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偽伝シャルロット-01b


呆然と、左手の突き立ったナイフを見つめるジョゼフの前で、
シャルロットの肘先から鋼鉄の爪がガギャンと展開し、その中央に、鈍い輝きを放つ銃口が現れる。

「義手…… か?」

「ウワァアアァァァァ――ッ!!」

義手に意識を取られた一瞬が命取りとなった。
少女の絶叫と共に浴びせられた、ありったけの銃弾が、ジョゼフの右腕を、左足を、脇腹をえぐって吹き飛ばし、
勢いのままに、その身を欄干へと叩きつけた。

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「これで、全てが終わった……」

大きく肩で息を付きながら、シャルロットがゆっくりと無能王へ近づく。

「いいや……、 はじまりだよ、シャルロット……」

「!?」

シャルロットが思わず目を見張る。
片腕片足を失い、臓器に深いダメージを負いながら、ジョゼフはなおも絶え絶えに、言葉を紡ぎ始めた。

「ロマリアにも、トリステインにも、アルビオンにも【虚無】はいる……。
 だが、俺の代わりに地上に災厄をもたらすのは、どうやらお前の役目のようだな」

「世迷言を」

シャルロットが再び銃口を構え直す。
その瞬間、彼女は唐突に、ジョゼフが哭いているのを悟った。
無論、眼前の男は涙を流してなどいなかったし、口元には奇妙な笑みを浮かべてすらいた。
だがその時、彼女は確かに、男の口調の中にある悲しみの色に触れたのだ。

「オルゴールを聞け、シャルロット」

欄干にもたれかかりながら、器用な片足立ちでジョゼフが身を起こす。

「それで全てが分かる筈だ。
 そして、世界を燃やし尽くせ」

「! ま、待てッ!?」

シャルロットが咄嗟に、生身の方の右手を伸ばす。
だが、その手は届く事無く、無能王の体はリネン川の空へと踊った。

 ・
 ・
 ・

オルゴールを聞け。

謎かけのようなジョゼフの最後の言葉の意味は、すぐに判明した。
王都リュティス、ヴェルサルテイル宮殿のジョゼフの私室に、その答えがあった。

「土のルビー……、それに、始祖のオルゴール」

テーブルの上に置かれた、始祖ブリミル伝来の品と言われる小箱を手にとる。
風聞によれば、ジョゼフはアルビオンより持ち帰った、壊れたオルゴールを常に傍らに置き、
聞こえる筈もない音色を楽しむかのように、始終、耳を傾けて飽くところが無かったという。

「これに、あの男が壊れた理由の一端があると言うの……?」

おもむろに右手に指輪をはめ、オルゴールの蓋を開く。
異変はすぐに起こった。


~ 神の左手ガンダールヴ 勇猛果敢な神の盾…… ~


「――!?
 聞こえる、はっきりとした歌声まで……!」

シャルロットが息を呑む。
不思議と郷愁を誘う旋律は、ハルケギニアの偉大なる始祖・ブリミルが、遠い子孫達へと宛てたメッセージだった。

ガンダールヴ、ヴィンダールヴ、ミョズニトニルン、そしてもう一人……。
始祖を守りし使い魔達の歌は、いつしか、どこか聞き覚えのあるような詠唱へと変わリ始めていた。

「……【爆発】、それに【加速】?」

体内に染み入るかのような詠唱の響きと共に、内から湧き上がるかのような昂揚感がシャルロットを包む。

彼女は即座に理解した。
自らを長年苦しめ続けた無能の正体が、伝説の系統【虚無】に由来するものであった事を。

「こんな、こんな力の為に……」

シャルロットの体内で、幼い頃より一時たりとも消え去る事の無かった深い闇が、ぞわり、と鎌首をもたげる、
あの男もまた知ってしまったのだ。
死してなお、仇敵の手より故郷を奪還せんとした一人の狂人の妄執が、全ての悲劇の始まりであった事を。

どくりと心音がとび跳ね、少女の胸中に、麗しきラグドリアンのほとりでの日々が、鮮やかに蘇る。

――彼女の誇りであった、心優しき父。
――彼女の憧れであった、最愛の母。
――そして、どこか困ったような笑顔で、少女の頭を撫でる叔父……!

~ もし、四の担い手、四の使い魔、志半ばでこのいずれかが欠けても、【虚無】を受け継ぐものは諦めるなかれ。
  【虚無】は血を継ぐ他者に目覚めん、新たに虚無に目覚めし者は、故人の魂を継げ。
  そして、異教より【聖地】を取り戻すべく努力せよ ~

「おのレエェエエェェ――ッ!!」

喉が張り裂けんばかりの絶叫が響き渡り、オルゴールがテーブルもろとも薙ぎ倒される。
衝動のままにシャルロットが指輪を叩き付け、左手を噛み締め、根元よりズボリと引き抜く。

低く重い銃声が、合わせて五発、室内にこだまし、
始祖の悲願を託した伝説のマジックアイテムの一組が、永劫の闇の中へと消えた。

 ・
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 ・

「今更私達の間に、話す事など無いだろう!
 さあ! 殺せッ!
 その外道の刃でこの首を刎ねて見ろ、父を殺った時のように!!」

二人きりの室内に、乙女の剣幕が刃となって降り注ぐ。

シャルロットとイザベラ。
かつては実の姉妹のように仲の良かった二人の従姉妹の、その定めはいつしか別れ、
今はただ、殺す者と殺される者として、再開の時を迎えていた。

今や立場は変わり、仇敵の生殺与奪を握るに至ったシャルロットはしかし、イザベラの振り絞るような咆哮に短く応じた。

「もう、私達が殺しあう理由は無い」

「理由が無い? 権力を掴んだ途端に君子ヅラかッ!
 お前は、我が父の敵だッ
 それに! ……それに私はお前にとって、仇敵の娘だろうが?」

畳み掛けるようなイザベラの問いに、シャルロットが静かに首を振るう。

「もう、私たち一族が殺しあう必要など無い。
 ……本当に倒さねばならない敵が、他にいるのだから」

「本当の、仇……だと?」

「始祖ブリミル」

短く、だが、あらゆる不の感情を凝縮した呪詛のような呟きに、ぞくり、とイザベラの背が泡立つ。

「し、始祖? お前は何を……」

「叔父は、【虚無】だった」

思わずあっけに取られ、言葉を失ったイザベラに、シャルロットが説明を続ける。

「あの人、あなたの父上は、始祖ブリミルが行使した幻の系統【虚無】の担い手だった。
 それゆえに、貴族ならば子供でも扱えるような簡単な系統魔法すら、使う事が出来なかった」

「…………」

「無能のコンプレックスは、あの人の心を酷く歪んだものへと変えた。
 周囲の悪意と無理解の中、あの人は次第に精神のバランスを崩し、
 ついには、最愛の家族を手にかけるに至った。
 ……そして、私も」

「……それを、信じろと言うの?」

「全ては事実」

きっぱりと、シャルロットが断言する。
イザベラは、眼前の少女の瞳の奥底で、何か異形の生物が蠢く様を見た。

「私はブリミルを憎む!
 一族の不幸は全て、聖地奪還などという六千年前の人間の戯言が招いたもの。
 そのような妄言が二度とまかり通らぬよう、
 私はあの男がこの地上に築いた、価値観の全てを破壊する。
 ……これ以上、私達のような惨劇を後世に残さぬために」 

「本気で…… そんな事を言っているの?
 教会を、ロマリアを…… いえ、ハルケギニア全土を敵に回す事になるわ」

かつては妹のようにすら思っていた、臆病なエレーヌの変貌に、イザベラの声が微かに震える。
ほの暗い輝きを両眼に宿し、シャルロットが静かに頷く。

「何も、正面切ってロマリアと戦う必要は無い。
 ただ、私達の生活基盤を支えている、魔法に取って変わるだけの技術を、平民に与えてやれば良い。
 平民の進出が進み、魔法に頼る必要の無い世界が完成した時、
 ブリミル信仰は、只の信仰以上の政治的な力を失う」

神をも恐れぬシャルロットに大言に、イザベラが絶句する。
事情を知らぬ者が耳にすれば、それこそ狂人の戯言と一笑する事であろう。

だが、イザベラは知っている。
魔法の使えぬシャルロットが、ガリア戦役の最終的な勝者と成り得たのは、
まさしく彼女の言う、魔法に頼らぬ異形の軍事体系が基盤となっている事を。
そして、最近ではそれらの技術を産業へと転用すべく研究を始め、国内で諸々の改革を推し進めている事を。

だが……。

「シャルロット、あなた、殺されるわ」

「…………」

か細い方を震わしながら、しかし、きっぱりとイザベラが断言する。

門閥貴族の寄り合い所帯であるガリア国内において、貴族社会を省みないシャルロットに敵は多い。
なまじ、彼女が先代の無能王よりも、勤勉で合理的な為政者である分だけ、抵抗勢力の危機感を煽るのだ。
現にイザベラ自身、一度は彼らのような不満分子を迎合して、巻き返しを謀ろうとしていたのだから。

「ええ、だからこそ、あなたの力を借りたい。
 あなたの統べる北花壇騎士団の持つ情報網を、私の【葵衆】に組み込みたい」

「――!?」

シャルロットの言葉に、思わずイザベラが戦慄する。

先のリネン川での会戦において戦功をたてた伊賀・甲賀徒士隊の中より、
特に異形異能の者のみを選抜した、諜報・破壊工作の専門集団、葵衆――。

もし、彼らの持つ異常な戦闘力と行動力に、長年政争の暗部を担ってきた、北花壇騎士団のコネクションが加わったならば、
現在のガリアに満ちた陰謀の全てを、一手に釣り上げる事も可能かも知れなかった。

だが、彼らを始めとした異常の能力集団が忠誠を誓うのは、
ガリアと言う国家ではなく、あくまでシャルロット個人である。
もし改革の最中、シャルロットが凶弾に斃れるような事があれば……。
既存の価値観から大きく外れた個性を持つあの集団は、
ハルケギニアに未曾有の動乱をもたらす火種となってしまうのでは無いか?

「……あなたは狂っているわ、シャルロット」

「そうかも知れない…… でも、だからこそ、あなたの手を貸して欲しい」

じっ、とシャルロットが真っ直ぐにイザベラを見つめる。
そこに宿っていたのは、改革者でもなければ復讐鬼のそれでもない。
姉を慕う、心細げな妹の瞳であった。

「私達の一族でまともなのは、もう、あなた一人だけだから……」

 ・
 ・
 ・

「一族の結束も大事ですが、ヒヒッ!
 まずは降り注ぐ火の粉を払わねば、枕を高くして寝られませんぞ、シャルロット姫殿下」

「!」

「お前は……!」

(邪阿弥――!?)

そう叫ぼうとして、思わずイザベラの声が凍り付く。
いつの間にか彼女の背後にいたのは、弊衣蓬髪に無精髭を蓄え、
顔面に生皮を剥いだかのような傷を持った、胡散臭い男だった。

だが、イザベラは知っていた。
北花壇騎士団の情報網を以ってしても素性を探る事の出来なかったこの狂人こそが、
ガリア戦役におけるシャルロットの躍進を支えた、異形のブレーンである事を。

一方、既にシャルロットは既に落ち着きを取り戻し、冷徹な為政者の仮面を被り直していた。

「――用件は?」

「影能の精進の最中に、面白き刻が見えましてな。
 お耳に入れておこうかと思い、参上した次第で御座います」

「面白き、刻……?」

「ガリア王家の滅亡する未来でございます」

滅亡――。
その不吉な響きに、イザベラの表情が強張る。
シャルロットは一瞬、不快気に眉を吊り上げたが、別段口を挟む事無く続きを促した。

「未来、と言うても、遥かな先の事ではございません。
 おそらくは近い将来、このガリアは改革を恐れたハルケギニアの諸国に攻め込まれ。
 そして、あなた様は敗れます」

「…………」

「精強なるあなたの軍を打ち破るのは、左手に輝く紋様を持った、二人の騎士でございます」

「輝く紋様……?」

問い掛けのような邪阿弥の言葉に、イザベラがオウム返しに呟く。
対して、始祖のオルゴールより【虚無】にまつわる情報を得ていたシャルロットは、すぐに言葉の意図に気付いた。

「神の左手……、伝説の使い魔【ガンダールヴ】の事を言っているの?
 邪阿弥、そんな未来はあり得ない」

「ホゥ? それは如何なる理由で」

「以前、あなたに伝えた通り。
 虚無の担い手とその使い魔は、全部で四人……。
 同じ能力を備えた伝説の使い魔が同時代にふたりも存在するわけが……!」

と、そこまで口にしたところで、何事かに気づいたシャルロットが、愕然と両目を見開いた。
主人の常ならぬ動揺を見て取り、邪阿弥が意地の悪い笑みを浮かべる。
傍らで見ていたイザベラには、シャルロットの顔から見る見る血の気が引いていくのが分かった。

「ムホホ! お気づきなされましたな?
 確かに神の左手は、一つの時代に一人かも知れませぬ。
 では、もしも彼らが、同じ時代のガンダールヴでは無いとしたら……!」

「……刻を超え、別の時代に生きる【虚無】が、私を殺しに来ると……?」

刻を超える。
常軌を逸した主従の会話に、もはやイザベラは声一つあげる事ができない。
だが、その言葉が事実ならば、全ての辻褄が合う。
大国ガリアの正規兵を相手に連戦連勝を続けた異形の集団が、
その実、別の時代から盗んできた、未知の技術体系を母体としていたと言うならば……。

「……邪阿弥、急ぎ、影能の完成を進めて」

長い沈黙の果て、感情を押し殺した低い声で、シャルロットが指令を下した。

「もう一度、刻を超えられますか……」

「……座して、滅亡を待つ気は無い。
 運命が私を殺すと言うのならば、邪阿弥。
 全ての運命が始まる刻を探し出し、私を導いて。
 私はその地で、始祖ブリミルにまつわる全ての縁を…… 断つ!」

「ファッ! ヒィイィアッハッハハハヒャヒャッ!!」

シャルロットの凄絶な覚悟に対し、いよいよ格好の見世物とばかりに、邪阿弥が狂声を上げる。

「お見事! それでこそ我が主!
 いやはや、この邪阿弥、改めて感服致しましたわ。
 シャルロット姫殿下、しばしお待ちあれい。
 近いうちに、我が祖・世阿弥の伝えた夢幻能の全てを解き明かし、最高の舞をお見せしましょうぞ!!」

それだけ言うと、邪阿弥は二人に背を向け、足早に部屋を後にしようとした。
が、不意に扉の前でピタリと止まり、振り返らずに口を開いた。

「ゆめゆめ油断めされるな、シャルロット様。
 私の見た未来が現実の光景となった時、あなた様は別の時代に生きる、
 もう一人の【シャルロット・エレーヌ・オレルアン】の手によって、首を刎ねられまする」

「――ッ!?」

「ふハッ! 刻の流れとは、何と残酷でおぞましく、そして美しい事よッ!!」

狂人の高笑いと共に扉は閉ざされ、室内には、狂声の残響と、二人の少女のみが残った。

「……負けるものか、私は……」

「エレーヌ……」

肺腑より搾り出すかのような呻きを漏らす眼前の少女の名前を、
イザベラは意識せぬままに、かつてのようにミドル・ネームで呼んでいた……。

 ・
 ・
 ・

「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく強力な使い魔よ……」

うららかな春の日差しの中、トリステイン魔法学院の中庭に、少女の声が響き渡る。
先ほどまで、めいめいに囃し立てていた少年たちも、この時ばかりは固唾を呑んで状況を見守る。

何と言っても、今、庭の中央で詠唱を続けているのは、入学以来まともに魔法の使えた試しの無い【ゼロ】のルイズである。
一体どんな変な使い魔を呼び出すのか、あるいはやはり、いつも通りの失敗をするのか、
未だ好奇心旺盛な年代の彼らにとって、これほどに面白い見世物は他には無かった。

「――私は心より求め訴えるわ! 我が導きに……!」

全身全霊を込めたルイズの詠唱が、不意にピタリと止まる。
昂ぶる自身の意識に合わせるように、眼前の空間が揺らめき始めたのを目にしたためだった。

「これって……、私、サモン・サーヴァントを……!」

「……これは!」

「え? あの……、ミスタ・コルベール?」

入学以来、ついに初めて魔法を成功させたかと、喜びの声を上げるルイズの前に、儀式の引率者であるコルベールが立ち塞がる。
何から自分を守ろうとするかのような教師の態度に、ルイズが不審気な瞳を向ける。

この時、コルベールのとった動きは、まったくの本能によるものだった。
あえて理由を付けるならば、彼の長年に渡る戦場経験が培った、第六感が警鐘を鳴らしたと言って良い。
そもそも、成功だの失敗だのと言う以前に、詠唱が終わる前に発動する魔法などありはしない。
眼前の光景は、おそらくはルイズのサモン・サーヴァントとは無関係の現象である筈だった。

この段になって、ようやく周囲の生徒達も異変に気づき始めた。
空間は蜃気楼のように大きく移ろえど、いつまで経っても、使い魔を呼び出すゲートは現れない。
それどころか、眼前の異常事態に合わせたかのように、中庭は徐々に、分厚い濃霧に覆われだした。

先刻まで興味無さげに級友を見つめていた青髪の少女・タバサも、
いち早く異変を察知し、手にした杖を精一杯に握り締めていた。
濃霧の彼方から聞こえてくる奇妙な鼓の音が、彼女の胸中に、未だ体験したことの無い不安の渦をざわめかせていた。

居合わせた生徒たちが恐怖におののく中、霧はいよいよ濃くなっていく。
鼓は激しく、響き渡る囃が亡霊の呻きを思わせる。
プシューンという蒸気の音と共に、巨大な鉄隗が影を無し、異様な死臭を漂わせながら、帷子の擦れる音が近づいてくる。

そして……。

『ようやく会えたな!
 もう一人のルイズ・フランソワーズ!
 そして、こちらのシャルロット・エレーヌ・オレルアン!』

地獄の底から響くかのような狂声に、そして、生まれて初めて味わう本物の殺意に、ルイズが戦慄する。
心臓を巨大なつららで貫かれたかのような絶望感が、少女のか細い体を包み込む。

タバサもまた、鉄槌で叩きのめされたかのような強い衝撃を受けていた。
彼岸より轟いた叫びは、彼女自身の声色に良く似ており、それゆえに一層おぞましさを増して届いてきたのだ。

『お前達の最期を生贄に、始祖ブリミルに連なる全ての因縁を、この時代で断つッ!!』

魔王のような少女の雄叫びと共に、やがて、徐々に霧は晴れ……。

 ・
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 ・

昔、とある貴族の家に双子が生まれた。

片方の赤子は父の才を継ぎ、有能なメイジとなりうる素養を有していた。
片方の赤子は、大いなる始祖の力を継ぐ可能性を秘めており、それ故、他の魔法の才を持たなかった。

周囲の大人達はしかし、幼子の素質の違いなど気付く由も無く、
ただ慣習に従い、先に生まれた方のみを取り上げ、シャルロット、と名づけた……。



果たしてその時、先に産声をあげたのは、一体どちらの赤子であっただろうか?



ささやかな偶然により、全く異なる運命を生じた、二つのハルケギニア。

大きく分かたれた筈の二つの刻は、いつしか再びもつれ合い、



そして今、互いの存亡を賭けた、邂逅の刻を迎えようとしていた……。


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