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ルイズとヤンの人情紙吹雪-06


学院長オールド・オスマン。
学院の最高責任者であり、トリステイン王国でも屈指のメイジ。
彼の教え子は王国内外に多く存在しており、その影響力は侮れない。
100歳とか300歳とか言われているが定かではない。
そのオスマンのくつろぐ学院長室のドアがけたたましくノックされる。
「騒々しいですよ。 学院長室の扉を不躾に叩くとは……。 何事ですか」
学院長秘書、ミス・ロングビルが扉をノックする者を咎めるように問う。
「申し訳ありません。 ですが学院長に急ぎ取り次いで頂きたい! あ、コルベールです!」
ロングビルはチラリとオスマンを見る。
頷くオスマン。
ガチャリと音をたてて扉が開かれると、そこには見事に禿げ上がった頭部を持つ男がいた。
「や、やぁどうもミス・ロングビル! そ、その今日も相変わらずお、おおおおおお綺麗でいらっしゃって、えーと 良い天気ですね! あはは」
頭を光らせながらぎこちない笑顔を向けるコルベールに、ロングビルは端正な顔を怪訝そうに歪め言葉を返す。
「…………どうも。 ではこちらへどうぞ」
余りにも冷たく無関心な態度に、コルベールのテンションはダダ下がりだった。
すっかりしょぼくれてしまったコルベールがソファーに腰掛けると、おもむろにオスマンが口を開く。
「……まぁそんなに気を落とすなコルベール君。 ただでさえ少ない髪の毛がさらに減ってしまうぞ。 で、何の用かね?」
「氏も一言余計です……実は……」
コルベールはロングビルを一瞥し、オスマンの瞳に訴えかける。
「ふむ、ミス・ロングビル すまんがこの前頼んでおいた資料を全部持ってきてくれんかね?」
「え!? あ、あの量を今、全部ですか!?」
ロングビルは切れ長の瞳を見開き、口の端を引きつらせる。
「うむ すまんなぁ 急がんでいいと言ったが、やっぱり急いでくれ」
オスマンがにっこり微笑んむ。
ロングビルはわかりました、と短く答え少しばかりゲンナリした様子で退出していった。
「…コルベール君。 これで話せるかの?」
オスマンの言葉にコルベールは軽く頭を下げる。
「ありがとうございます。 実はミス・ヴァリエールの召喚した使い魔の事なのですが…」
「おぉ ミス・ヴァリエールの使い魔か。 召喚されたのは平民だが成功して良かった。 彼女も努力が報われたと言うものだ」
オスマンはにっこり微笑みながら話す。
「はい。 それでその使い魔に現れたルーンが特殊な形状だったのです! 調査した結果……なんとあのガンダールブのルーンと同一のモノでした!!」
コルベールのテンションはすっかり回復し、今や鼻息荒く興奮している。
「ガンダールブって…『あの』ガンダールブか?」
「はい!!」
コルベールの精神の高揚に反してオスマンの心は以前、静かなままだった。
「……えーーー? 本当かのーーー? ガンダールブって凄いレアなんじゃぞ? 6000年前に出たっきりじゃぞ? ホイホイでるもんじゃないぞ?」
その言葉にムッと来たコルベールは証拠を突きつける。
「これをご覧下さい! こちらは私が写した彼の左手のルーンです。 そしてこちらは格式高い信頼に値する資料の物。 同じでしょう!!」
バンッと机に置かれた紙と本に目を通すオスマン。
「あ 本当じゃの」
「ね! 本当でしょう!?」
勝ち誇った顔をするコルベールの顔とは対象に、オスマンの顔は渋くなる。
「………本当なら本当で、とんでもなく面倒なことになるの……」
オスマンの発言に一瞬頭を捻ったコルベールであったが、その真意にすぐさま気付いた。
「……ミス・ヴァリエールが……虚無の使い手、ということでしょうか…?」
コルベールの顔も陰る。
ガンダールブとその主、虚無の使い手。
王国が放って置くはずが無い。
近年、王国と諸外国の友好関係は良いものではない。
トリステインの国力の衰退も手伝って、情勢はハッキリ言って悪い。
今このタイミングで、その二人が現れたなどと王国に知られたら間違いなく担ぎ上げられ動乱の渦中に放り込まれる。
まだ幼い自分の教え子が、大人の都合に振り回される姿などオスマンとコルベールは見たくなかった。
「分からぬ……それに、その使い魔がガンダールブと決まったわけでもあるまい? 暫くは様子見じゃ だがこのことは他言無用ぞ」
「はい……」
学院長室に暗く、重苦しい空気が立ち込めた。



ルイズとヤンは食堂にいた。
ヤンが合流してから、驚くべき速度で掃除が終わったため、なんとか昼食に間に合うことが出来た。
今回からは、ちゃんとヤンの分の椅子も用意されていた。
ルイズの「あ、あんたがどうしてもって言うから今回から同じ食事でいいわ。 でも勘違いし(ry とのお言葉を頂いて、賄い料理からVer.upした。
周りの貴族たちは「ブリミルなんたらかんたら」とブツブツ祈っていたが、ヤンにとっては関係の無いことだ。
物凄い勢いで胃もたれしそうな豪勢な料理に手を付けていく。
その姿を見て、人知れずライバル心を燃やす青髪の少女がいたとかいないとか。
「ちょ、ちょっと! まだお祈りがすんでないでしょ!? 慌てなくても誰も盗らないわよ! は、恥ずかしい真似しないで!」
ルイズは慌てて制止するが、やはりヤンはどこ吹く風。
「うるへーー 食えるとき食っとかなきゃよォ。 第一こんな『普通』の料理じゃ俺の食欲は完全には満足しねーーの。 こんなんで我慢してやってんだから
逆に褒めてもらいてー。 しっかしウメェなぁ やっぱブルジョワジィは違うぜぇ」
喋べり終わると、すぐさま料理を口の中に放り込む。
「普通の料理って……アンタそんなに良い生活してたようには見えないけど、貴族の料理が『普通』なの?」
「もっしゃもっしゃ… 俺から見りゃ貴族だろーが んぐ 平民だろーが もぐもぐ 変わんねー」
すぺぺっとヤンの口からルイズに向かって、残骸が飛んでくる。
「ちょ、ちょっと口に物があるうちに喋るの止めなさいよッ! アンタって本当にマナーがなってないわね!!
だいたい貴族と平民が一緒ってどういうk 「なんてことをしてくれたんだ!!」
ルイズがヤンに食って掛かろうとした時、食堂中に怒鳴り声が響いた。
ルイズとヤンは一瞬お互いを見やった後、怒鳴り声の中心と思われる場所に視線を移す。
「君が小瓶を拾ったお陰で、二人の麗しいレディの心が傷付けられた! だいたい状況を察して話を合わすぐらいの機転も利かないのかね!!
まったく平民というのはつくづく使えん連中だな! 一体どう責任を取るつもりだ!」
金髪の少年が、黒髪のメイドを怒鳴りつけていた。
黒髪のメイドは平謝りだ。
この世界でメイジである貴族に逆らう術を、平民は持たない。
中には『メイジ殺し』と呼ばれる、特殊なスキルを身に付けた者もいるにはいるが、それは稀だ。
平民はどんな理不尽であろうと貴族に頭を垂れる。
それが『決まり』とも言えた。
「も、申し訳ありません! 申し訳ありません! どうかお許し下さい! 私めが愚かなばかりに…! ど、どうか…!」
黒髪の少女の必死に嘆願する。
ヤンはこの少女の声に聞き覚えがあった。
シエスタだ。
なんということだ。
他のヤツなら心底どうでもいいことだったが、シエスタならば話は別だ。
なぜならシエスタは、ヤンの中では既に愛人兼食料に決定していたからだ。
ヤンもこの世界についての知識を多少なりとも手に入れていた。
そこから推測するに、シエスタは何らかの折檻を受ける可能性が非常に高い。
そしてそれはシエスタの肌に傷を付けたり、ひょっとしたら金髪貴族小僧に手篭めにされてしまうようなことかもしれない。
ヤンは自分のモノが他人に傷付けられたり盗られたりするのは嫌いだった。
寛大な心なんて基本的に無い。
だからヤンの思考は実にストレートに「自分のモノに手を出そうとする、あのパッキンのガキをぶちのめす」という結論に達していた。
「ちょっとヤン! どこ行くのよ!」
突然、席を立ったヤン。
ひょっとしたら、あの騒動に首を突っ込む気かもしれない。
そう思ってルイズはヤンを引き止めようとしたが、ヤンは結構なスピードで騒動の中心に向かってしまった。
人込みをすいすいと縫うように突き進む。
すぐさま中心に到着し金髪の貴族とシエスタの間に割って入る。
「おいおいおい ガキ! 『これ』は俺の女なんだよ イチャモン付けてんじゃネェーーーーーーー」
金髪の少年、ギーシュ・ド・グラモンは突然の闖入者に驚いていた。
シエスタも色々な意味で驚いていた。
「ヤ、ヤンさん! え、ええぇと……お、俺の女とは一体どういう……あ、あの…その…ひょ、ひょ、ひょっとして……あ、あうぅ~」
シエスタは突然の援護と、ビックリ発言に顔を真っ赤にして混乱していた。
ギーシュもようやく驚きから立ち直って、ヤンに対する。 「な、なんだね君は?」
「僕様チャンの名前はヤン・バレンタイン とてもカッコよくて頼れるお兄さんでぇーす。 そしてこのシエスタちゃんとはラブラブな仲なんですぅ」
「え、えェェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「な、なななななななんですってぇーーーーーーーーーッ!!!」
真後ろでシエスタが、遠くの方からルイズの絶叫が聞こえてくる。
「なんだが騒がしいね… まぁいい。 で、君がその平民の恋人だとして何だというんだね? 彼女の代わりに罰でも受けてくれるのかな?
まぁ僕としても女性よりも男の方が叱責しやすくて助かるよ アハハハハハハ!」
ギーシュは髪を掻き揚げながら余裕の表情を崩さない。
相手がちょっと怖そうなお兄さんであろうが、平民である限り自分の優位は覆らないと確信しているらしい。
「罰を受けるぅ? 俺がぁ? なんでそんなモン受けなきゃなんねーの?」
耳をほじりながらぶっきらぼうに答える。
ほじり出した耳カスをギーシュの顔めがけてフッと吹き飛ばす。
ギーシュのこめかみに深い皺が刻まれる。
「……さっき僕のことをガキと言ったね……おまけに貴族の面体に耳カスを……フ、フフフフ…いいだろう。
恋人の存在が彼女に悪影響を及ばしているみたいだ。 真に調教が必要だったのは君だ。 貴族に対する礼儀と言うものを教えてやる!」
決闘だ! ギーシュは続けてそう叫ぼうとしたが、できなかった。
なぜならその瞬間、彼の体は宙を舞っていたからだ。
顔面が歪み、前歯は折れ、鼻はひしゃげ鼻血が大量に撒き散らされる。
そしてそのまま後方のテーブルに叩きつけられた。
ヤンの蹴りが顔面に直撃し吹っ飛ばされたのだ。
無知であることは時に何よりも残酷で非情な結末を導き出すことになる。
ギーシュ少年はまだ幼く、自分が井の中の蛙であることを理解していなかった。
まさか貴族相手にいきなり手を出す平民がこの世にいるなんて。
食堂を不思議な静寂が包む。
誰一人として状況を理解できたものがいなかった。
いつの間にか近寄ってきていたルイズにもキュルケにも、ヤンの背後に隠れていたシエスタにも
遠巻きに注視していたタバサにでさえ、ヤンの動きも状況も瞬時には理解できなかった。 「あ~~~~ん? 手加減したゼェ? 蹴り一発でダウンってこたぁネーだろ? オレを調教すンだろ?」
ヤンはポケットに両手を突っ込みながら、倒れたギーシュに無造作に近づく。
「ぐ、うぅ…う、う……ぐ」
顔面を押さえて痛みに苦しむギーシュ。
鼻血と鼻水と涎で汚れている。
倒れるギーシュの脇腹めがけヤンの蹴りが再び放たれる。
ドゴッ
「ぐぇッ!!!」
カエルのような声を出して更に数メイルすっ飛ぶ。
ようやく観衆達が状況を理解し始める。
そして見る見るうちに皆の顔は青ざめていくのだった。
「立ちな」
ヤンはギーシュを見下し言い放つ。
ギーシュは鼻血と鼻水と涎と涙で汚した顔で、ヤンを見上げる。
「う、うぅぅうぅ、ヒュー、ヒュー、げほ ぐ…う…う、うぅぅ……う……ぼ、ぼぼぼ僕にこんなことをして、た、た只で済むと思っているのかッ! 
ぼ、ぼ、ぼ僕はグラモン伯爵家の四男だぞ! ち、父は元帥だぞ! 貴族なんだぞ!」
「はぁ~~~~~~~? ひゃはあははははあははあははははははは! 知るかバ~~~~カ」
ヤンは愉快そうに嗤うとギーシュの頭を踏み潰すためにゆっくり足を上げた。
しかしそこで思わぬ邪魔が入った。
「や、やめなさいヤン!!」
ルイズが叫びながらヤンに抱きつき制止する。
ガヅン!
抱きつかれた拍子に足元が狂い、ヤンの足裏はギーシュの頭をかすり床を砕いた。
「ひっ!」
ギーシュは頭を抱えすっかり萎縮してしまっていた。
「おーい何すんだよ 外れちまったじゃねーか」
久々に楽しくなってきていたのに。
弱い者を嬲る時はいつだって最高だ。
そんな楽しいひと時を邪魔したルイズを、軽い口調とは裏腹に冷たい目で見つめる。
「そ、それ以上やったら死んじゃうじゃない! そんなことになったらアンタ大変なことになるわよ!!」
ヤンの迫力にも負けず、しっかり目を見て食い下がるルイズ。
「大変なことぉ~?」
さっぱり見当も付かない、という顔をしてルイズを見つめる。
「そうよ! アンタが今蹴ってるのはギーシュっていう貴族なの! 名門グラモン家の四男でソイツを死なせちゃったらもうここにはいられないわよ!
お尋ね者になっちゃうんだから!!」
いつになく必死なルイズ。
当然であろう。バカで短気でそのくせ強いヤンをこのままにしておいては間違いなく賞金首だ。
そしてヤンの主であるルイズは勿論、ひいては実家であるヴァリエール家にも累が及ぶかもしれない。
何より、自分の初めての魔法成功の成果であるヤンを失うなんて考えられなかった。
「……あーーそいつは大変だなーーーーーー」
ヤンは賞金首になるとかそんなコトをまったく恐れていなかった。
むしろ、お尋ね者になるのもいいかもしれない。
お尋ね者になれば『餌』が向こうから来てくれるのだ。
今まで聞いた話しや、現在自分の足元に転がっているガキから推察するに、魔法というものは万能の攻撃手段という訳ではないらしい。
魔法を使用するためには何らかの「タメ」が必要なようだ。
即座に使えるのなら、このガキが反撃を試みているだろう。
自分の蹴りも防がれなかった。
今、魔法が使える貴族様は無様に床に這いつくばっている。
自分の超スピードと怪力の前には、どうやら貴族も只の豚と一緒のようだ。
なんだ、ただの雑魚じゃん。
フツーに皆殺しできるな、これ。
あ、そうだ。そうしよう。うん。
男はみんな殺して、女はみんな犯してから殺して、グールの群れでも率いて王様にでもなっちゃおうかなー。
ああ。いいんじゃねぇの、それ。おもしろそーだな♪
ヤンがそんなこと考え始めた時、突然視界を白い光が覆った。
「!?」
(な、なんだ!? 『魔法』か!? 何かやられたのか!?)
やっぱ魔法って結構ヤバそーなのかな? 大人しくしてりゃあ良かったかなー?
ヤンが早速、後悔し始めた時、視界を覆う光が晴れる。
一人の男が姿を現す。
「よぉ 愚弟(グッティー) 元気か? おにいたまだよ」
足元のガキを踏み殺そうとしていたはずのヤンは、今自分が怪しげな空間に居ることに気が付いた。 周りの衆人観衆もルイズもシエスタも、足元のギーシュもいない。
前も夢で見たような気がする景色だ。
「あ? 兄ちゃん!? 驚かすんじゃねーよ! 心臓に悪いだろうがテメェー!」
「おい なんという言い草だ 兄に向かって…。 …まぁいい ところで今日は文句があるぞ。 この前俺が言ったことは覚えているか?」
「はぁ? ……えーーーーと その あーーーー ん? んーーーーーーー お? あ! 俺はガンダールブだからルイズを守れって言ってた、あれか?」
「それだ……一応覚えていたようだな……ならば今の状況は理解できるか? ん? このままいけばルイズ様の立場が極めて悪くなると予想できるか?」
「……ケッ なにがルイズ『様』だ ハァ~~~ 兄貴があんなツルペタ女に『様』付けたぁなー。 ルイズが何だってんだよ?
兄貴がそこまで気に掛けてやるような『価値』があンのかよ?」
「今はまだ言えん。 とにかくあの方は我々バレンタイン兄弟にとって非常に大切な存在なのだ 大切にしろ」
「またそれかよ! なんで言えネーんだよ!」
「アホか 物事には順序とかフラグ立てとかあんだよ こんな初っ端に言ったら感動とか台無しだろうが ボケが」
「そんなもん知るかボケ 殺すぞコラ だいたいエラソーにしてっけど俺の左手だろうが テメーは。 兄貴面してんじゃねー ゲス ウンコ」
「あーーー ふーーん そういうこと言うんだ 兄に対して チンカス」
「うるせーハゲ ぶっ殺すぞ」
「ふざけんなテメー大体何で召喚されたのがオメーなんだよカス! 俺の方が知的でカッケーよ!」
「テメーは本編で復活したからいいだろうがボケ!俺だってどうせならこんな左手じゃなくてミギーの方が良かったわ!」
「ショタジジイに操られた挙句、瞬殺されたわ! それにミギーはHELLSINGですらねー!」
「うるせーーーーーー!」
ズガッ
ヤンの目潰しがキレイにルークに決まる。
「ギャーー!」
ゴロゴロゴロゴロ
ムクリ
「テメェー食らえやぁ!」
ヤンに飛び掛りマウントになるルーク。
「月光蝶!月光蝶!月光蝶!月光蝶!」
怪しげな単語を口にしヤンを殴り続ける。
「ブォーーーーッ ぎゃーーーッ ブォーーーーッ ぎゃーーーッ ちょッ! 助けッ!」
…………。
……。
…。
一連の騒動が済んだ後は、辺りは血の海になっていた。
だが二人は何事も無かったかのようにケロッと立っている。
「というわけでルイズ様LOVEでいけ。 暴れるの禁止だから。」
「まーたそれか! 他に言うことねーのかよ ウンコ兄貴 ウンコ野郎!」
「うるせーーッ! さっさと戻れ! クセーんだよ!」
ドガ
「ぶはッ!」
ルークがヤンの顔面を殴りつけた。
その拍子に再び視界が白い光に包まれた。
次の瞬間、ヤンの視界は元に戻っていた。
すなわちアルヴィーズの食堂で、騒動の真っ最中の状況である。
ヤンは何が何だか分からなかった。
皆殺しにしようと思ったら視界が真っ白けになって兄、ルーク・バレンタインが出てきた。
で適当にくっちゃべっていたら、また視界が真っ白になって『ここ』に戻ってきた。
…………。
どうみてもドラッグ決めてラリラリの薬中患者だ。
しかもトリップしている時間は現実には一瞬にも満たないようだ。
(…薬も無しにラリれんのか ガンダールブってのはスゲーなーーーーー)
見当違いなことに感心する。
ルイズが必死な表情で、自分にしがみ付いていた。
(そういえば何で抱きつかれてんだ? 顔必死だな)
「あーーーっと…… で、何だっけ?」
ヤンが間抜けな表情で間抜けな質問をする。
「だ、だからこのままじゃお尋ね者よって言ってるの! もうやめてあげて!」
後ろではシエスタが相変わらず蒼い顔をしてことの成り行きを見守っていた。
足元を見ると相変わらず金髪のガキが頭を抱えて怯えていた。
(そーだったそーだった! 思い出したよ バッチグー! しかし、こーゆーの見てるとホント嬲り殺してーーーよなーーー
でもなーー ここでコイツ殺っちまうとなーー 後で兄貴とかウルセーだろーしな。 ここは兄貴とルイズ『様』の顔立ててやるか……)
「はいはいOKOK! やめますよぉ やめらりゃあいいンだろ? あーあ ったくよーー」
ヤンは拗ねた様に言い捨てると、ブラブラと食堂出口へ向かう。
「ちょ、ちょっとどこ行くのよ! 待ちなさいよ!」
ルイズは慌ててヤンを追いかける。
「あ! ヤ、ヤンさん!」
その後をシエスタも追う。
そのまま三人は食堂から姿を消してしまった。
ギーシュは医務室に担ぎ込まれたが、そこはルイズの爆破を受けた怪我人で一杯であった為、彼は痛みに長時間苦しまねばならなかった。
当事者達を失ったために騒動は鎮静化したが、その場に居合わせた全ての貴族にヤンは恐怖を植え付けることに成功してしまっていた。
もっとも全てと言っても二人の貴族を除いてだが。
この事件でキュルケは、今まで周りに居なかったタイプであるヤンの苛烈な野性味に更に絡め獲られてしまい、彼への想いをより強固で一途なものに
昇華してしまっていた。
またその友人であるタバサもヤンの人間離れしすぎたスピードとパワーとそして余りに常識外れの行動に、変わらぬ警戒心を抱きつつも大きな興味を
抱くことになった。 あの力があれば……、という思いが働いていた。

「ヤン! どこ行くのよ! ま、待ちなさい!」
ルイズはヤンを追って必死に駆ける。
既に姿は遥か遠い。
食堂を出た瞬間に超スピードで跳んだのだ。
「ヤンさーんッ! 待って下さーい!」
ルイズの後ろから、胸を揺らしながらを彼女を抜きさるシエスタ。
その様子を、特に揺れる胸を見た瞬間ルイズは立ち止まり、黒髪の少女に怒鳴る。
「ちょ、ちょっと止まりなさい! な、なんでアンタまでヤンを追いかけてるのよ! あれは私の使い魔なのよ! あなたは追う必要ないでしょ!」
いつもは貴族に対して怯えるだけであったシエスタは、ヤンの恋人発言や圧倒的な実力に勇気付けられ、普段の彼女からは思いもよらぬ行動に出る。
シエスタは立ち止まると、振り返り反論してきた。
「私はヤンさんに助けて頂いたんです。 そのヤンさんを追うのは当然じゃないですか。 それにヤンさんは使い魔と言えども人ですよ!? 
それを『あれ』呼ばわりなんて酷過ぎます! あなた、ヤンさんの主のミス・ヴァリエールですよね? 噂通り非道い方みたいですね!」
なかなかに辛辣な言葉を並べてくる。
「な、なんですって! ヒドイって何よヒドイって! どんな噂を聞いたか知らないけど、アナタの知ったこっちゃないでしょ!?
私はアイツの御主人様なのよ! どんな扱いをしようが貴族の私の勝手でしょ! 平民のアナタがとやかく言うことでは無いわ!!」
ルイズは、まさか平民のメイド如きにここまで言われるとは思っていなかった。
本当は余り好きでは無かったが、自分が貴族であることを高らかに掲げた。
「言う権利なら……あります!」
シエスタは豊かなモノを揺らしながら胸をムンッと張る。
『貴族』を出してもシエスタは一歩も引き下がらない。
確実に勝てるジョーカーを出したというのに勝てなかった。
「え!? な、なんでよ! どんな権利があるのよ!?」
ルイズの目論見は完全に崩れてしまった。
「私は……私はヤンさんと…そ、その……その………ラ、ラブラブなんですからッ!!!!」
「!!!!?」
ズガドーン
ルイズの目の前は真っ白になった。
「さ、さっきのミスタ・グラモンが言っていた通りわ、私はヤンさんの恋人(になるつもり)なんですから!! 言う権利はあります!!」
グ、グラァ~~
ルイズの足元がふらつく。
グッ ズシャァ
しかし倒れまいと、必死に耐えた。
「な、ななななななななな何言ってるの!? ヤ、ヤンのこここここここここ恋人ですって!!? 証拠見せなさいよ証拠を!!!?」
シエスタを睨むルイズの目には、うっすら涙が溜まっていた。
「ヤ、ヤンさんは私に言ってくれました! 『シエスタはおっぱいが大きくて綺麗で素敵だね』って!!! それに! コレはキスマークです!!」
バッ
そう言って首の赤い斑点を見せる。
ただの虫刺されの痕を。
「!!!!!!!!!?」
デデーン
シエスタは、色々と思い切り捏造してみた。
顔を真っ赤にして、やった本人が一番照れている。
それとは対照に、言われたルイズの顔からは血の気が失せていた。
グラァ~~~~~
ヤンが…シエスタの胸を見たって…?
そう…言いたいの…?
首にキスマーク?
そういう……関係……?
おっぱいが大きくて素敵……。
おっぱいが……。
私には……おっぱいが………ない……。
ドサ
ルイズは倒された。



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