あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

アノンの法則-04


「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
食堂の蒙華絢燗さに驚いて、ぽかんとしているアノンに、得意げに指を立てて、ルイズが言った。
「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ」
「へぇー」
「わかった? ホントならあんたみたいな平民はここには一生入れないのよ。ほら、いいから椅子をひいてちょうだい。気の利かない使い魔ね」
「ああ、うん」
アノンが椅子を引いてやると、ルイズは礼も言わずに腰掛ける。
アノンも隣の椅子を引き出して座った。
「しかし、朝からずいぶん豪華なメニューだね」
テーブルを見渡して、アノンが感想を述べる。
その肩を、ルイズがぽんぽんと叩いた。
「ん?」
ルイズは床を指差した。
そこには、なにやら貧しいものが乗せられた皿が一枚。
「これは?」
「あのね? ほんとは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」
まるで犬か猫のような扱いだ。
だが、使い魔とはそういうものなのかと、アノンはおとなしく床に腰を下ろした。
とは言え、皿の上にあるのは、小さな肉のかけらが浮いたスープと硬そうなパンが二切れだけ。
これではとても足りない。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
祈りの声が、唱和される。
(シソブリミルって誰だろ?)
そんな疑問を抱きながら、アノンは目をつむって祈りを捧げるルイズの皿から、鶏肉をつまみ上げて口の中に放り込んだ。

ルイズとアノンが中に入っていくと、先に教室にやってきていた生徒たちが一斉に振り向いた。
いつもならここで、馬鹿にした視線と、くすくす笑いが聞こえてきそうなものだが、今日はそうではなかった。
二人が教室に入ってきた途端、使い魔たちが一斉に騒ぎ始め、生徒達はルイズどころではなくなってしまったのだ。
唸り声を上げて暴れだす使い魔もいれば、怯えたように主人の影に隠れようとするものもいる。
今朝会ったキュルケもいたが、彼女の使い魔も椅子の下に頭を突っ込もうとジタバタしていたため、こちらには気づかなかった。
ルイズは不思議に思ったが、アノンは気にした様子もなく、ルイズに尋ねる。
「あの目の玉のお化けはなに?」
「バグベアー」
「あの、蛸人魚は?」
「スキュア」
ルイズは答えながら教室を歩き、席の一つに腰かけた。
アノンも隣の椅子に座った。ルイズが睨む。
「なに?」
「ここはね、メイジの席。使い魔は座っちゃダメ」
「使い魔ってずいぶん不便なんだね」
アノンは、ぼやきながら食堂と同じように床に腰を下ろした。
扉が開いて、紫色のローブに身を包み、帽子を被った中年の女教師が入ってきた。
その頃には、主たちの努力の甲斐あって、使い魔たちはどうにか落ち着きを取り戻していた。


「あの人も魔法使い?」
アノンはルイズに呟いた。
「当たり前じゃない」
中年の女性は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
ルイズは俯いた。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
シュヴルーズが、アノンを見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。
使い魔たちだけは、凍りついたようにじっとしていたが。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
そんな声が聞こえ、ルイズは立ち上がって怒鳴った。
「違うわ! きちんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう!」
ゲラゲラと教室中の生徒が笑う。
「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱したわ!」
「かぜっぴきだと? 俺は風上のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないそ!」
「あんたのガラガラ声は、まるで風邪も引いてるみたいなのよ!」
マリコルヌと呼ばれた小太りの生徒が立ち上がり、ルイズを睨みつける。
シュヴルーズが手に持った小ぶりな杖を振った。立ち上がった二人は糸の切れた操り人形のように、すとんと席に落ちた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」
ルイズはしょぼんとうなだれた。
「お友達をゼロだのかぜっぴきだの呼んではいけません。わかりましたか?」
「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」
くすくす笑いが漏れる。
シュヴルーズは、厳しい顔で教室を見回し、杖を振った。
くすくす笑いをする生徒たちのロに、どこから現れたものか、ぴたっと赤土の粘土が押しつけられる。
「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」
(なかなか便利そうだな…)
アノンは初めて見る空を飛ぶ以外の魔法を、興味深げに観察していた。


「では、授業を始めますよ」
授業内容はごく初歩的な、系統の数や種類、その役割を確認するものだったが、魔法の知識がほとんどないアノンにとってはかなり有用な物だった。
(なるほど、魔法は『火』『水』『土』『風』『虚無』の五つの系統から成り立ってると。あ、でも『虚無』は失われたんだから、実質四つか。で、あの人は『土』の魔法を教える先生ってわけか)
口の中でブツブツ言いながら、真剣に授業に聞き入るアノン。
それぞれに固有のものが与えられていた能力者の“能力”とは違い、魔法とはある程度決まった技術を習得していくものらしい。
(メイジでもないのに、魔法の授業が面白いのかしら?)
そんなアノンを、ルイズは変な目で見た。
次にシュブルーズは『錬金』の魔法の説明をして、杖を振る。
すると、ただの石ころが、光る金属へと変化した。
「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」
キュルケが身を乗り出した。
「違います。ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの……」
ごほんと、もったいぶった咳をして、シュヴルーズは言った。
「『トライアングル』ですから……」
「ルイズ」
アノンはルイズをつついた。
「なによ。授業中よ」
「スクウェアとか、トライアングルとかって、どういうこと?」
「系統を足せる数のことよ。それでメイジのレベルが決まるの」
「それってどういうこと?」
ルイズは小さい声で説明した。
「例えばね?『土』系統の魔法はそれ単体でも使えるけど、『火』の系統を足せば、さらに強力な呪文になるの」
「なるほど」
「『火』『土』のように、二系統を足せるのが、『ライン』メイジ。シュヴルーズ先生みたいに、『土』『土』『火』、三つ足せるのが『トライアングル』メイジ」
「同じ属性を二つ足す意味はあるのかい?」
「その系統がより強力になるわ」
「なるほど。つまり、あの先生は『トライアングル』だから、強力なメイジというわけだね?」
「そのとおりよ」
「じゃあルイズのクラスは?」
ルイズは黙ってしまった。

そんな風にしゃべっていると、シュヴルーズに見咎められた。
「ミス・ヴァリエール」
「は、はい」
「授業中の私語は慎みなさい」
「すいません……」
「おしゃべりをする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
シュブルーズがそう言った途端、教室が騒がしくなった。
みんな口々に、やめろだの危険だなどと言っている。
その声に反発するように、ルイズは勢いよく立ち上がった。
「やります、やらせてください!」
そして、緊張した顔で、教室の前へと歩いていく。
アノンは、ルイズの魔法をまだ一度も見ていなかったので、少し楽しみだった。
隣に立ったシュヴルーズは、にっこりとルイズに笑いかけた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
頷いて、ルイズが手に持った杖を振り上げる。
その時、アノンは何かを感じた。漠然とした、形にならない感覚。
「なんか、この場所イヤな感じだなぁ…」
誰にともなく呟いて、アノンは頭を下げた。
ルイズが杖を振り下ろした瞬間、机ごと石ころが爆発した。
爆風をモロに受けたシュヴルーズが黒板に叩きつけられ、教室のあちこちから、悲鳴が上がる。
驚いた使い魔たちが暴れだし、教室は瞬く間に地獄絵図と化した。
「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」
「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「俺のラッキーがヘビに食われた! ラッキーが!」
シュヴルーズは倒れたまま動かない。
もしかしたら、あれは死んでいるのかもしれない。
「ちょっと失敗したみたいね」
教室の大騒ぎを意に介した風もなく、ルイズは淡々とした声で言ってのける。
机の下で難を逃れたアノンは、ルイズヘの評価を大幅に修正した。



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