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毒の爪の使い魔-43


ガレンビートルとガレンヴェスパの群れと砲撃の嵐の中、ジャンガとタバサを乗せたシルフィードは飛んだ。
目指すは艦隊の最奥に一隻だけ浮かぶ、他よりも一際大きな敵艦だ。
その行く手を阻むかのように、艦隊から砲撃が加えられ、無数の小型メカが体当たりを仕掛けてきた。
シルフィードは高速で飛行しながら、巧みにそれらの攻撃をかわしていく。
「キキキ、やるじゃねェか! その調子で突っ切りな!」
風で帽子が飛ばないように押さえながら、ジャンガが声を上げる。
かなりの高速飛行の為、カッターも上手く使えない。
振り落とされないようにしがみ付いているのが精一杯なのだ。
普段乗りなれているタバサも、かつて無い高速飛行と激しい回避運動に、しがみ付く事に必死だった。
もっとも”頭”を制圧する為にも精神力は無駄に出来ない。
よしんば反撃できたとしても、結局はしがみ付くしかなかっただろう。

数分後…、シルフィードは艦隊を突っ切る事に成功した。
目の前には無防備で晒される”頭”の姿が在った。シルフィードがやや速度を落とす。
ジャンガとタバサは立ち上がり、敵艦に飛び降りるべくタイミングを計る。
シルフィードが敵艦の真上へと到達した。ジャンガとタバサは頷き合い、シルフィードに声を掛ける。
「あのクソガキのお守りは任せたゼ」
「後はお願い」
「了解なのね。お姉さま達も頑張るのね、きゅい!」
その言葉を聞きながら、二人はシルフィードの背から飛び降りた。
二人が無事に甲板に下りたのを確認し、シルフィードは急いで味方の艦隊へと引き返した。

敵艦へと降り立ったジャンガとタバサは辺りを注意深く見回す。
…特に敵の姿は見当たらない。艦内に居るのだろうか?
いや、それ以前にジャンガには気がかりな事があった。
「オイ…」
「何?」
ジャンガに声を掛けられたタバサが静かに返す。
「変だと思わなかったか?」
「何が?」
「…これだけの規模だってのによ、この艦隊…殆ど”無人”だったじゃネェか」
ジャンガは怪訝な表情で言った。
――そうなのだ。この艦に到着するまで多くの戦艦とすれ違ったが、
それらに乗っていたのはガーゴイルらしきものや、ムゥの様な幻獣ばかり。人の姿は一切見かけなかった。
「ミョズニトニルンやガーレンの奴が向こうに居るからな。それらが使われるのは変じゃネェ。
だが…、全てをそれらに任せているってのは、どうにも腑に落ちないゼ」
培われた勘や経験などは人間の方が圧倒的に高いはずだ。
前哨戦ならばともかく、こんな水際付近で行う戦いにあんな連中を送り込むなど、どう考えてもおかしい。
事実、最初は不意打ちで苦戦していた連合軍も戦いの錬度で勝っている為か、
今は五分五分位にまで押し戻している様子だ。
これがちゃんとした人間ならば押し切っていたはずなのだが…。
「…今はどうでもいいか」
考えている時間は無い。今はとりあえず、目的を果たす事だけを考えればいい。
”頭”を探すべく艦内に潜入しようと歩を進め――

ビュンッ!

風を切る音がして、何かが飛んできた。
ジャンガとタバサは同時にその場を飛び退く。何かが甲板に突き刺さる音がした。
離れた場所に降り立った二人は一瞬前まで自分達が居た場所を見る。
そこには巨大な”矢”が突き刺さっていた。
それを見て、タバサは一瞬トロール鬼でも居るのかと思った。…だが、それは違っていた。
矢の飛んで来た方向へと目を向けると、そこには得体の知れない物が立っていた。
大きさは約五メイルほど、左手はカギ爪の生えた手、右手はクロスボウとなっており、
全体的には箱を積み重ねたような姿をしている、それは実に奇怪な物だった。
ガーゴイルかゴーレムだろうか? と考えた――いや、そうとしか考えられない。
あんな姿の幻獣などハルケギニアには存在しない。
――”存在しない”…そう思ってタバサはジャンガを振り返る。
「…”あれ”も?」
タバサの言葉にジャンガは苦笑いを浮かべてみせた。
「ムゥンズ遺跡のロボットか…、随分とまた厄介な物を引っ張り出しやがるゼ」

『ボックスメアン』――ムゥンズ遺跡の最奥に配置されていた戦闘ロボット。
箱を積み重ねたかのようなユーモラスな外見が特徴だが、その戦闘力は並みの幻獣よりも高い。
有線式のロケットパンチとなっている左手や、同じく有線式で伸ばす事が出来る右手の巨大なクロスボウ、
頑丈な箱状の胴体を飛ばして攻撃する『ボックスメラン』などの武器を持つ。
無数の機体が存在し、数で相手を圧倒する戦術も得意とする。
自立判断が出来るほど優秀な人工知能を持ち、その全てが一台のマスターコンピューターによって操られている。

「あれの厄介なところは数だな。…この船にどれだけの数がいるか解らネェがよ…」
『シンニュウシャ カクニン、タダチニ ハイジョスル』
ボックスメアンは機械音を響かせながら動き出す。
『ムダナ テイコウハ ヤメロ。ムダジャナイ テイコウモ ヤメロ』
「どうする?」
タバサが尋ねると、ジャンガは笑う。
「なら、お前はどうするんだ?」
「抵抗する」
「俺もだ」
言うが早いか…、二人はボックスメアンへと飛び掛った。

まずはジャンガが仕掛けた。毒の爪を振り回し、ボックスメアンに一撃を食らわせる。
硬い物がぶつかり合う音が響く。亀裂が走ったが、一撃破壊には至らない。
舌打ちするジャンガにボックメアンは左手を伸ばす。
それを見て、すぐさまその場を飛び退く。勢い良く突き出された左手は甲板を打ち砕いた。
そこへタバサが『ウィンディ・アイシクル』を放つ。
無数の氷の矢がボックスメアンを襲ったが、それは尽く跳ね返されてしまった。
続けざまに『ジャベリン』を唱える。
巨大な氷の槍が生まれ、相手を串刺しにせんと飛ぶ。ジャベリンはボックスメアンを捕らえる。
だが、頑丈な装甲を貫通する事は出来ず、粉々に砕け散ってしまった。
それを見て、タバサは再度呪文を唱えようとしたが、突然衝撃が体に走った。
何かが彼女に体当たりをしてきたのだ。
短く呻き、タバサは床に倒れこむ。その彼女に黒い何かが大量に群がってきた。
それは瞳の無い黄色い目をした小人のような生き物だった。

『ウニョ』――ボックスメアンの影から現れる、謎の生命体。
黒い小人のような姿をしており、敵に向かって捨て身の体当たりを仕掛ける。
たった一撃で消えてしまうほど脆弱だが、次から次へと際限無く現れる厄介な存在である。

タバサはウニョを蹴散らそうと、杖を振り回す。
一振りするだけでウニョ達は簡単に跳ね飛ばされて消えていく。
だが、ウニョ達は吹き飛ばされる量を上回る数で、休む事無くタバサに群がる。
ウニョの排除に手間取り、身動きが取れない彼女にボックメアンは顔を向ける。
その両目が徐々に輝きを増していく。
辺りを照らす光に気が付き、タバサは顔を上げた。
輝きが頂点に達し――
「オラァッ!」
ジャンガがボックスメアンの頭部を蹴り飛ばす。衝撃で顔を背ける形になる。
直後、ボックメアンの両目から眩い輝きのビームが放たれた。
狙いの逸れたビームは船体の一部を破壊する。
ジャンガは四体に分身し、ボックスメアンの腹部にダース単位で蹴りを叩き込んだ。
止めの一撃を放つと、ボックメアンは吹き飛び、壁を粉砕した。
「案の定、強化済みか」
今のビームのような武器は本来無かったはずだ。ガーレンによって改造されているのだろう。
装甲の厚さや他の武器の威力などにも梃入れが感じられた。

ジャンガがボックスメアンの相手をしたお陰で、ウニョの増援が無くなり、タバサは漸く自由の身となった。
「助かった、ありがとう」
立ち上がったタバサはお礼を述べる。
「礼言う暇があったら反省しとけ。足手纏いは要らネェからな?」
振り向きもせずにそれだけ言う。
冷たい言葉…とはタバサは思わなかった。
本当に必要が無いのなら最初から自分一人で来ればいい。
なのに、自分を連れて来たのは認め、信頼している証拠。
その信頼を裏切り、足手纏いになりかけたのだから、今のような事を言われても仕方ない。
自分の不甲斐無さを恥ながら、タバサは杖を握り締めた。
瓦礫を跳ね除けながらボックスメアンが立ち上がる。
左手と右手を伸ばし、箱状の胴体をブーメランの様に飛ばす。
ジャンガとタバサは同時に駆けだした。
ありとあらゆる角度から矢を飛ばす右手、鋭い爪を振り翳しながら伸びる左手、風を纏わり付かせながら迫る胴体。
それらをジャンガは分身で同時に撃破する。
しかし、ボックスメアンは冷静に対応し、両目から先程のビームを放とうと両目を輝かせる。
だが、その両目を『ブレイド』を掛けたタバサの杖がなぎ払う。
横一文字に亀裂が走り、ショートして火花が散る。
タバサはボックメアンの手足の付いた一番下の胴体を蹴り、その場から飛び退いた。

――直後、響き渡る砲撃音。

ボックスメアンの胴体が吹き飛び、巻き起こった巨大な爆風は頭部をも飲み込んだ。
タバサは音の方を振り返る。そこにはジャンガがハンドライフルを手にして立っていた。銃口からは硝煙が立ち上っている。
おそらく、タルブでヨルムンガントを破壊した例のやつだ。

完全にボックスメアンが消滅したのを確認し、ジャンガはハンドライフルを懐にしまう。
「よし、邪魔者は消えた。とっとと指揮官様を探すぞ」
「解ってる」
タバサは頷く。――その直後だった、凄まじい爆発音が背後から響き渡ったのは。
振り返ると、連合軍と戦闘を行っていた艦隊が一隻残らず炎に包まれて落下していた。
撃沈されたとは思えない…、そんな事が出来るぐらいならばとっくにそうしている。
では、何が起こったのだろうか?
すると、黄色い卵の様な形をした物体が、空から悩んでいる二人の元へと舞い降りてきたのだ。
それはガーゴイルのようだった。あまり見ない容姿の物だったが、タバサはそれに見覚えがあった。
そう…、確か学院での事件の翌日に自分の部屋へとメッセージを届けた物だ。『ンガポコ』とか言ったか?
ンガポコはジャンガの目の高さに静止すると、喋り出した。
「ンガ、ジャンガさん、シャルロットさんにメッセージがあります。ンガ」
「ホゥ?」
メッセージの届け主が誰かなど考える必要は無い。
このタイミングで自分達にメッセージを届けるような相手は一人しか思いつかない。
『ようこそ、我がアルビオンへ』
聞こえてきた声は予想通りの相手の物だった。
「ガーレン…」
タニアリージュ・ロワイヤル座での事が脳裏を過ぎり、タバサは苦々しい表情で呟く。
メッセージは続けられる。
『どうやら無人駆逐艦隊の指揮官であるボックスメアンを倒したようだな。
何故解るか…などとは聞かないでくれたまえ。反応が消えたのだから解るのは当然だ。
とは言え、見事だ…賞賛に値する。その褒美と言っては何だが、アルビオンへと下りる事を許可しよう』
ジャンガとタバサは顔を見合わせる。
どう言う事だ? と言葉の意味が理解出来ていない事を、互いの表情が物語っている。
『なに…罠などではない。と、言ったところで信じてはもらえんだろうがな…。
…艦隊の自爆を見たとは思うが、それは我輩がやったのだ。勝者は君たちなのだから、敗者は潔く下がるものだ。
それでも信じられぬと言うのであれば…そうだな、具体的な褒美として軍港ロサイスを君達に提供しよう』
「何?」
『君達が侵攻の足掛かりとして欲しているのは設備も充実しているロサイスだろう?
だから、それを提供するというのだ。嘘ではない証拠としてロサイス付近の部隊は引き上げさせる。
代わりにダータルネスの防備を固めるがな。後は諸君等で確認し、判断したまえ』
二人は黙ってメッセージに耳を傾ける。
『…そうそう、忘れるところだった。シャルロット君…、今一度我輩達に協力する気は無いかね?』
タバサの眉が、ピクリと動く。…今更こいつは何を言うんだ?
『我輩はメイジとしての君の優秀な才能が惜しい…、このまま手放すのは勿体無いと思うのだ。
今ならばまだ便宜を図れるのだが…』
ふざけた事を言う。今更、協力などする訳が無いだろう?
『「母さまを助けた後…、あなた達の首を貰う」か』
聞き覚えのある台詞にタバサは目を見開く。
『んー、君の家族を…母を思う気持ち、我輩も非常に心を打たれた』
今しがたの台詞…、自分がジョゼフとジョーカーに向かって目の前のガーゴイルに持たせたメッセージだ。
「…あの時の?」
『父は亡くなり、母は未だ心を病んだまま……それだけではないが、これ以上”自分の所為”で家族を不幸にしたくはないだろう?』
ギリギリと音がする位、タバサは強く歯を噛み締める。
ふざけるな…、自分がいつ家族を不幸にしたというのだ?
『正しい判断を下すよう、心から祈っているよ…。これ以上”自分の身の安全の為”に家族を犠牲にしたく無いならね…』

ブチッ、とタバサの中で何かが切れた。

「伝言しゅ――ンガぁぁぁーーーーーーーッッッ!!!?」
ンガポコの台詞は最後まで続かなかった。
タバサの杖の痛烈な一撃が、ンガポコへと叩き込まれたのだ。
派手に吹き飛ばされたンガポコは、床を跳ねながら壁にぶち当たった。
荒くなった呼吸を整えながら、タバサは杖を握っていない方の拳を強く握り締めた。
「…許せない」
憎悪の籠もった声で小さく呟く。

――今の境遇を自分が望んでいたとでも言うのか?

――自分はそんな事は望んでいない。

――不幸は全て伯父や伯父を支持する者の所為だ。

――自分は親を…家族を犠牲にしたりはしない。

激しい怒りに身体を振るわせるタバサをジャンガは静かに見ていた。
「怒るのは勝手だがよ…、冷静さ欠いてると死ぬだけだゼ?」
「…解ってる」
静かに、大きく深呼吸をし、タバサは気を落ち着かせた。
それを見て、ジャンガは床に転がるンガポコへと歩み寄る。
ンガポコを拾い上げる彼を見て、タバサは声を掛ける。
「どうする気?」
「タバサ嬢ちゃんよ…、シルフィードはどうしてる? 使い魔と主人は視界を共有できるんだからよ、確認は簡単だろ」
「ちょっと待って」
タバサは目を閉じた。
暫くそのままの状態でいたが、やがて静かに目を開ける。
「まだ船の上にいる」
「そうか、そりゃ好都合だ」
ジャンガはンガポコを乱暴に振り回し、無理矢理覚醒させる。
「ン、ンガ…」
「ヨォ、伝言ロボ。パシリになってもらうゼ」
「ンガ?」



ンガポゴに届けさせたメッセージによってやって来たシルフィードに乗り、ジャンガとタバサは艦隊へと帰艦。
ルイズ達に事の次第を説明し、その後『ヴュセンタール』号の総司令部に居るド・ポワチエら首脳部の人間にも同じ事を伝えた。
無論、首脳部は当然として、ルイズ達も最初は信じなかった。
あれほどの艦隊が一隻残らず自爆し、残った旗艦もあっさりと落とされた。
加えて、わざわざ設備の整った軍港ロサイスを明け渡すと言う。
出来すぎてるといえば出来すぎている…、信じられないのも無理は無い。
だが、百聞は一見にしかず。実際に見て確かめた方が早いと、偵察部隊が出される事となった。
その結果――

「ロサイス付近はも抜けのから…か」
第一竜騎士中隊の一騎士からの報告を受け取ったド・ポワチエは呟く。
偵察部隊が到着した時、ロサイス付近のアルビオン軍は既に撤退した後だったのだと言う。
それも、一隻の戦艦、一人の兵も残さない徹底したもので、まさに”来てください”と言わんばかりだったそうだ。
「ダータルネスの方の報告はまだか?」
ダータルネスの方は第三竜騎士中隊が担当のはずだ。
その時、唐突に扉が開いた。
「そんなに慌てなくても、今報告に参りました」
とても綺麗な美声でそんな事を言いながら、部屋へと入って来たのは長身で金髪の少年だった。
その少年を見たルイズは目を奪われた。
とんでもない美形なのだ…、一瞬見ただけでは女性と間違えてしまうかもしれないほどの。
その少年の目は左右で色が違っている。光の加減などではなく、本当に色が違う…月目だった。
「君は確か…第三竜騎士中隊の隊長だったか?」
「ジュリオ・チェザーレです、ド・ポワチエ将軍」
ジュリオと名乗った少年は、騎士の様な格好とは裏腹の優雅な仕草で一礼をする。
ド・ポワチエは怪訝な表情でジュリオを見つめる。
「何故直接ここに? 第二竜騎士大隊隊長のギンヌメール伯爵には報告をしておらんのか?」
「いえ、勿論ギンヌメール伯爵には報告済みです。ですが…」
そこで言葉を切り、ジュリオはゆっくりと部屋の中を見回す。
そしてその視線がジャンガに向けられる。
「きみが噂の使い魔のジャンガリアンくんだね?」
直後、その胸倉をジャンガは掴み上げる。
「…舐めてんのかテメェ? ジャンガ…『毒の爪のジャンガ』様だ! よく覚えとけ、ガキ!」
純粋な殺気を叩きつけるジャンガ。しかし、ジュリオは涼しい顔だ。
「いやいやすまない、失礼したよ。ぼくはロマリアの神官、ジュリオ・チェザーレだ。以後お見知りおきを」
胸倉を掴まれながらも平然とした態度で謝罪し、一礼をするジュリオにジャンガも毒気が抜かれたか、
つまらなさそうに鼻を鳴らし、胸倉を掴む爪を放した。
「ありがとう。まぁ、色々と活躍しているとか…きみの噂は絶えないからね、一目会いたいと思っていたんだ。…おや? あなたは」
隣のルイズに気が付き、ジュリオはそれまでの表情を一変させ、満面の笑顔でルイズの手を取った。
「あなたがミス・ヴァリエール? 噂どおりの美しさだ」
そして、ぽかんと口を開けて佇むルイズのその手に、彼は優しく口付けた。
それを見て、ジャンガは”新たな気障ガキ”と言う印象を彼に密かに抱いた。
ルイズは満更でもないのか、されるがままだ。
そこへド・ポワチエが口を挟んできた。
「ミスタ・チェザーレ、報告は大隊隊長から受け取るものだが…、君が直接来た理由は何かね?」
ジュリオはルイズの手を離し、先程のような優雅な仕草でド・ポワチエを振り返る。
「いえ、ただの挨拶ですよ。噂の使い魔とその主人、どちらも興味がありましたのでね。
本当ならば着艦したその日に挨拶をしたかったのですが、何しろ連れが酷い船嫌いでしてね…。
慣れさせるのに精一杯で、挨拶が出来なかったのですよ。ですから、丁度いい機会だったというわけです」
ふむ、とド・ポワチエは特に何も感じさせない表情で髭を弄る。と、再び扉が開いた。

「おい…いつまで、この船…に居やがるんだ…? うっぷ…」

まさに死にかけ……そんな感じのする弱々しい声だった。…その声にジャンガは聞き覚えがあった。
扉の方へと目を向けると、声の主がヨロヨロとした足取りで入って来るところだった。
入って来たのは亜人(おそらく少年)だった。見た感じでは狼の様な感じがする。
金と黒のコントラストが光る毛並みをしており、赤いジャケットに黒いライダースーツ、
黒いブーツと白い手袋を身につけている。
背の高さはジュリオと同じ位、年も近いのかもしれない。
ルイズとタバサは声が出なかった。
ジュリオは亜人の少年を振り返り、柔らかな笑みを浮かべる。
「やぁ、すまない。少し話し込んでしまったよ。もう終わったから帰るとしよう」
「…つってもな、…結局は船…だろうが…、う、ううう…」
可也気分が悪くなってきたのか、彼は口を押さえながら膝を付いた。…今にでも戻しそうな感じだ。
「ええい、ここでやられてはたまらん! ミスタ・チェザーレ、君の連れならば責任を持って連れて帰りたまえ!」
流石にここでやられてはたまらないと感じたか、ド・ポワチエは苦々しい表情でジュリオに言った。
ジュリオは少しも表情を崩さずに一礼をする。
「解りました、それでは失礼させていただきます。立てるかい?」
「…なんとか、な…」
ジュリオに肩を貸してもらって、彼は何とか立ち上がった。

「相変わらず船は苦手か…、キキキ…そこはまだまだガキだねェ~?」

ジャンガがそんな事を言った。
亜人の少年の肩がピクリと動く。
ゆっくりと背後を振り返り……ジャンガと目が合った。
「て、テメェ…」
「キキキ…」
彼の両目は大きく見開かれ、驚愕の表情が浮かんだ。

「テメェ……ジャンガ!!?」
「こんなとこで会うたァな…。懐かしいじゃネェか…ガンツ坊や?」

亜人の少年=ガンツを見ながらジャンガはニヤニヤ笑いを浮かべた。


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