あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-49


唸りを上げるドリルを構え、バグポッドDが突進する。
ジャンガとタバサは同時に散開。動きの鈍重な土ゴーレムがその場に残る。
そのゴーレムに向かってドリルが突き出された。
胸へと叩き込まれたドリルは、しかしゴーレムの手に止められる。
「無駄さ。このまま、また投げ飛ばしてやるよ!」
そう言うフーケに対し、ガーレンは余裕の表情だ。
「フン! それはどうかな!?」
ガーレンがボタンを押すと砲身に光が集まる。
フーケは目を見開く。――この距離で”あれ”は不味い!
だが、鈍重なゴーレムに咄嗟に素早い行動をさせるのはどうにも不可能だった。
砲身から極太のレーザーが放たれ、ゴーレムを飲み込む。
一瞬で上半身を丸々消滅させられ、呆気なく崩れ落ちる。
フーケ自身はレーザーが放たれる直前、ゴーレムの肩から飛び降りている。
そのフーケ目掛けてガーレンはドリルを叩き込む。
しかし、ゴーレムと違ってフーケ自身は身軽だ。その一撃は容易くかわされ、ドリルは空しく地面を抉る。
そこへタバサのジャベリン、ジャンガのカッターが飛んで来た。
だが、頑強な装甲に阻まれ、決定的なダメージは与えられない。
ガーレンはコンソールのボタンを押す。背部ハッチが開き、再び多量のガレンビートルとガレンヴェスパが飛び出す。
自立回路による自己判断で、虫型メカはジャンガ、タバサ、フーケ、そして上空のシルフィードに襲い掛かる。
しかし、先程ならばまだしも、今の状況でこんな物に遅れを取る道理は無い。
ジャンガは爪で薙ぎ払い、タバサは『ブレイド』を掛けた杖で斬り、フーケは先程同様『錬金』で土くれに変える。
ザバーーーンッ!!
突如、空から滝のように大量の水が降って来た
その水に巻き込まれたのか、地面にはずぶ濡れで紫電を撒き散らしながら横たわる、虫型メカの姿が在った。
アンリエッタが唱えた水魔法による擬似的な滝だ。
シルフィードも(火竜には及ばないが)ブレスを吐いて応戦した。

虫型メカによる攻撃が効果を見せない為、ガーレンは再度ボタンを押す。
砲身に輝きが集まり始める。
それを見たジャンガは叫ぶ。
「タバサ!」
「解った!」
タバサは二つ返事で呪文を唱える。杖の先端に巨大な氷の槍が現れる。『ジャベリン』だ。
月光を受けて輝くそれを、タバサは発射体制を整えつつある砲身目掛けて飛ばす。
虫型メカが止めようと氷の槍に群がるが無駄だ。
輝きが臨海に達し、レーザーが発射されようとした瞬間、氷の槍が砲身に突き刺さった。
そして巻き起こる大爆発。
溜まったエネルギーが砲身を破壊された為に行き場を失い、暴走した結果だ。
爆風から顔を背けていたジャンガ達は爆風が収まるや、顔をバグポッドDに向ける。
バグポッドDはボロボロだった。あれほどの威力のレーザーのエネルギーの暴走は、
頑丈なボディにも深刻なダメージを与えていた。砲身は粉々に砕け散り、ドリルもボロボロ。
コックピットは辛うじて無事のようだが、どう見ても戦闘続行は不可能だろう。
「フン、下らん真似をしてくれる。だが、我輩のバグポッドDを甘く見てもらっては困る!」
ガーレンは余裕の態度を崩さない。
言い放ち、ボタンを押した。
すると、バグポッドDに変化が起きる。
ガシャン、ガシャンと音を立てながらボディが組み替えられていく。
壊れたドリルが引っ込み、青い鎌状の腕が出る。
黒いボディが赤くなり、新たな一つ目が飛び出す。
音が聞こえなくなった時、バグポッドDはその姿を変えていた。

『バグポッドD・スパイダーモード』――クロウラーモードから変形したバグポッドDの別形体。
この形体からクロウラーモードへの最変形も可能。
ただの色違いのようだが、腕がドリルから刃に変わっているなど細かい変更点はある。
重武装で動きの鈍重なクロウラーモードと違い、若干装甲が薄めだが動きが敏捷になっている。
主武装は、両腕の鎌状の刃をブーメランのように飛ばす『ガレンブレード』。
また、名前のとおり機体後部から電磁ネットを張り巡らし、敵の動きを制限する。
ガレンヴェスパ、ガレンビートルの射出機能は無いが、
両腕の刃を機体側面に移動させ、コマのように回転して体当たりする『バグポッドスピン』も強力だ。

変形したバグポッドDのコックピットでガーレンは叫ぶ
「これも見せる事になるとはな…、侮れぬ奴らだ」
「中途半端なやり方で俺を殺せるわけねェだろうが、ボケ!」
ジャンガはせせら笑う。
「そんな口が叩けるのも今のうちだ」
バグポッドDが走り出す。愚直なまでに突進を繰り返していた先程までと比べ、
打って変わったトリッキーな動きである。
ドリルの代わりの二本のブレードが次々に振り下ろされる。
それらによる斬激をジャンガとタバサは毒の爪やブレイドの刃で弾き、受け流す。
その時、二度目の地響きが起き、フーケのゴーレムが姿を現した。
がら空きな背後にゴーレムの巨大な拳が突き刺さる。
インパクトの瞬間、拳は鉄に変わりその威力を増す。
ボゴン!
大きな音がし、バグポッドDの装甲がへこむ。
スパイダーモードの薄い装甲では、ゴーレムの一撃は完全に相殺し切れないようだ。
「あはは! 随分と脆くなってるね?」
「粋がるな、コソドロ風情が」
ガーレンはボタンを押す。
二つの鎌状の両腕が胴体を離れ、ブーメランのように空中を飛ぶ。
回転しながら飛ぶ刃はゴーレムとフーケを襲う。
フーケはゴーレムの腕の陰に隠れ、飛んできた刃をやり過ごす。
ガキン! ガキキン!
二つの刃がゴーレムの腕に弾かれる。
鋭利な刃により傷が出来たが、それらは直ぐに再生する。
「フム、切断はあまり効果が無いな? ならば…」
ガーレンはバグポッドDを走らせる。
無軌道なルートでゴーレムの周囲を走り回った。
「何のつもりだい?」
意味不明な行動にフーケは怪訝な表情で言う。
その質問にガーレンは答えない。
無視された事にフーケは軽く憤りを覚えた。
走り回るバグポッドD目掛けて、ゴーレムの腕が伸びる。
しかし、その腕は何か見えない壁の様な物に遮られてしまう。
「何だい、こいつは?」
フーケは驚愕する。いつのまにか、ゴーレムの周囲が青白い光の様な物によって囲まれている。
それは鋼鉄の壁のようにビクともしない。
バグポッドDの動きが止まる。コックピットではガーレンが笑っていた。
「グハハハハ! スパイダーモードの電磁ネットのお味は如何かな? 暫しそこで大人しくしていろ」
「ちっ」
フーケは舌打し、ゴーレムに電磁ネットの障壁を殴らせる。
しかし、やはり障壁は破れなかった。

障壁と格闘するフーケを無視し、ガーレンはジャンガとタバサの方に意識を向ける。
と、巨大な『アイス・ストーム』がバグポッドDに向かって飛んできた。
アイス・ストームはバグポッドDを飲み込んだ。
凄まじい冷気の突風がバグポッドDの装甲を凍てつかせ、傷つけていく。
だが、それで破壊されるバグポッドDでもない。
高い運動性でアイス・ストームを突き破った。
タバサは既に三体の遍在を作り出している。
ジャンガも同様に分身を出している。
バグポッドDの二つのブレードが飛ぶ。
敵を切り裂かんとするそれを、タバサとジャンガはあっさり避ける。
そのまま本体へと突き進む。
ジャンガのカッター、タバサの『エア・カッター』が飛ぶ。
バグポッドDはトリッキーな動きで巨体でありながら器用にかわす。
戻って来たブレードが再びバグポッドDとドッキングする。
すると、ブレードが機体の側面に移動し、一つ目のパーツが機体内部に収納される。
そして、バグポッドDはそのまま高速回転を始めた。
その動きにタバサの表情が強張る。
「何?」
「食らうがいい! 『バグポッドスピン』!」
ガーレンの叫びが響き、高速回転したバグポッドDが二人目掛けて突撃する。
慌てて二人は分身と共に散開するが、タバサの遍在が二体切り刻まれる。
ジャンガがカッターを放ち、タバサが『ウィンディ・アイシクル』を放つ。
だが、高速回転するバグポッドDはその攻撃を尽く弾き返す。
「グハハハハ! 無駄だ無駄だ無駄だ! そのような貧弱な攻撃でこのバグポッドスピンが止められるものか!」
ガーレンの笑い声を聞きながら、ジャンガは舌打する。
「チッ、メンドくせェ」
敵の攻撃を避けながら考える。
高速回転するバグポッドDに対して、何か有効な打撃を加えられないものか?
…やはり、コックピットが一番脆そうではあるが、そうそう狙わせてはくれないだろう。
さて、ではどうするか…。と、そこでジャンガは閃いた。
ジャンガは無意味な攻撃を繰り返しながら、タバサの傍に寄る。
「タバサ嬢ちゃんよ…、精神力どれだけ残ってる?」
「残り少ない。新たに遍在を作り出す余裕は無い」
「『ジャベリン』は?」
「一発位なら…」
その答えにジャンガは笑う。
「上等。いいか、良く聞け」
「?」

ジャンガとタバサが何かを話すのを見て、ガーレンはせせら笑う。
「ククク、何を考えているか知らんが、何をしようと無駄な事だ」
操縦桿を倒す。バグポッドDが加速し、二人へと突っ込んでいく。
ジャンガは無数の分身を生み出し、バグポッドDへ突っ込む。
タバサは残った遍在と共にその場を離れた。
ガーレンはタバサを一瞥し、直ぐにジャンガの方へ視線を戻す。
ジャンガは数え切れないほどのカッターを放ち、バグポッドDへと叩き込む。
だが、やはりそれらの攻撃は回転する刃に掻き消される。
ジグザグに動き、不規則な軌道を描きながらバグポッドDは突進する。
一体、二体と分身は切り裂かれ、消滅していく。かく乱の意味で生み出した分身はまるで役に立たなかった。
ついに残すはジャンガ本人のみとなり、バグポッドDの動きも早くなる。
「グハハ、どうした? それで終わりか!?」
「……」
何も答えないジャンガにガーレンは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「どうやら本気で何も手が無いようだな? シャルロットも逃げ出し、フーケやアンリエッタは手を出せずにいる。
貴様の命運も尽きたな、ジャンガ!!!」
「…一つ、言いたい事がある…」
「ほぉ…、何だ?」

「真上ががら空きだ」

「何ッ!?」
慌てて上を見上げるが…遅い。
上空にはタバサが『フライ』を唱えている遍在に抱えられて浮いている。
その杖の先端には、残った精神力の全てを注ぎ込んで作った、巨大な氷の槍が在った。
タバサが杖を振り下ろすと同時に、氷の槍は落下する氷柱の様にバグポッドDへと向かう。
氷の槍の重量と落下速度が合わさった結果、強化ガラスも物ともしない威力が生まれた。
氷の槍はガーレンごとコックピット、そしてバグポッドDの本体を貫く。
一瞬の間があり、バグポッドDは大爆発を巻き起こした。

破片が降り注ぐ中、ジャンガは袖で顔を覆い、爆風から身を守る。
暫くして、顔を上げるとバグポッドDが存在した場所には巨大なクレーターのみが存在していた。
自分の機械兵器ごと吹き飛んだガーレンに対し、しかしジャンガは特に何かを感じたりはしなかった。
「これで終わりだな」
一言そう呟く。
そこへ、ゴーレムに乗ったフーケがやって来る。
「どうやら、片付いたみたいだね?」
「ああ、お陰さまでな」
ジャンガはニヤリとした笑みを向けた。
と、傍にタバサが舞い降りてきた。タバサを下ろすと遍在は消え去る。
「お前もご苦労だったゼ、タバサ嬢ちゃんよ?」
タバサは小さく頷いた。

空の上から戦いを見守っていたアンリエッタも安堵の表情を浮かべていた。
シルフィードも主人が勝った事に喜びを感じ、きゅいきゅい、と嬉しそうな声を上げている。
「これで終わったのですね…、全て」
「ああ、そうだ」
耳元で囁かれる声。アンリエッタの両目が見開かれる。

――振り向く暇も無い。胸に強い衝撃が走り、アンリエッタは喉元に何か熱い物が込み上げるのを感じた。



――同時刻:ガリア王国・グラン・トロワ――

一番奥に位置する部屋で、ガリア王ジョゼフは部屋中に作られた十メイルには達しようかという、
巨大な箱庭を見ていた。箱庭はハルケギニアの地図を模した物で、建物などの模型が立っているだけでなく、
地形には起伏がつけられ、山や川、丘や森、湖などの細部に至るまで非常に丁寧に作られている。
と、その箱庭の中をジョゼフでない誰かが覗き込む。
その人物は暗闇に浮かび上がって見えるほど暗い、漆黒のマントを身に纏っている。
随分と小柄なその人物は、フワリ、と浮かび上がる。
飛び跳ねたわけではない…、文字通り”浮かんでいた”。
フワフワ、と浮かびながら箱庭を見回す。
「これって、ホント良く出来てるよね…」
その口から発せられた声は年端も行かない少女の物だった。
ジョゼフは少女の言葉に嬉しそうに答える。
「当然だ! 国中の細工師を呼んで作らせ、完成までに一ヶ月も掛かったのだ!」
「ふぅ~ん…。ねぇ、それよりもさ…」
少女が尋ねる。
「何だ?」
「このまま、あのガーレンのおじちゃんに全部やらせるの?」
ジョゼフは考え込むように顎に手を添える。
「そうだな…、逆転劇は既に拝見し、欲しい物も既に余の手の内。
このまま”詰め”の全てをガーレンに任せても良いが…面白みに掛けるな。フム…」
暫し考え込み、ジョゼフは空中に浮かぶ少女にサイコロを二つ放る。
少女はそれを受け取る。
「何、これ?」
「それを振るのだ。それの出た目で結果を決める」
「へぇ~、面白そう♪」
少女は楽しげな声で笑いながら、サイコロを振った。
箱庭の中を転がったサイコロが止まる。
出た目を見て、ジョゼフの顔が喜びの色に染まる。
「十二か!? ここでその目が出るとはな!! 何とも言えぬ気分だ!」
ジョゼフは笑いながら新たな駒を箱庭に置く。
その駒は怪物の形をしていた。
少女は不思議そうにジョゼフを見つめる。
「”あれ”を使うんだ…。でも、ジョゼフのおじちゃん大丈夫~?」
「無論だ! 余は担い手だぞ? ”伝説”の担い手だぞ? 出来ぬはずがない」
「ふ~ん……ま、いいけど。それじゃ、行くんだね?」
少女の言葉にジョゼフは頷く。
「ああ。…と、その前に」
ジョゼフは大臣を呼ぶ。
子男が緞子の影から現れ、頭を下げた。
「艦隊は既に召集してあるのだな?」
「はい」
「ならば、今直ぐにアルビオンに向かわせろ。”敵”を残らず吹き飛ばせ。
余は暫しここを留守にする。後の事は任せるぞ」
「御意」
大臣は淡々と返事を返し、退室していく。
少女は空中で寝そべるような格好をし、小さくため息を吐いた。
「ジョゼフのおじちゃん、嫌われてるみたいだね~?」
「構わぬ。余の言う事を聞いてくれるのであれば好かれなくとも良い」
「そう。じゃ、行くよ?」
「ああ、頼もう」
少女は姿勢を正し、身に纏うマントを大きく広げる。
そのままマントを翻すように振った。

次の瞬間、部屋の中には誰も残っていなかった。


新着情報

取得中です。