あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

攻撃力0の使い魔-01


どこか別の次元・別の宇宙の「彼女」と同じく、もはや手足の指では数えられないほどの失敗の後
彼女……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの行った 使い魔召喚の魔法『サモン・サーヴァント』は成功した。

「……亜人?」

ルイズの召喚に応じて現れたのは亜人だった。
この世界の人間の知識では「亜人」としか呼びようが無い。
200サントを超える背丈の、紫色の肌をした女性の亜人。
背中にはドラゴンのような翼が2枚 生えている。
……女性? いや、違った。
たしかに、亜人の右半身は女性のように見える。
胸には乳房があり、骨盤は大きく丸みを帯びている。
だが それに対して、左半身は男性のように見えた。
胸には脂肪が無く 大胸筋が盛り上がっており、右足の太腿にも逞しい筋肉がついている。
この亜人は、身体の右半分と左半分で まったく違う体型……というか性別をしている。
また、左右非対称なのは 体型だけではなかった。
まず目につくのは、髪。
肩のあたりまで伸びたボサボサの髪は、右半分が薄い灰色で 左半分がくすんだ青色をしている。
その次は、目。
亜人の目は、右が橙色で 左が緑色の オッドアイだった。
さらに 額の中心にも、大きなダイヤ型の黄色い目が付いている。虹彩は赤い。
あと腕も 右と左で明らかに違う見た目をしているが、表面のテクスチャーを張り替えたような違いでしかないので、省略する。
もちろん、どちらも人間のそれとは だいたいの形しか一致しない。
唯一 背中の翼だけは、綺麗に左右対称となっていた。 ちなみに、翼のカラーリングは 外側が黒で内側が紫となっている。
あと特筆すべき外見の特徴は、亜人の体で 衣服のように変色している部分があることくらいか。
人間なら下着をつけているであろう部位は、翼の外側と同じような黒い色をしている。
それが皮膚なのか衣服なのかはわからないが、とにかく人間が下着で隠そうとするような部分が 黒に覆われているのだ。
一般的な男性が 女性と違ってブラをつけないように、亜人の左の胸は顔と同じ紫色をしているのに対し 右の胸は黒色をしている。
もっとも、なぜか腿については逆に、右が黒で 左が紫となっていた。
また、衣服のように見えるわけではないが、亜人の両肩・両肘・左右の腰骨には 翼と同じ色と質感をした ヒレのようなツノのような突起物が生えている。
何の機能があるのかはわからない。

妙にダラダラと亜人の外見を描写することになってしまったが、その亜人の外見は それくらい まさに「異形」と呼ぶにふさわしいものだったのだ。
そんな異形の姿を ようやく脳内で処理し終えたのか、その場に居合わせた者たちは 口々に銘々の感想を述べ始めた……

「何あれ……」
「と…とりあえず『亜人』としか……」
「禍々しくも ふつくしい……」

人でないのに人の形をしている存在への、生理的な恐怖。
必死で勉強したハズの座学の知識の中にも存在しない 正体不明の亜人に対する恐怖。
そして……そんな世にも珍しい存在を使い魔として召喚したことへの感動。
加えて魔法成功率がゼロでなくなった感動。

ルイズの中で、感動が恐怖に打ち勝った。

使い魔の契約『コントラクト・サーヴァント』を行うため、深呼吸をして、自分が呼びだした亜人に歩み寄る。
それまで静かに周囲を観察していた亜人の3つの目が、すべてルイズに向けられる。

「…………」

目の前の少女が自分に用がある と気づいたのか、亜人は姿勢を低くして目線をルイズに合わせると その緑色の唇を開いた。

「……キミは?」

トーンの押さえられた、女性の声だった。

「……!」

やはり、人語を解するらしい。
人間と同等か それより上の知能を持った亜人である可能性も十分にある。
だが、自分が使い魔とするため呼びだした以上、主人が威厳を失うわけにもいかない。
ちょうど相手の顔の高さも自分にとって都合の良い位置にきていることだし……と、ルイズは そのまま『コントラクト・サーヴァント』を実行に移すことにした。

「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ……!」

杖を亜人の額に……当てようにも、そこには亜人の第3の目がある。
さすがに、正体不明かつ初対面の相手を目潰しで怒らせるわけにもいかないので、ルイズは亜人の眉間に杖を当て、緑色の唇に口づけをした。

「ッ!? おまえ、何を……!」

いきなり唇を奪われて驚いたのか それとも使い魔のルーンが刻まれる痛みに驚いたのかは わからないが、
先程までの冷静さとは うって変わって、亜人は明らかに感情を表に出した。
そんな亜人の 額にある第3の目が発光している。
いや、目が光っていたのではなく、使い魔の証であるルーン文字が刻まれている最中なのだ。

「あ、それは使い魔のルーンが刻まれてるだ…けッ!?」

突如、額に走った鋭い痛みにルイズは悶絶する。
突然の謎の痛みに ふらつき倒れそうになるルイズを、服の首ねっこを掴んで 亜人が支えた。

「ふふふっ……大丈夫かい? それが…今 僕が感じた痛みなんだ」
「……っ!」

召喚者の威厳を保つため、できるだけ迅速に立ち直る。痛み自体は とっくに消えていた。

「…………」

ルイズの召喚した亜人が、3つの目で彼女を見下ろしている。

「……!」

ルイズと 教師のコルベールが、あることに気づく。

亜人の額にルーンが刻まれている。
いや……額…というか……額にある第3の目の中に。

(う…わ……)

眼球にルーンが刻まれる……
想像するだけで嫌な汗が滲む。いったい どれほどの激痛なのだろう……

(……え? 激痛?)

激痛といえば、先程 突然ルイズを襲った痛みも、分類としては かなりの激痛だった。
沁みるような刺すような鋭い痛み。
目に塩水が入ったときの痛みの強化版のような激痛……
しかも、その痛みが ちょうど額に……

(まさか……)

契約を結んだ その瞬間から、使い魔と感覚を共有した、ということだろうか。
……視覚でも聴覚でもなく、よりによって 痛覚を。
亜人が、そんな懸念を抱くルイズのほうを向いた。

「……ねぇ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「っ! な、何……!?」

1回しか言っていないのに、いきなりフルネームで呼ばれた。
記憶力に優れているのか、それとも長い名前に慣れているのか。

「ボクを この次元へ呼んだのはキミなんだろう? キミは、さっき『使い魔』って言ってたけど……説明してもらおうか」
「……! そ、その前に……! あんたも自己紹介しなさい……! ご主人様が使い魔のことを知るのは当然でしょ……!」
「ほう……本気でボクを使い魔にできると思っているのかい」

いきなりの ご主人様を馬鹿にしているような発言。

「う……そ、そうよ! もうコントラクト・サーヴァントは完了してるんだから!」
「……ふふっ、まあいい。僕は……ユベル。闇属性・悪魔族の精霊だ。
 もしキミが 長い名前が好きなら『ユベル-Das Abscheulich Ritter』とか
 『ユベル-Das Extremer Traurig Drachen』でもいいけどね」
「ゆべるだす……って、え!? アクマぁ!?」

闇属性、悪魔族、精霊。精霊はともかく、闇属性? 悪魔?

「……もしかして…エルフと何か関係が……?」

「闇」「悪魔」といった単語から ごく自然に連想されて 思わず口に出してしまう。
だが……

「あぁ……キミたちと同じ 魔法使い族のエルフのことかい? 残念だが、ボクには あまり関係が無いねぇ」
「魔法使い…族?」

たしかに、人間のメイジもエルフも 魔法を使いはする。
だが その魔法力には大きな差があり、魔法の使い手として人間とエルフを同列に扱うのは無理がある。
にもかかわらず、このユベルと名乗った亜人は、ハルケギニア最高の先住魔法の使い手であるエルフと そんなエルフを恐れる人間を、
あたかも同程度の種族であるかのように言う。
この亜人が属する「悪魔族」という種族にとって、人間もエルフも大差無いということだろうか……?
それとも単に人間とエルフの区別をする習慣が無いだけなのか。

「まさか…本当に悪魔……!?」

人間どころかエルフすら軽視できるほどの存在。
そして、闇・悪魔……闇を担う悪魔…の精霊……?

「悪魔…族って……?」
「そんな種族の亜人もいるのか……」
「闇属性って? 系統?」
「ゼロのルイズが、化け物を……?」
「ってか あれ、男? 女?」
「なにげに胸が大きい」

得体の知れない亜人が出現した ほとぼりはとっくにさめている。
だが、亜人の口にした「闇」「悪魔」という単語は、新たな話題のタネとなっているようだ。
もちろん、そんな存在を「ゼロ」のルイズがいきなり召喚したことも。

「そういえば、さっきから気になっていたんだけど……『ゼロ』というのはキミの あだ名かい?」
「……! そ、それは…っ!」

軽い調子でユベルが問いかける。
もちろん、彼…彼女…彼……とにかく、ユベルはその由来を知らない。
だが ルイズは、不名誉なあだ名のことを話題に出されて言葉に詰まる。

「ふふふっ、そうか……これがキミの『心の闇』なんだね」

心の奥底まで見透かすようなユベルの視線が、ルイズの体を貫く。

「え……?」
「いいよ。今日からボクたちは友達だ。ボクも ある意味、キミと同じ『ゼロ』だからねぇ」
「あんたも…ゼロ……?」
「あぁ。ボクは元々、攻撃力も守備力も0なんだ。もっとも……ボクには そんなもの 必要無いけどね」
「こ、攻撃力と守備力ゼロって……え!? じゃあ戦う力が無いってこと!?」

見るからに化け物チックな この使い魔は、その外見に反して 自分に戦う力が無いと告白した。
せっかく世にも珍しい使い魔の召喚に成功して、ゼロの汚名を晴らせるかと思ったのに……
この使い魔自身も戦う力が「ゼロ」であると言う。
ゼロの魔法使い が 戦闘力ゼロの使い魔 を召喚してしまった。

(べ…別に戦闘能力だけが すべてじゃないわよ……きっと何か それ以上にすごいことができるハズ……!)

そう思い直すルイズに、ユベルが声をかける。

「勘違いしてないかい……?」
「え?」
「たしかにボクは攻撃力も守備力も持っていない。けど、戦う力が無いなんて言ってないだろう?
 実際、ボクは今まで ほとんど負けたことが無いからねぇ」

虚勢を張っている様子は無い。
むしろ、ゼロだからこそ負けない、とでも言わんばかりに毅然としている。

「……ふふふっ、いずれわかる」

それまで ただ じっと使い魔を観察していたコルベールは、攻撃力0のくだりを聞いて ひとり納得していた。
この亜人は、たしかに「闇」としか言いようの無い性質の魔力を持っている。いや、ある意味「魔力そのもの」と言ってもいい。
それも「神」というものと同等のレベルの存在であることは間違い無い。
だが、この亜人には いっさいの攻撃性を感じられなかった。
そこに「攻撃力0」という自己申告。
とりあえず、この正体不明の亜人に 誰かに危害を加える力は無いらしい。
そのことがわかると、コルベールは生徒たちを教室へ向かうように促す。

そして……
『フライ』の魔法で校舎に飛んで行った生徒たちはともかく、
ミス・ヴァリエールと その使い魔まで いつのまにか姿を消していることに気づいたコルベールは、
ルイズの使い魔の額に刻まれたルーンが珍しいものだったことを思い出す。

「……あ、スケッチ……」

その頃、トリステイン魔法学院内のどこかの廊下を、やや筋肉質になった桃色の髪の小柄な少女が 双眸を金色に輝かせながら歩いていた。

(十代……どこにいるんだ……十代……)


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