あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-02


 トリステイン魔法学院で執り行われた春の使い魔召喚の儀式から明けた朝――ふがくは
自分を取り巻く景色が変わっていないことにちょっとした絶望感を味わっていた。

「……あーあ。目が覚めたら『元の世界』に戻ってた、なんて期待した私がバカだったわ……」
 ふがくは学院女子寮の屋根の上で、目に映る景色に大きくため息を漏らす。夜空を
彩っていた天空に浮かぶ蒼紅の双月は今は見えないが、昨日激しい痛みで叩き起こされて
からのことがすべて現実だとそろそろ認めなくてはならないとも思い始める……

 ――『ダイニッポンテイコク』?聞いたことないわね。どこの田舎よ?――
 ――元に戻すなんてできないわ!『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけだもの――

 昨夜、ルイズと名乗った桃色髪の生意気な少女が言った言葉がこれだ。
 「火」「水」「土」「風」そして失われた「虚無」と呼ばれる系統に分けられた「魔法」のこと、
そして「メイジ」と呼ばれる貴族階級の存在。貴族については大日本帝国にも存在しているので
ことさら驚きはしなかったが、「魔法」についてはちょっとだけ驚いた。「鋼の乙女」と呼ばれる
兵器である自分が生み出されたのはあくまで「科学」という技術。魔法なんてものは子供向けの
空想漫画くらいにしか出番はないはずなのに、ここではそれが全くの逆になっている。
しかし、ふがくが愕然としたのはそれらのことではなかった。

 ――あんたはわたしの『使い魔』なのよ?ご主人様の命令ならどんなことでも喜んでする……『犬』なのよ!――

 ……冗談じゃない。ふがくは思い出すだけで腹の立つ思いを無理矢理抑え込む。結局
お互い平行線のままふがくが窓から飛び出して――今この有様だった。


 一方、鬱屈としたまま眠りについたルイズは……本来ならば心地よいはずの朝に目覚めた後
でも変わらない部屋の光景に、悲しさを覚えずにはいられなかった。
「……やっぱり戻ってない……いったい、わたしが何をしたって言うのよ……」
 自覚がない、ということは素晴らしいことでもある。昨夜自分が呼び出した使い魔が飛び
出したままで半開きになった窓もそのままに、ルイズはもそもそと着替え始めた。
「……まったく、なにやってるのよ。使い魔のくせに……」
 思わず口に出る。けれど、それで何が変わるわけでもなく、ルイズは重い足取りのまま
朝食に向かうことになった。



「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝
いたします――」
 いつものように祈りから始まる朝食。卓上には大好物の焼きたてのクックベリーパイと
肉がたっぷり入った子羊のスープ。けれど、ルイズの心は晴れなかった。
 理由は単純。使い魔がまだ戻らないからだ。結局アルヴィーズの食堂までの廊下でも
見つかることもなかった。
「……どこに行ったのよ、まったく」
「おはよう!ルイズ。……あら?あの使い魔はいないの?」
 落ち込むルイズにかけられる声。声の方向に顔を向けると、そこにはルイズと正反対に
豊満なスタイルを隠すこともない赤い髪と褐色肌の長身の女生徒と、まだ眠いのか開いた
本を手にしたままあくびを隠さない青い髪に雪色肌の小柄な女生徒がいた。
「むっ。キュルケ……」
 声の主に対してルイズは露骨にいやな顔を向ける。その様子に何か思い当たる節が
あるのか、赤い髪の女生徒、キュルケはにんまりと微笑んだまま言葉を続ける。
「昨日の様子からして、もう逃げられたの?せっかく呼び出した使い魔さえ御せないなんて、
さすがルイズね」
「ち、違うわよ!フガクは……」
 そう。ヴァリエール家にとって不倶戴天の敵ともいえる、隣国ゲルマニアの有力貴族
ツェルプストー家のキュルケはどんな運命のいたずらなのかルイズの隣室なのだ。昨夜の
どたばたの一部始終を聞かれていたとしても不思議ではない。もっとも、聞きたくなくても
聞かれてしまうくらいの大声だったことにも問題はあるのだが……
「ふうん。昨日はよく聞き取れなかったけれど、『フガク』っていうの、あの使い魔。タバサの
ウィンドドラゴンもすごいけれど、フガクもかなりのものだったわね。一度競争させて
みたいけれど」
 キュルケに話を振られた小柄な女生徒、タバサはそんな話には興味がないとばかりに
小さな声で言葉を紡いだ。
「朝食……早く……ちこく……」
「そうね。ルイズと遊んでいる暇なんてなかったわね。
 ちょっと!お茶ちょうだい」
 タバサの言葉にキュルケはルイズが座っていた席に腰を下ろして近くにいた黒髪のメイドに
声をかける。その際ルイズが何か言っていたがキュルケは華麗にスルーした。




 かくしてルイズが決して綽然とした、とはいえない朝食を摂っていた頃、ふがくは、といえば――

「……うぅ。おなかすいた……」

 ――召喚されてからこのかた何も食べていなかったため、女子寮の屋根から落ちそうに
なっていた。
 ふがくのような『鋼の乙女』は、元兵器に準じた燃料――たとえば超重爆撃機型のふがくの
場合はガソリン、中戦車型のチハの場合は軽油、戦艦型のやまとの場合は重油などの
定期的な摂取を必要とするが、それ以外にも変換効率は落ちるが普通の食事を摂ることもできる。
もっともそれ以外にもオイルや弾薬など機能維持のために必要なものがあるが、
その入手方法などについて気が回せるほど、今のふがくには余裕がなかった。
「アイツ、大日本帝国のことを『田舎』なんて言ってくれたけど、トリステイン王国、だっけ、
こっちの方がど田舎じゃない。飛行機どころか自動車もないなんて、信じらんない」
 ふがくは昨夜のルイズとの会話を思い出して憤るが、それがまた空きっ腹に響く。いくら
長大な航続距離を誇ってもガス欠ではどうしようもない。
 そんなふがくに、下から声がかかる。見ると、昨日の頭の寂しい眼鏡の中年教師――確か
ミスタ・コルベールと呼ばれていたような――がそこにいた。
「……私に何か用?」
「おお、気づいてくれましたか……えー」
「ふがくよ。それで、何か用?」
「フガク君か。すまないが、君の左手のルーンをもう一度見せてもらおうと思ってね。
ミス・ヴァリエールとは一緒ではなかったから探していたんだ」
「私は『ふがく』よ。『フガク』なんて呼んだら承知しないわよ」
 ふがくは言いつつ屋根からコルベールのいる場所に降りる。わずかな発音の違いだが、
ふがくには何故かそれを許容できなかった。またふがくの背中の翼から響く6発のエンジン音の
コーラスにコルベールは興味を引かれ最初の話もどこへやら、となりかけたが、これは
ふがくが本道へ戻す。
「そ・れ・で?私の左手が見たいんじゃなかったの?ミスタ・コルベール?」
「……いや、失礼。と、いつ私の名前を言いましたか?」
「昨日私の前でアイツが呼んだでしょう?ぼんやりとだけど覚えてたから……間違った?」
「いえ。合ってますよ。しかし、ミス・ヴァリエールを『アイツ』とは、感心できませんね」
 そう言って、咎めると言うよりは諭す視線でふがくを見る。身長差からどうしても
コルベールがふがくを見下ろすことになるが、ふがくは気にも留めなかった。
「そう言われたくなければそれなりの態度を示してほしいわね」
「はは、私からも注意しておきましょう。それでは……」
 そう言ってコルベールはふがくの手を取りルーンをスケッチする。そのとき、ふがくの
おなかがかわいらしい音で鳴いた。


「うぅー……」
「ミス・ヴァリエールは君に食事の用意もしていなかったのか……その様子だと私たちと
同じ食事でよさそうだね。
 ……アルヴィーズの食堂はもう昼の準備に入っているかな。案内するから何か作って
もらうといい」
「え?それはうれしいけど……何か裏はない?昨日とはずいぶん扱いが違うんだけど」
 ふがくが言う。昨日のように人の意見を聞かない扱いであれば、そもそも地面からふがくを
呼ばないで直接屋根まで飛んできて左手をつかんでいたことだろう。それをせず、しかも
昨日と違ってふがくのことを名前で呼ぼうとしている。これだけあからさまでは何か裏が
あると思うのが普通だろう。
「あはは……いやぁ、確かに、ふがく君、という発音でよかったかな?君の持っていた杖を
始め君自身についても興味は尽きないけれど……」
「けれど?何?」
「……まず、ふがく君、君が話の通じる相手だと思っていること。そして、何よりミス・ヴァリエールが、
先ほど授業に遅れそうになるのもかまわず君を捜している姿を見ましてね。さすがに
女子寮の屋根にいるとは思っていなかったようですが、ふがく君のことをずいぶんと気に
しているようでした。その証拠に……ほら、ミス・ヴァリエールの部屋を見てご覧なさい」
 コルベールはそう言って女子寮を指さす。すると、授業中で誰もいない女子寮の一室、
そこの窓だけが開いているのが見えた。
「ルイズの部屋の窓が……開いてる?」
「君がいつ戻ってきてもいいように、ですよ。ミス・ヴァリエールは意固地なところもありますが、
決して悪い人間ではありません。ですから……」
 コルベールがそこまで言ったとき、どこかから大きな爆発音が響いた。
「……今のは?爆撃?」
「向こうの塔です!おそらく、ミス・ヴァリエールが魔法をしっぱ……」
 コルベールが言葉を言い切る前に、ふがくは空腹も忘れてエンジン音も高らかに空に
舞い上がっていた。上空から学院を見ると、確かに中央のひときわ高い塔を囲む5つの
塔の一つから煙が上がっている。爆風が抜け破れた窓からふがくが飛び込むと、そこは
煤と埃にまみれぼろぼろになった教室。その爆心地と思われる場所に煤まみれになった
ルイズが放心状態で座り込んでいた。
「……ルイズ!」
 ふがくがルイズに駆け寄る。煤まみれで服もぼろぼろだったが、体はかすり傷すら負って
いない。近くにおとぎ話の魔女のような格好をした中年女性が目を回して倒れているが、
こちらも命には別状ないようだった。
「あ?フガク?えっ……と。ちょっ……と。失敗……しちゃったみたい……ね?」
「昨日も言ったでしょ?私は『ふがく』だっ……て……?」
 ルイズがポケットからハンカチを取り出しながら言う。その言葉に爆風で倒れた机から
這い出した生徒たちがふがくの言葉をかき消さんばかりに次々と口なじる。
「どこが『ちょっと』失敗だ!」
「いい加減にしろー!」
「いつだって成功の確率『ゼロ』じゃないか!」
「魔法の才能ゼロのルイズ!」
 次々と投げつけられるそれらの言葉にふがくも面食らう。いったいどういうことなのか?
ルイズを見ると、顔の煤と埃を拭きながら頬を赤らめごまかすような表情をしていた。
「なんなのよ、これ……?」
 ふがくの疑問に答えてくれる人間は、今この場にはいなかった。



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