う龍騎に、ドラグレッダーが落涙する。
まあ、ルイズとしては龍騎が守銭奴である方が何かと都合がいい。

「で、契約ってどーすんの?」

「今やるから待ってて。えっと、我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……!」

ルイズは心を静め、契約の呪文を唱えた。
そして、そっと龍騎に顔を寄せ、マスク部分――さっきは口があったのに――に口付けをした。
ウギャアと龍騎が悲鳴を上げ、ルイズを突き飛ばす。

「ぺっぺっぺっ! いきなり何しやがんだ汚ねーな!」

「き、汚い!? 乙女のファーストキスを汚いですって!?」

照れるなり慌てるなりはすると思ったが、まさか自分の唇を汚物扱いされるとは。
ルイズが爆破してやろうかと杖を構えた時、龍騎は再び悲鳴を上げた。
今度は苦痛の悲鳴だった。

「あぢぢぢぢっ! 左手があちぃ! テメ―よくもやってくれたな! オラァッ!」

「ギャアーッ殴る前に人の話を聞きなさい! ルーンが刻まれてるだけだから! ほら!」

打たれた右頬を抑えながら、ルイズは龍騎の左腕を掴んだ。
左手の甲に、奇妙な文字が刻まれている。
これがルーンだ。
龍騎が、正真正銘ルイズの使い魔になった証拠である。
先行きは不安で堪らないが、これで「使い魔ゼロのルイズ」と呼ばれる可能性は消えたのだ。
ほっと一息つく間もなく、龍騎がぎゃあぎゃあと噛みついてくる。

「痛いなんて聞いてねーぞ! あと休暇はあるんだろーな!?」

「そんなの私次第よ! もう使い魔になったんだから言うこと聞きなさい!」

「ふ、二人とも落ち着け。ほらコルベールって男と他の連中、もう帰っちゃったし」

「え?」

ルイズがケンカを中断して周りを見ると、たしかに誰もいなかった。
そういえば、次の授業の時間が迫ってるとか言っていた気がする。
まあ、こんなアホらしい口ゲンカを最後まで見届けようという奇特な暇人はなかなかいないだろう。

「って、このままじゃ遅刻しちゃう! 龍騎あんた空と飛べないの!?」

「いやそこはドラグレッダーに振れよ」

「あそこの城まで行けば……おいこら引っ張るな飛びにくい! あー!」

その後、ルイズが三回程ドラグレッダーから落ちたが(二回は自然に。一回は龍騎の手により)、城にはちゃんと到着したのであった。
授業は完璧遅刻だったけれど。
続く。


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