あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの少女と紅い獅子-09



 引き合わされた人物を見るなり、フーケは人見知りする少女のようにワルドの後ろに身を隠した。
「ちょっと」
「何だ?」
「どういう事よ?」
「だから何がだ?」
「何で、こいつ等がここにいるのよ」
 ルイズ一行が宿泊する『女神の杵』亭にフーケを伴って戻ったワルドは彼女を『アルビオンでの案内人』と二人に紹介した。
 ルイズは別段フーケに対して怪しむ様子は見せなかった。ゲンは思い当たる節があったか――ワルドが連れてきた
と言うだけで、彼にとっては十分警戒すべき人物ともとれるが――油断なく彼女を見据えたが十二分に変装し、盗賊フーケの面影はおろか、
ミス・ロングビルとしての雰囲気すらまったく見てとれぬ、どこにでもいる町娘である今の彼女に無暗に突っかかる事はなかった。
「確かに向こうで行き当たりばったりに行動するわけにはいかなけど、大丈夫なの? 部外者を連れて行って。この人、えーと……」
「マチルダだ。ミス・マチルダ。サウスゴーダの出身だそうだ」
「サウスゴーダ……ブリミルが初めてアルビオンに降り立った地、だったかしら」
 スラスラと彼女の素性をルイズに教えるワルド。ルイズがフンフンと納得してみせるその反対側で件のフーケは凍りついていた。
 当然であろう。彼女は自分の素性を、ある娘以外には決して話したことはない、それはワルドも同様である。なのに、今ワルドが
ルイズに教えたのは全く間違いない自分の本名と経歴であった。
 一体どこから知り得たというのだろうか。フーケとしてトリステイン各地を荒らしまわっていた時から彼女は一匹狼だった。ミス・ロングビル
としての経歴でもサウスゴーダの名を出したことは一度としてなかった。
 思えばこの男は、自分の素性を知った上で学園で声をかけてきた。あの時は、王国軍の騎士にも冴えた奴がいるものだな。くらいにしか
思わなかった。
 だが、自分の素性をこうも知られているとは思ってもみなかった。もっと警戒すべきだったのだ。もし、あの森の事まで、
ウェストウッドの事まで知っているとしたら。
 彼女は自分がこの男と関わったことを呪い、同時にここラ・ロシェールで再び遭遇したことを――珍しく――ブリミルに感謝した。
 ワルドについていれば、少なくともウェストウッドにこいつが一人で行くことはない。それだけでもどれ程彼女を安心させることか。
 いずれ敵対することになるのかもしれない。
 勝てるか? 
 ――まさか。万に一つも勝ち目はあるまい。だが、そうなった時は、刺し違えてでも――

「ミス・マチルダ」
 彼女の黙考は唐突な呼びかけにより中断された。話が終わったのか、ワルドが彼女の方に向き直っていた。
「明朝早くに出発する。君の部屋も取っておいた、明日に備えてくれ」
 フーケがかろうじて頷いて見せるのを確認すると、ワルドはその場から立ち去る。フーケもゲンやルイズと視線をあわせぬよう、そそくさと
宛がわれた部屋に向かった。

「見覚えがあると思わないか?」
「えぇ? さあ……どこにでも居そうな普通の人にしか見えないわ」
 去りゆくフーケの後ろ姿を見ながのゲンの質問であったが、ルイズは質問すら予期しなかった様にに答えた。
「身のこなしに隙がない。本当にただの女性かな?」
「立て続けに災難ばかりだったからって気にしすぎよ。それともワルドが連れてきた人が信用できない?」
「いや、そんな事は……」
「前からアンタ、ワルドに対する態度ちょっとおかしいわよ? 相手は騎士団の一部隊の隊長なのよ。逆に変な警戒心をもたれたら、
ややこしい事になるかもしれないわ」
 一気に喋ってからルイズは自分の使い魔に向き直った。そしてひと睨み。
「特にさっきの中庭みたいな事は絶対しないように! わかった?」
 中庭の一件を出され、ゲンが渋い顔になる。
「アンタがそう簡単に喧嘩を売るなんてことしないと思うから大方ワルドが何か考えがあってああなったんでしょうけど、相手を考えなさいよ。
巨人に成れようが、そのままでもそれなりに強かろうが、今のアンタは周りから見たら平民にすぎないの。ワルド以外の貴族は
今私しかいないからいいけど、アルビオンに着いたらワルドはともかく他の人がどう思うか判らないんだから。以後自重する様に」
 少女に正面から説教されるなど、何とも情けない姿だったがゲンは一々納得していた。

 ある一点を除いては。

「騒ぎを起こさない様にしろというのはもっともだ。さっきの一件も俺も自重するべきだったのかもしれない。だが、貴族だから
逆らうなというのは納得がいかないな」
 ゲンのこの回答にルイズは理解できないという風な顔になった。

「何言ってるのよ、平民が貴族に楯突くなんて天地が返っても許されないわ」
「相手が間違っていてもか? その結果自分の身が危うくなってもか」
「あーもーうっさいわね! アンタが納得できようができまいが、ハルケギニアじゃそうなってるのよ! いいわね!」
 話は終わりだと言わんばかりにルイズも自室へと戻る。ゲンは何か言おうとしたが、その前に彼女の部屋のドアは閉ざされた。

 翌日、早々にラ・ロシェールを発った一行は夕刻、アルビオンの入り口スカボローの港に到着した。
「驚いたわ」
「驚いたな」
「フム、ここまでとはな」
「これは、……酷いわね」
 四者それぞれ、しかしながら共通して驚きの声を上げた。
 スカボローはアルビオンの玄関口にして、大陸との重要な貿易拠点であり常に商人がごったがえす活気のある町、であった。
 確かに人はごった返している、しかし活気とはほど遠い。商人の姿も見かけるが、それ以上に貴族、平民の数が多い。しかも
一様に疲れ切った顔をしており、特に平民のみすぼらしさは酷いものだった。
 ルイズたちが乗ってきた船には早くも大勢の貴族やその使いが取り付いている。大方、トリステインその他への亡命を図ろうといったところか。
「王党派に与した貴族は少ないと聞いていたが、どうやら武闘派が少ないという意味だったようだな。あるいはそう言った、武闘派にのみ
声をかけていたか。まあ、ニューカッスルが落ちたというのが本当なら、従う者もおるまい。財力の限り厄災から逃げようというのも
理解できんこともないが」
 特に感慨も無さそうにあたりを観察するワルドに対して、ルイズは憤りを隠せずにいた。
「なんて恥知らずなの。反乱軍に王都や領地を蹂躙されるだけならまだしも、守るべき領地を捨てて逃げようとするなんて。同じ貴族
として扱われるのが恥ずかしくなるわ」
「フッフ、そんな殊勝な貴族ばかりなら反乱は成功しなかったろうさ」
 そんなやり取りを少し離れてゲンが見ていた。そばには離れるタイミングを失したフーケが――少なくとも表面は――落ち着いた風に
佇んでいた。
「大陸が空を飛ぶとはな……。それにフネまで空を飛ぶとは」
「あら、その様子だとご存じなかったようですね。アルビオンはこの通り空に浮いておりますので侵略された歴史はないのですが……」
 そう言いながら町の様子に目を移す。その目には貴族に対する蔑みの色が浮かんでるように見えた。
「内憂は掃えなかった様ですわ」
「内憂でも外患でも命をかけて領民と領地を守るのが貴族や王族と言う物じゃないのか」
 ゲンの問いかけにフーケは皮肉な笑みを浮かべた。
「ほんの一部の奇特な方を除けば違いますね。特に領民は命をかけて守るものではありません」
 それだけ言ってフーケは黙り込んだ。
 ゲンは何か気に障るようなことを言ったかと思ったが、特に彼女が気分を害した風でもなかったのであえてそれ以上聞くことはなかった。
「それよりワルド。これからどうするの? 賊を探さなきゃ」
 気を取り直したルイズがワルドに振る。
 ワルドは暫く顎鬚を撫でながら黙考していたが、
「正直、見通しが甘かったな。これ程混乱しているとは思わなかった。もっとも、犯罪者が逃げ込むには絶好の状況だ」
 そしてフーケに冷やかしの視線を送るのを忘れない。
 ――余計な事を――とフーケは心中で毒づいた。


 兎にも角にも情報を集めなければならない。と、言うわけで早速一行は船員の寄り合い所に向かったがめぼしい情報は得られなかった。
 対応した船乗り曰く――ここ最近は特に出入りが激しい上に御覧の通り人が多い。おまけに混乱乗じて姿を暗まそうと考えたか、何やら
人相の悪い連中が大陸からの船に乗ってやってくる。賊と言われればもうどれのことを聞かれてるかわからない――との事。
 ならばと、人相の悪い、有体にいえば罪人の巣窟になっていそうな酒場をいくつか覗いたが、それらしき人物は
いなかった。得られたのは因縁をつけてきた阿呆な連中を適当に叩きのめした為、その連中を自警団に引き渡す手間であった。

「まったく、面倒くさい……」
「放ってもおけまい。しかし自警団が機能しているとは意外だな」
「やはりこの状況を放って置けない人も居るんだな。もしかしたら協力が得られるかもしれない」
「この状況では千客万来だろう。既に反乱軍の息がかかってるかもしれんしな。今は特に敵対する理由もないが慎重に行こう」
 そんなやり取りを交わしながら、彼等は説明された自警団の詰め所に向かった。

 自警団の詰め所は現在のスカボローの縮図そのものであった。
 窮状を訴える難民、窮状を訴え無理難題を吹っ掛ける貴族、どこから集められたか足枷を付けられた以外は野放しな盗賊、強盗、スリ等々……。
 混乱を極める詰め所だったが、自警団の者は誰一人疲れた顔を見せず、キビキビと与えられた任務を最善の方法で完遂せんと動き回っていた。
 姿を見るに、ほとんどが貴族のように見受けられたが。彼らの表情に敗残の者に見られるような不安感や絶望感はなく、何か達観したような
風ですらあった。
「肝の据わった連中が、アルビオンにもまともな者がいたようだな」
 心底感心したように呟いて、ワルドは身近にいた若い騎士に賊を引き渡そうと近寄った。
「失礼、酒場で絡まれたので少々手荒に説得したのだ。こちらで引き取って貰いたいのだが」
 ワルドの言葉に若い騎士が振り返った。

 その金髪の青年騎士は激務のせいか所々薄汚れてはいたが、その身のこなしの優雅さは並の貴族ではないことを雄弁に物語っていた。
 彼の顔を見てルイズは眉を寄せた。
 どこかで見たことがある。しかしすぐに思い出せなかった。
 彼は部下らしき人物に何やら指示を出しこちらに近づいてきた。
「町の治安維持に感謝する、何分人が足らなくてね」
 そこで言葉を切って、ルイズ一行をしげしげと観察する。
「な、何……よ?」
 居心地悪そうにルイズが反応する。それを見て青年は苦笑した。
「失礼、格好を見るにどうもこの国の人間ではなさそうなのでな。今、この国に入ってくるのは厄介事と厄介者だけと相場が
決まっていてね。君たちはどうも当て嵌まりそうではない。見たところトリステインの貴族御一行のようだ、まさか観光ではあるまい?」
 若騎士の問いかけにワルドがスッと一歩前に出た。
「私はトリステイン魔法衛士隊隊長、ワルド子爵。彼女らは私の協力者、それに従者です。故あって賊を追ってここまでやって来たのですが、
町が思いのほか賑やかででして。情報を集めようにもこの有様で、途方に暮れていたところです」
 慎重にと言っていたワルドがアッサリと正体を明かした。だが、ルイズ達は別のことで呆気にとられた。
 ワルドは膝を折ると恭しく頭を垂れたのだ、どう考えても並の貴族相手に行う事ではない。
「是非ともお力添えいただきたく存じます。ウェールズ・テューダー皇太子殿下」
 セリフの後半はあるいは自らの一向に向けたものであっただろうが、それは若騎士の苦笑を誘った。
「皇太子殿下、か。最近は聞くことのなかった肩書だな」
 こちらも素直に肯定する。
「え、ちょっ、ちょっとワルド?」
「以前、ラドクリアン湖の遊園会で拝顔した。っと言っても私は一介の警備責任者にすぎなかったがね」
 素早くルイズに説明を行うと彼は再びウェールズに向き直った。
「で、でも何で皇太子殿下が……こんな所に?」
 相変わらずルイズは困惑を続ける。
 当然であろう。侯爵家の息女であってもそう簡単に謁見できる相手ではない。
 ましてやこの様な――貴族や騎士が中心とはいえ――自警団の詰め所で遭遇する相手ではない。
 もっと言えば、軍事要所たるニューカッスルが落ちたと言う情報が本当なら彼は本来そこで……。
 いろんな情報が彼女の頭の中で混ぜっ返り混沌を生み出す。それを見てとったかウェールズは再び苦笑した。
「……はは、理解できないという顔だね」
 そこで一つ言葉を切って虚空を見つめた。その一瞬に僅かばかり残ってた笑みは消えていた。
「幸か不幸か……生き残ってしまってね」
 そして再び沈黙がやってくる。

 しばらく、黙っていたウェールズが再び口を開こうとしたとき、詰め所の入り口が勢いよく開かれた。
 そのけたたましさは詰め所の喧噪をほぼ黙らすほどの大きさだった。
 そして、開け放った男は息つきながら。
「殿下……反乱軍が、反乱軍が町中にっ」
 彼は最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。
 音も立てずに男が崩れ落ちる。
 彼の背後から飛来した無数の氷の矢が、喉を腹を頭を貫きその生命を停止させた。
 あまりに突然の出来事に、一同完全に言葉を失っている――若干名冷静を保っている者もいるが――。
 そして、その背後から押し入って来たのは明らかに武装した数名のメイジ。
「キッ……キャァァァ!!」
 今度こそ甲高い奇声が上がった。それを引き金に人々が一斉に動き出す。
 逃げ出す者、すかさず杖を抜きはなつ者、右往左往する者、その場で動けなくなる者。
 そして、無差別な氷と火の矢に為す術なく倒れるもの。

 侵入したメイジに殴りかかる者。

「お前ら!」
 ルイズが気づいたとき、ついさっきまでそばに佇んでいたはずの彼女の使い魔はあっという間に敵との間合いを詰めていた。

「エイィィィヤッ!」
 気合いの叫びとともに鉄拳が顔面を捉える。不意を突かれたメイジは反応する間もなく顎を砕かれ叩きのめされた。
 思わぬ反撃者に、侵入者の間に動揺が広がるのをゲンは見逃さない。
 烈風の如き蹴りが、岩をも砕く拳が、彼らをただ一撃で沈めるべく縦横無尽に暴れまわる。
 あるメイジは杖で受け止めようとして、杖ごと胴体を蹴り上げられその場に崩れ落ちた。
 その隙を狙って別のメイジがゲンに火の矢を飛ばそうと身構える、タイミングは完璧だった。相手が普通なら。
 完全に発動した火の矢が杖から離れきる寸前、そのメイジの杖は燃える矢じりとゲンの鉄拳ごと彼の鼻っ柱に叩き込まれた。

 徒手空拳で――デルフリンガーを背負ってはいるが――メイジに挑むなどと言う明らかに異質な男の登場にこのメイジたちは動揺した。

 が、それも束の間。入口からは更に別の武装メイジ、そして軽装の男たちが雪崩れ込んできた。
 詰め所内部は、益々混乱の度合いを増していく。

「オオトリ君、そろそろ行くぞ」
 近寄る有象無象をあしらいながら、ワルドが声を上げる。ルイズとウェールズを護衛しながらもその動きは相変わらず隙がない。
「行くってどこへ行くんですか! この連中を放っておけと?」
「任務が優先だ。君もそうではないかね?」
「それとこれとは話が違う!」
「存外、聞き分けのない男だな。このままではルイズにまで危険が及ぶぞ」
 その言葉がゲンに冷静さをもたらした。
 短刀片手に迫った男の顎をつま先でカチ上げて、一行のもとに戻ってくる。
 暴れまわっていたゲンが一歩下がるのを見た賊は互いに合図を送ると、詰所の外に退却した。その隙に手当たり次第に机や椅子を入口に
投げつけておく。
「スマン、だが放ってはおけなかった」
「ん、こ、今回は許してあげる」
 若干声が震えてる様に聞こえるのは気のせいではないだろう。焼け焦げたり血塗れの死体を前にパニックを起こさないだけでも、
大したものである。

「おそらくは、まだ迫ってくるだろう。さすがにジリ貧だ。突入される前に脱出するぞ」
 そう言いながら、入口の方に目をやるワルド。ゲンや他の貴族たちが椅子や机などでバリケードを築いたおかげで第三波はまだ来ていない。
 しかし様子を外から窺っているのは明らかで、再び突入してくるのは時間の問題だった。
 元々いた王党派の貴族や逃げ遅れた市民達もぞろぞろと集まって来た。特に市民は不安の色を隠せない様で、一様に青ざめている。
「この人たちを放ってはおけない」
 やれやれ、と言いたげに肩をすくめるワルド。
「今突入してこないのは、後詰を待ってるからに他ならん。そうなっては幾らなんでも防ぎきれん」
「ならば、今すぐ蹴散らせばいい」
「自惚れるなよ。完全に連中の数も把握していないのに、そんな博打はできん。それこそここにいる全員を危険に晒すことになる」
 そこまで言ってあたりを見渡すワルド。
 今の会話を聞いていたのか、市民たちはいよいよ絶望に足を踏み入れようとしている。このままでは恐慌状態になるのは明らかだ。
 その時、それまで黙っていたウェールズが口を開いた。
「子爵、まさか脱出のメンバーに私は含まれていないだろうな?」
「殿下……。恐れながら、この状況下で御命をお守り出来なんだとあれば、私は二度とトリスタニアには戻れませぬ」
 言外に何を言ってるのかを察したウェールズはフッと口元を緩めたがそれも一瞬、彼は決然と答えた。
「王を守り切れず、城を失っても、私は生きている限りアルビオンの王子だ。恐怖に怯える民を見捨てて逃げるなどあり得んのだよ」
 その言葉に王党派の貴族から一斉に歓声が上がる。
「殿下、よくぞ仰られた!」
「奴らに目にものを見せてやりましょうぞ!」
 次々と上がる歓声に頷いて見せるウェールズ。
 初めてウェールズを知った市民たちは、平伏するやら驚くやらで先ほどまでの沈黙が嘘のように騒がしくなった。

「ねえ、ワルド。このまま私たちだけ逃げるのは簡単よ。でも……」
「やれやれ、君もかルイズ」
 嘆息交じりにワルドが言葉をさえぎる。苦笑の表情を隠そうと顔に手をやった。
 そして暫く黙考した後、口を開いた。
「殿下、私に幾ばくか兵をお預けください。この者たちを連れて郊外まで逃げおおせて見せましょう。但し頃合いを見て殿下たちにも
脱出していただきます」
「フム、構わぬが私たちの脱出をどう確認する? 討ち死にするまで戦うかもしれんぞ」
「彼を置いていきます。異論は……ないな、オオトリ君」
 その言葉と共にゲンに目をやるワルド、一方ゲンはルイズに目をやる。
 彼女は顔を伏せ何やら考え込んでいる様子だった。ゲンが訝しげに声をかける。
「ルイズ?」
「……また勝手に決まった」
「ええっと、すまない。何のことだ」
「何でもない、何でもないわ。それよりウェールズ殿下をちゃんとお守りするのよ。これは名誉なことよ、いいわね?」
 後半はは自分に言い聞かせていたのかもしれない。
「任せてくれ、すぐに追いついて見せる」
 そんな心中を知ってか知らずか力強く請け負うゲンであった。   
                                             <続く>




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