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ゼロの戦闘妖精-03


Misson 03「不可知決闘域」(前編)

僕は、薔薇だ。

薔薇を見る女性は 微笑んでいる。 そうでない娘にも 微笑ませる魔力がある。
僕も そうなりたい。 なって見せる。 ならなくちゃ いけない。
幼い日に 僕の尊敬する祖父は、教えてくれた。
「全ての民を愛せよ。
『博愛』こそが 武人の根幹である。」と。
だから 僕は誓った。
「全ての女性を愛する。
 全ての女性に 笑顔を!」と。
だから 僕は、薔薇になろうと決めた。

僕は ギーシュ。ギーシュ・ド・グラモン。
トリステイン魔法学院2年生。武門の誉れ高き グラモン家の四男だ。
残念ながら、今の僕には 父や兄程の『武の力』は無い。
それは まだ本格的な訓練を受けていないからだ。
後期からの選択授業で 武術訓練を受ければ 僕だって…
それに、魔法技術だったら かなりの所まで迫っていると思う。
兄さんの巨大ゴーレムとは方向性が違うけど、僕は 複数の等身大青銅ゴーレムを同時に作成して操作することが出来る。 
ドットメイジの段階でこれが出来たのは 国中でも そう多くないはす。
先生方も「将来有望」と 太鼓判を押してくれた。
加えて 僕は顔もイイ。
『世界一』 なんて戯言を吐く気は無いが、『十人並み』と言えば それも嘘になる。
始祖は 僕に二物も三物も与えてくださった。ならば 僕はそれに応えなければならない。

家柄・才能・美形。これだけ揃った男を、女性が放って置ける訳が無い。
薔薇の花に集う 蝶々の様に。
そして僕は 『博愛の薔薇』。
彼女達の笑顔の為に 誰にでも分け隔てなく愛を与える 大輪の薔薇。
僕の愛は 全ての女性の為の物。不公平があってはならない。
だから 『二股』だの『不誠実』だの言われることは 心外だ。
決して『浮気』などではない。
祖父への『誓い』であり、神に対する『義務』なんだ。

だのに…
ねぇ モンモランシー。
何故君は 僕を許してくれないのぉ~?(泣)

事の発端は、先日の昼食時だった。
食事を終えたギーシュと その友人達は、そのまま食堂で たわいも無い会話を楽しんでいた。
こんな時 一番盛り上がるのは やっぱり『オンナ』の話。とは言え、
「○○を××へ誘ったら OKしてくれた」とか 
「△△とデートして手を握ったけど 拒まれなかった」
等という ホホエマシイ話で「ウオォォォ!」と唸ってしまうのが 童貞少年達の限界。
このグループ内では 一応 『女性にモテる』ギーシュは 
「オレ達のトップを切って アレをするんじゃないか!」
と思われているが、実際は五十歩百歩である。
今も 下級生を乗馬の遠乗りに誘った話をしながら、右手をズボンのポケットに入れて 同級生のモンモランシーから貰った
プレゼントの香水を 大事そうに撫でている。
当然 どちらともキスすらしていない。
ちなみに 日頃から『博愛』を公言している割に、『本命』はモンモランシーと心の中で決めているあたり、何をか言わんや 
である。
「ギーシュ この間頼まれたヤツ。手に入ったぜ。」
マリコルヌがテーブルの上に置いたのは、数本の花だった。
モンモランシーに 「香水の素材として使うから」と頼まれていた物で、産地がたまたまマリコルヌの実家の近くだったので 
手配を依頼したのだ。
「ありがとう、このお礼は近いうちに 必ずさせてもらうよ。」
「なに いいってことさ。
 だけど こんなサエない花 何に使うんだ? 誰かに送るったって ショボ過ぎるだろうに。」
「フッ、この花の価値が判らない様じゃ 君もマダマダだね。
 詳しいことは 結果が出たら話すことにするよ。」
ギーシュはポケットから手を出して 花束を受け取った。この時 香水の壜が転げ落ちたことに気づかなかった。
「じゃっ そろそろ行こうか。」
ギーシュ達のグループは 食堂を出て行こうとした。が、
「お待ち下さ~い!」
駆け寄ってきたメイドに呼び止められた。
「ふうっ 追いつけて良かった。
 あの こちらを落とされたようでしたので、お持ちしました。
 香水ですか? 綺麗ですね。
 蓋は外れなかったみたいなので、こぼれてはいないと思います。
 はい どうぞ。」
その手には 紫の小瓶が捧げ持たれていた。

元気なメイドだった。
名前は シエスタ。よく声の通る少女だった。
食堂中の かなりの視線が そこに集まった。
落とし主の貴族様に確認して頂く為に、壜を持つ手は 顔の辺りまで上がっていた。
周りからも はっきり見える位置だった。
 …ざわ ざわ ざわ…
(おい あれ、『モンモランシーの香水』じゃね?)
(ああ それも いつもより高級な壜に入ってねぇか?)
(あれ、男性用だよな。)
(てことは、ギーシュが誰かにプレゼントする為に作ってもらったってことは?)
(ない!ぜってーねー。 ありゃ アイツがモンモランシーから贈られたモンだ!)
【結論】
『ギーシュは モンモランシーと 付き合っている!』

「やるな、さすがギーシュ。」
「よっ もてるね色男。」
「ヒューヒュー。」
男性陣からは 好意的な冷やかしの声が掛けられたが、
『ガタンッ!』
栗色の髪の女生徒が 椅子を激しくひっくり返す勢いで立ち上がると、ギーシュに向かって歩み寄って来た。
「ひどい…酷いですわ、ギーシュ様!」
小柄な少女。茶のマントを着用しているところを見ると、中等部から高等部へ進級したばかりの一年生のようだ。
「やっぱり モンモランシ先輩と お付き合いなさってらっしゃったんですね。
 あの森の中で、私を『愛している』と言ってくださったのは、偽りだったのですね!
 差し伸べてくださった手も 瞳の中の輝きも、みんな みんな嘘だったなんて……」
どうやら 香水の贈り主と この少女は別人らしい。
突然始まった愛憎劇に、周りの生徒達は観客と化した。
「違うんだケティ、誤解、誤解だよ!
 僕が君を悲しませるような事、する訳が無いじゃないか。」
駆け寄るケティを抱き留めようと 両手を開くギーシュ。
二人の視線が絡み合う。
「ケティ。」
「ギーシュ様
……
 なんて どゎぃっ嫌い~!!!」
カウンター気味に ケティの平手打ちが炸裂。助走の勢いを腰の回転に乗せた、見事な一撃だった。
吹っ飛ぶギーシュ。
前方の障害物を力ずくで排除したケティは、泣きながら食堂を去った。
「ふっ、
 どうやら彼女は、恋愛の奥深さを知るには まだ幼な過ぎたようだね。
 ケティ。早く大人になって 僕の元へ帰っておいで。
 薔薇は 何時までも君を待っているよ…」 格好つけて呟くギーシュ。
だが、食堂のテーブルの上に仰向けに倒れたまま、ソースやケチャップ塗れでは、何を言っても説得力が無い。
「貴女のランチを台無しにしてしまい、申し訳ない。」
食事中だった生徒に詫びを入れようとした。そこに座っている人物と 視線が合う。
・・・『不運は 偶然を装いながら、何処までも人を追い詰める』…
ギーシュは凍りついた。
そこにいたのは、モンモランシーだった!

「あーらギーシュ、謝るんなら 私より先に、あの一年生にじゃないの?
 それとも、私にも謝らなければならないような事が あったのかしら?」
言っている内容は冷静だったが、口調は 押さえ込まれた怒りで爆発寸前だった。
(まっ まずい!)
この 人生最大のピンチを脱する為、ギーシュは持てる知識を総動員して考えた。
しかし 有効な策を思い付くには 人生経験が20年程足りなかった!
彼は最早『蛇に睨まれた蛙』だった。テーブルに仰向けのまま、逃げる事も 動く事すら出来なかった。
モンモランシーは 近くにいた給仕の銀盆からワインボトルを手に取ると 杖を出して呪文を唱えた。
「ご自慢のお顔が 随分と汚れているみたいですわね。いま 綺麗にして差し上げますわ。」
ボトルをギーシュの顔の上で逆さまにすると 魔法を発動させた。
流れ落ちるワインは 容赦なくギーシュの口や鼻に入り込み 呼吸を妨げた。ギーシュは テーブルの上で『溺れた』。
それだけではなかった。ボトルが空になる頃を過ぎても ワインは流れ続けた。むしろ その勢いを徐々に増していった。
最後には滝の様な水量になり 割れた皿やひっくり返った料理と共に ギーシュを押し流していった。
流石 水メイジ、『洪水のモンモランシー』(違~う:本人談)
「ごめんなさいね。
 ワインを少し こぼしてしまったみたい。大変かもしれないけど、後始末 お願いするわ。
 それと、床に落ちた『クズ』も 適当に処分しちゃって!」
先ほどの給仕にボトルを返し、気絶した『クズ』を一瞥して、彼女も食堂を後にした。

「大丈夫ですか グラモン様。」
ギーシュが目を覚ますと、一人のメイドが心配そうに寄り添っていた。香水を拾ってくれた少女 シエスタ。
よく見れば 黒髪に黒い瞳という 希少価値の高い少女だった。
これで 平民でなければ、普段のギーシュなら 速攻で口説きにかかっていたかもしれない。
だが ギーシュにとって 平民は恋愛の対象外だった。さらに、今 ギーシュは生贄を必要としていた。
突然、女性二人に振られ 大勢の前で恥をかかされた。 誰のせいだ?
(僕じゃない僕じゃない僕じゃない僕は悪くない僕は悪くない僕は僕は僕は僕は・・・・・・)
では 誰だ。 ケティか? モンモランシーか?
(違う。彼女達じゃない。女性に罪を着せてはいけない。彼女達は悪くない。)
ならば、
(そうだ、あのメイドだ。あの平民が香水を拾わなければ・・・僕に届けたりしなければ・・・皆に見せたりしなければ!)
そう それが求めていた答。(ミンナ コイツガ ワルインダ!)
びしょ濡れのメイジは、己の中に渦巻くドス黒いモノを、薔薇を模した杖と共に 自分を心配してくれていた少女に突き付けた。
「なんて事をしてくれたんだ!
君の不躾な行為の為に 二人の乙女が涙に暮れることになってしまったじゃないか!」
いや、モンモランシーは泣いてなかった様な気がするが・・・
「もっ 申し訳ございません グラモン様!」
貴族と平民。明確な身分社会であるトリステインにあって、その違いは絶対。
如何に理不尽であっても、平民は貴族に逆らってはならない。六千年掛けて形成された この社会の掟。
シエスタは 震え上がって平伏した。それ以外に、出来る事も 為すべき事も無かった。
「ふん。これからは、もっと気を使って働くんだな。
 今日のところは許してやるが、二度は無いぞ!」
貴族少年の安っぽい自尊心は、自分より弱い者の惨めな姿を見るだけで満たされた。
だが 彼の行動が、メイド仲間の中でのシエスタの立場を悪くした事は間違いない。
(あの娘と仲良くしていると、あの貴族様に目を付けられてしまうかもしれない・・・)と。
平民と貴族の間では ありがちな事件。
ある者は記憶の片隅に留め、多くの者は忘れていった。



トリステイン魔法学院 とある平日の午前中。
一時間目の授業が早めに終わり、次の授業も同じ教室なので移動の必要も無い、中途半端な空き時間。
こんな時 女子生徒は 仲良しグループで集まって、恋の話に花を咲かせたりする。
つい先日まで 心の壁を作っていたルイズ、色恋沙汰に一切興味を示さないタバサの二人は 当然その集団には入らない。ではキュルケは?
恋に憧れ 愛を夢見る 普通の女の子達は、恋愛肉体派・百の夢よりナマ一発!なキュルケを毛嫌いするかと思いきや、そうでは無かった。
自分には 越えたくても怖くて中々越えられない一線を 軽々と飛び越え、それを楽しげに語るキュルケは、乙女達にとって
『その道の先達』なのだ。
キュルケ本人は 群れる事を好まず 積極的にグループに入る事は無いが、アドバイスを求められたりした場合 普通に参加している。
今日の話題は、「モンモランシーとギーシュ」だった。
「神様って 女心がお分かりにならないのかしら?
 顔 家柄 魔法の腕前、かなりイイモノを集めて作った男子に、なんで『浮気性』なんて致命的な性格も入れちゃうのぉ!」
「そうそう アレさえなければ、学年じゃ一番の上物なのよねぇ。」
「おまけに 四男だから、お嫁に行っても さほど家に縛られるって事も無いし。」
「経済観念ユルそうだから、プレゼントなんか高いの買ってくれるわよ、きっと。」
…少女といっても 女はオンナ。意外としっかりしている。って言うか 俗っぽすぎね?!
「で、モンモランシー。ホントの所、どうだった? 付き合ってみて。」
「まぁ 大体みんなの言う通りだったわ。
 付け加えるなら、優柔不断で自己チューで 周りは全然見えてないし、無駄にプライドだけ高い癖に臆病だし、食べ物の好き嫌いは
激しいし、お父様にもお兄様にも頭が上がらないみたいだし…」(延々と続く)
「…ボロクソに言うわね。
 てことは もう 吹っ切れたって事?」
「それが そうでもないのよね。
 みんなには黙ってたけど、私とギーシュって 昨日今日の付き合いじゃないの。幼馴染って言ってもいいくらい。
 ほら 私の家がイロイロあって 疎遠になっちゃったけど、この学校で再会してからは…」
「じゃ ヨリ 戻すの?」
「………」悩めるモンモランシー。
「ギーシュの事 嫌いじゃないわ。
 でも 私も女の子なんだし、恋人は もっとグイグイと私を引っ張って行ってくれる様な人が…」

「甘い!甘いわ、モンモランシー!!」
そう言ったのは それまで黙って聞いていたキュルケだった。
「貴女を引っ張っていける男? そんなヤツ いるかしら。
 第一 ソイツのセンスが最悪だったら どうするの。
 そんな奴の考えたデートに引っ張りまわされるなんて、アタシならゴメンだわ!」
(『愛の伝道師』モード、キタァー!)
(今日は どんな「お言葉」が?)
皆 身を乗り出して聞き入る。
「古の昔から、大事を成した男、英雄と呼ばれた男には、必ずイイ女が付き従っていた。
 だけど 本当はそうじゃない。男なんて 皆 バカばっかり。
 煽てて 宥めて その気にさせて、影から支えた いいえ、裏から操ってたのは 女の方よ!」 
男尊女卑の思想や 良妻賢母と言う『お題目』を蹴っ飛ばす、強烈な物言い。これが 恋愛アドバイザー 
キュルケ・ツェルプストーの真骨頂。
「イイ男が欲しかったら、探すんじゃなくて 育てるの!
 気に入らない所があるんなら、ガンガン 作り変えちゃえばイイのよ!」
「優柔不断? ジコチュー?、いいじゃないの。躾の仕甲斐があるわ。
『自分の事より 恋人が大事』って 骨の髄まで叩き込んでやりなさい!」
「『無駄にプライドが高い』って?
 プライドなんて 男の『操縦桿』みたいなモノよ!
 ギュッっと握ってしまえば、相手を右に向かせるのも 左を向かせるのも、自由自在!」
(『操縦桿』って 何かしら? )
(判らないけど・・・殿方の身体で『握る』所と言えば・・・まさか、アレ?)
(キャッ! 恥ずかしい! でも 昔見た弟のアレって、『握る』って言うより『摘む』ってカンジだったけど?)
(貴女、お父様のを見たこと無いの?)
(そうよ、大人になると アレがムクムクと・・・って、何を言わせるのよ!) 
やっぱり みんな思春期のオンナノコ、妄想し始めると 止まらない。
「確かに ギーシュはサイテー男だけど、素材としてはイイほうだと思うわ。
 どうする、モンモランシー。『調教してみる』?
 やるって言うなら、あのバカに お灸を据える計画があるんだけど、乗らない?」
「面白そうね。 それ、詳しく教えてくれる?」

その日の放課後、ギーシュは 意外な人物に呼び止められた。
「・・・手紙
 読んで。」
そう言って封筒を差し出す 同じクラスの少女。
(誰だっけ?)すぐには思い出せなかった。
そうだ、確かタバサ…(ギーシュの脳内データ:いつも本を読んでいて ほとんどしゃべらない。近づき難い雰囲気を纏っている為、
クラス男子の『恋人にしたい娘ランキング』 圏外。)
これでは ギーシュが覚えているはずも無い。
だが、自分にラブレターを届けに来てくれた女性を 邪険にするような男でもなかった。
「ありがとう。
 君が心を込めて書いてくれた手紙、今晩ゆっくり読ませてもらうよ。
 返事は 明日でいいかな?」
「・・・勘違い。
 それは、ルイズの手紙。
 あと 『恋文』では無い。」
ギーシュは 訳が判らなくなった。よりによって あのヴァリエールからだって! 
ラブレターじゃないってのは、まあいい。ゼロのルイズからのラブレターなんて こっちから願い下げだ。 
でも そうすると、この手紙は何だ?
「ここで読んで。
 返事を聞きたい。」
表情一つ変えずに催促するタバサに気押されて、ギーシュは封筒を開けた。


『果し状』

貴殿は日頃より自らを「薔薇」と称し 表面上女性を称えている様に見せて、その実 己が欲望の儘 
女性の人格を蹂躙することに 何ら問題意識を持たぬご様子。
かような悪行に対し 拳はおろか抗議の声すら挙げられぬ 全ての乙女に成り代わり、我 
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、貴殿に決闘を申し込むものなり。
当方は、我と我が使い魔にて御相手いたす。
なお 決闘はご法度ゆえ、余人に申し伝えること ご遠慮願う。
よもや お逃げになるとは思いませぬが、さような事あらば、「武人にあるまじきこと」として 
全校女性に貴殿の行状が知れ渡るものと思われたし。
今宵 人皆寝静まりし刻限 召喚場にてお待ち申し上げる。


ギーシュは、事態に付いて行けずボーっとするアタマで こう思った。
(『想像の斜め上』っていうのは こういうのを言うんだろうなぁ…)
「ねぇ 君。タバサ だっけ、
 ルイズは、『本気』なのか?」
「本気。」
……即答され、黙り込むギーシュ。……

「もう一度 聞くよ。
 あいつは、『正気』か!」
「…判らない。」
(この娘も どこかしら普通じゃないな。)
「ちょっと待てよ、どう考えたってオカシイだろ、コレ!
 なんで僕とルイズが『決闘』しなきゃならないんだ?!」
「…そこに書いてある通り。」
「貴族同士の決闘は、禁止されてるし!」
「…だから、こっそりやる。
 それに 戦うのは、ルイズの使い魔と 貴方の『得意技』。
 どちらも貴族本人じゃない。言い訳は出来る。」
あれこれ理由を付けて断ろうとするが、タバサは応じない。
元々 タバサはルイズの代理として 手紙を渡しに来ただけで、決闘を中止する権限はない。
(どうやら、逃げ道は無さそうだ。)
ギーシュは覚悟を決めた。
もし この決闘から逃げたとしたら、半年位は 学校内の全ての女性達から総スカンを喰らうだろう。
彼は、女性の『噂話』の恐ろしさを よく知っていた。
(とりあえず、頭のオカシクなった同級生を 2~3発ブン殴って正気に戻してやるのも、貴族の務めって事にしておこう。)
「決闘の件、『承知した』と伝えてくれ。」
「了解。 伝える。」
「ところで、ルイズの使い魔って あの空飛ぶ瓢箪みたいなヤツだろ。
 あんなモノで、どうやって僕の『ワルキューレ』に勝つ気なんだ?」
「・・・また 勘違い。
 間違いとは言い切れない。でも違う。
 あれは、使い魔の ほんの一部。
 ……
 ルイズの使い魔は、『召喚場の怪物』」

数日前から 噂があった。
曰く、
「召喚場に何かが居る。」
「不気味な唸り声を聞いた。」
「巨大な影が 火を吐きながら飛んでいった。」
「コルベール先生が、ドームを作って何かを隠している。」
「確かに見た! 竜でもワイバーンでも無い『幻獣』がいた。」
未だ正体不明のソレは、『召喚場の怪物』と呼ばれるようになった。

草木も眠る丑三つ時(という表現がトリステインにあるかどうかは置いといて)ギーシュは召喚場に現れた。
そこに待っていたのは、ルイズ・キュルケ・タバサの三人。
街の大通りのような幅で、照明の炎が2列 延々と灯されている。
「よく来てくれたわ。ギーシュ。」
大量の照明で十分な明るさがあるとはいえ 揺れる炎に照らされて 仁王立ちするルイズには、妙に迫力があった。
「決闘を挑まれて臆するような男は 貴族とは呼べないさ。
 それに、噂の怪物にも 会ってみたいしね。」
(噂ってのは、尾ヒレが付くもの。怪物と言ったって、所詮 ゼロのルイズの使い魔。
 でも その怪物を倒せば、モンモランシーも 僕を見直してくれるに違いない!)
ギーシュが薔薇の杖を振る。花弁が舞い、7体の等身大女性兵士型青銅ゴーレム『ワルキューレ』が出現する。
これがギーシュの得意技である。女性兵士型で、かつ無駄にディテールが細かいところが彼らしい。
飛行能力のある相手を想定して、投擲用の槍か 弓を装備している。
7体というのは、ギーシュが同時に展開できる最大数である。
敵戦力が不明の為『自軍兵力の逐次投入は危険』と判断したのなら まだ評価できるが、実際は『自分の周囲に置いて
盾代わりにするため 頭数を揃えただけ』なのが情けない。
「こっちの準備は整った。
 それで、君の使い魔は 何処に居るんだい?」
ルイズは黙って空を指差す。(雪風、ギーシュの頭上を 超低空でフライパス!)《RDY》

  高度5000からパワーダイブ。100まで降下してアプローチ。降下続行。
  《マスター:対風防御 OK or NOT?》(OKよ!)
  滑走路上空 対地高度3メイル。目標上で加速し通過。

ルイズが指し示す先を見つめるギーシュ。小さな星が天から降るのを確認。流れ星?いや、違う!
それなら もっと高い位置で消える筈。なのにアレは、地表スレスレまで降りて消えた。
だが 光が消えただけだ。おそらく 水平飛行に移ったんだろう。
足元に並ぶ照明の列。その延長上 遥か遠くの空から、謎の唸り声が聞こえた。
それは、真っ直ぐに 一瞬にして飛んで来た!
何かが見えた と思ったのと、それが頭上を通り過ぎていったのが同時だった。
目の前を 自分の何倍もあるような大砲の弾が掠めていったら、こんな感じなのかもしれない。
(なんて 冷静に考えられるようになったのは、だいぶ後の事)
轟音で 鼓膜が破れるかと思った。怪物の『炎の尾』で、髪の毛がチリチリと炙られた。
でも そんなのはどうでもいい。凄かったのは 風だ。
身構えていても 吹き飛ばされないようにするのがやっとだった。
指示を送れなかったワルキューレ達は 全員薙ぎ倒された。
魔法が掛かっている様子は無かった。
アレは ただ通り過ぎただけで、ウインドブレイク並みの風を起こしたって言うのか!

(雪風、今度は着陸して。停止位置は 尻餅をついてるバカの前。)《RDY》
今度は 比較的静かに降りて来る 雪風。 早めにランディングし ゆっくりと近付いて来る。
ルイズは、頃合を見計らって 雪風とギーシュの間に立つ。雪風のライトで ギーシュから見ると逆光になる。
「どう、お待ちかねの怪物と対面した気分は?
 これが 私の使い魔 『雪風』よ!」
ギーシュから返事は無かった。 リアクション芸人としては、失格である。(オイオイ!)
無言のギーシュに 更にルイズから声をかける。
「ギーシュ、ごめんなさい。 先に 謝っとくわね。
 ・・・・・・
 果し状なんて送り付けたけど、『決闘』は 貴方を呼び出す為の口実。
 本当は、貴方とモンモランシーに 仲直りしてもらいたい。それだけだったの。」
「なっ なんだって~!」

意外な展開の連続に 既に冷静な判断など不可能なギーシュ。
「私の雪風は、ご覧の通り空中戦に特化した使い魔よ。空でなら 誰にも負ける気はしないわ。
 でも 地上戦は苦手(出来ないワケじゃないけど)。
 貴方のワルキューレは、地上戦を得意とするゴーレム。
 この対決 ハナから噛み合ってないのよ。
 だから 『引き分け』って事にしましょ。」
ギーシュ、ブンブンと縦に首を振る。
ルイズが一歩下がり 代わりにキュルケが前に出る。
「で、ここからが本題。
 貴方 あの食堂の事件の後 モンモランシーに謝った?」
「もっ もちろん!」
話題が自分の得意分野になったので、勢い込むギーシュ。
「いいえ。 貴方は謝ってない。
 あれは『言い訳』。自分の体面を保つ ただそれだけのもの。」
「何を言う、僕は!」
「言い訳としても 最悪だったわね。
 あの時 貴方がすべきだったのは、『下級生と別れ、モンモランシーだけを愛する』と誓うことだったのよ!」
「悪いが それは出来ない。僕の愛は『博愛』。全ての女性に捧げる愛だ。
 僕はモンモランシーを愛している。だが、彼女の為に 他の多くの女性を泣かせる様な事は出来ない。
 それは 祖父の教えに、僕の信念に反する事だ。僕の生きる道ではない!」
カッコイイ事を言っているようだが、実のところ『浮気はヤメナイよ!』宣言である。
本人に迷いが無いせいか、それなりに説得力もあったが、目の前の相手には通じなかった。

「ギーシュ! アンタは根本的に間違ってる!
 『博愛』とは、『広く 深く愛する事』よ。
 『広く 浅く』は 博愛ではないの。そう、愛が浅くては、愛とすら呼べないわ!」
「キュルケ・ツェルプストー、君に『博愛』を批判されるとは。
 フッ、やはり君の『男漁り』は 愛では無かったという事か。失望したよ。」
「では 貴方は、『誰よりも深い愛』『真実の愛』を知っているというの?
 アタシは知っている。…悲しい思い出と共にね。」
一瞬見せた キュルケの憂いを含んだ表情に、言葉を返せないギーシュ。
「失ったものは 二度と戻らない。ならば 探すしかない、新たな真実を!
 だから アタシは自分を開くの、何人もの男達に。もっと もっと!
 でも ギーシュ、貴方は まだ知らない。
 だから、学びなさい。真実の愛を。その奥深さを。
 運命の人に 自分の全てを捧げなさい。二人で 愛を育みなさい。悩み 苦しみなさい。
 その人が誰なのか もう判っていますね。
 博愛は その先に在ります。」

混乱する頭に 畳み掛けるような論議。ギーシュは陥落寸前だった。
それでも 最後の砦が かろうじて踏みとどまっていた。
「ああ 愛とは、真実の愛とは、一体何なんだ…
 モンモランシー。君と、君と、君と~。
 愛の奥深さ、奥深く、モンモランシーに 奥深く…深くぅ~。
 でも 僕は薔薇。蝶達に蜜を、僕の蜜、皆に与える 舐めに来るぅ~。
 僕の愛は 皆のモノォ~。美しい女性は 誰も皆 みぃんな僕のモノォ~~~」
なんという筋金入りの『浮気魂』!  
その様子を見て、ルイズがキれた。
「アンタねぇ…   (雪風、Set GUN. ターゲット ワルキューレ)
 オトコだったら、  《RDY》
 一人に決めなさ~い(Fire!)!!!」
雪風 機首をわずかに振りながら ギーシュ後方のワルキューレを攻撃。
《20mmバルカン砲 掃射時間 2.3秒。目標 完全破壊。》

【キュルケとルイズのアイコンタクト】
(馬鹿ルイズ!何て事するのよ。
 『ギーシュに花を持たせつつ 釘を刺して、モンモランシーと仲直りさせる』って計画でしょうが!)
(しょーっがないじゃない、ギーシュがグダグダ言って ちっとも反省しないのが悪いのよ!)

この時 森の陰からギーシュに駆け寄る人影が!
「ギーシュ もうやめて。貴方は充分に戦ったわ!」
モンモランシーだった。

【モンモランシーとキュルケのアイコンタクト】
(これだけやってもらえば十分よ。後は私が!)
(任せるわ。頑張って!)

「私 怖かった。貴方が私を嫌いになったんじゃないかって。
 でも 貴方もそうだったのね。ごめんなさい。私が 貴方を不安にしてしまったのね。」
「君じゃない…僕が、僕が悪かったんだ。大切な人に そんな思いをさせていたなんて。」
「私達 二人とも、判ってなかったのよ。『真実の愛』が。」
「いつか 僕達にも判る日は来るのかな。」
「大丈夫 掴めるわ、二人なら。貴方と 私なら!」
「あぁ モンモランシー!」「ギーシュ~ゥー!」
ひしっと抱き合う二人。(でも モンモランシーは、ルイズ達の方を向いて 会心の笑みを浮かべている。)

「まさに、『雨降って 地固まる』ってヤツね。おめでとう、ギーシュ、モンモランシー。」
「そんな二人に、取って置きのプレゼントがあるんだけど。」
「…星空の、デート。
 二人っきり。」

(いい 雪風、判ってるわね!『遊覧飛行』だからね!急加速・急降下・急旋回なんかしちゃ、ダメよ!!)《RDY》
おっかなびっくりのギーシュとモンモランシーをコクピットに押し込んで、雪風は離陸して行った。
整備が進む滑走路を一杯まで使って ゆっくりと浮き上がる。あれなら イキナリ失神する様な事は無いだろう。
「いろいろと 予定外の展開もあったけど、とりあえず上手く行ったわね。 
 ところで ルイズ、雪風って あんな銃も積んでたの!」
「まぁ 雪風は、異世界の『兵器』なんだから、武器の一つや二つ あって当然でしょ。」
「それにしても…間違ってもアレで ヒト撃っちゃダメよ!」
もしギーシュに当たっていたらと思うと・・・
キュルケでさえ かなりショックだったようだ。
タバサも ボソリと言った。
「…当ったら、『ミンチより酷い』。」
「判ってるわよ!(雪風の戦闘記録で、モロにそのシーン見ちゃったんだから、思い出させないで!)
 それよりキュルケ、貴女の『真実の愛』の相手って誰なのよ?
 貴女が一人だけの男にイレ込んでた事なんて あったっけ。」
「そんなコト 有る訳無いじゃない。
 あーいう時は、舌先三寸、その場のノリで、言ったモン勝ちよ!」
こんな女が 恋愛アドバイザーなんて呼ばれてて イイんだろうか…?

雪風が戻ってくる。
降りてきた二人は、案の定 興奮していた。
「すっごいわ~ もう 星に手が届きそうなんだもの!
 こんなの 生まれて初めてよ。」
「僕ら二人で 星空を独占してるみたいだったよ!
 また 乗せてもらえるかな?」
食いついてきた!
そこで、航空燃料の話を切り出す。
同級生の中でも優秀な 土メイジと水メイジのカップルは、快く協力を申し出てくれた。

「ねぇ、どうだった。」
二人が召喚場を去ってから、ルイズは 森の中に隠れていた もう一人の人物に声を掛けた。
ギーシュに八つ当たりされたメイド シエスタだった。
「こんな真夜中に呼び出して ゴメンね。でもちょっと 溜飲が下がったでしょ。」
「はい。ありがとうございました。ヴァリエール様。」
 でも よろしいんですか こんな事して?」
「私のことはルイズでいいわ。
 心配しなくても 大丈夫よ。でも 今夜の事は秘密にしてね。
 さ、早く帰って寝ておかないと 明日キツいわよ。」
「はい!」

ルイズと別れてから、シエスタは呟いた。
「ルイズ様の使い魔の名前、『雪風』だった。
 タバサ様の二つ名も、『雪風』だけど…
 うん 間違いないわ。
 曾お爺ちゃんが探してたのは、ルイズ様だったのね!」

         〈続く〉


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