あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Louise and Little Familiar’s Order-13



フーケの討伐から丁度一週間経ったウルの月、ヘイムダルの週ユルの曜日の夕方。ルイズはテーブルに向かって勉強を、ミーはたんまり専用の道具を持って掃除に励んでいた。
この数日、ルイズの癇癪玉はあまり滅多な事では爆発しないようになっていた。まあ起きている時、他人に対して十分に一回は口泡を飛ばすほど怒鳴っていたことからするとかなりの進歩であるともいえたが。
それを少しは認めたキュルケが六日前、あの決闘での結果を持ち出すのは当座の間凍結状態にしておこうという事を言い出してきた。勿論、ルイズがそれを断る理由は無い。
ギーシュやタバサ臨席の元、相変わらず素直になれないツンツンした態度でそれを承諾したが、その際たった一つだけ付帯条件が付くことになった。
それは就寝時間も含めた、ミー自身に自由な時間が与えられた時、ルイズとキュルケ、どちらの部屋に行くかという選択の決定権をミーの意思に任せると言ったものだった。
ルイズは今のところ一勝も出来ず、自室でさせる雑用と授業以外ではミーに一回も会わなかった。
事情を知らない周囲の人間からしてみれば、ただミーがいろいろな意味で『お姉さん』の条件を満たしているキュルケに、無邪気に懐いているといった様にしか見えないだろう。
しかしルイズはまんまとしてやられたという感情しか出て来ない。
持ちかけられたその時こそ気付かなかったが、いくら凍結状態なんて言葉を使おうと、付帯条件のせいで全てが元の状態のままである。
キュルケにはフレイムという名のサラマンダーがいるにも拘らず、ミーまで使い魔になった感じだ。
何とかしようとこの数日様々な策を巡らせたが、自分でこれと思える有効的な物がなかなか見つからない。どれも最終的には碌な事になりそうな感じがしたからだ。
どうすれば良いかと考えていると、ミーが換気のためにと開け放っていた窓から一匹の大きな梟が優雅な動きでもって部屋の中に入って来る。
その梟はヴァリエール家で飼われている、ルイズにとってはとても馴染みある梟であった。

Louise and Little Familiar's Orders「Letters and Reward of the dinner」

「トゥルーカス!」
「ルイズ様。お父様から急ぎの文で御座います。受け取り次第直ぐに目を通すようにと仰せつかって参りました。」

トゥルーカスと呼ばれた喋る梟はルイズの目の前に、しっかりと封蝋された厚めの封筒を落とした後、二三回部屋の中をぐるぐる飛び回ってから外に出て行った。
父親から急ぎの文など覚えている限りこれまで一度も無かった。一体何があったのだろうかと封を切って手紙を開き、書かれている事の一字一句逃さぬよう読み進めていく。
するとそこには、軍務を退いたとはいえ王宮によく出入りする父親だからこそ知り得た信じられない話が幾つも書かれていた。
まず一つ目は、アルビオンの王政府が共和制を掲げる貴族派『レコン・キスタ』の攻撃によって、遂にニューカッスルで完全に討ち滅ぼされたことだった。
浮遊大陸アルビオンにおける内戦状態は二年前から顕著化しており、ルイズ自身も知らなかったわけではないが、六千年以上昔から続いていた王家の一つがこうもあっさり倒れたことは驚きをもって迎え入れるしかない。
また、最近レコン・キスタにとある強大な力が参入したとの噂もあったが、真実は今のところ定かではない。
更に読み進めていくと、アルビオンの皇太子ウェールズ王子が死んだ際、トリステインの王女アンリエッタが以前王子にしたためた恋文が敵方に押収され、極秘裏にゲルマニアに渡ったという事も書かれていた。
ルイズの顔がどんどん青くなっていく。
と言うのも、王女アンリエッタは来るべきレコン・キスタとの戦いに備えるために近々ゲルマニアの王と、軍事同盟を真の目的とした婚姻の儀を執り行うことが決定していたからである。
また文面には、既にその相手が死んでしまったとはいえ、手紙自体は『不義密通の動かぬ証拠』という事で即座にゲルマニア皇室の元に届いた事。
そしてそのために、本人のあずかり知らぬところで重婚の片棒を担がされたアルブレヒト三世が烈火の如く激怒した事。
最終的には同盟の反故は勿論の事、トリステイン政府側に今後如何なる事が起ころうとも一切援助はしない、自国の気運とトリステインの出方によっては最後通牒も辞さないという、一種の引導を渡した事が事細かに書いてあった。
ゲルマニアがそんな反応をするのも無理は無い。自国の十分の一程度の大きさしか持たない国からの救いの要請にわざわざ手を伸ばしてやったというのに、結果的にはこってりとその顔に泥を塗られてしまったのだから。
あまりの事にルイズは、まるで下手な劇の脚本を読んでいるかのような気になったが、次に書かれていた事は今まで読んでいた事以上に衝撃を受けた。
ヴァリエール公爵家所有の領地の隣に居を構え、今は魔法衛士グリフォン隊の隊長でルイズの婚約者でもあるワルド子爵が、レコン・キスタに寝返ったという事だった。
また父によれば、このトリステイン宮廷においても、誰がとまでは分からぬが、レコン・キスタと金銭や情報の面において水面下で通じている者もいるとの事。
頭の整理が追いつかないまま最後の一枚を読んでみるルイズ。そこには「今月のティワズの週に入るまでに何としてでも実家に戻って来い。」とあった。
震える手で手紙をテーブルの上に置くと、そこがいやに暗くなっていることに気付く。いつの間にか陽は山々の向こうに沈んでいて、夜の帳が下りかかっていたのだった。
だがルイズにとってそんな事はどうでもよいこと。彼女にとっては何の成果も出せないまま、不本意ながらこの学院から去らなければならないということが我慢ならなかった。
だが今から親に手紙を書いてどれだけそれを主張しようと、その学院を管理・運営する国家自体が、大嵐の吹き荒れる大洋にある舵無し船と似たような危機的状況にある以上、意味の無いものとも考えた。
ルイズはランプを着け、よろよろと椅子に座り込む。学院内では今のところどれだけの人間が今日自分が知った事を知っているだろうか?
教師陣、特に学院長は王宮に一種の繋がりがある以上何かを知っているとしても、学院にいる生徒の親の大半は領地経営にいっぱいいっぱいで、とてもじゃないが頻繁に宮廷に出入りすることなど無い。
まあ中には自分のように財務面においても発言権においても、一角の力を持つ親がいる者もいるが、知っているであろう内容にバラつきはあると思われる。
そうなると……考え得る限り、自国がこんな事態になっているのをここまで詳しく知っているのは教師陣と自分ぐらいのものだ。
それからルイズは、教師陣が何故それを生徒達に対して公にしないかを疑問に思ったが、その答えはあっさりと出てきた。
そんな事をすればルイズの家のように、生徒達はパニックを起こし、更にそれを知った親達はこぞって子供を実家に戻らせ、学院は王宮からの正式な命令の無いまま閉鎖状態に陥るだろう。
なら自分から今の国家の状態を話して生徒たちを焚きつけるか?
あれこれと考えていると静かに部屋の扉が開き、掃除用具を全部片付けたミーとヒメグマが入って来た。

「ご主人様。ご飯食べに行かないんですか?」

えっ、と思い近くにあった時計を見ると、晩の食事の時間はとっくに始まっていた。
ルイズはランプを消し、ミーの手を引いて本塔へと向かった。


「すみません。今から丁度片づけを始めるところでして……」

ミーと親しい間柄にあるメイドのシエスタが、食堂の中で気まずそうにルイズに話した。
何か残っているかもしれないと考えていたルイズとミーはがっくりと肩を落とし、力無く元来た道を帰ろうとする。
するとシエスタは「あっ」と言って、ある事を提案した。

「賄いならありますよ!ミス・ヴァリエールのお口に合うかどうかは分かりませんが……如何いたしましょう?」

この際なりふりは構っていられない。半ば諦めたような表情でルイズはそれに答える。

「それ以外に何も無いんでしょ?いいわ……有り合わせの物でも何でも良いから、とにかく早く持って来て。」
「?こちらで御食事を?」
「私は厨房なんかに行けないわよ。ここでいいわ。」

そうルイズが言うと、シエスタは「かしこまりました。」とお辞儀をしてその場を離れる。
数分後、シエスタは銀の盆に見事な二人分のセット式料理を運んできた。
だいぶお腹が減っていたのかミーはいきなりがっついたが、ルイズは一口二口を慎重そうに食べていく。
しかし、貴族に出す物と同じ食材、同じ調理工程をしたその料理がいつも卓の上に出される料理と比べて劣る訳が無い。
ルイズは一通りの量をたいらげた後、口を拭きながらシエスタに話しかける。

「助かったわ。お礼は何が宜しくて?出来る範囲でなら何でもいいけど。」
「そんな、お礼なんて……あっ!」

再びシエスタの口から出た「あっ」という声にルイズは興味を持つ。

「どうしたのよ?『あっ』て。」
「その……学院長から許可が出たので明後日から実家に帰るんですけど……もし宜しければミーちゃんを数日お借りできないかと思って……」

予想の斜め上を行くその一言に、ルイズはぽかんと口を開ける。しかしシエスタの目はどこまでも真剣である。とても冗談で言っているようには思えない。
それからルイズはちらとミーの方を見やる。
ミーは召喚された日以来、この世界での色々な事を教えてくれる、平民という同じ立場のシエスタに対しキュルケやギーシュ並みによく懐いていた。
それに、ここでミーにある程度の自由を利かせるという柔軟な姿勢をとっておいた方が、後々の事を考えた時に得策でもある。
メイジと使い魔は一心同体という事を考えると、多少シエスタの申し出には苦しい所もあるが、いずれ自分の元に戻ってくる事を考えれば、数日だけなら貸してやっても良いとも思える。
それに言い出したのが、ルイズにとってはミーに何をするか分からないキュルケやギーシュじゃないだけまだマシとも思えた。
ルイズは一分ほどその場で考え込んでいたが、やがて冷めた表情のままシエスタに対して返事をした。

「良いわ。のんであげる、そのお願い。」
「ほ、本当ですか?!」
「但し!貸すのは滞在と往復に必要な期間だけよ!あなたがこの学院から出るその時から正確に計っておきますからね。刻限に遅れたりしたら承知しないわよ。」

そう凄む様な表情で言われても、シエスタは相変わらずニコニコしたまま元気良く「はい!」と答え、厨房に向かって行った。
やれやれといった表情でルイズがワインの入ったグラスに口をつけると、隣からか細い声でミーが「御主人様……」と声をかけてきた。

「何?」
「良いんですか?私、シエスタお姉ちゃんの所に行っても……」
「私が良いって言ったら良いのよ。行ってる間の部屋の掃除とかは他のメイドに任せることにするから。」

それだけ言ってルイズは再びグラスに口をつける。
そう、これで良いのだ。ミーが最後に戻ってくるのが自分の所であればそれで良いのだ。

スズリの広場にあるこぢんまりとしたレンガ造りの使用人宿舎に帰ったシエスタは、それはもううきうきとした表情で部屋の扉を開けた。
基本的に使用人は相部屋であるために、部屋の中では同じメイド仲間のローラが明日の支度をしていたが、そんな事はお構い無しだった。
突然入って来たうかれているルームメイトに、ローラは心配そうに声をかけた。

「シエスタ、やけに嬉しそうね。何かあったの?」
「うーうーん、べっつにー♪」
「あっ……そう。」

その様子を見てローラは嘘だと思った。シエスタは上手いこと感情を隠せるような子ではないから何か良い事あったに違いない。
女の性で聞き出そうかとも思ったが、知ったところで自分に何の益も無かったらそれはそれで意味が無い。
結局ローラはシエスタをそのままそっとしておくことにした。
一方のシエスタは自分のベッドの枕の下からある物を取り出す。それは長方形をした謎の物体であった。
シエスタはメイドとして初めて実家から出る時に、曾御祖母さんの形見として父親からこれを託されたのであった。
そしてその時にこうも言われた。

―どんな図鑑にも載っていない‘ポケモン’という不思議な幻獣を従えていた曾御祖母さんが生涯大事に持っていた物だ。
もしこれの存在や使い方、いや、‘ポケモン’という生き物を知っている者がいたら、帰郷の際に必ず連れて来ておくれ。―

今から遡ること六十年前。シエスタの曾御祖母さんは六匹の‘ポケモン’と呼ばれる幻獣を従えてふらりとシエスタの故郷、タルブの村にやって来た。
始めは余所者だと敬遠気味に接していた村人達も徐々に心を開いて曾御祖母さんを迎え入れた。
日々の仕事に従事する中で、時々この道具も使ったりしていたのだが、周りの村人達からは動物好きなちょっと変な人と思われていた。
そして月日は流れ、曾御祖母さんが天寿を全うしてから一ヶ月ほど後に、この道具は完全に沈黙してしまったのである。
ただ誰も使い方が分からなかった故に、その道具はかなり良い状態のまま保存されて今に至る。
曾御祖母さんの大事な形見の事を知っていそうな人がついに現れた!そう思うとシエスタは眠れなくなる。
二週間前に『‘ポケモン’の事を知っている人がいた!』と書いた手紙の返信で、文面からでも嬉しさを読み取れるような父親の言葉は今でもそらで言えるくらいだ。
それにその手紙によれば、曾御祖母さんの形見の品は、村にある寺院の中にまだまだ残っているという。
明後日が待ち遠しい。そう思いながらシエスタはその道具を抱きかかえながらベッドの上で右に左にと転がり始めた。




新着情報

取得中です。