あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロ大師-01


―――神界。
ぐおんぐおんと歪むワープゾーンの中に存在する巨大な島。
島と言うよりも山が丸ごと浮いているような外観である。
中心にそびえ立つ巨大な山が月の端にかかり、真円の月が黒くかけている。
本物の月ではなく、ここを管理する元始天尊が暇にあかせて拵えたものである。
地球や、仙人界であるならば大気があるべきだろうが、ここは神界。
魂魄となった者達が住む場所である。
ワープゾーンの中に存在するそこの空間は、割と都合の良いように作ってあるらしい。

魂魄に老いは無い。
例え死んだときにどんな惨たらしい状態であっても、魂魄体は本来の姿となる。
基本的に朝も夜もないのだが、雰囲気付けの為に作成したのが今浮かんでいる月であった。
趙公明の船の球体部分と同じ作りであり、実際彼はこの中に住んでいる。
本人曰く、「こんなに目立つ場所は、この僕にふさわしい!」らしい。

神達は要請がない時は勝手気ままにここで暮らしている。
魂魄体になって尚修行を続けている者達は山に籠もったり滝に打たれたり打合ったりしているし、
趙公明のように貴族的な生活をゆうゆうとしている者達もいれば、
普通に居住空間を作って暮らしている者達も居る。
もっとも、魂魄体といういわば幽霊のような存在なので、睡眠等の為にある居住空間ではなく、
自分の居場所といった程度のものである。

そんな中で一人、山の中腹の洞穴に居を構えている男が一人。

―――かつての殷の大師、聞仲である。

この洞穴を訪れるのは少ない友人達と、かつての部下。
かつての敵であった者が訪れてきて、数日間語り尽くす事もあった。
また、行方不明となっている筈の太公望が一度ふらっと現れ、
桃を食らいながらだらだら話した挙げ句、元始天尊に見つかりそうになって逃げたりしたこともあった。
黄飛虎が来てひたすら酒を飲んで笑いながら愚痴を言い合い、朝には全く記憶が無かったこともある。

神界の生活は日時も何も無く、元々老いの無い仙人・道士からすれば特に平時と変わらない。
それは聞仲も同じであるが、彼の場合は軍師としての激務が無くなった事で時間が有り余っていた。
禁鞭も張奎に譲り渡され、肉体は無いので鍛える事もできない。
となれば仙人のやる事は瞑想したり他者と語らう事くらいであった。

「……」

仙道である彼等とは、こうして会う事が出来る。
しかし、封神フィールドが張られる前の死者、すなわち朱氏のような者には会えない。
そして自分にずっと尽くしてくれていた霊獣―――黒麒麟にも。
あの仙界大戦で失われた命は仙道達のものであり、そのほとんどはこうして神界に居る。
しかし妖精ではなく霊獣であった黒麒麟の魂魄はここにはなく、聞仲はそれを自覚した時どうしようもない喪失感に襲われた。

洞穴の一角に置いてある黒い塊は、 飛虎の息子、天祥が作って置いていった人形である。
と、空しさの混じった表情でそれを眺めていた聞仲の意識が、外に向けられる。

「―――元始天尊か」
「相変わらず良い勘じゃ」
「音もなく現れるのは貴様くらいのものだ」

元始天尊は空間転移用宝貝、ワープ君に乗っていた。
あの戦いでの傷は癒えているが、やはりそういった移動は面倒らしい。
ものぐさな部分は弟子に確実に受け継がれている、と聞仲は思っていた。

「で、何のようだ」
「ここ最近の事件については聞き及んでいるじゃろう。妖怪仙人から人間の導士・仙人、神に至るまで、10数名が行方不明となっておる」
「……"神隠し"か」
「本当に神が攫われておるのじゃから、冗談にもならんのう」
「趙公明も居なくなったと聞いて居るが?」
「あやつに関してはこの件に関係なく失踪しそうじゃが……主立った者はここに挙げてある」
「……趙公明、王貴人、土行孫、ちんとう……太公望!?」
「千里眼にはかからんのじゃが、申公豹がわざわざ言ってくるくらいじゃ。数日前まではスープー達が追い回しておったから、この時期の失踪というのはやはり……」
「しかしあいつは『最初の人』の内の一人だろう。奴が消えるともなれば……」

「その通り。こちらもそれ相応の者を調査にあたらせねばならん。とはいえ、生きている者達といえば……」

『いや、教主の仕事が山積みでして……』
『ム!』
『ついにこの九竜神火罩Ⅲの出番か』
『ハニー、どこへ行ったの!?』
『心配無いじゃろう、あやつが消えるわけもない』

「といった具合での。これも現世での異変とすれば、神に頼むしかあるまいて」
「……これも神としての仕事か」
「まあ良いじゃろう。仙人界への行き来も可能なようにしておく」

封神フィールドが覆っている仙人界では、死んだ者は神界へと飛ばされる。
しかし封神台が解放され神界として機構を新しくした今、神界から地球、仙人界への移動は自由である。
もっとも、それには教主か、元始天尊の許可が必要である。
唯一の例外は力をずるがしこく使って逃げ果せている太公望くらいのものだ。

神として封じられた者としての務めはやはり果たさねばならない。

「……仕方ない。行こうではないか。その調査とやらに」


数日後。
「聞仲様!」
「張奎か」

仙人界で出現したという”鏡”の前に、多数の仙人達が集結していた。
最も前に居るのは大乙真人と燃踏道人である。
そして、その後ろには漆黒のマントを纏った聞仲と、かつての部下である張奎が再会している。

「これがその鏡か……」
「十天君のお陰で封じ込めてるけど、これに触れてしまえばおそらく飛ばされるんだろうね」
「こんなものがいつ現れるか解らんとは」
「燃燈様の前に現れて良かったですね。気合いで何とかなって」


迅速な対応のお陰で、正体不明の鏡を発動させることなく封じ込める事ができていた。
仙人界のオーバーテクノロジーは複合させる事で魔法すらも押さえ込む。

何故聞仲がこうしていられるかと言えば、仙人は魂だけあれば再生が可能であると言う事に基づく。
それには通常長い時間が必要となるものの、不可能な事ではない。
今回は太乙が宝貝人間を作る際のノウハウを応用して、魂魄を持たない体だけを作った。
あとはそこに魂魄を入れてしまえば、完成品はこちらにあります、というわけだ。

「というわけだけど、大丈夫かい?聞仲」
「……問題ない。肉体も戻り、禁鞭もある」
「複製だけどね」

聞仲が腰にしているのは本物の禁鞭ではない。
本物は今張奎に受け継がれている。

「スーパー宝貝のレプリカ……本物に比べれば攻撃範囲は狭いんだけど、張奎君の意見を取り入れて使いやすくしてみたんだ。本物に触れられない分の研究成果を詰め込んでみたのさっ」
「相変わらず読者を意識した人ッスねえ……」
「まあいい。それで、この珠は何だ」
「金鰲島の混元珠とか拌黄珠の応用でね、どこにいようと通信が可能な万能宝貝さ。他にも機能を色々と付けて―――」

禁鞭を握ると、懐かしい感覚が蘇ってくる。
最期にこれと共に戦ったのは、あの燃えるような夕日を浴びながら太公望と戦った時だ。

「懐かしい感触だ。しかしこれは、お前が持っているべきだ」
「聞仲様」
「お前は新しい風となった。ならば、それはお前の元にあるのが良いのだろう」
「……わかりました」

「では、向かうとする」
「十天君、十絶陣解除!」

「行ってくる」


「……」

正直な話、ルイズは困惑していた。
召喚で呼び出したのが真っ黒なマントを纏った大柄な男だったからだ。
自分に影を落すほどの身長に加えて、その人物自身の雰囲気も近寄りがたいものだった。
おまけに周りにふよふよと珠が浮いている。
声を失って思考回路停止状態に陥ったルイズを見かねて、コルベールが進み出た。

「失礼ですが……貴方はメイジ、であらせられるのでしょうか?」
「明示?」
「そうです。もしくは貴族の方でしょうか……」
「……」

人数的には百人に満たない程度だろうか。
おそらくは10代後半、天祥ほどの年齢である。
とはいえ、このような子供達が全員が全員同じ恰好をしているというのは見た事がない。
軍隊ならば同じ兵装をしているのは当然だが……ここは何かの学塾なのだろうか。

となれば、おそらくこの頭皮の薄い人間は教師にあたる人物なのだろう。
むしろ、所々にいる奇妙な生物たちの方が気がかりだった。

「それで、ここはどこだ?」
「ここはトリステイ―――」
『うーん、どうもよくわからないな。異世界なのは確かなんだけど……詳しくはもう少しデータがたまらないと無理かなー』
「!?」

大きなどよめきが起こった。
召喚された男の周りに浮いている珠が、喋ったのだ。
向こう側の通信宝貝を持っているのは太乙と、会議室に集まった仙人達である。

『でもこれが通じているってことはそれほどかけ離れた世界じゃあないね。話も通じているんだろう?』
「そうだな」
『まあしばらくそっちで暮らして情報を得ると良いよ。居なくなった仙人達を探すにしても、まずは情報から』
「大乙真人。本当に帰れるのだろうな」
『君が他の人達を探し出したらね』

……これも務めだ。
聞仲はまたため息をつくと、ルイズへと向き直った。


「貴族かどうかだが。残念ながら、私は貴族ではない」
「え、じゃあ……平民?」
「正確に言えば武門の生まれで殷の軍師だ。もっとも……元、だがな」
「?」
「ところで、ここはどこだ」

数分後。
そこには説明を受けた後の聞仲の姿が。

「なるほど。私が契約をしないと留年となるのか」
「そうなります。毎年恒例の儀式で、例外はありません」

―――我が子である殷を見届けたと思っていたら、今度はまた別の子供を見る事になるとは。
「運命とはわからないものだな。これも標無き後の岐路の一つか?太公望よ」

聞仲はこの世界にいるかもしれない奴の事を思い返しながら言い放った。

「いいだろう。この聞仲、契約を受けよう」

そしてハルケギニアに降り立った一人の軍師は、桃色の髪の小さなメイジと契約を交わした。
―――ハルケギニアに一陣の風が吹き込む。
それはまた、大きな風へと育っていくのだが、それはまだ先の話である。



そして、あまりにも背が違う聞仲に対し、ルイズがしゃがませて契約を行った事は付け加えておかねばならない。



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