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虚無と最後の希望 Level14


level-14 「離別」


「……朝日」

 4人はフネの中、夜明け前に港を出て夜が明けて来た頃に白の国が見え始める。
 それでもまだ2~3時間は掛かるとの事、ルイズたちは既に港に着いているかもしれない。
 出来るだけ早く追いつきたい、数多の戦場で生き残る要因となった『勘』がざわめいていた。





 フネ、唯一アルビオン大陸に渡る手段。
 渡る為には条件がある、それはフネを浮かばすための『風石』が必要。
 だが、一番風石を積んだフネはルイズたちが乗って行ってしまっている。
 つまり、アルビオンまでいける風石を積んでいるフネは、今現在一艘もない。

 浮力を得るための手段が風石しかない、しかし浮力を得るための風石がない。
 それはアルビオンへ渡れないと言う現状を指し示していた。
 渡る手段がない、どうしようか、と考えていた所にシルフィードが現れた。
 タバサに残り付くように言われたのだろう、背を向けきゅいきゅと鳴くその姿、まるで乗れと言わんばかり。
 キュルケが乗れと言っているのか問いかけた所、頷き一度鳴いた。

 それを聞いてシルフィードなら行けるでしょう、と判断したキュルケ。
 チーフを除く3人はシルフィードの背中に乗ろうとした所に止める声。

「……アルビオンまでの距離はどの位あるか分かるか」
「距離? そうねぇ……、フネで10時間位かしら」

 それを聞いて押し黙るチーフ。
 押し黙った姿に怪訝を抱いたキュルケ。

「どうしたの? 何か問題でも?」
「恐らくシルフィードでも、たどり着く前に力尽きてしまうかもしれない」
「4人も乗せたらアルビオンまでたどり着けないって事?」

 頷く、それを見てキュルケが笑う。

「大丈夫よ、竜って言うのはとてもタフなのよ。 4人乗せた位じゃ全然疲れないんだから、ね?」

 と、シルフィードの頭を撫で声を掛ける。
 撫でられたシルフィードは鳴いて頷いた。

「……恐らくは無理だ」
「どうして? ああ、鎧が重いのね。 そうね……、その鎧だと100リーブル位かしら?」

 チーフは首を横に振る。

「……200リーブル?」

 首を振る。

「まさか……、300リーブルなんて言わないわよね?」

 それにも首を振る。

「逆ね! 軽いんでしょ?」

 やはり首を横に振った。

「……幾つなのよ」

 埒が明かない、重さがいくつあるのかキュルケは問いかける。

「……700だ」
「え?」
「700リーブル程だ」

 それを聞いてキュルケ、ギーシュ、モンモランシーの3人は絶句した。
 鎧を着ている以上それなりに重いだろうと思っていた3人、だがチーフが言ったのは予想を上回る重さ。
 1リーブルは500グラムより少し下らしい、一般的な女性の体重が100リーブル程でありキュルケもそれ位らしく。
 この惑星の重力が1Gで、地球の女性の平均体重と近いならその程度だろうと荒い推測。

 そしてチーフが言った約700リーブル、キログラムで表せば350キログラムから400キログラムの間。
 チーフ自身の体重もキュルケの二倍以上、しなやかで強靭な肉体は130キログラムほどある。
 チーフ自身とアーマーの重量を合わせれば0.5トン、1000リーブルを超えるかも知れない。
 難しい計算抜きにすればキュルケの10倍前後重いと言う事、普通の人間の体重ではないし、着たらまともに動けなくなる所か押し潰される重さ。

 如何に竜がタフだとは言え、背中に0.5トン以上の重さを乗せて10時間も飛び続けられるとは思えなかった。



「700リーブルの重さって、普通動けなくなるわよ……」

 呆れながら言う言葉。
 大の男でも確実に動けなくなる重さ、チーフなら……と思わなくないが流石に重過ぎる。

「……パワーアシストが有るから問題ない」

 よく分からない単語に首をかしげる3人。

「動きやすくなる魔法が掛かっていると思えば良い」

 と言われてもどういう魔法なのか、勿論思いつかないし聞いた事も無い魔法に疑問を抱くが。

「……侮れないわね」

 『かがく』と言う物で作られた鎧。
 優れたメイジでもそんな重い物を何十時間も軽くし続ける事は出来ない。
 メイジの矜持である魔法と言えど、出来ない事だってある。
 ならこの鎧は魔法で出来ない事を実現していることになる。
 このチーフを相手にすれば、つくづく魔法が使えないのが馬鹿に出来ないと思えるようになってきたキュルケであった。

「それで、その鎧が重いって事は分かったけど、シルフィードが無理なら今すぐ追いかけるのは無理なんだけど」
「他のフネから風石を買い取る事は出来ないか」
「……そうね、その手があるわね」

 なるほど、と3人が頷く。
 大きい風石が無ければ、小さな風石を複数集めればいい。
 使える物は何でも使う、『武器は現地調達』が基本のチーフからすれば普通の考えだったりする。
 そうと決まればすぐにでも買取に走り出す。
 幸いチーフ除く皆が財布を持って来ていた為、そのお金で風石を買う事となる。

 だが向こうにも都合がある、風石の買取に渋る船長も勿論居る。
 さらには足元を見る、平均的な値より割高で売ろうとする者も居た。
 お金は無限にあるわけじゃない、ある分だけしか買い取れないため切り詰める必要がある。
 安くしてもらうために貴族と言う肩書きとチーフと言う圧力を使って出来るだけ安く、必要な分だけ買取り。
 アルビオン行きだったフネを貸し切り、風石を運び込んで出発することとなった。





 そうしてチーフ一行はフネへと乗り込み、アルビオンへ渡る事となる。
 フネに揺られ、夜が明けない内にキュルケ、ギーシュ、モンモランシーは睡眠をとる事に。
 チーフは空の上とは言え、変わらず警戒を緩めない。
 3人が別々の部屋で眠り、その部屋に至る道を警備しておく。
 そうして数時間、朝日が上がった事が分かり、アルビオンの全容を確かめるため甲板に上がる。
 朝日を浴びながら甲板でアルビオンを見つめるチーフの下に、船内から現れたキュルケが隣に立つ。

「……まだ掛かりそうね」
「まだ眠っていた方が良い」
「ダーリンは眠ったの?」
「ああ」
「……そう、じゃあもう少し眠らせてもらうわ」

 チーフが言ったとおり、必要な睡眠は既に取っている。
 通常人間が必要な睡眠は6~8時間ほどと言われる。
 減る時間にも寄るが、影響が受けるのは精神的なものが大きい。
 特に集中力、睡眠不足に陥ればその分だけ集中力、集中できる時間が目張りに減ってゆく。
 だがスパルタン計画によって身体能力、遺伝子学的、技術的に強化されたチーフは、通常の強化されて無い人間よりもはるかに強靭である。

 あらゆる状況下での活動、戦闘が可能になるよう身体能力を強化されており。
 短い時間、2~3時間睡眠を取るだけで大幅に体力を回復できるよう調整されている。
 座る、或いは寝転がる事が出来ない場所で直立したまま睡眠を取る事だって可能。
 さらにはアーマーのお陰で場所を問わず、それこそ水中や地中、果ては宇宙でも睡眠が取れる。
 ルイズが寝静まっても警戒を行うチーフに、いつ寝ているのかと言う疑問も短い時間にちょくちょく睡眠を取っているからであった。

 船内に戻っていくキュルケを見送り、再度視線をアルビオンへと戻す。
 その視線の先、大地の下半分を白い雲で覆われた、浮かぶ大陸に注がれていた。





 それから約3時間ほど経ってようやくアルビオンの港が見えてくる。
 それを機に連れて来た使い魔を含む、一行全員が甲板に集まる。

「直接は無理よねぇ」

 そうキュルケが呟く、恐らくはアルビオン中の港は不審な者が入り込まないよう警戒しているだろう。
 そうなれば堂々とフネに乗ったまま港には行けない。

「この距離ならシルフィードでも行けるんじゃないのかね?」
「そうねぇ、正面からは無理でしょうし、そうするしか無さそうね」

 チーフも反論は無いらしく、黙ってこの話を聞くだけ。
 そうと決まればやっておかなければいけない事がある。

「船長、はいこれ」
「……これは?」

 キュルケが船長を呼び出し、少し重たい麻袋を手渡した。

「口止め料よ」
「……ああ!」

 ようやく理解したのか、船員以外が乗ってきたと言うことを知られたくはない。
 口止めとして硬貨を渡しておく。

「黙っておきなさいよ? もし一言でも喋ったらその顔が真っ黒になるから」

 胸元から取り出した杖を船長に向け、喋らぬよう脅しておく。
 頬を引きつらせ、何度も頷く船長。
 キュルケはそれを無視してシルフィードを呼んだ。
 甲高い泣き声、空の覇者と言わんばかりに翼を広げたシルフィードがフネを追い越した。
 ぐるりと大きく旋回、また追いかける位置となり、羽ばたきながら甲板に降り立つ。

「ええっと、スカボローだったかしら?」
「ええ、お城がニューカッスル、港から馬で一日くらい掛かったと思うけど」
「ルイズたちはもうお城に向かっているだろうね、追いつけるかな」
「襲われて、足止めでもされてなきゃ追いつけないでしょうね」
「シルフィードに乗っていけばもっと……」
「ばれるでしょうが」
「それもそうか……」

 目立ちやすいシルフィードに乗っていくわけには行かない、もし見つかれば間違いなく追いかけられる。
 チーフは重たいし、速度が鈍って追いつかれるかも。

「その時は落とす」
「……何を?」
「行こう」
「え、ちょっと! 何を!?」

 問いかけるキュルケを無視し、シルフィードに乗れと催促するチーフ。
 何を落とすのか、普通に考えれば敵だろうが、何か引っかかる嫌なものを感じたキュルケだった。





 4人はシルフィードの背中に乗り、ヴェルダンデはシルフィードの口に銜えられて飛ぶ。
 スカボローの港から大きく外れ、雲に隠れつつニューカッスル城の方向へと近づきながらアルビオンの大地へと降り立つ。
 降り立った場所は平野である為、見渡しが良く、この場に留まれば遠くからでも見つかってしまう。
 故にすぐ移動を開始し、近くの森の中に入った。

「やっぱりきつそうよねぇ」
「きゅい」

 森に入るなりキュルケが言う、シルフィードはそれに同意して鳴いた。
 0.5トンはやはり無理だった、もとより銃やデルフリンガーの重さも加わるし、キュルケたちの重みも加わる。
 600キロを超える重荷を背負ったまま、十時間も飛べるほどシルフィードは育っていなかったと言うこと。

「一度港に戻る? 馬が買える様な所は港……」

 とキュルケが言葉を止めた。
 見ればヴェルダンデが物凄い勢いで地面を掘り返して潜って行く。

「ヴェ、ヴェルダンデ!? 待ってくれ! どこへ!?」

 ギーシュが慌てて止めるも、ヴェルダンデは無視して地中へと消えていく。
 その穴は大きく、人が簡単に入り込める大きさだった。

「………」

 キュルケとモンモランシーは「またこいつは……」と言う表情でギーシュを見ていた。
 チーフも穴を見つめた後ギーシュを見る。

「い、いやぁ……はは……」
「どうすんのよ」
「ど、どうって……」
「ギーシュの使い魔でしょうが、さっさと呼び戻しなさいよ」
「いやね、ヴェルダンデは宝石が何とかと言っててね……」
「はぁ?」
「……ルイズが着けていた指輪?」

 ギーシュが首をかしげる様に言った。

「何? あのもぐら、ルイズが着けてる指輪の匂いでも嗅ぎ取ったわけ?」
「そうらしいよ、進んでいった方向もニューカッスル城の方だし……」

 そんなギーシュの答え、どうする? とキュルケがチーフに視線を向ける。

「それは確かか」
「間違いないって言ってるよ」
「辿り着けるんだな?」
「匂いは覚えたって」
「そうか、それなら3人は地下から行った方が良い」

 馬を買って突っ切るにしても、かなりの危険が伴う。
 チーフ一人なら切り抜けられるかもしれないが、3人も居ればフォローに回れず危険な目に合うかもしれない。
 ならば、敵が居ない地下に潜っていくほうが確実に安全だ。
 ヴェルダンデが掘った穴は幸い、キュルケたちが入り込めるほどの大きさがある。

「3人はって、チーフはどうするの?」
「徒歩で向かう」
「心配は……要らないわね」

 昨晩100人以上一人で倒し尽くしたチーフが、生半可な山賊などに負けるとは思えない。
 元よりこの穴のサイズではチーフにとって窮屈、せめてあと50センチほど欲しい穴の大きさだった。
 同様に、穴に入れないシルフィードをどうしようかと、話し合おうとすれば。

「きゅい」

 とシルフィードが一度鳴いてチーフの傍による。

「シルフィードはダーリンと一緒に居るの?」
「きゅい」

 もう一度鳴いて、キュルケの問いに答えた。

「流石に潜れないしね、それじゃあ……どこで落ち合いましょうか」

 行き当たりばったり、追いつけるか分からないし、城の中であったら正規の訪問で無い以上確実に会える保証は無い。
 だから会えなかった場合にどうするか、それを考え決めておく。

「そうね、戦いも近いって聞いたし、会えなかったらここで落ち合いましょうか」

 穴、ヴェルダンデが掘った穴で集合する事を決める。
 キュルケたちは穴を通って戻ってくれば良いだけの話だから簡単だろう。
 穴が塞がっていたり、他の誰かが居たとしてもヴェルダンデが他の出口を作れば良い。

 そうして今後の行動を決めた後、キュルケたちに持ってきた水や食料を多めに分け、穴に潜っていくのを見送る。
 こちらはこちらで進もうか、と言う所でシルフィードに異変が起こる。
 一度鳴いたシルフィードが一瞬だけ光り、視界を染める。
 それが収まり、翳していた手を下ろせば。

「………」

 タバサと良く似た青色の、長い髪をなびかせる全裸の少女が居た。

「お兄さま、いくのね!」

 と飛びついてくる少女、流石のチーフも一瞬唖然とした。
 だがやはり流石のチーフは一瞬で我に返り、抱きついてくる少女に尋ねる。

「……シルフィードか」
「そうなのね、お姉さまがお師匠様なら見せても良いって言ってたのね」
「そうか」
「そうそう、そうなのね」

 いつの間にか肩車のようにシルフィードがチーフの上に乗っていた。
 どうやら魔法は質量保存の法則も無視するようだ。
 竜のシルフィードは間違いなくチーフより重く、そのまま乗せたらそれなりの負荷が掛かるはずだが。
 この少女、シルフィードらしい少女は姿かたち見た目通りの重さしかない。

「すぐ戻れるのか?」
「簡単ね」

 チーフから飛び降り、また一瞬だけ光ると青い風竜シルフィードの巨体があった。

「きゅい、本当の名前は『イクルルゥ』なのね。 お姉さまが人前で喋っちゃいけないって言ってるから、いっつもこの姿なのね」

 使い魔契約ではなく、元から喋れる動物は『韻』と言う存在らしい。
 生態系を調べる為に見た図鑑に、一言だけ注釈されていたのを思い出す。
 そうしていれば、いつの間にかまた少女に戻り駆け回っているシルフィード。
 そこでチーフは疑問を浮かべる。

「何故変身する必要が」

 韻と言えど喋らなければ通常の風竜と見分けが付かない。
 生態個数も比較的多く見られるほど存在している、アルビオン界隈で飛んでいてもなんら不思議ではない。
 そうなれば、態々人型になってチーフに付いてくる必要もない。

「お姉さまが離れるなって言ってたのね、だから一緒に行くのね!」

 そう言ってチーフに飛びつくシルフィード。
 何らかの理由、恐らく急行の事態に陥った時の移動手段と予測付ける。
 すでに急行的な事態だが、目立つシルフィードに乗って直接追いかけるのは……最後の手段か。

 そんな事を考えながら、肩に人型シルフィードを乗せてニューカッスル城に向かうチーフであった。




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