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mission 06「The Landing」


 多勢に無勢の戦況において、少数の集団が狙うのは敵司令塔の撃破だ。
 特に現在のレコン・キスタは、勝ち馬に乗っているだけの烏合の衆である。頭を潰すのが有効であろう事は容易く想像できる。
 ただ、その頭を潰す手段が無いのが、トリステインの現状なのだ。
「それで、手があるといっていたが、どうするんだ?」
 自分たち傭兵が配置された前線でアニエスが尋ねる。視線の先にはもう手の届きそうな距離にまで迫った敵の前線部隊と、空に展開した艦隊に竜騎士隊が広がっている。
 上層部としては捨て駒のような扱いなのだろうが、擬似魔法を扱える彼ら傭兵部隊の方が、正規部隊より遙かに有効の筈だ。
「G.F.を使う」
「G.F.を?確かにG.F.は強力だが……」
 アニエスは難色を示す。彼女が今まで見たG.F.は、オークを壊滅させたシヴァと海賊のアジトで使ったケツァクウァトルだけであるから無理もない。
「まだ見せていないG.F.がある。それで……敵の旗艦と艦隊を狙う」
 スコールの目が見据える先には、レコン・キスタの艦隊旗艦レキシントン号があった。


 それは全く現実感のない光景だった。
 圧倒的に不利な戦況。打開策がどうといった話ではない中、マザリーニ枢機卿はおのが目を疑った。
 戦場全域に響くような轟音が大地に響いたかと思うと、遙か東に突如城らしき影が現れた。そしてその城から放たれた16筋の光が弧を描きながら次々と戦場に飛来し、レコン・キスタの艦を貫いていったのだ。
 続けて二派、三派と光条が降り注ぎ、艦隊は元よりその下に展開していた揚陸部隊にも突き刺さってクレーターをあちこちに作っていく。
 異変はそれだけに収まらない。
 上空から銀色の竜が現れたかと思うと、その口からいくつもの火球を放って艦隊を次々と火だるまにしていった。
「あ、あれは……」
「俺たちの……味方、なのか?」
 本営近辺に居る兵達は皆、戸惑いの表情を浮かべたまま互いに顔を見合わせる。
(ならば……いっそ)
「諸君、見よ!」
 今こそが最高のタイミングだと見切り、枢機卿は声を張り上げた。
「あの竜こそ、始祖ブリミルの使い魔、ヴィンダールヴの使役したという竜に違いない! これは、始祖の認める戦いなのだ!我らが祖国、トリステインにこそ勝利という名の栄光が相応しいと、始祖がお認めになったのだ!」


「G.F.召喚 アレクサンダー、聖なる審判」
 戦場のただ中にあってスコールの与えた初撃は、レコン・キスタの左翼を強かに打ちのめした。
「トルネドっ! ――城……! あれもG.F.か!?」
 混乱に陥っている敵の一団を上空へ吹き飛ばしながら、巨体を見てアニエスが尋ねる。
「そうだ。まずは敵の空中戦力を掃討する」
 槍兵が突きかかってくるのを皮一枚でかわしきり、返す太刀で切り伏せる。
『へぇ、G.F.ってこういう使い方も出来るんだねぇ……』
 これまでは基本的に直接戦闘でばかり使ってきた。というか、バハムートやアレクサンダーを入手した後ではこうした数と数の戦いが起きなかったので、活用する間もなかったのだが。
「……態勢を整えたな」
 二度三度と砲撃を加える内に、艦列を整え直し回避行動を取り始めた艦隊を見てスコールはアレクサンダーを引かせる。
「G.F.召喚 バハムート」
 続けて呼び出すは王の名を冠する竜。
 雲を突き抜け降下してきたバハムートが、口から放つ火球で再び艦隊を襲う。
 アレキサンダーよりも遙か至近で放たれる火球に、回避運動は到底間に合わず、艦隊瞬く間に火達磨にされていく。
 そこでライオンハートを下ろし、スコールの左腕は狙いを定める。
「メガフレア」
 その腕の指し示す先には、神聖アルビオン帝国艦隊旗艦レキシントン号。
 バハムートは深呼吸でもするかのように体を大きく仰け反らせ、ひときわ太い炎の柱を口から吐き出した。
 それはレキシントン号のメインマストと甲板そして船底までを、まるで熱したナイフがバターを切るかのようにあっさりと貫通させ、更に地上へ降り注ぎ大爆発を引き起こした。
「――これが……G.F.の力……」
 突如として戦場に発生した光に、手をかざして眩しさを和らげながらアニエスは呟いた。
 事情を知っている彼女でこれなのだから、周りは既に混乱の坩堝だ。
 だがそこで、後ろ――つまりトリステイン陣営から鬨の声が上がると共に、温存されていた500の兵が突撃してきた。
「行ける……行けるぞ!」
 アレクサンダーとバハムートに痛手を負わされた敵の本陣は、回復にはほど遠く、艦隊も潰されて指揮系統も滅茶苦茶である。
「勝てる!」
「勝負を決めに行くぞ、アニエス」
 メインマストを失い、浮力を維持できなくなったレキシントン号がゆっくりと降下してきていた。
「敵の頭を取る!」
 レキシントン号の軌道を読んでスコールが駆け出す。
「ああ!」
 アニエスもそれに続く。
 艦隊が崩壊し、混乱の極みに達している戦場を駆け抜けるのはさほど難しいことではなく、敵兵の血で進む道を舗装しつつ一直線に進んでいく。
「ドロー レビテト!」
「レビテト!」
 座礁した巨艦が眼前に迫ったところで、スコールは手近なメイジからドローして、アニエスは手持ちを使って体を浮かせ、斜めになった船体の上へ舞う。
「はぁっ!」
 飛び込みざま、邪魔な一兵を切り伏せつつ走り続ける。
「雑魚に用はない! 艦隊司令は何所だぁっ!」
 後に続きながらアニエスは叫ぶ。
 アニエスの気迫に押されたか、あるいは一撃で人間を真っ二つにするスコールに恐怖を覚えたか、ほとんど妨害を受けることなく二人は船内へと突入した。
「迎え撃」
「サンダー!」
「ぎゃああああああっ!」
 迎撃に来たメイジに先んじてアニエスは雷を打ち込み、初撃から外れていて尚かつ冷静にファイア・ボールとエア・ハンマーを打ち込んできた連中は、スコールが前に出て全て受けきる。
 そのまま距離を詰めてライオンハートが暴れ回る。
「くっ! ひ、ひけぇっ!」
 そこからはスコールの提案により、意図的に距離を置いての追撃戦に移行する。防衛側は無意識のうちにその防衛網を『最も守るべき場所』へと後退させていった。
「ぐぇふ……」
「……この扉か?」
「おそらくな」
 くずおれた最後の兵の向こう側には、明らかに他とは違う観音開きの扉があった。
「しかし、お前の知識は役に立つな」
 腰に収めている手鏡の柄をつっと指で撫でしみじみと呟く。
「単なる戦術の一つだ。……突入する」
 ライオンハートで扉を叩ききり、蹴破ってスコールが飛び込む。
「ファイア・ボール!」
「ライトニング・クラウド!」
「エア・ハンマー!」
 次々にスコールの体へ火の玉と雷、空気の固まりがぶつけられるが、それらは全てスコールの属性防御で阻まれる。
(今のが風のトライアングル以上が使えるというライトニング・クラウドか……雷を防御していて良かったな)
「な」
「何で効い」
「遅い、トルネドっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 続けて突入したアニエスが唱えた擬似魔法によって、待ちかまえていた三人のメイジは次々に暴風で打ち上げられ、部屋の屋根に突き刺さっていく。ぴくりとも動かないのは気絶したのか死亡したのか。
 残ったのは一人の男
「貴様が艦隊司令かっ!」
 ……と、何故か少女が一人。
「いかにも、私が艦隊司令のジョンストンだ。よくも私が皇帝陛下よりお預かりした艦隊を、滅茶苦茶にしてくれたな! トリステインの者ども! しかも乗り込んできたのが名もない傭兵メイジとはな……だが動くなよ! 動けばこの娘が! どうなっても知らんぞ!」
 ブレイドがかけられているらしい杖を少女の首筋に当てる。
「は、離しなさいよっ!」
「暴れるな!無駄に傷つくことになるぞっ!」
 そのあまりに奇妙な光景にアニエスは首をかしげた。
「誰だ、あの娘」
「あいつは……!」
 そこで後ろから息を飲む声が聞こえる。
「知っているのか、レオンハート」
 思い出さぬよう常に意識の外に置いては居たが、あの桃色の髪を彼が忘れるはずがなかった。
『あ……もしかしてこの子って……』
(あの髪の色……背格好、おそらく間違いない)
「アンタは……!」
 2ヶ月ぶりにその視線が交わる。
 無論彼女の方も、額に傷のあるその顔を覚えていた。
「あの時の平民!」
「この娘は、ラ・ヴァリエール公爵の三女だ! ……もし貴様ら傭兵ごときのために死ねばどうなるか……!」
 マントを付けていない格好から判断したか、ジョンストンは口元に笑みを浮かべて二人を見る。
「そうだ。ヴァリエール、だ」
「まさか! 本物なのか!?」
「……悪いが、確証まではない。2ヶ月前、ほんの一時間ほど顔を合わせただけで、顔や細部は覚えてないんだ」
「お、覚えてないですってぇ!?」
 人の苦労を知りもしないスコールの反応に、ヴァリエールは目をつり上げる。
「では偽物の可能性も……?」
「私は本物よ!」
「そ、そうだとも!」
 アニエスの懸念に、ヴァリエールとジョンストンが全力で主張する。
(いや、これは……)
「……おそらくは本物だろう。彼女は魔法学院の生徒で、いわば非戦闘員だ。こんな所にいるのはおかしい」
「それでは偽物なのではないか?」
「そ、それは! 私が姫様の……」
「だからだ」
 ヴァリエールの抗弁は聞かずに、スコールは断じる。
「もし騙す気があって偽物を使っているのなら、もう少し信憑性の高い、戦場にいてもおかしくない人物を人質に仕立てているはずだ。予期しない窮地に陥ったため、理由は判らないが、側にいたヴァリエールを人質にした、というところだろう。
 そもそもヴァリエールを知っている俺が一番にここに来たのは単なる偶然に過ぎない。知らない奴が来ていれば、躊躇もせずまとめて斬り殺していた可能性も高いだろう。ヴァリエールの姿を執るのは無意味だ」
 容赦のないスコールの批評にヴァリエールもジョンストンも息を飲む。
「ではあれは本物……そうか」
 ようやく合点がいったとアニエスが目を見開く。
「ヴァリエール公と王宮の仲が険悪なのは、あの娘がレコン・キスタの手に落ちていたためか! それならば納得がいく」
「ええ!? お父様が、王宮と!?」
「フッハッハッハ! 何やら面白いことになっていたようだな!」
「あんた達が脅迫してたんじゃないのか」
 今更ながらライオンハートを鞘に収めつつ尋ねる。
「そのような事は知らん! だが都合が良い……フネが飛べない以上、この娘の領地へ落ち延びさせてもらおう!」
「そうはさせないわ! あなた達、私に構わずこいつを切りなさい! トリステインの為に命を捨てる覚悟は出来ているわ!」
「断る」
 にべもなくスコールは目を逸らしながら言った。
「あんたはそれで良いかも知れないが、見殺しにした俺たちが貴族に追われたらたまらない」
「なっ……! わかってるの!? こいつを逃がしたら……!」
「……別にどうにもならんと思うが」
 こちらも剣を鞘に収めながらアニエス。
「確かに俺たちは決着を計るためにここに乗り込んできたが、艦隊が壊滅した時点で既に戦いの趨勢は決している。ここに来るまでの艦内でもかなりの数の将校を倒してきた。指揮系統も滅茶苦茶な今、あんたはただの一メイジに過ぎない。さほど重要なわけでもない」
「お、おのれ好き勝手良いおって……! っ……だ、騙されんぞ。そうして挑発させて杖をそちらに向けさせるつもりだろう!」
 感情のままにスコール達に杖を向けそうになるのをすんでの所で押さえたらしい。別にそんな意図はなかったのだが。
「だがレオン、このまま逃して良いのか。外はあの通り乱戦だ。私たちが見逃しても、下手をすれば二人とも巻き込まれて死ぬぞ」
 二人で扉を開けるように左右に分かれながらアニエスがスコールに言う。その台詞に司令は顔を引きつらせる。
「判ってる。非戦闘員の彼女を見殺しにするのも気が進まないし、それが原因でおかしな言いがかりを付けられたくもない。だが……」
(どうすればいい……)
 貴族に対しての平民の態度がうんぬんかんぬんとヴァリエールが怒鳴っているのを余所に、スコールは思考を走らせる。
 実は、全く手がないわけではない。ストップで二人まとめて時間を止めれば何の危険もなく事態は解決する。
 ただし、問題がある。
 現在のスコールは、魔法を自由自在に使えるという訳ではないのだ。ここ、ハルケギニアでは生態系も全く異なっているため、未だに特定の魔法はドロー出来る対象が見つかっていない。時空魔法のストップも、入手できない魔法の一つだ。
 スコールは、こうした魔法の使用を制限していた。こちら側に来てからは一度として調達不可能な魔法は使っていない。魔法の使用は、ジャンクションシステムを利用している以上、微弱ながらもスコール自身の弱体化に繋がるのだ。
 ラグナ達が自分たちの力を駆使していたことを思い出して、アーヴァインの持っている魔法を引き出そうとするが、
『うーん、どうも上手く行かないねぇ』
 スコール自身が自前で魔法を持っているせいだろうか。
 HPの書、力の書等G.F.に使用する書系のアイテムがあれば調達は容易いのだが、生憎と持ち合わせは一つもないし、流石のG.F.トンベリもエスタのペットショップをここまで呼ぶことは出来ないようだ。
(……トン……ベリ)
 ハッとした表情でおもむろにスコールは懐へ手を入れると、カードの束を取り出した。
「おい、トリプル・トライアドなどどうするんだ」
「まだ方法があった。ヴァリエールを無傷で助け出す方法が」
 そう言うスコールが束の中から抜き取ったカードには、トンベリキングが描かれていた。
「負け惜しみを! そんなカードで何をするというのだ!」
「ケツァクウァトル、カード変化」
 スコールの手の中でカードが形を変え、一本の刃物になった。
「なっ!?」
「えええええ!?」
 スコールの常識外れな技能は見慣れていたアニエスですら、驚愕は隠せない。
「ナイフ? いや……これは……」
「ほうちょうだ」
 …………
 嫌な沈黙が場を支配する。
「……投げるのか?」
「それは効きそうだな」
 モノがほうちょうだけに。
「きゃうっ!」
 ジョンストンが無言でヴァリエールを高い位置まで引き上げる。頭から胸までを守れるように。
「だがこれは、こう使う。アニエス、受け皿になってくれ」
「は?」
「セイレーン、生命魔法精製」
 アニエスに向かって掲げられたほうちょうは、見る間にその体積を減らしていき、それに伴って現れる小さな光は、全てアニエスに吸い込まれていった。
「……この魔法は……こんな魔法があったのか!?」
「あんたにとっても、役立つ魔法じゃないか?」
「!」
 その言葉に息を飲む間に、スコールは腕を二人へ向けて突き出していた。
「デス」
 すとん、とヴァリエールの体が床に降りる。
「え?」
 振り向く彼女の目の前で、瞳孔の開ききったジョンストンの体がゆっくりと倒れていった。
「……! え? え!? ええええええ!?」
 何が起きたのか理解も出来ぬまま混乱しているヴァリエール。
「よし、敵司令を討ち取り、捕らえられていた捕虜の身柄を確保した。脱出するぞ」
「あ、ああ……それはいいが、この娘、どうする?」
 先程スコールが言ったとおり、非戦闘員の少女である。普通に連れたのでは足手まといこの上ない。
「……抱えるか、おぶって行くか」
「それなら私がやろう。相手は貴族だ。男のお前では何かと面倒だろう」
「頼めるか?」
「ああ、私の剣は刃こぼれで使い物にならなくなりかけてるし、私よりお前の方が強い。その方が効率的だろう。連れて行く際の援護を頼む」


「どういう……どういうことなのだこれはぁっ!」
 上空でジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは激高した。
 見たこともない城から放たれた光で艦隊と揚陸隊がやられ、見たことのない竜によって旗艦も落とされた。
 混乱に陥った自軍は、僅かなトリステインの兵に良いようにあしらわれてしまっている。
「くそ……!」
 もはや軍を立て直すのは至難の業。こうなれば、『あの力』を持つ彼女の身柄だけでも確保しておかなければならるまいと、ワルドは馴染んだグリフォンの騎首を座礁しているレキシントン号へと向ける。
 その視界の先、斜めになったレキシントン号甲板上には彼が求める人影があった。
「ルイズ……! だが、何者だ!?」
 その目当ての少女は、見た事のない女に背負われていて、それを庇う形でやはり見たことのない男が立っている。
「トリステインの傭兵か!? くっ……」
 どう行動すべきか迷う彼の目の前で、ルイズを連れた傭兵達が走り出す。その行く先を視線で辿ると
「トリステイン本陣!? 奴ら、ルイズを奪還するつもりか! そうはさせん!」
 グリフォンを低空へ下ろし、進路上に立ちふさがる。
「止まれ! ルイズを置いていってもらおう!」
 ザッと二人組が足を止める。
「ワルド!」
 背負われていたルイズが声を上げた。
「彼女は重要な人物だ。怪我をしたくなければ大人しくこちらに渡してもらおう」
 グリフォンから降りたワルドは、スッとその杖を水平に向ける。
「誰があなたと一緒に! 傭兵、あいつを倒しなさい!」
「言われなくとも……デスを一つもらうぞ」
 不可思議な光芒を放つ剣を構えた男が、ルイズを背負った女の肩に一度手を置いて、正面に立つ。
「アニエス、先に行け」
「わかった。任せる!」
「にがさんぞ!」
 駆けようとする女傭兵の足を狙ってライトニング・クラウドを放った。だが、その杖の先に男の方が割り込む。
「バカめっ!身を挺したところで、一度の盾代わりにしかっ」
 嘲笑うワルドの前で、男は、何事もなかったかのように立ち続けていた。
「!?」
 その間にもルイズを背負った傭兵は走り続ける。
「待て!」
「俺が相手だ」
「少々頑丈なだけで! エア・ハンマー!」
 苛立たしげに杖を向け、今度は空気の固まりを放つが、この男は仰け反りもせず平然とそれを受け止めて見せた。
「貴様……! 何者だ!?」
 二度も自分の魔法を受けて、傷一つ見あたらない男にワルドは恐怖すら覚えた。
「俺は、バラムガーデン傭兵部隊SeeD、委員長のスコール・レオンハートだ」
「傭兵部隊……シード!」
 それはワルドにとって求めていた答えではなかったが、その単語だけは記憶に刻みこまれた。
「君を認めよう。僕の名はジャン・ジャック・フランシス……」
 名を名乗ろうとしたとき、空から四つの光がスコールの周りに降り注いだ。
「なんっ……だ!?」
「!? ……任せる!」
 意味不明の一言を残すと、スコールは踵を返して仲間とルイズを追い始めた。
「なっ……褒めたとたん逃げるか!? 貴様!」
 その背を彼も追おうとしたところで、先程までスコールの居た辺りの地面が盛り上がる。
「今度は何が……!」
 そこでワルドは気づく。先程空から降ってきた光は、剣だった。四降りの剣だった。
 二降りはよく似ている豪奢な剣で、もう二降りは片刃の剣だ。
 そしてその剣に囲まれた地面が、今盛り上がっていく。否、盛り上がっているのは地面ではない。赤い布地が、まるで生えてきたかのようにワルドの眼前に立ちふさがる。
「やれやれ……いつもと違うところに繋がったと思ったら、ここでもない、か……」
 その布地はばさりと一回転し、どこから現れたのか隻腕の巨漢が頭から纏う外套と化した。
「貴様……! 亜人か!?」
「んん? なんだいあんた、この俺とやろうってのかい」
 ワルドにレイピアその物といった外見の杖を向けられて、僅かに覗く外套の下の顔が、笑った。
「なら容赦はしないぜ!」
 巨漢の片腕が、自分の周りの四降りの剣の内の一つ、カーブを描いた片刃をその手に取る。
「亜人如きに手間取るわけにはいかない!」
 距離はまだ空いている。ライトニング・クラウドを放たんと杖を向けるが、亜人はその場で剣を振りかぶった。

         斬

                       鉄

                                       剣

                      斬鉄剣

「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」
 遙か彼方に吹っ飛ばされていくワルドを尻目に、隻腕の巨漢――ギルガメッシュは踵を返す。
「あんた、結構な腕前のようだが……あいつに比べればまだまだだ」
 そう。幾たびも彼が立ちふさがり、そのたびに敗退を繰り返したクリスタルの戦士達。そのまとめ役。
「待ってろよ、バッ……」
 言葉の最後は小声で聞き取れなかったが、ぐっとその手が握り拳を作る。
「どこにあるのか次元の狭間……」
 誰に尋ねるという訳でもない言葉を残し、ギルガメッシュは虚空に消えていった。


――タルブ平原会戦。
 侵攻してきた神聖アルビオン帝国と、トリステイン王国の初の直接戦闘において、緒線で現れた二柱の正体不明のG.F.の存在は流れを作るものでしかなかったとするのが後の戦史研究家の意見である。
 トリステイン側が完全に『勝ち』を得ることができたのは、500余名の擬似魔法を収めた傭兵達の存在に依るものだとするのが通説である。



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