あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るいずととら-14


「いねえな。わしの毛をつけた服はあるが……逃げたか。ち、だから小屋ごと焼くと言ったのによ」
「しかたないじゃない。あくまで目的はフーケの捕縛よ。殺すことじゃないわ。それに、『破壊の剣』まで燃えたら意味ないじゃない」

小屋に入ってきたのは、桃色の髪が鮮やかな小柄な少女と、そちらより大人びて見える、なぜかメイド服に似合わぬ大剣を手に携えた美少女だった。
おそらく、桃色のほうはメイジだろう。フーケはそう判断した。手に構えた杖、学院の生徒であることを示すローブ……見覚えがあった。

(あの小娘……ヴァリエールの三女か……あだ名は『ゼロのルイズ』……すると、あの金色の幻獣が、呼び出された使い魔!)

強力な先住魔法を使う幻獣を落ちこぼれの生徒が召喚した、という噂はフーケも耳にしている。変化を使う巨大な幻獣だと言うが……

(コイツが……しかしまあ、よくこの小娘に呼び出せたものだわ。まるっきり格が違うじゃない)

しかし、黄金の使い魔の主人がルイズであることは、フーケにとっては好都合でもあった。
何とか使い魔と主人を引き離せば、隙を突いて無力な主人をさらうこともできるだろう。

(――ッ! 空中にドラゴンとメイジが二人……! あっちはなかなか強力な魔法を使う生徒だね……)

しかし、スクウェア・クラスでもない限り自分のゴーレムの敵ではないだろう。フーケは冷静にそう判断した。
やはり厄介なのはあの金色の幻獣。しかし、それさえ封じてしまえば……

(さあて、そろそろ始めようか……!)

フーケは低く詠唱を始めた。


「るいず、オメエ、しるふぃーどに乗ってまってろといったのに、なぜついてきた?」

ごそごそと『破壊の剣』を探すルイズに、とらが尋ねた。

「そ、そりゃあ……わわわたしは、あんたのご主人だもの。使い魔がご主人を守るのは当然でしょ!」
「だから、空中で待ってりゃ安全だろうが」

あっさりと反論され、顔を真っ赤にするルイズであった。もちろん、とらと一緒に居たかっただけなのだが、それを言うのはルイズのプライドが邪魔をした。

「べべ別にいいじゃない! それより『破壊の剣』を……ああ! これ、ひょっとして――!!」

ルイズが驚きの声を上げて取り上げたのは、先ほどフーケが開錠した、『破壊の剣』の収められているケースだった。

「ここここのケース、開いてるわ、とら! 『破壊の剣』って、一体どんなすごい剣なのかしら――――!! ……あれ?」

ケースの中身を見たルイズが素っ頓狂な声を上げる。とらも覗き込み、ニヤリと笑うと、片手で『それ』を摘み上げる。

(こいつぁ……驚いたな)

「なにこれ? こんなの使い物にならないじゃない!? こんなのが『破壊の剣』なの……?」
「くっくっく……まーあ、ニンゲンにはちょいと扱えねぇかもな……いいか、るいず。コイツは……」

そう言いかけて、とらはピクリと外に反応した。魔力が放出されていくのを、とらの鋭敏な感覚が感じ取る。やがて、ルイズの耳にもはっきりと地響きが聞こえてきた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

「るいず、どうやら『ごれむ』のお出ましだぜ」

あたりに轟く地響きを立てて、フーケの操る巨大な土ゴーレムが姿を現した。


「ゴーレム! 大きいわ、30メイルはある!!」

シルフィードの背中で、キュルケが驚きの声を上げる。これだけ大きな土ゴーレムは見たことがない。彼女の魔法で破壊できる大きさを、優に超えていた。
タバサも冷静に土ゴーレムを観察していた。万が一にも、あの土ゴーレムにルイズの使い魔が負けることはないだろう。
しかし、ならば、なぜフーケはゴーレムを召喚したのか。時間稼ぎぐらいにしか使えないだろうに、わざわざ姿を発見される危険を冒してまで……。

「シルフィード、急いで。おそらく、敵の狙いは――」

タバサの言葉に、キュルケの目が大きく開かれる。シルフィードが唸りをあげて急降下した。


フーケの操る30メイルの巨大ゴーレムを前に、とらは、ぎしりと凶悪に笑う。変化を解いたとらの巨体のたてがみから、バリバリと電光がほとばしる。
さきほどはルイズを乗せていたため手加減をしていたが、今はその心配もない。手加減なしで雷をためていく。

「ひゃっひゃっひゃっ……懲りずにぶっ壊されにきたかよ!!」

轟ッ!!

とらの放った超巨大な稲妻が、轟音と共に小屋の屋根を吹き飛ばし、フーケの土ゴーレムを襲う。
一撃でゴーレムは頭部を吹き飛ばされ、がくんとひざをついた。ボロリと巨大なゴーレムの片腕が崩れる。

(妙だな……やけに手ごたえがねぇ)

とらが不審に思った、その時であった。
――巨大な雷を放つために、とらは少しだけルイズから体を離してしまっていたのだ。
そして、そのわずかな隙を、土くれのフーケは見逃さなかった。

ボグムッ!!

突如、とらとルイズの間に、床板を破って巨大な腕が出現する。腕は、一瞬でルイズの細い体をつかんだ。


「な、何――きゃあああああーっ!!」

フーケの操る土ゴーレムの腕である。先ほど、崩れたと見えたのは、実は地面の中を動かしていたからであった。

(ちぃいいいいいっ! わしとしたことが!!)

咄嗟に稲妻を放とうとしたとらは、「駄目! ルイズに当たる!!」というタバサの叫びに、ぎりぎりで雷を止める。

「くっ……!!」

見る間に、メキメキと音を立ててゴーレムは巨大に成長していく。やがて、見上げる大きさとなって、土ゴーレムが完全な姿を現した。
ゴーレムの右手につかまれたルイズは、衝撃で一瞬意識を失った。

「あははははは!! ご主人を捕まえられたら手も足も出ないようだね、使い魔の魔獣!!」

ゴーレムの肩に乗った人物は、緑の長髪を風に揺らした女性のメイジである。トリステイン魔法学院では、ミス・ロングヴィルと呼ばれる、オスマン氏の秘書……。
しかしてその正体は、盗賊『土くれ』のフーケである。

(ち、炎や雷を放てば、るいずまで殺しかねねぇ!)

ぎり、ととらは歯軋りをする。パリパリとほとばしる電光に、慌ててフーケが叫んだ。

「こら、動くんじゃないよ! そこのドラゴンに乗ったメイジたち! あんたたちもだ、杖を地面に投げるんだ!! さもなきゃ小娘を握りつぶすからね」
「……まずいわね、やっぱりあなたの言うとおりだったわね、タバサ……どうするのよ?」

キュルケは、「敵の狙いはルイズ」と言ったタバサの言葉を思い出す。タバサのことだ、何か策を思いつかないだろうか?

「……わたしの言うとおりに」

タバサは、コクリとキュルケに頷いてみせた。決意に満ちた目の色に、キュルケは頼もしいものを感じた。


「ほらほら! 早くするんだよ!!」
「あーもー、分かったわよ、オバサン!! ほら、これでいいでしょ」

キュルケとタバサが相次いで杖を地面に放り投げる。オバサンとよばれ、一瞬ゴーレムの手に力が入ったフーケだったが、荒い息をつきながら思いとどまる。
なんといっても、ルイズは大切な人質なのだ。ここでルイズを殺してしまったら、間違いなくフーケはあの使い魔によって一撃で屠られるだろう。

(まずは、あの使い魔を動けなくしなくちゃね……)

フーケが呪文を唱えると、とらの足元の地面が泥に変わり、ずぶずぶと足を飲み込んでいく。とらは騒ぎもせずに、じっと動かないでいた。
今動けば、ルイズは殺されるだろう。とらはじっと反撃の機会を伺うつもりだった。
さらにフーケが呪文を唱えると、足を土に埋めたとらの体が固定された。フーケが土を『錬金』で鉄に変えたのである。

「う……うう……はっ! と、とら!? あ、あなたどうして――」

意識を取り戻したルイズは、自分の使い魔が抵抗もせずに両足を地面に埋め込まれているのを見て、震える声で叫んだ。
それを聞いたフーケが、あざ笑うように言った。

「アンタがつかまってるからに決まってるでしょ? くく、いい使い魔を持ったじゃない」

ルイズは、キッとフーケをにらみ、声を張り上げた。

「とら! 構わないわ!! わたしごとこのゴーレムを吹き飛ばしなさい! 命令よ!!」
「なっ……この――小娘が……! 死ぬ覚悟もないくせに……!!」

ミシリ、とゴーレムの右手に力が入る。ルイズは苦痛に顔をゆがめた。それでも、ルイズは毅然と言い放つ。

「わた、しはっ……貴族よ……! たとえ殺されたって……アンタなんかに……ッ……負けてやらないんだからーッ!!」


ルイズは必死で体をねじり、とらのほうを向く。

「と、ら……っ! わたしは……あんた、みたいに……強く、なり、たいの……!! こんなヤツに……やられっ放しで、どう、す、るのよーッ!!!」

(わしのように強く……?)

とらの記憶の奥底で、おぼろげながら、一人の少年の顔が蘇る。かつて、彼が人間であったころ……唯一心を許した姉弟。

(ラーマ……ッ!)


フーケはぎょっとした。
両足を鉄に埋め込まれ、もはやろくに動けないはずの金色の使い魔が、小さく笑い始めたからだ。

「な、何がおかしいってのよ……!」
「くっくっくっく……可笑しいに決まってるじゃねえか……くっくっくっく……人間がよ……」
「に、人間がどうしたってのよ!」

じりじりととらから発せられる威圧感に抗いながら、フーケが叫ぶ。恐怖からの叫びだった。自分が、巨大な力――魔獣そのものを前にしているということへの。

「けえっけっけっけッ!! ニンゲンごときが、わしに勝てるとでも思ってるところが、可笑しくって堪んねぇのよ!!――――しるふぃーどぉっ!!」

ハッ、とフーケがドラゴンを振り返った瞬間、フーケの手元を突風が襲い杖を吹き飛ばす。

「残念ね! 先住魔法に杖はいらないのよ! きゅいきゅいきゅい!!」

シルフィードがフーケの手を狙って突風を打ち出したのであった。
杖に取り付けられた鎖が、ストラップのように手首のバンドにつながっているため、フーケは危ういところで杖を取り戻す。
しかし、ゴーレムのコントロールが取れなくなった一瞬、力を失った右手からルイズは脱出し、空中に飛び出していた。それをシルフィードが受け止める。

「しま……ッ……!!」


人質にして、最大の盾を失ったフーケの顔が、恐怖にゆがむ。フーケは何とか震えを押さえつけ、必死で頭を回転させた。
自分と金色の使い魔の間にはまだ距離がある。稲妻も炎も、ゴーレムを打ち砕くにはやや遠い距離だ。
あのメイジたちが杖を拾う前に、ゴーレムを盾にしてここから脱出すれば……新しいゴーレムを作れば、あのメイジどもなら倒せるだろう。
金色の使い魔は地面に釘付けられている……逃げ切れる!

フーケがゴーレムから飛び降り、駆け出そうとした瞬間――――

「逃げられるとでも……思ったかよぉおおお!! ニンゲンがあああッ!!」

とらの咆哮が轟く。とらが右手に『破壊の剣』を握り締めると、契約で刻まれた左手のルーンが、まばゆい光を放つ。
とらは、右手に握った『柄』を、左手に押し当てる。光があふれ出し、『とらの左手から』巨大な刀身が引き抜かれていく。

(わしの力を吸いやがれ……『流走』ッ……!!)

「おおおぉおぉおおおぉおおおおッ!!!!」

とらは雄叫びを上げながら、手にした剣、剛刃『流走』を振るった。

どん!!!

(なっ……!)

大気を切り裂いていく刃に、フーケのゴーレムが一撃で真っ二つになった。続けて襲ってくる衝撃でフーケの体が吹き飛ぶ。

(ばかな……あの距離から……一撃でゴーレムを破壊するなんて……!! あ、あれが……『破壊の剣』……!!)

足を負傷し動けなくなったフーケの前に、シルフィードに乗り、杖を構えたタバサ、キュルケ、ルイズが降り立つ。

「……チェックメイト」

タバサが呟いた。



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