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Louise and Little Familiar’s Order-12



ミス・ロングビル……もといフーケを、既に学院で待機していた王政府の人間に引き渡した六人と一匹は、学院長室でオスマン氏に事の次第を一通り話していた。

「ふむ。やはりわしの睨んだ通りじゃったな。街の居酒屋で給仕をやっていたところを採用した時、隠してはおったが目に何がしか一物抱えたような眼光を持っておった。しかしまさか今回の様な事のなったとはのう。」
「では学院長、まさか全ての事を存じた上で……?」
「いや、わしはそう言ってはおらんぞ。どうも君はどこかせっかちな節があるな、ミスタ・コルベール。ただ何時か何かの拍子に尻尾を出すじゃろうと思って泳がせていただけじゃ。
じゃが彼女のことじゃ。拷問される様な目にあおうとて、そうそう簡単に背後の事を吐くような真似はせんじゃろう。」

それからオスマン氏は厳しい表情を欠片も崩さずに生徒達に向き直り、きびきびとした口調で話した。

「さて君たちはよくぞフーケを捕まえ、『鉄拳の箱』を取り返してきた。事前に城の衛士を呼んでいた事もあって引渡しもかなり円滑にいった。そして宝物は元あるべき所に収まった。これで一件落着じゃ。
そこでなんじゃが……君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に申し出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。まあ、ミス・タバサに関しては既に『シュヴァリエ』の爵位を持っているので精霊勲章という形にはなるじゃろう。」

キュルケとギーシュの顔がぱっと明るくなる。無理も無い。王室から与えられる爵位としては最下級とはいえ、純粋に当人が国家に対して成した立派な業績に対して与えられる実力の称号だからだ。
二人が顔を見合わせてにっと笑う中、ルイズは小さいがはっきりした声でオスマン氏に言った。

「学院長先生。大変申し訳ありませんが、私めはそのお話を辞退させて頂きます。」

Louise and Little Familiar’s Order 「The story of thirty years ago」

その言葉にキュルケとギーシュ、そしてコルベール氏がぎょっとした顔で、タバサとオスマン氏が興味深そうな顔でルイズの顔を見つめる。
だがルイズは発言を撤回するつもりは無いらしく、どこまでも真剣な表情のまま真正面を見つめていた。
発言の真意を汲み取るべく、オスマン氏は重々しく声をかけた。

「ほう、辞退するとな?それはまたどのような理由から来たものなのかな?」
「はい……今回の一件においてミスタ・コルベールを含む他の四人と私の使い魔は、フーケのゴーレムを見事な連携で打ち倒しました。それが無ければ私達は無事にここまで帰って来れていないでしょう。
しかし……私だけは事実上殆ど何もしませんでした。皆の働きを幇助する何かをした訳でも無く、ただ皆の後について行っただけの様なものです。
その様な私が畏れ多くも『シュヴァリエ』の叙勲など……失礼を重々承知した上で正直な事を申せば、恥じ入って然るべきだと考えます。」

そのルイズの返答にキュルケはつい「余計な事を……」という顔をしてしまう。
彼女の持ち前の矜持からして考えられなくも無かったかもしれないが、これでは事態が全て円満にいった意味が無い。
だが、オスマン氏はそれについてどうという事はない様に答えた。

「その意思に嘘偽りが無いのであれば成程そうか……君がそこまで言うのであれば、わしから直々に王宮へそれを報告しておこう。ミス・ヴァリエールは受勲を辞退すると。
さて、四人とも。今晩の催し物、『フリッグの舞踏会』を覚えておいでかな?盗まれた箱はこの通り我等の手元に戻り、フーケも捕まった。盛大に執り行おうぞ。」

ここ数日のルイズの相手、そしてフーケの一件でキュルケとギーシュは『そう言われればそんな行事もあったな。』という表情の顔を見合わせた。

「本日の舞踏会の主役は君達じゃ。誰にも引けを取らぬよう、各々目いっぱい着飾って来るのじゃぞ。」

そう言われてキュルケ、ギーシュ、タバサの三人は恭しくお辞儀をし、学院長室を後にする。だがルイズだけはまだオスマン氏に何か用があるのか、微動だにしない。
気になって声をかけようとするが、ルイズはただ一言「先に行ってなさい。」とだけ言ってオスマン氏に向き直った。
これまでの一連の流れからして、流石にこれ以上オスマン氏の前で怒鳴り声をあげるわけにはいかないと思ったのか、声自体は穏やかな物だった。
キュルケ達はルイズが何を話すのか気にはなったが、邪魔をすれば後でまたとやかく言われることになるだろうと思い、後ろ髪を引かれる思いで退室した。
外を歩く足音が遠ざかっていったのを確認したオスマン氏はルイズに真面目な顔をして話しかける。

「どうやらわしに幾つか訊きたい事がおありのようじゃな。どれだけ力になれるかは分からんが。ああそれと……ミスタ・コルベール。スマンが君も少し席を外してくれんか?」

何かいい話を聞けるかと期待していたコルベール氏は、結構がっくりきたようで肩を落とした状態で退室していく。
そしてその足音も消えていった頃、オスマン氏が残されたルイズとミーに向かって言った。

「さて……この場にいるはわしと君達だけじゃ。先ずはそちらから話してはくれんか?」
「……学院長先生は『鉄拳の箱』について何かご存知かと思いまして。その……いつ、どこから、どうやってここに来たかといった事を。」
「ほっほ。君もあの箱の不思議さに気がついたか。いや本当に君は聡いものじゃな。ではその質問に答えるとしよう。……この箱はの、わしがとある人物から譲ってもらった物なのじゃ。」

そう言うとオスマン氏はその時の事を懐かしむかのような表情で話を続けた。

「三十年近く前の話じゃ。まだここの学院長以外に臨時の仕事もやっておった当時のわしは、ここから数リーグ離れた森において邪悪な幻獣を討伐する任務を遂行しとった。
相手の幻獣はそれはもう強力なものでな。あちこちで見境無く暴れ回ったその力は、国土を管理する役人に周辺の地図を何度も書き変えさせるほどだったくらいじゃ。
いくら王宮からの命令とはいえ、死にはしなかったが仲間が次々と幻獣の力の前に圧倒されていくのを見てわしは流石に死を覚悟したよ。
じゃがそんな時、一人の屈強な青年がこれまた屈強ななりをした二匹の獣を操り、その幻獣を見事に打ち倒したのじゃ。丁度君の使い魔のようにの。その青年こそが『鉄拳の箱』の元の持ち主なのじゃ。
様々な詳しい話を聞く限り、彼はタンバという所から来た格闘の武者修行を続ける平民という事が分かった。
じゃがいくら国益をもたらすほど栄誉な事をしても貴族、特に王宮は大っぴらに平民を表彰するわけにはいかない。そこで、仲間を救った彼をわしは極秘裏に学院に招き盛大にもてなした。
その厚意に対し、彼は去り際わしに『鉄拳の箱』をくれたというわけじゃ。もてなしの礼に、そしてわしたち魔法使いの力を認めるという二つの意味合いで。
そして彼はこうも言っておった。『いつか自分のように‘ポケモン’という生涯においての良き鍛錬仲間を見つけた時、必要があればこれを使ってくれ。』と。
しかしモートソグニルに使おうとしても全く反応せず。彼が連れていたポケモンという生き物についてもこの国、延いてはこの世界では現在は勿論のこと、過去の資料を遡ってみても存在していたという証明が何一つとしてない。
完全に扱いかねていたのじゃが、仮にも仲間を救った勇敢な者が自分に感謝の意を示すために残した物。粗末には出来んということでここの宝物庫にしまっておいたのじゃ。
しかしまさか……三十年の時を超えて彼の意に副える日が来ようとは……つくづく運命とは数奇なものじゃな。
まあかなり掻い摘んだ所もあるが、わしが『鉄拳の箱』を手に入れた経緯はこれで以上じゃ。」

長いこと喋ったので、オスマン氏は近くにあったコップに手を伸ばし喉を潤す。一息吐いて今度はその彼からルイズに話が振られた。

「さて今度はわしの方から話させてもらおうかの。先程も言った通りこの世界には基本的にポケモンという生き物はいない。ただの一匹もな。
それに青年の出身地や名前、彼が口にしたそれ以外の固有名詞に関しても様々な文献を調べたが、このハルケギニアに縁がある物ではなかった。
これらの事からわしは……いや、全くもってばかげた話かもしれんが、彼は全く違う別の世界から来たのではないかと推測した。
仮にこれが真実だとすれば、君の使い魔はその青年と同じ境遇にあると思われる。」

それを聞いていたルイズは横目でちらとミーの方を見やる。当のミーはぽかんとした顔で学院長を見つめていた。
素直に聞いていると言えば聞こえは良いが、実際は話されている事の半分も分からないでいただけであった。
その様子を気にする事も無く、オスマン氏は話を続ける。

「しかしの……さらにその仮定を真実としても、彼と君の使い魔がそれぞれこの世界に来るのに、何故三十年近くもの時間差が発生したのかも分からん。早い話が分からん事だらけなのじゃ。
が、これだけは言える。先日も言った通りその子は伝説の使い魔のルーンを持っており、今回の一件でその真価の一部を発揮した。
今まで君が自分にした事も何もかも考えずに、君が危機に陥ればそれを救わんと動いたのじゃ。それをよく考えてこれからは接することじゃな。
まあ直ぐにとは言わん。徐々に……の。それと……」

オスマン氏は、デスクの右にある引き出しから金貨を十枚取り出し、それを柱の様に積んでミーの前にすっと差し出した。

「学院長。これは……」
「怖い思いをして主人に付き従ったのじゃ。公的には仕方ないとはいえ、それに対する報奨が全くのゼロではあまりにお粗末とは思わんかの?
仔細あって今直ぐに大きな額を渡す事は出来ないが、これはほんのささやかなご褒美じゃ。大事に使うのじゃぞ。」

ミーは手を伸ばしてその金貨を受け取る。その時オスマン氏に「人から何かを貰ったら有り難うと言うのは教わらんかったかね?」と言われ、小さく「有り難う……ございます」と丁寧に言ったのはご愛嬌だった。
やれやれといった感じで見ていたルイズにオスマン氏は少々厳しい口調で注意を促す。

「こういった事を躾けるのも君の責務なのじゃぞ、ミス・ヴァリエール。それに、本人に渡しておいて今更じゃが、君の使い魔はこの世界において金貨一枚が持つ力を知らんじゃろう。
君がそれをしっかり教えてやるかそうしないかで、この子は倹約家にも浪費家にもなる。よいかな?」


フリッグの舞踏会が始まるまであと三十分を切った頃になっても、ミーとルイズはフーケ討伐の時と同じ格好のまま自室にいた。
舞踏会に行かない状況は同じだとしても、お互いその理由が違っていたからだ。
ミーはそもそも‘ぶとうかい’という言葉の意味を全然知らなかったし、ルイズはそこで起きるであろう事を想像しすっかり辟易していた。
舞踏会自体には場合によって出席する必要がある。
貴族にとって舞踏会というのは、ただ気に入った相手と呑気に踊るだけの社交の場というだけではなく、様々な情報を交換し合ったり互いの腹の探りあいをしたりする場でもあるからだ。
ルイズも貴族なのだから小さい頃からそういう事はみっちりと教え込まれている。
だが今からいくら綺麗に着飾っても、どうせ男性陣は普段から自分を馬鹿にしている事を全部棚に上げた上で、歯の浮くような言葉を並び立てつつ言い寄ってくるだろう。
一方で女性陣は、自分が何もしていない、何も出来ないのにそんな場にいて調子のいい男性陣から寵愛を贈られる事に我慢出来ず、見え見えの陰口を言うだろう。
どっちにしたってルイズの矜持がそれを許すわけは無い。しかも参加は強制ではないから、そんな胸の悪くなるような物に出る必要も無い。
そもそも明日も授業などで色々と忙しいのだ。わざわざ疲れを残すような事をしたくない。
そんな時、部屋の扉が軽くノックされるのを耳にした。
「はーい。」と答えてミーが鍵を開けて扉を開けると、露出は割りと控えめだがそれでもどこと無く扇情的なドレスに身を包んだキュルケがそこに立っていた。
中の様子を見てキュルケはルイズに声をかける。

「ルイズ!舞踏会行かないの?あともう少しで始まるわよ?」
「あ、そう。早く行きなさいよ。遅れるわよ。」

椅子に座って恐ろしく難しい本を読んでいるルイズはしごく無愛想に答える。
だが彼女が‘行かない’という結論を出すに至った心情的な物や経緯を露ほども知らないキュルケは、今度は声をかける対象をミーに移した。

「ミーちゃん。お姉さんと一緒に舞踏会に行かない?舞踏会は楽しいわよ~。小さくてもあなたは立派なレディなんですから、昨日買ってきた服のどれかを着て出れば注目されるわよ~。」
「えっ……でも、あの、御主人様が……」

そこでミーはルイズの方に振り向く。その時点でやっとルイズは読んでいた本を閉じて机に置き、キュルケの元へ歩み寄った。

「昨日買ってきた服?あれはギーシュが只の自己満足でこの子に買い与えた物でしょ?使うかどうかの決定権は私にあるの!
それに!ミーは平民なのよ!着飾って貴族の社交場に出す意味合いが今後のこの子の生涯であるわけ?
もしそれがあるって言うんならこの場ではっきりと手短に述べてもらいたいものだわ!」

キュルケはぐっと言葉に詰まる。ギーシュの件はともかく後の事に関しては何ら有効な反論が出て来ない。
今後ルイズに今以上の人付き合いが要求され、舞踏会等にどうしても出席せざるを得なくなった時でも、ミーは留守番をするか近くで待っているだけでいいのだ。
両者の間に暫しの間沈黙が漂うが、痺れを切らしたかの如くルイズはいつものように怒鳴った。

「無いんだったらあんた一人でさっさと行ってきなさいよ!鼻の下伸ばして待ってる相手がいるんじゃないの?私に構ってる場合?
悪いけどこの子はまだこれからやる事があるし、私いろいろと疲れてるの!分かった?!」

それから部屋の扉が勢いよくバタンと閉まり、更に鍵もかけられる。キュルケはやってられないとばかりに肩を竦め、急ぎ足でその場を後にした。
その扉の向こう側では、ルイズが扉を背にずるずるとへたり込み、髪を軽く掻きあげていた。
自分の言っている事は絶対に正しいという確信があったし、何より昨夜の決闘の結果を持ち出される前に、何とか自分の前からキュルケを追い払ってやった。
学院長室にいた時のように、先生方がいる前だと相手も公にするわけにはいかないので黙っているが、こういう場ではそうもいかない。
それにしても……昨日今日と起きた事が起きた事だけに気力は先程の会話ですっかり消えてしまっていた。
隣では苛々した表情のルイズをミーが心配そうに覗き込んでいたが、それが余計にルイズのささくれ立った心を悪い意味で刺激する。
―どうしてそんなに健気でいられるのか。私はそうしようとしてもそう出来ないのに……―
それから暫くして、ルイズは何も言わずその場で次々と服を脱いでいき、次いで明かりを消した後でベッドに向かって倒れこんだ。
双月が照らす部屋の中、一人洗濯物の山に残されたミーは小さくボソッと言う。

「御主人様……ミー、舞踏会にいきたかったな……」

しかしそれに対しての答えは実に静かでそっけない物だった。

「あんたにゃ一生涯必要無い事なの。無理してキュルケ達に合わせる必要は無いの。……分かったなら洗濯物をメイドの所に持っていっておきなさい。
それが済んだらあんたも早く寝なさい。明日も早いんだから。」

その言葉にミーは何かを言いかけるが、直ぐに言ってもどうにもならないと観念したのかやはり押し黙る。
そして洗濯物を籠に纏めて静かにルイズへ一礼して退室した。
残されたルイズはベッドの上で、オスマン氏が語っていた話の事を考えていたが、やがて押し寄せる眠気に勝てなくなったのか、終には軽い寝息をたてて眠ってしまっていた。
だが二人ともまだ知らなかった。世界の大きな変化が彼女達を呑み込もうとしている事を……




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