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ゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~-20


宝物庫の中は酷い有様になっていた。腐り落ちた岩に潰された槍の残骸は原型を留めておらず、
その近くにあった品々も、超高温に曝されたかのように解け落ちていた。
シルフィードの背から降り立ち、九朔とタバサは宝物庫内へと進入する。
先程よりはマシになったとはいえ腐臭は今も漂っており、胸の悪くなるようなその臭いに眉を
顰めつつ二人は宝物庫内を行く。
「酷いな……何を盗られたかすら分からんぞ、これでは」
荒らされた宝物庫内を見て九朔は呟く。しかし、それを意に介さないようにタバサは奥へと
突き進んで行く。
「タバサ?」
「フーケの仕業なら、盗んだ証を残す」
そう一言。進むタバサを追うように九朔はその後ろをついて行く。
「しかし、どうにも只の瓦落多ばかりのように見えるな」
「オールド・オスマンの趣味もある。実際に魔力の込められたマジックアイテムもある」
「なるほどな。しかし、魔力……なぁ」
そう呟く九朔の瞳には、よどんだ霊気の淀みが見えていた。大気の歪みの様に見える霊気は、
明らかに先ほどの巨人の影響だろう。まるで混線したラジヲ電波のように異界色の魔力が
絡み合っていた。
(やはり、あの蛆虫と一戦交えて以来取り戻しつつある……か)
記憶の虫食いは未だあるが、それでも身に宿る力に実感がある。
「あった」
「ん?」
前方からのタバサの声。見上げれば、壁に見慣れない文字が書かれていた。
「なんと、書いてあるのだ?」
「『破壊の杖、確かに領収しました。土くれのフーケ』」
「破壊の杖?」
「私も知らない。恐らく、宝物の一つ」
振向いたタバサの無表情な瞳が九朔を見た。
「でも、あれは話に聞くフーケとは違う」
「どういうことだ?」
「それは――」

「だあああああああらっしゃあああああああああああああああああああああああああ!」

「!?」
「な、なんだ!?」
突如宝物庫に響き渡る絶叫、というかシャウト、というか。
辺りを見回すが、声の主はいない。あるのは瓦落多の剣やよく分からない本や、本当に
ナニに……ではなくて、何に使うのか分からないようなものばかり。
「いきなりアレか! アレだよ! 出番カットというか出オチというか、登場して一秒退場
 というか! いや、そもそも俺が出てこなかったりするのはどういうことでぇ!?
 そんな役回りばかりの俺にだって愛の手はあってもいいだろうがぁ! というか、ヘルプ!
 誰かヘルプ! 俺にも活躍を! 活躍する機会を! 俺が俺として活躍する機会を誰か
 くれよぉぉぉぉぉぉおおおおお!」
「…………」
「…………」
宝物庫内に冷たい風が吹いた。呆気にとられたというのが正しい気もするが、なんというべきか、うん、口にするのも億劫な気分だった。
「タバサ、教師達は?」
「すぐに来るはず。若干、遅い」
「ああ、そうか。ならば……行くか」
「うん」
宝物庫に出来た穴から退散しようかと、きびすを返す九朔達。が、
「って、こら! 待ちやがれい! いや、待ってください! というか逃げないでぇ!」
再び叫び声、今度は切実な感じ。
「……」
「……」
「おお、止まったか! 止まってくれたか! いやぁ、やっぱ持つべきは良き隣人って言った
 もんだよなぁ……ああ、涙がでてくるぜぃ――って、俺、涙なんてでねぇんだった、
 てへっ(はぁと)」
一人漫才、誰も聞いてはいないというのに。

「……行くか」
「分かった」
「って嘘だからァァァ! 待て! とにかく待て! 本編にいるのにアニメでだけ存在を
 消されるような真似とかされるの嫌だからちょっち待ってェェェェェェェっっ!」
大きな溜息が九朔からこぼれる。
「……我としては、すごく無視してやりたい気分なんだが」
「おい、聞こえたぞ!? 無視とかやっちゃいけないって親から習わなかったか!? 人には
 親切しましょうって、習ったろ!?」
「すまん、覚えてない」
「ひどっ!」
「記憶喪失だからな」
真実である。
「わ、分かった。とにかく俺の話を聞いてくれ。落ち着くからよ、テイクイットイージーって
 やつだ。分かるよな?」
「……ああ、分かった分かった。分かったからとっとと姿を現せ」
「いや、もういるんだけど?」
「何処だ?」
「ここ」
「何処だ?」
「だからココだって」
「だから、何処だ」
「ほれ、ここだ」
「…………」
非常に人の神経を逆撫でるのが得意のようだ。心の広い大十字九朔といえども実にイラっとくる
気分である。
「帰るか」
「待ってぇぇぇぇ! ここ! ここだから! イラストなしだから分かりにくいの分かるけど!  文章にして書かないと分からんのはすっごい分かるけど! 俺の声は『壁に立てかけた剣の
 束の中から』声が聞こえてるから!」
「メタか」
「メタ?」
「いや、こちらの話だ」
軽く頭を抱えつつ九朔は言われたとおり『壁に立てかけた剣の束』に近づいた。
「で?」
「ここ」
そこでようやく、その声の主を見つけた。何十本と束ねられた剣の中から錆の浮いた剣を
引きずり出し、九朔は語りかけた。
「汝がか」
「おうよ、坊主! いやー、一瞬本当にこのままフェードアウトかと思ったが、そんな事は
 なかったぜ!」
実に歓喜に満ち満ちた声だった。
「インテリジェンスソード」
「ん?」
横を見るとタバサが剣を指さしていた。
「魔法使いが魔力を込めたマジックアイテム、珍しい」
「そうか」
「おう、その通りよ! この俺、デルフリンガーさまはそりゃもう大昔に作られた剣よ!」
鼻高々に(といっても剣だが)自分を誇るデルフリンガー。
「その割には、只の錆ついた剣のようにしか見えんがな」
「お前さん、口悪いね」
「本当のことだろ」
「まあ、そーだがね……って、ちょい待った。お前さん、どこかであった事ねえか?」
ひどく突飛な質問に九朔が首をかしげる。
「いや、汝とは今が初対面だ」
「あっれぇ? な~んかお前さんとは初めてのような気がしねぇんだけど」
ぶつぶつと呟くデルフリンガー。と、そこでようやく宝物庫の扉が開き、人が雪崩れ込んできた。

「何事ですか!?」
「ふむ、どうやら手酷くやられたようじゃの」
先頭にいたのは、コルベールとオスマンだった。人波に呑まれぬよう下がった九朔とタバサへ
二人は視線を合わせる。
「おや、君はミス・ヴァリエールの……それに隣は」
「ミス・タバサじゃな」
宝物庫の各所へ行く教師陣。その中でオスマンとコルベールが二人を手招く。それに従い、
宝物庫の外へ九朔とタバサは出る。
「コルベール殿、こちらは……?」
「このお方はオールド・オスマン。この学院の学院長だ」
そうして紹介される老人へ九朔は視線を移す。
九朔としてはコルベールの方は何度か会い、話した間柄だが、この老人は初めて見る顔だった。
「始めましてじゃの」
「こちらこそ、お初にお目にかかる」
傍目には白髪に白の口ひげを蓄えた老人にしか見えないその姿。だが、ただの老人ではない。
刻まれた皺、にじみでる何かが九朔にそう感じさせた。
「で、じゃ。先ほどの話なのだが、ミス・タバサ、それに――」
「九朔。大十字九朔だ」
自分の名を告げる。
「そうか。ミスタ・クザク、ミス・タバサ。話を聞かせてもらいたいのはやまやまなのじゃが、
 今日のところはこの状況、落ち着かぬにも程があるのでな。明日、学院長室まで頼めるかの?」
そう告げるオスマン。互いにタバサと九朔は顔を見合わせ頷く。
「我は別に構わぬ」
「同じく」
が、しかし
「ちょい待った、ジジイ! 俺様はどうなるんでい!?」
デルフリンガーの声がその間に割って入った。
「ほう? インテリジェンスソードか。はて、ミスタ・クザク、お前さんのかの?」
「いや、ここに在った物だが……」
「ふむ」
口ひげを撫で付け、デルフリンガーと九朔を交互にしてオスマンが見つめる。
コルベールもまた、ガンダールヴかもしれないという少年への好奇心と関心で見つめる。
「おい、黙ってねえで何とか言えってんでぃ! こちとら剣であっても飾り物じゃねえぞ!」
「デルフリンガー。汝、相当に口が悪いな」
「へっ、構うもんかい。それよりジジイ! どうすんでえ!?」
「そうじゃのぉ……」
そうして上がるオスマンの顔は――実に良い笑顔をしていた。
「ど~せ瓦落多かなんかだろーし、ミスタ、持ってってくれい」
「はぁ!?」
「はいぃ!?」
無表情のまま黙るタバサと対照的に、驚きの声を九朔とデルフリンガーがあげる。
「待ってくれ! 一応この剣はそなた等のだろう? それを部外者と変わらぬ我が持っていく
 など、おかしいではないか」
「まあ、そうなんじゃがな。この宝物庫、マジックアイテム以外のいらない物とかけっこう
 あっての。その剣、喋れるくらいしかないみたいだし、持ってちゃってえーよ?」
「おいコラ! 誰が喋るしか能がねえだ! 訂正しろい!」
「しかし、良いのか?」
「ええんじゃ、ええんじゃ。それに、今日は忙しくなりそうなんでの、ワシも行かなきゃならん。
 そういう訳でミスタ、後は任せた!」
「あ、テメ! 俺のこと無視すんじゃねえ! 」
そう言うと、オスマンはダッシュで宝物庫の中へと消えた。実に活きの良い老人である。
「それじゃあ、クザク君。ミス・タバサ。私も行かねばならないので」
後を追うようにコルベールもまた宝物庫へと消えて行く。
残されたのはタバサと九朔、そしてデルフリンガー。
「まあ……そういう事だ。デルフリンガー、我と来るか?」
「そりゃ、おめえ。それしか選択肢ねえもの」
「貰える物ならば持っていて損はない」
話すタバサに九朔も頷く。
「確かにな。では、これから頼む」
「こちらこそよろしく頼むぜ、相棒。これからはデルフとでも呼んでくれ」


人は誰しも夜の訪れを迎え、眠りにつく。
それは全ての人に等しく、優しく、容赦なく。
そして、誰もが夢を見る。
「お母様…………」
それは哀しい夢であったり、
「ああん、駄目よダーリン………」
少しいかがわしい夢であったり、
「違うんだ、これは違うんだモンモランシー。ああ、それだけは……アッー!!」
なんか微妙に修羅場ってる夢であったり、
「ギーシュのばかぁ…………」
切ない夢であったり、
「クザクさん……ああっ、そんな、駄目です……うそ、もっとして……」
おめでたい夢であったり、
「やったぁ…………胸がおっきくぅ……ふぎゅ」
憐れみを感じる夢だったりする。
全ての人が各々の夢に浸る中、しかし一人だけ夢を見ない者がいた。
トリステイン魔法学院、院長室。一人の老人が己の眼前にいる『それ』を見据えていた。
周囲には助平ではあるが主には好々爺である彼の顔、しかし今の彼にそれはなく。
生きる活力を失い、ただただ枯れ逝く老木のような表情を浮かべる彼の瞳の奥は疲れきり
磨り減っている。
外から先刻のゴーレムの件で動く人間達の声が微かに聞こえる中、それはそこにいた。
「やあやあ、オールド=オスマン」
それは女のやふであり男のやふである。
彼女があるだけで部屋の中は夜闇の月光さえ差し込まぬ黯黒となる。
彼があるだけで部屋の中は暖炉の暖かさを失い真冬と等しくなる。
外から聞こえていたはずの声も零になる。
世界がそこだけ隔絶する。
それは正しく異形である。
「おやおや、何だかお疲れのようだねマイ・ディア・オスマン?」
それは彼の机に腰掛け、彼に笑む。
酷く虚ろで邪悪な笑みだった。
「ああ、そうか。今日は色々あったからね。疲れるのも仕方のない事ではある」
「何の用じゃ」
暗闇にか細く燃えるランプの焔に照らされ、彼の瞳はそれを見る。
「ああ、怖い怖い。そんな怖い顔をしないでおくれよ」
優しく、彼の肩に手を置く、それ。しかし、それの声が彼の心を安らげる事は決してない。
彼≠彼女はくすくすと質量のない笑い声を上げて彼の瞳を覗きこむ。
「これでも僕は君が結構好きなんだよ?」
目の前に差し出された鉄の表装がついた書、オスマンの眼端が強張る。
その意を理解し、ただその瞳は深く、奈落に沈む。
「………また、なのか」
「ああ、これかい? うん、その通りだ、マイ・ディア・オスマン」
くすくすと、無邪気な哂い声が響く。
「道化は舞台をちゃぁんと整えなければならないからね。狂った舞台を整えなきゃいけない。
 ああ、忙しい。急がし言ったらありゃしない!」
パラパラとその本をめくりつ彼はオスマンへと視線を向ける。そこにあるはずの瞳は
何故かなく、虚ろな眼窩がオスマンを捉えた。

「そして君は……そう、君は今回もいつも通り見届けるだけで良い、君はいつも通り観客たれば
 良いのさ。ね、簡単だろう?」
「そうやって、儂は何時まで見続ければ良いのだ……」
「僕が望む形になるまでずっとだよ、ずっとさ」
「そうか……」
「ああ、そうさ。そうなのだよ」
裂けた様な笑みが彼女に張り付く。
それは彼を牢獄に繋ぐ呪詛、しかし彼の心は既に蝕まれ、冒され、その声に従うのみ。
彼女は彼の背にまわり、愛し子を抱きしめるように彼の首に腕を絡める。
「ああ……あたたかいねぇ、オスマン」
「…うぅ………」
彼の全身を想像を絶する快楽が強引に引き出され、侵して征く。
その中で彼の思考は彼岸の彼方へと押し流される。
その中で彼の精神は解かれ、溶け、原初の海へと還る。
故に、今ここで起きた事を彼は思い出すことはない。
彼の魂にのみ刻まれるだけ。
彼女≠彼は己の腕の中で侵されて征くオスマンの耳元でそっと囁く。
それはとても慈悲深く、とても残酷な彼/彼女なりの愛し方だ。
「大丈夫、きっと今回で全ては終わるよ。安心して良い、何故なら―――」
彼女が指を鳴らすと、遠見の鏡が淡く輝いた。
その先に映るのは蒼銀の髪を持つ少年の寝姿。
「大十字九朔、僕の愛しの騎士殿がいるからさ………」
暗闇に燃え盛る三つの眸が嘲笑する。


曰く、それは黯黒の王である
曰く、それは燃える三眸である
曰く、それは闇に吼えるものである
それは奇怪なる太鼓とフルートの音にまどろむ白痴の王に仕えるもの
また同時にその盲目暗愚たる父を嘲笑するもの
それは千の貌を持つ無貌、混沌の庭に住まうもの

”それ”の名は――――


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